おっぱい大作戦   作:そらまめ

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事の始まりは1時間前に遡る。

この日は、軍警が運用しているのうち12機に対してインストーラー・デバイスの交換作業が行われていた。

整備工場での作業は順調に進み、最後の機体への交換が終わり動作確認を始めようとした時だった。

待機していた12機の軍警ザクが無人のまま突如として動き始めて整備工場から脱走し、コロニー内で暴走を始めた。

あまりに突然のことだったので行政各所の対応は後手に回り、対応を始めた頃には12機の 軍警ザクは整備工場内にあった武器一式を回収し、周囲への被害などお構いなしにコロニー内で動き始めた。

 

無人のMSがコロニー内で暴れ回るという前代未聞の状況に対して、軍警はインストーラー・デバイス交換前の10機の軍警ザクでの鎮圧を決定。市街地へ侵入した暴走MS相手に奮戦することになった。

 

同時にコロニー公社イズマ支部へ対しても、同社が運用しているMSの協力を要請。要請を受けたイズマ支部はガンダムの派遣を決定した。

 

ソドン襲撃事件捜査本部のメンバーも暴走MSの対処のために駆り出され、室内はガラガラになっていた。

留守を任せられていた刑事は受話器を持ちながら窓の外を眺めていた。

警報と避難勧告のアナウンスが流れ、シェルターへの避難を呼びかける機械音声がコロニー内に響き渡る。

 

「今回の件もナガラ絡み、そうお考えだと」

『ええ』

「その根拠は? 木星帰りの勘ですか」

『現状の戦力で暴走ザクをすべて倒せますか?』

「できますよ。言っておきますが、おたくの MS の協力がなくとも我々だけで勝てますよ。たかだか自動操縦に毛が生えたようなものです。すぐに結果は出ますよ」

『…』

 

 

 

食堂にある大型テレビの前に、暇になったケルゲレンの乗組員が、イズマ・コロニーでの戦闘を生中継した臨時ニュースを見ていた。

暴走MSと軍警ザクが取っ組み合い、ビルの後ろ側に隠れていた暴走MSのヒートホークによって軍警ザクの頭部が破壊されて機能停止した辺りで、テレビを見ていた周囲から野次が飛んだ。

 

「まるで人間が乗ってるみたいだ」

 

メカニックのケーンは呟いた。

 

「でもニュースだと無人だって言ってなかったか。AIでもあんな動きはできるだろ」

 

破壊された軍警ザクからパイロットが脱出する光景を見て、ジェジーは言った。

 

「確かに一年戦争中に地球連邦軍がMS用AIのファントム・システムを開発していたけど、カインズ博士が急死したから頓挫したはずだ。

ジオンはサイコミュ・システムの方に労力を割いたから、AIであんな動きはできないよ」

「じゃあどういうことなんだ?」

「無人機であんな動きは普通じゃない。どんな手品を使ってるんだ」

 

 

 

マチュと少女の間に沈黙が続いた。

さっきの会話で少々気まずくなっていた。

ここからどうしようかとマチュは考えたが、少女は俯いたままだ。

 

「私はなんでこんなところにいるんだろう…」

 

少女が先ほどと変わらないトーンでマチュに話しかけてくる。

 

「家に帰るためじゃない?」

 

この少女の姿から、どこか徒労感をマチュは感じた。

 

「喧嘩でもしたの?」

 

自分はしょっちゅうタマキと喧嘩をしている。目の前の少女の家庭事情などはマチュは知らないが、似たようなものだろう。

仮に喧嘩なら、着の身着のままの格好を見る限り、よほど酷い喧嘩をしたのだろう。

 

「進路希望調査にクラゲって書いた」

「クラゲ…」

 

独創的だなとマチュは思った。

 

「他にも何かやってみたいことはなかったの?」

「地球、行ってみたかったんだ」

 

あなたは地球に行ったことがある? と少女はマチュに聞いた。

 

「前に連れて行ってもらったことがあるけど、あんまり覚えてないかな」

 

一年戦争中のごく短い間の話だ。

海が見える場所に連れて行ってもらったことがあるのをマチュは覚えている。

もっとも、その場で自分が何を経験したかなんて覚えていない。

今のマチュはジョンのことで頭がいっぱいなので、どうでも良い話である。

 

