おっぱい大作戦   作:そらまめ

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16-9 スケジュール

ジュウゾウは公用車の背もたれに身を任せ、物思いに耽るように頭を天井に向けていた。

運転席に座る秘書はそれを気にすることもせずに運転を続ける。

運転といっても自動運転機能に切り替わっているので、秘書のやることは自動運転の運行ルートと計器類、車外の周囲の確認だけだ。

 

秘書がバックミラー越しにジュウゾウを見ると、ジュウゾウは目を細めている。

 

「明後日だったな、大佐が来るのは」

 

言葉少なにジュウゾウが言うと、秘書は鞄の中の手帳を取り出してスケジュールを確認した。

 

「サイド6軍警察総局長の来訪は10月24日9時、合同庁舎での実施になります」

「イオマグヌッソの警備とキシリア様の件だな」

 

サイド6はイオマグヌッソの建設に対して多額の資金援助を行っていた。

竣工式に際してサイド6からの要人が幾人か参加することになり、その警備のために軍警察は準備を進めていた。

 

当然、ジオン軍も警備は実施するものの、宇宙攻撃軍と突撃機動軍から抽出できる人員と装備に偏りがあったため、各コロニーの防衛隊からも人員と装備を提供することになってしまった。

 

軍警のトップである総局長は、今回の警備に参加する各コロニーの防衛隊を巡って挨拶回りを行っていた。

 

「相変わらず、マメな男だ」

 

挨拶回り自体はさして珍しい話ではないが、警備対象はジオンの施設でありサイド6の軍警はあくまで要人警護が主目的である。

そのため、総局長のようにコロニーを一基一基回る人物は珍しい。

 

「ウチからはメビウス・ゼロとザクくらいしかありませんよ」

「大佐もそれは分かっている。本題はキシリア様の件だ」

 

疑似太陽ライトが日の入りを再現し、車内を暗くしていく。

 

「地球の日没とは違う」

「後でコロニー公社に言っておきます」

「言わなくていい。私は地球に関しては日本しか知らない。場所によっていろいろな日の出、日の入りがあるだろう」

 

密閉式コロニーの疑似太陽ライトは、太陽光を極力再現できるよう工夫されている。

ただ、地球育ちの人間からすれば地球上の環境と比べると疑似太陽ライトはどうしても作為的に見えてしまうという者もいる。

コロニー育ちでも違和感を抱く者はいるため、インターネット上では

「どこのコロニーの疑似太陽ライトが一番自然に近いか」

というマウンティング合戦が繰り広げられることもある。

 

「三か月前、キシリア様を狙ったテロリストの捜査も兼ねて大佐は来る。テロリストが装備していた64のこともあるだろうからな」

「テロリストが使っていた64式7.62mm小銃は、ウチでも使っていますからね」

「64がこうしてまた表沙汰になるとは思わなかっぞ」

 

含みのある言い方でジュウゾウは言う。

 

サイド6の軍警察は一年戦争後、コーストガードを再編した軍隊と警察のハイブリッドのような組織である。

イズマ・コロニーの軍警も当然ながらコーストガードから地続きの組織であるため、装備もコーストガード時代のものを使い回している。

 

「サイドは違えど、宇宙移民当初に存在した国家の兵器がさまざまなルートをたどって現役で使われている。キシリア様を狙った装備がウチでも使われているということで一応は疑われている、ということですか」

「一応だ。テロリストの正体が連邦の急先鋒であるというのは、キシリア様も分かっていらっしゃる」

 

キシリア暗殺計画に関してはジオン国内でも捜査が進められており、テロリストと同じ銃器が使われているというだけでも、捜査線上には挙げられるくらい過敏になっていた。

 

「それはそうと、明後日はイズマ・コロニーから高校生が来るんだったな。毎年恒例の」

 

思い出したように、ジュウゾウは軍警察総局長以外のスケジュールについて触れる。

 

明後日のジュウゾウのスケジュールの中に、研修事業の一環でイズマ・コロニーから数名の高校生がアマテラス・コロニーへ来訪する予定が入っている。

一泊二日の予定で、彼らはアマテラス・コロニー内部の施設を見学して回ることになっていた。

到着後、最初に行うのは合同庁舎でのジュウゾウとの会合である。

 

「イズマとアマテラスは姉妹コロニーです。あまり面倒がらないでください」

「分かっている…面倒がっているわけではない」

 

イズマ・コロニーとアマテラス・コロニーは一年戦争以前から姉妹コロニーとして認定されている。

戦争を挟んで交流が中断していた時期もあったものの、戦後は交流事業が毎年行われるくらいには関係が再開していた。

 

一年戦争の勝者となったジオンだが、他サイドとの見えない軋轢は続いていた。

地球環境回復を謳うイオマグヌッソにしても、

「そんな物を作るくらいなら、あんたらが破壊したコロニーを直す手伝いくらいはしてくれ」

という意見が他サイドの市政から少なからず出ているのを、ジュウゾウはアマテラスの定例会やインターネットを通して把握していた。

 

明後日のことをイメージしながら、ジュウゾウは鞄から私用の端末を取り出し、スケジュールアプリを開いた。

今日と明日の枠を確認したジュウゾウは、明日の欄を見て口元を緩める。

 

スケジュールアプリのその枠には、「スガイ来訪」の文字が打たれていた。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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