「うぉぉぉぉぉ」
「ゴールドマン君、落ち着いて。他に泊まってる人、困っちゃうでしょ」
「落ち着いてられないですよ、補佐官……このままだと戦争になりかねません」
ベッドの上で転がりまくるレイニー・ゴールドマンを、カムランはたしなめながらラジオを聴いていた。
「テロリストがソドンを襲った時に来訪していた人たちは、ほとんど無事だ。襲撃時は皆、食堂にいたからね。食堂に目もくれずにテロリストはビームサーベルだ」
「補佐官、一人だけ赤いガンダムに拉致されたんですよ。なんでハンガーにいたんだよぉぉぉぉ…ジオンに口実作っちゃったじゃねぇかぁぁぁ。団体行動をしろ、団体行動ぉぉぉぉ」
ゴールドマンは枕に頭を埋めながら叫んだ。枕を抱えるゴールドマンの左腕にあるひどい火傷跡と窓の外を、カムランは交互に見ていた。
(普段は落ち着いてるのにな。錯乱する気持ちは、死ぬほどよく分かるぞ)
カムランは仲間であるゴールドマンの気持ちが痛いほど分かった。
ここでは叫びまくるゴールドマンも、外に出れば冷静沈着な頼れる仲間だ。
そんな仲間に、カムランは聞きたいことがあった。
「ソドンを襲ったのはナガラ衆か」
「極力死傷者を出さないやり方もそうでしょう。実際、今回の襲撃でもソドン・クルーに怪我人こそ出ましたが、死人は出てません」
枕に埋もれながらゴールドマンは答えた。
「ソドンに大打撃を与えたアンノウン1も、ナガラ衆が所持しているMSと見て間違いないでしょう。赤いガンダムもナガラ衆だとは思いますが、実行犯を殺しています。仲間割れか、全く関係ないか…これもまだ見つかってない…うぉぉぉぉぉ」
「あんなMSをどこに隠しているのか。赤いガンダムの拉致と合わさって、ジオンに有利な状況になってしまう。…中佐はやっぱり、そこまで読んでたんだな」
「水の星に愛をこめて…星の鼓動は愛なんだ…」
「ゴールドマン、今日は休め」
タマキは頭を抱えていた。
今日1日だけで、ソドンへ行った外交二部がテロリストに襲われそうになるし、娘は倒れるし、イズマ入りした大統領補佐官の付き添いはソドンの騒動を知ってうめき声を上げたりして、大忙しだ。
今から家に帰るのも、倒れた娘の様子を見に行くためである。
マチュは学校で倒れて保健室に運ばれた。養護教諭の見立てによると寝不足らしい。
保健室でしばらく眠った後、元気いっぱいで自宅に帰ったと、養護教諭と当の本人から電話で聞いている。
深夜に帰ってきた時には自室で寝ていたようだが、遅くまでゲームをしていたのだろうか。
事実はともかく、健康体とはいえ倒れた娘の容体が心配だったため、数時間だけ自宅に戻ってマチュの様子を見るつもりでいた。
玄関のロックを解除して自宅へ入ると、リビングの照明が点灯していた。
マチュは自室ではなくリビングのソファで寝転がっている、そう思ったタマキはオート点灯の廊下照明に照らされながらリビングへ入った。
タマキの予感は的中した。
マチュは毛布を羽織ったままソファで眠っていた。
体調が優れないようであれば起こしてベッドに寝かせようと思ったタマキだったが、寝顔を見るとその考えを保留することにした。
既に入浴も終え、髪も乾かした娘の寝顔はとても幸せそうだった。
「どんな夢を見ているのかしらね…」
友達の夢か、楽しいことか、それとも好きな男の子か。
エスパーではないタマキには分からなかったが、マチュが幸せそうならそれで良いと思った。
(いっときはそれどころじゃなかった。アマテはあの子のことを忘れちゃってるようだけど、このまま忘れちゃったほうがいいかもしれないわね)
テーブルの上には、マチュの赤い端末が充電状態で置かれていた。
半年前にタマキが買い与えた物で、画面に傷一つない綺麗なままだ。
物の扱いが丁寧で、わが娘ながら感心だ。
ふと、端末の横にある文書が目に入った。
学校から配られた進路希望調査だ。
三者面談の日程が近いので、そろそろマチュと話し合おうと思っていたが、なかなか機会がなかった。
(クラゲとか書いてないわよね)
風呂や自室に地球の小物を置いている、普段のマチュを思うと、それなりにリアリティのある自分の想像に笑いつつ、タマキは用紙を見た。
一度目を離すが、ありえないと考え直して二度見した。
自分の目が悪くなったと思って、もう一度見た。
進路希望調査の用紙に書かれたマチュの文字は変わらない。
用紙には堂々と、こう書かれていた。
『お嫁さん』
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