おっぱい大作戦   作:そらまめ

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イズマ:スラム街

 

グリニッジ標準時で午前10時を過ぎた頃、ジョンは未だニャアンの自宅に滞在していた。

昨日の件から殆ど寝ていないこともあり、ニャアンと話が盛り上がってきた時には眠たくて仕方がなかった。

見かねたニャアンから

「少し寝たほうがいいよ」

という言葉に逆らえないままそのままニャアンのベッドに横になることになった。

(普通じゃありえないな)

いくら幼馴染とはいえ、異性の家に上がってそのベッドで仮眠を取らせてもらうとは距離感としてはどうなのかとジョンは思ったが、理性より疲労感の方が勝ってしまいそのまま眠ってしまった。

(マチュに悪い…)

眠りに落ちる前の頭の中でジョンは考える。

久々に会ったニャアンは裏社会で使い潰されるような立場で生きている。

会話の中では一切闇の話はしなかったが、相当に苦労したことは察するに余りある。

それでもニャアンは純真さを保っていた。

擦り切れた心を治せず、ここまで来た自身と対照的にニャアンからはみずみずしさを感じた。

自分を家に入れてくれたのは昔からの優しさが失われていないからだ。

ただ、それと両立するようにニャアンからは薄暗くて粘着質な意思を感じたのは事実だ。

その感情の正体を考える前にジョンは完全に眠ってしまった。

 

『今日の仕事は無しだ。昨日の騒動で警戒が厳しい。お前は目立ちすぎるから猶更だ』

「…分かった」

運び屋の元締めを務めるマーコ・ナガワラはニャアンに電話で端的に話すとそのまま通話を切ってしまった。

無理もない。昨日の今日だ。

市内は比較的緩くなったにしても警戒態勢は続いており、こんな状況で運び屋なんかやったら速攻でお縄だろう。

むしろこんな状況の中でふらふらのままスラムに現れたジョンの方がおかしいのだ。

(でも良かった。ジャックと一緒)

今日の仕事は無くなってしまったが、ジョンと一緒の時間も増えるということだ。

ジョンに自分のベッドを貸すことに抵抗は全くない。

むしろ寝てくださいとニャアンは言いたくなった。

学生服から私服に着替えてニャアンは眠るジョンの隣に寝転んだ。

本当に疲れ切っているようで一切起きない。

戦士のような顔つきから可愛らしい寝顔でニャアンは思わずクスリと笑った。

「フフフ…」

セックス。

ジョンが眠くなり始めた時からニャアンはそのことで打算を組んでいた。

再会から数時間でその思考にたどり着くのは人としてどうかとニャアンは思った。

しかし、ニャアンはもうジョンを失いたくなかった。

ジョンとは連絡先を交換したが、ジョンが自分から離れたら死んでしまう錯覚がニャアンにはあった。

自分の体はもうグチャグチャだ。

こんな体でもジョンに差し出しても良いくらいの覚悟を短時間でニャアンは決めていた。

 

だが、ジョンの立場になってみればどうか。

再会した幼馴染にいきなりセックスを求められるのだ。

自分がその立場なら即絶交するだろう。

その恐怖がニャアンを正常な思考に戻した。

 

『ここ2年は寝ることが楽しみだけど、昨日みたいな日は寝るのが怖いんだ』

寝る前、上着のM-65ジャケットを脱いでジョンは俯いていた。

ニャアンは聞くのが怖かった質問をジョンに投げかけた。

『あの…ジャックに彼女は?』

『いる』

即答された。

その答えにニャアンの思考がフリーズした。

『左手しか見たことがないが、僕は彼女が好きだ』

『…そうなんだ』

『ちゃんと告白はしていない。でも2年間僕が生きてこれたのは彼女のおかげだ』

『…ふーん』

『今度、ちゃんと会って告白をする。どんな結果になろうと逃げない』

 

ジョンがよく分からない発言を節々で言っていたが、そんなことはニャアンにはどうでも良かった。

重要なのはジョンにはもう心に決めている人がいるということだ。

 

「クソが…」

ニャアンはめちゃくちゃに暴れまわりたかった。

なんで髪型をポニーテールにしたかといえば、ジョンが昔からポニーテールの自分を卑猥な目で見ていたことを知っていたからだ。

もっと自分を見てほしかった。

 

ジョンの心のなかにいる女を恨みながらも同時に彼の心の支えになっているということにニャアンの荒れ狂う心はどことなく察していた。

誰も悪くないのだ。ジョンもその女も悪くないのだ。ただ、ジョンと再会するのが遅すぎただけなのだ。

自分の感情だけでジョンを困らせたくはなかった。

ニャアンは自分の想いを必死に抑え込んだ。自分の想いを発露したらもう2度と幼馴染の関係には戻れないとニャアンは思った。

 

それでもやり場のない怒りがニャアンに溜め込まれていった。

怒りを抑えつけながらもニャアンはベッドで眠るジョンの寝顔をじっと見つめていた。

この寝顔を独占できる女がニャアンには羨ましくて仕方がなかった。

「…ラ、この…バカヤロウ…ジェネシス内部で…フリーダムストライカーを…核…爆…発させる…」

「ふふ、また変なこと言ってる」

せめて今だけはジョンを自分だけの物にしたかった。

 

 

イズマ支部:MS運用部応接室

 

「ジョンはどこですか?」

開口一番、アマテ・ユズリハは部長相手に率直に言った。

彼女らの目的はやはりジョンだった。

「うちの娘がジョン君のお世話になっているみたいなのでぜひお会いしたくて」

タマキがそんなことを言っていたが、明らかに嘘が混じっているのが部長からでも分かった。

(なんで職場にわざわざ来るんだ。ジョン、お前一体何をしたんだ?)

事情は後に聞くにしても部長はこの2人から恐怖を感じていた。

タマキは殺気を隠そうとしないし、アマテは恋する乙女だ。

よく分からないが、ジョンがユズリハ家に家庭内トラブルを持ち込んだことは明らかだ。

「彼は現在外出中です。夕方には戻りますが」

「今すぐ連れ戻してください」

どっから話を組み立てればいいんだと部長は思った。

「失礼ですが一体何が…」

「何がって、あなたの部下が娘を誑かしたんですよ!!」

会計監査局外交3部の部長という肩書はどこに行ったのかタマキは部長相手に怒鳴った。

「た、誑かした?」

完全に初耳な話で部長は戸惑った。

「違うよ、お母さん!!エッチなことはしてないよ!!したいよ!!」

誰も主語を話さないし、感情任せで喋っているので収拾がつかない。

困った部長だが、意外な所から救いの手が差し伸べられた。

 

「やはりそういうことか」

 

突如部屋に見知らぬ男の声が響いた。

応接室のドアを開けながらスーツ姿のジオンの軍人が入ってきたのだ。

「シャリア中佐…」

その軍人は木星帰りの男、シャリア・ブル中佐だった。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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