『海が割れてるぞ!!何だあのMS!?』
『モーセかよ!?』
『ソドンに艦砲射撃を要請しろ、今すぐに!!』
マンガルールに駐屯していたジオン軍の部隊は目の前に広がる光景を見て騒然となった。
彼らは海底に沈んでいる『軍事機密』回収のため水陸両用MSを駆りあらかじめ指定されていた座標の地点まで潜航していた。
軍事機密の回収という一生にあるかも分からない任務に表面上は平然としているが、多くの隊員は浮き足だつ思いで駐屯地から出発した。
その思いは目の前の光景によって一瞬で粉砕される。
彼らが到着した場所は海の谷間になっていた。
谷間の中で2機のMSが戦い、1機のMSが伏している。
倒れている1機は自軍の機体であるとIFFが示す。
だが、戦っているあの2機は何だ?
ガンダムに似ているような見た目だが、その細部は大きく異なる。
ゾンビのようにボロボロな姿をしているが、MS程の大きさのある大剣を軽快に振り回すガンダムとそれをガントレットのようなシールドを両手に持って大剣に叩きつける赤いガンダムが谷間で攻防を繰り広げている。
そこに軍事機密は無かった。
非現実的な光景だけが広がっている。
『君は何なんだよ!?』
シールドで攻撃を受け流しながらジョンは叫ぶ。
ボロボロの姿であるが、大剣を構えるMSはストライクの性能とジョンの技量を上回って余りある力を見せつけてくる。
ジョンとしては未知のMSと戦って勝つよりもジークアクスを回収してマチュ達を救助する方が最優先だ。
だが、未知のMSはジョンにそんな隙を与えてくれない。
規格だけは合っているが、使えるかどうかも未知数なラウンドムーバのサーベルを引き抜く暇もない。
『何でここにいるんだよ!?フリーダムが…フリーダム?』
間合いを取り直したジョンは無意識のうちに自分が叫んだ言葉を反芻する。
『フリーダム』と確かに自分は言った。
翼が片方しか残っていないMSの姿を見て自分は確かに『フリーダム』と言った。
目の前のMS、ガンダムの名前がフリーダムという名前だとジョンは不思議なくらい腑に落ちる。
『僕は知っているんだ。このガンダムの名前がフリーダムだって』
目の前の片翼のガンダムはフリーダムだ。
その事に対してジョンには不思議な確信があった。
ジョンの失われた記憶の中にこのガンダムがいたのかもしれない。
『フリーダム』が若干優位なまま拮抗する戦いに変化が訪れる。
突然上空から放たれたメガ粒子砲のビームがストライク達の近くにある割れた海へと直撃した。
ビームが減衰しながら海の中を進んでいく。
大剣を避けながらストライクは先程からセンサーが検知していた艦影をその視界に捉えた。
その艦影は間違いなくソドンだ。
大気圏内に降下したソドンが連装メガ粒子砲の砲口をストライク達に向けている。
『戦闘を行っている2機のMSは直ちに戦闘を中止せよ!!』
ストライクの無線機に設定してあるオープンチャンネルから女性の声が聞こえてくる。
この声にジョンは聞き覚えがあった。
ラシェット艦長の声だ。
意外な人物の声を聞いたような気がしたジョンだったが、ここが別の世界であったとしてもソドンは存在するし、ラシェットも乗艦しているということには変わりがないようだ。
オープンチャンネルからの呼びかけが聞こえたのか、フリーダムの動きが止まる。
ストライクに突きつけていた大剣を下ろし、浮遊しているソドンへと頭部を向けた。
その隙にジョンは落としたライフルとシールド、地面に伏しているジークアクスの位置関係を把握していく。
『両機共にジオンの保護区に対しての侵犯行為を侵している。直ちに戦闘を停止し、オープンチャンネルで…』
ラシェットの声を最後まで聞かずにフリーダムはバックパックの推力を全開にして一気に飛び立った。
『止まれ!!』
片方しかない翼を器用に扱いながらフリーダムは大剣を構えてソドンへと飛んでいく。
『まずい!逃げろ!!』
ジョンは届かない叫びをラシェット達に向かって叫んだ。
フリーダムはソドンの対空攻撃など掠りもせずに肉薄していく。
ミサイル、機銃の弾幕をゾンビのようなボディで軽々と避けて進み、遂にはブリッジの目前まで辿り着いた。
CIWSによる迎撃が行われるが、傷だらけのボディであるにも関わらずフリーダムは装甲が無事である箇所を上手く動かして弾丸を無力化していく。
『止まりなさい!あなたも向こう側から来た者でしょう。私の話を聞きなさい!!』
ラシェットに変わり男の声がオープンチャンネルで響き渡るが、フリーダムは無視するように大剣を大きく振りかぶった。
フリーダムはソドンのブリッジを袈裟斬りにしようと大剣を振りかざそうとした時だった。
フリーダムの真横からストライクがラウンドムーバのバーニアを全開に吹かして突っ込んできた。
手にはジークアクスのシールドを構え、ラウンドムーバには回収したビームライフルと対ビームシールドをラッチに取り付けている。
ストライクの渾身の体当たりを喰らったフリーダムは大きく姿勢を崩し、ストライクと共にソドンの第3デッキへと落下する。
レーザーを展開している大剣はその熱量で触れているソドンの甲板を溶かすように切り刻んでいく。
ストライクとフリーダムはほぼ同時に起き上がる。
ストライクはラウンドムーバに取り付けたサーベルのグリップを右マニュピレータで引き抜く。
ジークアクスのサーベルと同様のビームの刀身は問題なく形成される。
それを見てフリーダムも大剣を第3デッキに置き右腰にあるビームサーベルのグリップを右マニュピレータに持った。
レーザーの残熱で甲板が溶けていくのと同時にフリーダムのサーベルにも刀身が形成される。
(僕の知っているソドンの人達じゃないことは分かっている。それでもこれ以上、見知っている人達をお前達なんかに傷つけさせないぞ)
艦内の阿鼻叫喚を接触回線で聞きながらジョンは目の前のフリーダムを睨みつける。
アマテ達を置いて来たことが気がかりだが、彼女達とジークアクスについては近くで展開している水陸両用MSの部隊に回収してもらうしかない。
ストライクとフリーダム、2機はソドンの中央で睨み合い、そして同時に動き出した。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