おっぱい大作戦   作:そらまめ

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18-8 操縦桿

アマテラス・コロニーの宇宙港は、軍民共用で使用されている。

防衛隊のザクの小隊が出撃したのもこの宇宙港からであり、メビウス・ゼロが宙域に出撃する際も宇宙港を利用していた。

 

スペースシップから乗員乗客が降りてくるのと入れ替わりに、メビウス・ゼロがカタパルトに載せられ隔壁の外、真空の世界へと飛び出していく。

 

(変な飛行機…鷹みたい)

 

スペースシップから降りたマチュは、特殊強化ガラス越しに見えるメビウス・ゼロの姿を目にした。

メビウス・ゼロの胴体にある黄色い部分が、動物園で見た鷹の目のように見えた。

 

「現在、外でナガラ衆らしき一機のMSが暴れています」

 

派遣事業でアマテラスにやってきた生徒達は、宇宙港ロビーの一角に集められ、出迎えに来た合同庁舎の職員のひとりが事態の説明をしていた。

 

「MSの撃退が確認できるまで、皆さんには宇宙港にあるシェルターへ避難していただきます」

 

宇宙港のシェルターは多くの人数を収容できるよう設計されており、イズマ・コロニーから来た教師と生徒、合わせて十名を収容することは可能だった。

 

「なんでMS一機のためにコロニー全体でそこまで警戒するんですか?」

 

マチュの隣席で爆睡していた生徒が、めんどうくさそうに職員に尋ねる。

本来であれば出迎えの後、ホテルで休める予定だったため、シェルターへの避難が億劫になっていたのだ。

そもそもMS一機でできることなど限られている。

そう思っている生徒には、非常事態宣言まで出して警戒する必要が過剰に見えていた。

 

「ナガラ衆の被害にいちばん遭っているのは君たちだろう。平和ボケしすぎだ」

 

職員が言葉に詰まったところを、同行していたアマテラス側の教師が代わりに言う。

避難を呼びかける警報が鳴り続けている宇宙港内の空気に、生徒も黙り込んだ。

 

「来てくれるよね、ジークアクス」

 

マチュは上の空で天井を眺めながら小さく呟いた。

 

 

 

『良いんですか? ジョンを放置しても』

『彼はストライクになれる。最悪何かあっても切り抜けられるだろう』

『ストライクの存在がキシリアにバレたら厄介です。ジョンの生存も芋づる式にバレる可能性が』

『キシリアもだが、今はあの羽つき…フリーダムを何とかするのが先だろう』

 

メビウス・ゼロのコックピットの中で、クワトロはジュウゾウとのやり取りを思い返していた。

地下通路から宇宙港まではそれほど距離がない。

 

メビウス・ゼロは防衛隊のMSハンガーで整備されていたが、非常事態宣言の直後に貨物用キャリアで宇宙港まで運び込まれ、即応できる状態にあったため、クワトロはそのまま走って向かった。

 

『ラッキーボーイはどうした?』

 

ララァが通信機越しに話しかける。

メビウス・ゼロの専属メカニックのような立場に落ち着いていたララァは、宇宙港まで同行し、出撃直前までサイコミュ調整を行っていた。

 

「別行動だ。ジュウゾウ様のお墨付きだよ」

 

『大丈夫かな? あの子』

 

「色々と心配だよ」

 

だいしゅきホールドを決めた少女をシェルターへ押し込むジョンの姿を思い浮かべながら、クワトロは出撃前の最終チェックを終える。

 

「メビウス・ゼロ、行きます」

 

クワトロはそう宣言し、ロックを解除した。

四基のガンバレルと本体のバーニア推進力で、メビウス・ゼロは宇宙へ飛び出していった。

 

 

 

ジークアクスのコックピットのレイアウトは、ガンダム[G3]とほぼ同じだった。

胸部にコックピットを持つガンダム[G3]と、コアファイターを内蔵したジークアクスでは、モニターの配置や操縦コンソールに違いこそあるものの、大きな差はない。

 

決定的な違いといえば、オメガサイコミュを使用する際に出現する人の手のような操縦桿だろう。

その操縦桿は、マチュが操縦したときにも現れたもので、ジョンには見覚えがあった。

 

