おっぱい大作戦   作:そらまめ

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17-8 二人の密会

パイロットスーツに着替えたエグザベはジークアクスに搭乗していた。

 

事務室からジークアクスが収容されているMSハンガーに入ったエグザベを待っていたのは、ナガラ衆らしきMS発見の報だった。

グラナダから出発したソドンだったが、地球にそのまま向かう前にアマテラス・コロニーのある宙域へと向かっていた。

 

アマテラス・コロニーがある宙域に設置されたレーダーが、ナガラ衆らしき未知のMSを捉えたのである。

 

その未知のMSの正体を確かめるためにジークアクスが出撃することになったが、エグザベには少し疑問があった。

 

「Gクアックスは地球での作業に必要でしょう。哨戒だけならG3でも良いのでは?」

 

ジークアクスの隣に固定されているガンダム[G3]を見て、エグザベはブリッジのオペレーター達に接触回線で通信を入れた。

 

『エグザベ少尉、あのガンダムに乗ったことは?』

「ありませんけど、コックピットはGクアックスと同じじゃ…」

『乗り慣れていないガンダムに乗るくらいなら、乗り慣れたGクアックスの方がいいでしょ』

 

オシロとセファに言われ、エグザベは頷くしかなかった。

 

ガンダム[G3]は、パイロットであったジョンの失踪の影響もあってかイズマ支部での運用が終了し、現在はソドンの艦載機として積まれている。

 

イズマ支部で酷使された分の修理に合わせてガンダム[G3]は大改修を受け、ジョンが乗っていた頃の作業用から、戦闘にも耐えられるレベルへと改修されていた。

大改修に伴いG3という名前も変わったらしいが、地球行き直前にソドンへ乗艦したエグザベはその名称を知らない。

 

『これまでのこともあるので、件のMSがナガラ衆である場合は戦闘は避け、すぐにソドンへ戻ってください』

 

オシロの言葉を聞きながら、エグザベはオメガサイコミュを展開していないジークアクスをカタパルトへ向かわせる。

 

ジークアクスの武装はあらかじめ設定されており、ビームライフルは機体後部のマウントラッチに固定、左腕にはシールドが装備されている。

 

そこまでは良いのだが、エグザベは右腕のマニピュレーターが持つ折りたたみ式の実体剣、グランドスラムを見て微妙な気持ちになっていた。

 

「何でG3の装備をGクアックスがしているんですか?」

 

『近接戦の戦闘力を上げようという艦長の判断です』

 

実体剣はビームサーベルと比べると取り回しは悪いが、質量で相手を殴れたり、相手を怯えさせる心理的な効果もあるのでビームサーベルにはできないような使い方ができる。

グランドスラムは折りたたまれているので使わない分には取り回しには困らない。

だからといっても、現場に向かう自分に対してラシェットが相談無しに装備を決めたのはエグザベは納得しがたい。

 

『あとは、ビームライフルのビームがもしアマテラスに当たったらとんでもない被害が出るので、遠距離武器を使わせたくないみたいです』

(それが本音だろうな…)

 

オシロの小声の説明に、エグザベは内心で呆れていた。

 

『今回はオメガサイコミュの使用が認められています。付けちゃってください』

 

セファに促され、エグザベはオメガサイコミュのデバイスをセッティングしていく。

Hi-MD男の時には使えなかったオメガサイコミュだが、ナガラ衆が台頭するようになってからは使用制限は緩くなっていた。

 

マチュが乗った時はデバイスなしでも何故かオメガサイコミュが起動したジークアクスだったが、対照的にエグザベはこれまでオメガサイコミュの起動に成功したことがない。

 

オメガサイコミュの使用が許可されたところで、起動するはずがない。

そう分かっていながらも、エグザベはデバイスをセットする。

 

案の定、オメガサイコミュは起動しない。

 

「…出撃します」

 

軽くため息をつきながら、エグザベとジークアクスはカタパルトから宇宙へと飛び出していった。

 

 

 

『マチュ マチュ』

 

マチュと共にブランケットに包まっていた白いハロが、音量を小さくしながらマチュに語りかける。

 

『マチュ ソロソロ ツクゾ』

 

眠気に抗いながら、マチュはアイマスクを外して周囲を見る。

 

マチュの座席は窓側で、宇宙がよく見える位置だった。

通路側の隣席に座る生徒は熟睡しており、起きる気配はない。

マチュは端末の時計を見る。

 

『0085年10月23日 午後6時21分』

 

あと30分ほどでアマテラス・コロニーの宇宙港に到着する頃だ。

まだ機内放送が鳴っていないので、少し早かったかなと思いつつ、マチュは白いハロに被せているニット帽がずれているのを直した。

 

ジョンとペアルックで買ったニット帽を、マチュはすっかり相棒となった白いハロに被せていた。

 

『マチュ ジョンノコトヲ カンガエテイルノカ』

 

ニット帽に触れるマチュの手を見ながら、ハロは言った。

 

「自分で被ってたら見えないじゃん。お揃いなんだ、その帽子」

 

