おっぱい大作戦   作:そらまめ

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第17話 集う者達
17-1 紅葉狩り


ジオン公国の首都が置かれている1バンチコロニーは、アマテラス・コロニーと同様に季節が秋に設定され、人工的に作られたひんやりとした秋の空気が流れていた。

 

早朝の疑似太陽ライトが朝日を再現していない時間帯、ズムシティ公王庁の屋上に人影があった。

本来であれば目立つはずの人影であるが、老朽化のための修復工事を理由に公王庁の一部に足場が組まれ、足場幕の存在もあってか、早朝の時間帯で周囲を歩く人々からはまるで気付かれていない。

 

「王子のなすがままにせよ、ナガラはそう言っていました」

「そうか」

 

紳士然とした恰好の老人は、隣に立つ虹色の水着の女性の顔を見て頷いた。

 

「棺の王子があのような最期を迎えたのは残念でならない。本来であれば、完璧に修復されたプロヴィデンスで王子と戦うはずだった」

「それほど、ソロモンでの戦いが激しかった証拠でしょう」

「あの戦いで王子はエール、ソード、ランチャーの全てを失うくらいだった。そのためのラウンドムーバだったが、野良たちのおかげで助かったよ」

 

野良という言葉で、虹色の水着の女性は老人から見えないように顔を顰める。

 

「彼らはあのままで良いのですか? ナガラ衆への傘下には?」

「野良には野良なりの生き方がある。我々のことを知っていながら参加の意思を示さないのは彼らなりの生き方だ。無理に仲間にする必要はない」

 

通勤のために公王庁舎に向かう人々は、疲れた顔つきのまま正面ゲートへ向かっていく。

 

「Hi-MD男達は今は休ませている。次の戦いはもうすぐだ」

 

屋上で語り合う二人の姿など想像だにしないように、日常へと進んでいく。

 

「キシリア・ザビは世界を跨ぐことに致命的な勘違いをしている」

 

老人は立ち上がり、疑似太陽ライトが朝日を再現していく。

 

「多元宇宙、パラレルワールド、異世界、違う世界という概念を発明するまでに多くの言葉が生まれては消えていった。キシリア・ザビは向こう側という言葉を使う」

 

それだけ言うと、老人は初めからそこにいなかったようにその場から消えてしまった。

老人が消えた場所を、虹色の水着の女性は唾棄するように眺めていた。

疑似太陽ライトの朝日が周囲を照らし始めた時、屋上の人影は消えていた。

 

 

 

アマテラス・コロニーはファーム・バンチという名の通り、農耕コロニーとして農作物の栽培を担っている。

農作物の栽培のため、他コロニー以上に四季や気温はかなり細やかに調整することができる。

その影響もあり、居住区も地球の四季と自然環境に近い再現が可能となっており、アマテラス・コロニーの四季は日本列島の四季が再現されている。

 

なぜ日本列島の四季が再現されているのかといえば、アマテラス・コロニーの建造に関わった主要スタッフが日系人ということもあり、コロニー内にも随所に日本の雰囲気が残っている。

 

アマテラス・コロニーの役割はあくまで農耕コロニー。

観光業はこれまではあまりなかった。

一年戦争後からは自然環境を活かしたレジャーを売り出すようになったが、フランチェスカなどのレジャーコロニーのネームバリューが強すぎるため、いまいち地味さが抜けないとの評価を受けている。

 

日本列島の四季の再現というのは定評があるためか、人が少ないこともあって隠れた名所として一部では知られている。

今のアマテラス・コロニーは10月の秋の紅葉を再現しているため、紅葉狩りを宣伝しているが、紅葉狩りでアマテラス・コロニーに来る者は少ない。

 

 

 

アマテラス・コロニーに向かうスペースシップには、おっちゃんたちの姿があった。

おっちゃん、シイコと2列席で通路を挟んで、シュウジ、ニャアンがシートに身を沈めていた。

コンチを頭に乗せたシュウジは、隣の窓席にいるニャアンを見た。

ニャアンはアイマスクで目を隠し、ブランケットで体を覆っていた。

小さな寝息を立てて寝ているのは間違いないが、その表情を伺うことはできない。

 

この三か月の間に、ニャアンはすっかり変わってしまった。

 

『ニャアンってけっこうクールだね』

 

第三者から見るニャアンを一言でまとめると「クール」の一言になる。

性格そのものはあまり変わってはいない。

その長身と猫のような鋭い目のイメージでクールな少女と扱われるが、シュウジから見れば案外そうでもない。

 

三か月、同じ屋根の下で暮らせば、ニャアンの日頃から垣間見える優しげでポケーとした一面というのが、シュウジには印象に残った。

 

今のニャアンは、周囲のイメージに合わせようとクールに振る舞おうとしているように、シュウジには思えた。

真面目に仕事はするし、作業用に改修された軽キャノンの操縦もかなり上達してきている。

 

何かに打ち込んでいないと心がもたない、そんな気がしてならないのだ。

 

その原因はジョンの失踪だろう。

マチュがイズマ・コロニーに帰る直前に見せた豹変ぶりを見るに、ニャアンはジョンに対しての愛情が相当あったのだろうとは容易に察せられた。

 

未だにジョンは見つかっていない。

 

「そろそろ出てきてくれないかな、ジョン」

 

ジョンが死んだとはこれっぽっちも考えていないシュウジだったが、ニャアンとマチュの疲弊ぶりには応えるものがあった。

ゼクノヴァを通して別の場所でジョンは戦っているのだろうとは思っているシュウジだったが、そんなことを二人に話しても何の慰めにもならないだろう。

 

シュウジは通路を挟んだ先に座るおっちゃんとシイコを見た。

二人は仲良くシートに身体を預けて眠っている。

 

『みんな、紅葉狩りに行くで!!』

 

昨日の夕方、唐突におっちゃんから放たれた言葉でシュウジとニャアンは急いで準備しなければならなかった。

紅葉狩り自体は楽しみにしているシュウジだったが、おっちゃんは単に紅葉狩りのためにアマテラス・コロニーに行くわけではないだろうと、シュウジは思った。

 

シュウジは隣で眠るニャアンを見た。

恐らくは夢を見ている。

見ている夢が良い夢であってほしいとシュウジは思いつつ、ニャアンには紅葉狩りで少しはジョンのことを忘れて楽しんでほしかった。

 

「ニャアン、どんな夢を見ているんだろうね」

 

シュウジはコンチを頭から下ろしながら、小声でつぶやいた。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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