ジョンを乗せたジークアクスは、まるで意志を持っているかのように地下隔壁通路を歩き続ける。

ジョンの操縦をまったく受け付けず、ただ彼をどこかへ運ぼうとしているようだった。

 

頭上ではサイコフレームが鈍い光を放ちながら浮遊している。

 

「ダメか…」

 

一通りの操作がすべて無駄に終わったことを悟り、ジョンは変わり映えのしないモニターを睨みつける。

本来、MSが自律して動くなどあり得ない話で驚愕すべき事態のはずだった。

だが、今のジョンにとっては、ジークアクスが意思を持ったように動いていることにさほど驚かなくなっていた。

 

(G3はジークアクスのプロトタイプみたいなものか)

 

それでもなお制御を取り戻そうと、G3を操作していた頃の記憶を頼りにコンソールを探るうち、ジョンはG3とジークアクスの妙な共通点に気づき始める。

 

コックピットレイアウトをはじめ、G3とジークアクスは類似点が多い。

運用開始はG3のほうが早く、G3の建造時に得られたデータや、ジョンがイズマ支部で収集した運用データがフィードバックされた結果、ジークアクスやジフレド・カルラの開発に反映されたのだろう。

 

しかも、G3の装備はストライクでも使用可能だ。

ラウンド・ムーバ、対ビームシールド、アーマーシュナイダーどれもストライクでの運用を前提としたかのような装備ばかり作られている。

 

(ジークアクスはともかく、G3の開発にはナガラ衆が関わっているのか…?)

 

ストライクと同じアーマーシュナイダーがG3にも存在する時点で、気づくべきだったのかもしれない。

何らかの形でナガラ衆が関わっていると、そう考えていたとき、ジークアクスの動きがふいに止まった。

 

モニターには、降下してきた隔壁が映し出されていた。

ジークアクスとフリーダムが外壁を破壊した際、その穴を封鎖するために下りてきた隔壁だろう。

 

ジークアクスは折りたたまれていたグランドスラムを展開する。

 

そして、ためらいもなく隔壁を斬り裂いた。

 

袈裟斬りにされた隔壁は、真空へ空気を吸い出しながら大きく開いていく。

蹴り飛ばされた隔壁はゆっくりと回転しながら宇宙へ流れ、ジークアクスはその開口部へと進んだ。

 

モニターが、通路の先にある光景を捉える。

 

穴の空いた外壁の縁、そしてその影に身を潜めるように佇むフリーダムの姿があった。

 

「フリーダム!?」

 

フリーダムの外装には、ジークアクスとの激しい戦闘で負ったであろう損傷がいくつか残っている。

しかしその一方で、機体表面は以前より明らかに修復されており、海の谷間で見たゾンビのような姿ではもうなかった。

 

突然現れたジークアクスに驚いたのか、フリーダムは反射的に左マニュピレーターを動かし、腰のビームサーベルを引き抜く。

 

「待て!!」

 

ジョンは思わず叫んだ。

 

初遭遇のときのフリーダムは、ただの獣のように暴れ回っていた。

だが、いま目の前にいるフリーダムには明確な知性のようなもの、状況を理解しようとする視線がある。

 

(もしかしたら、話ができるかもしれない)

 

ジョンはそう感じ、シートから立ち上がってコックピットハッチへ向かおうとした。

 

しかしその前に、オメガサイコミュの操縦桿が人の腕のように動き、ジョンの進路を塞いだ。

 

「行かせてくれ。あいつと話したいんだ」

 

ジョンはその手を払いのけながら、ストライクの姿を強く思い描く。

 

 

 

『ジョンをマチュの所へ連れていく』

『それはダメ、ジョンはマチュと縁を切ると決めたの』

 

どこかで男女の揉め事がジョンに聞こえてきた。

 

男の方はクワトロに似た声で、女の方はマチュの声、マチュに化けたストライクの声だった。

 

『だったら君は何故マチュの姿を模している?』

『ジョンはマチュの事が好きなの、だから私は…』

『ジョンが好きな姿をしているんだな。だったら僕が彼をマチュの所へ連れていくことに口出ししないでほしい』

『貴方こそマチュの人生に介入するべきではないでしょう。貴方がマチュにメッセを…』

 

話の全てが終わる前にジョンの姿はストライクへと変わっていった。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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