おっぱい大作戦   作:そらまめ

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第18話
18-1 ブラックアウト


フリーダムはあらゆるスクラップを吸収し、再生を続ける。

向こう側の世界で現れた時のようなゾンビのような姿から、だんだんと本来の姿へと近づいていく。

 

スクラップを吸収して修復が進むたび、フリーダムには外見以外にも変化が現れていた。

これまでは淡々と無駄のない動きをしていたフリーダムが、次第に周囲を見渡し、時折機体を無駄に動かすような挙動まで見せるようになっていた。

 

(まるで迷子の子供だな…)

 

監視を続けていたエグザベは、パイロットにどんな心情の変化があったのかが気になっていた。

これまではまるで機械のように淡々と修復を進めていたフリーダムが、修復が進むにつれて明らかに人間臭い動きを見せるようになっていたからだ。

 

まるで仲間を探すように周囲を索敵し、ザクや軽キャノン、サラミス級の残骸を興味深そうに調べている。

極めつけは、スクラップに触れた途端にそれを吸収してしまう自分自身の姿に、どこかドン引きしているようにも見えた。

 

エグザベの目から見ると、フリーダムはほぼ修理を終えているように見えた。

ボロボロだった外装は綺麗になり、欠けていた羽も修復された。

両腕には何も装備していないため手持ち無沙汰に見えるが、それでも十分戦える状態に思えた。

 

『あと5分以内には防衛隊が到着します』

『戦力は?』

 

セファからの通信に、エグザベは不安を覚える。

フリーダムの実力は分からない。

だが、あれを無力化し逮捕するなら、中途半端な戦力では返り討ちに遭うだろうという確信があった。

 

『ザク3機です』

 

オシロの補足情報を聞き、エグザベは頭を抱えたくなった。

 

ジオンは各コロニーに警備を主任務とした防衛隊を置いている。

有事の際に迅速に戦力を出せるようにとの運用思想ではあるが、戦力は旧式化した兵器ばかりだ。

エグザベが所属する機動突撃軍のように、アップデートされたゲルググやギャンなどの最新装備があるわけではない。

MSといえば精々ザクか0ザク程度だろう。

 

こんな貧弱な戦力になった理由が、コロニーが防衛隊を強化しすぎて独立しないよう縛るためと役人が決めたからだという噂も耳にしていた。

とはいえ、今回の状況にはあまり関係ない。

 

「あのMS、かなりの重武装です。ザクとGクアックスだけで逮捕は…」

 

無茶ではないか、と言いかけたその時だった。

 

フリーダムが背部バーニアを吹かし、移動を始めた。

背部の翼が展開し、その場から離れていく。

 

「速い!!」

 

フリーダム自身は大して急いでいるつもりはないのだろう。

エグザベはGクアックスのバーニアを全開にして追随しようとするが、なかなか追いつけない。

Gクアックスはかなり推力を出しているが、それでもフリーダムの背中を見るのが精一杯だった。

 

その時、Gクアックスのコンピュータが警告を発した。

 

(まずい!!)

 

ディスプレイに映る警告を見て、エグザベは焦った。

このままでは宇宙港へ向かう航路に衝突してしまう。

しかも、航路には艦艇の往来も多い。

 

『エグザベ少尉、その先には宇宙港までの航路があります。航路に入る前に対象機体を止めてください!!』

「…了解!!」

 

結局、フリーダムの修復を見守るだけで終わってしまった。

 

しかしもうそんなことは言っていられない。

エグザベはフリーダムに吶喊するためGクアックスを最大推力まで吹かそうとした。

 

その瞬間、モニターがブラックアウトした。

 

 

 

「どうしたの? ハロ」

 

白いハロは窓の外をじっと眺めていた。

いつもはお喋りな白いハロが、何も言わず宇宙の闇を見つめていることにマチュは不思議に思い、視線を窓へ向けた。

 

「あれは…」

 

マチュもすぐに、白いハロが何を見ているのかに気づいた。

 

スペースシップから少し離れた場所で、二つの閃光が走っていた。

MSのバーニアが尾を引き、宇宙の闇を切り裂くように進んでいる。

しかも、そのMSはまっすぐこちらへと近づいていた。

 

『アノガンダム ムコウガワカラキタノカ』

「向こう側? 何なの?」

『ソウカ ストライク イッショニキタノカ』

 

白いハロはマチュの問いに答えず、閃光の先をただ見つめ続ける。

 

『マチュ』

 

白いハロは静かにマチュへと向き直った。

表情はないが、今のそれはどこか神妙な顔に見える。

マチュは小さく息を飲み、白いハロを抱き寄せた。

 

『モシ ジョンガ チカクニイルトシタラ ドウスル』

 

「突拍子がないよ。…そうだな」

 

第三者が見れば奇妙な光景だったろう。

突然ペットロボットが、三ヶ月前に姿を消したジョンの話を切り出し、それをマチュが驚きもせず静かに受け止めているのだから。

 

「私から逃げられないように、雁字搦めにしてやる」

 

マチュは淡々と答えた。

自分の脳内で何度も繰り返してきたシミュレーションが浮かぶ。

ほんの少し頬が赤くなる。

 

「そして、一緒に思い出すんだ。私がジョンにしたことを」

 

その言葉を赤みがかった頬を歪めてマチュは悲しそうに言った。

 

『ワカッタ チカラヲ カソウ マチュ』

 

白いハロはマチュの答えを聞き、目のようなランプを点灯させながら再び窓の外の閃光を見つめた。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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