「そういえばジョン、いつになったら出てこれるんだろう」

そもそもの話、カチコミしようにもジョンがいつになったら軍警から解放されるのかをマチュは知らない。

悪いことはしてないのだから早く出てきてほしいが、テロ関係になるといつになるのか分かったものではない。

 

ジョン、という名前に少女が反応した。

「彼氏?」

「私はそう思ってる」

「…片思いじゃないかな」

「今はそれでいいの、これからたっぷりジョンを変えていく」

 

マチュはスカートのポケットに入れていた端末を取り出して時間を見た。少女と語り始めてから大して経っていない。

 

「そのスマホ、私と同じだ。ニャアンとぶつかって割れちゃったけど」

 

どっかで聞いた名前だなとマチュは思ったが、口には出さなかった。

 

「ジョンは割れたスマホみたいなんだ」

 

少女もマチュと同じようにポケットから端末を取り出した。その言葉どおりマチュと同じ機種だが、画面が割れている。

 

「ジョンが彼氏になったら…そうだ、調教しようかな」

「調教!? 何言ってんの!?」

 

少女が見るからに困惑したようなリアクションを取ったことが、マチュには意外だった。

自分の発言を振り返ると、舌足らずだったことに気付いた。

 

「ジョンはほっといたら消えそうなの。死んだら何も残さず消えていきそう。だから私がジョンを調教して、現世に留めさせなきゃいけないかなって思ってるの」

 

その言葉を聞いて、少女は納得したように頷いた。

「なるほど…私もシュウジに逢えたら調教しようかな」

 

 

 

暴走ザクの2機が、スラム街となっている地区にも侵攻を始めた。

軍警も2機の動きについては把握していたが、どうしてもスラム街に割くためのMSの数が足りないため、MSを割けずにいた。

軍警と共に事態の対処に努めていたイズマ軍だったが、プチ・モビルスーツとMS登場以前の旧式兵器しか運用していないイズマ軍では避難民への対応で手一杯で、避難民も我先に避難するので暴走MSの足元ではカオスが広がっていた。

部分的な停電も発生し、スラム街になった地区は非常灯とコロニーのミラーから照らされる月光しか光源がない。

 

ニャアンもその一人だ。

視界が悪くて転倒する覚悟で自転車を飛ばして、少しでも近くのシェルターへ向かおうとするが、遠目で見える暴走MSは周囲にお構いなしにバーニアを噴射して飛んだ。

それを見たニャアンは自転車のブレーキを握った。

その場に急停車して自転車から投げ飛ばされたニャアンを、周囲の避難民は気にすることもなく逃げる。

だが、その避難民の近くに暴走MSが着地した。

先ほどニャアンが見た暴走MSだ。

暴走MSはモノアイで周囲を舐め回すように見下す。

 

その光景を、ニャアンは見たことがある。

一年戦争のアイランド・イフィッシュで毒ガスを使った0ザクも似たような挙動をしていた。

それを思い出すと、ニャアンは身体が動かなくなっていた。

あの時のことがニャアンにとってトラウマになっていた。

もう助からない、ニャアンがそう思った時だった。

 

暴走MSのモノアイから光がなくなった。

あれほどけたたましかった駆動音もしなくなり、暴走MSは動かなくなってしまった。

何が起こったのかニャアンには分からなかった。

動かなくなった暴走MSの後ろから白い腕が伸び、避難民がいない広場へ、暴走MSをゆっくりと仰向けに倒した。

その衝撃で砂煙が舞い上がった。

 

砂煙の中でニャアンは見た。

巨大な人型の影が、そこにいたのだ。

砂煙はすぐに収まった。

その場所には1機のMSが月光に照らされていた。

月光の光で見えたMSの顔に、ニャアンは心当たりがあった。

ジオン工科大学で改造され、そしてコロニー公社イズマ支部で運用されているMSが、ニャアンたちを心配そうに見つめていた。

 

「…ジャック?」

 

自分達を見下ろすガンダムの顔を見て、ニャアンは死んだ幼馴染のことを思い出す。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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