おっぱい大作戦   作:そらまめ

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イズマ・コロニーでの暴走MS事件の翌日、パルダ・コロニーの大統領官邸ゲート前にはマスメディアの集団が押し寄せていた。

アンノウン1の件からさほど時間が経たないうちに、次なるMS関連の事件が発生したのだ。

 

大統領ペルガミノの動向が注目される中、インターネット上でニュース配信を行うRCB名義のワンボックスカーの中に、三人の男女がいた。

運転席にはスーツ姿の優男。後部座席には、二十代ほどの男女がRCBのロゴ入りジャケットを羽織って座っている。

 

カーステレオは携帯情報端末と接続され、通話状態でスピーカーから相手の声が流れていた。

 

『鉄の棺が見つかった以上、ナガラが望むような平和裏な計画は難しくなってきたわ』

「初めから期待などしていない。棺の中の王子はどうしている?」

『今はまだ眠っている。ガンダムに乗っている王子が覚醒したら、棺の王子も』

「今回の作戦と、うまくバッティングしたな」

 

優男は溜息まじりに笑った。

 

「お前も大変だったな。別のアマテ・ユズリハがこっちに来るとは」

『良い子だったわよ。ちょっと変なことを仕込まれていたようだけど』

「何かあっても向こうのイトウ・シュウジが犠牲になるだけだ。向こうは向こう、こっちはこっちだ」

 

ふふ、と電話の向こうの虹色の水着の女性が笑った。

 

『でも、早めに魂を向こうに返せて良かった。危うくナガラに消されるところだったもの』

 

ナガラか、優男はぼやくように呟いた。

 

「そういえばアマテ・ユズリハとイトウ・シュウジは、会ってないんだろう? お前が言っていたニャアンとも面識がないそうじゃないか」

『あの日、ジロウ・ウエダが飛び降り自殺したせいで、二人が改札でぶつかる出来事自体がなくなってしまったの。私たちのせい……本当は彼女たちの恋愛模様を見たかったわ。…王子にはキラちゃんがいたけど、悲恋に終わっちゃったし』

 

電話越しでも分かるほど、虹色の水着の女性の声は落ち込んでいた。

 

「恋が始まる以前の問題だな。これこそ、いわゆる一つの恐怖の形ってやつだ」

「まあ、そんなのどうでもいいけどな」と優男は言った。

 

『R-DAT男とS-DAT女も車にいるでしょう。聞こえる?』

 

虹色の水着の女性の言葉に、後部座席の二人が反応した。

 

「聞こえます」

 

R-DAT男は元気な声で返事をした。

 

『今回の作戦、身体を失うわよ。本当にいいの? 今ならまだ変えられるわ』

「いいんです」

 

しっとりとした声で、S-DAT女はR-DAT男の手を握った。

 

「王子には早く身体を手に入れてほしいんです。そのためには、私たちが一番手っ取り早いでしょう」

『…ごめんなさい』

 

「いいんですよ」とR-DAT男は答えた。それに、と続ける。

 

「本当に謝らなきゃいけないのは、さっき話に出たアマテとシュウジ、そしてニャアンの三人に対してです」

「この三人は本当は恋に落ちるはずだったんです。そのデスティニーを滅茶苦茶にしたのは、僕たちなんです」

「その罪の報いが王子に討たれることなら、安すぎるんです」

 

R-DAT男はS-DAT女の手を握り返した。

 

 

 

事務所内では、ボカタと後輩がひたすらジョンの端末に電話とメッセージを送り続けていた。

だがジョンからは返事も既読も付かない。

 

実のところ、この日ジョンが外出すること自体に問題はなかった。

必要書類はボカタが処理済みで、ガンダムの整備もほぼ完了。

暴走MSの件のその後の処理は軍警の担当だ。

 

ジョンとガンダムは軍警の要請で暴走MSを倒しただけ。

ただ、この件で最も直接的に暴走MSに接触したのはジョンだった。

急遽呼び出されるかもしれないから、寮で待機しておくように、そういう話で進めていたのだ。

 

ガンダムから降りたジョンが震えていたのは見たが、単に緊張しているだけだろうと周囲は思っていた。

まさか突然、寮から姿を消すとは誰も想像していなかった。

 

ボカタたちが頭を抱えている横で、ハロは事務所を跳ねながら退出していった。

その挙動を気にする者は誰もいない。

 

『現在、スラム地域周辺ヲ移動中』

 

外の自転車置き場に停められたジョンのバイクの台座に飛び乗ると、ハロはバイクを起動させた。

マウントラッチに括りつけられたジョンのヘルメットを揺らしながら、バイクは自転車置き場を静かに離れていった。

 

 

 

昨日の事件を受け、ハイバリーハウス学園は臨時休校となった。

地下鉄は運休、代替バスもあるが、道路の破壊が激しく、相当迂回しなければならない。

休校自体は、マチュにとってはありがたかった。

 

だが、気がかりなことがあった。

明晰夢を見なかったのだ。

 

明晰夢は、ジョンとマチュが同じ時間帯に眠らなければ発生しない。

そのためジョンが夜勤だったり、マチュが夜更かしをすれば夢は見られない。

 

もっとも、睡眠時間をずらしてまで明晰夢を見ないようにするのは非現実的だ。

口には出さないが、マチュにとって明晰夢を見られないのは嫌だった。

 

「次に夢を見たら、ジョンを存分に触ってやろう」

マチュはそう決めていた。

 

イズマ支部は昨日の暴走MS対応でガンダムを投入していたという。

ジョンも軍警の保護のもと、ガンダム支援のために徹夜していたのだろうとマチュは考えた。

 

暴走MSのせいで相当数の死傷者が出たのも事実だ。

その統計の中にジョンが含まれているかもしれない。

 

ベッドの上で逆立ちしながら、マチュは考えた。

「ジョン、大丈夫かな」

 

明晰夢が見られるなら、いくらでも眠れるマチュだが、このときばかりは心配が勝ち、眠れなかった。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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