隣席の生徒を起こさないよう、小声でマチュは言った。

白いハロが転がり落ちないよう片手で支えながら、機内に持ち込んだ小さな鞄に手を入れる。

その中から御守りを取り出し、愛おしそうに握る。

 

『マタ イノルノカ マチュ』

 

白いハロはそんなマチュを眺めていたが、ふと窓の外に視線を向けた。

 

窓から見える宇宙。

スペースシップから少し離れた宙域に、MSのバーニアの軌跡が見えた。

 

青白い光の軌跡を、白いハロはまるで人間のようにじっと見つめる。

 

「ジョンが死ぬわけないだろ」

 

その声を聞いて、白いハロはマチュの方を振り返った。

 

「別れた気になってるのはジョンの方だ」

 

マチュは御守りの中にあるT字の金属片を取り出し、それに語りかけるように呟く。

 

「グチャグチャにしてやる…」

 

その小さな呟きを聞く者は誰もいない。

周囲の乗客は、眠っているか、ヘッドフォンをつけているか、他人に興味がないかのどれかだった。

マチュのその呟きを聞いたのは、白いハロだけだった。

 

『マチュ』

 

そんなマチュを見た後、宇宙で動く青白い光の尾を白いハロは決意を決めたように眺めていた。

 

 

 

ジュウゾウが建てた私設武道館は、この日の夜は貸し切りとなっていた。

道場は内側から鍵が閉められ、畳の上には二人の男が座り、畳に置かれたタブレットとラップトップのモニターを眺めている。

 

ラップトップには警察が撮影したサイコフレームの写真が表示されている。

 

「サイコフレームはまだ発明すらされていない技術だ」

 

ラップトップを叩きながらジュウゾウは言う。

 

「しかも、T字型です。オクトバーがチェーンに送った試料のサイコフレームと見て間違いないでしょう」

 

信じられないような物を見るようにおっちゃんはサイコフレームの写真を見ていた。

 

「何でそんな物をナガラ衆が持ってたんだろうな」

「しかもよりにもよってボンに渡しているというのも…」

 

サイコフレームの写真から切り替わり、ラップトップにはフリーダムの動画が表示される。

メビウス・ゼロのレコーダーから回収された物だ。

 

「彼は向こう側から戻ってきた際、このフリーダムというガンダムを連れてきたらしい。そして、このストライクだ。我々のよく知る色合いだろう?」

「これは」

 

メビウス・ゼロと並行して移動する、ラウンドムーバを装着した白いストライクの写真を見て、おっちゃんは唸った。

 

「ストライクは赤色だけだと思っていたが、本来はこの色なのかもしれない。我々が知っているガンダムは本来、白いからな」

「赤いガンダムはガンダムじゃありません。シャアのせいでテムのおっちゃんとアムロ君の人生が滅茶苦茶になったんですよ」

「抑えろ、須貝」

 

アマテラス・コロニーの領主と、サイド6有数の企業の社長。

立場も年齢も異なる二人が、人目を気にするように武道場で話す姿はまるで密会のようだった。

この場では、二人は上司、部下のように話を続ける。

 

「准尉の方が俺達よりガンダムに詳しい。明日、准尉が来たら調べてくれている情報と照らし合わせよう」

「エムグループがナガラ衆のフロント企業だという話ですね」

 

ジュウゾウはタブレットにラウンドムーバのCADデータを表示する。

 

「このラウンドムーバ、ストライクのコネクター規格に合わせて作られている。そんなことができるのはナガラ衆だけだ」

 

さらにジュウゾウは、画面を切り替えてラウンドムーバの仕様書の案文を表示する。

 

「これは准尉から送られてきた文書だが、ここにはM1アストレイ型ストライカーパックと書かれている」

「M1アストレイ…MSの名前でしょうね」

「おそらく、ストライクが元いた世界に存在したMSだろう。そのバックパックをストライクに装着できるようにした、というのが准尉の見立てだ」

 

おっちゃんはラップトップに映るストライクを見つめる。

 

「仕様書を見る限り、あのストライカーパックにはミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉が搭載されている。

ストライクはバッテリー駆動らしいが、あれを付けることで稼働時間を克服しているんだ」

 

ジュウゾウが話を続けようとしたその時、懐に入れていた公用端末が鳴り出した。

ジュウゾウは端末を取り出し、二回コールが鳴った後に着信ボタンをタップした。

 

「アマトです…そうか」

 

端末の向こうから聞こえる騒がしい声を、おっちゃんは黙って聞いていた。

 

「すぐに戻る。30分以内にだ」

 

通話を切ったジュウゾウはおっちゃんの方へ視線を向ける。

 

「噂をすれば、だ。フリーダムが出たぞ」

 

それだけ告げると、ジュウゾウはラップトップとタブレットを鞄に押し込んだ。

 

「君は『家族』のそばにいてやれ。途中までは送っていく」

「…ありがとうございます」

「フリーダムの性能は未知数だ。外壁をぶち破られることも考えておかねばならん」

 

道場の扉を開け、ロビーまでの通路を二人は一言も喋らずに歩き、靴を履き直して武道場から出ていく。

貸切にしていたこの日に二人の姿を見る者はいない。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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