ガンダムの背面にあるコンテナ・ラックに装着したラウンドムーバーは軽快に動作していた。
元々地球の陸戦を想定していた原型機を宇宙で使うとなると問題が山積みだ。
このガンダムは原型機を手直しして陸上、宇宙、コロニーのどこでも使えるように作り直している。
もっとも、MSを運用する都合上、法律はきちんと守らなければならない。
ガンダムが宇宙で移動するためのスラスターをコロニーの中で使ったら大変なことになる。
そのためか法規制の都合でガンダム本体のスラスター関係のパーツは今追加するための拡張の余地は残しているといえどMS-06より少ない。
それを補うためにガンダムの背面にあるコンテナ・ラック…
フォークリフトと登山で使う背負いカゴを合体させたような代物にラウンドムーバーを取り付けて宇宙での機動を補っているのだ。
「あれか」
ガンダムのセンサーが示した場所には赤いMSはいなかった。
発見からそんなに時間が経っていないが、どこにもいない。
ラウンドムーバーのスラスターを使い静止状態に移行するとガンダムはゆっくりと宙に止まった。
ガンダムの光学レンズは先ほどまで赤いMSがいた外壁の光景をノーマルスーツのHMDに映し出した。
外壁にはサイケデリックな色彩で「A」の字が大量に描かれていた。
銀、金、緑、青、赤、ピンク、白…それらが重なり、上下左右に「A」がびっしりだ。
「すごいなこりゃ、綺麗だ」
ガンダムのセンサーが警告を発した。
ジョンが気がつくとガンダムの後ろにいつの間にか赤いMSが浮いていた。
ガンダムはラウンドムーバーを反転して赤いMSと向き合う。
赤いMSからガンダムに対しての敵意を感じない。
僅かな時間だが、敵意よりもむしろ穏やかな雰囲気が2機の間に流れていた。
少しの間を開けてガンダムは通信用のワイヤーを赤いMSに射出した。
ワイヤーが赤いMSに付着し、互いの声が通じ合う。
『嬉しいな、そう思ってもらえるなんて』
声が少し幼い。まだ少年のような声だ。
「上から目線で恐縮だが、良いセンスだ」
ガンダムはポリポリと頭を掻いた。
パイロットに痛覚があってもMSに痛覚はないので意味がない。
『キラキラ』
赤いMSの少年は一言そういった。
「作品名か」
『キラキラを描いたんだ』
「よく分からんが、キラキラにはAがいっぱいあるんだな」
ガンダムが右手の人差し指でAの字を書いた。
『君、名前は?』
ガンダムは少しの間の後に名乗った。
「ジョン・マフティー・マティックスだ」
『ジョン、強そうな名前だね』
「ありがとう」
「僕はシュウジ、シュウジって言うんだ」
「シュウジか、良い名前だ」
2人は話を続けようとした。だが、突然周囲から銃撃が始まった。
違うコロニーの外壁から4機の軍警察のザクがやってきたのだ。
「なっ、なんだ!?」
ジョンは焦った。撃たれてる事実と現実問題、ガンダムには最低限の装甲しかない。強い攻撃を受けたらすぐに死んでしまう。
『…来たんだ。ありがとうジョン、また会える気がする』
赤いMSは通信用のワイヤーを外してガンダムが元々作業していた方向へと飛んでいった。
「おいおい…ちょっと早いなあれ。でも機体のメンテが足りてないぞあの動きは」
ジョンはポカーンとしながら赤いMSを見送った。
2機のザクが赤いMSを追いかけていき、残った2機がガンダムの周囲を囲んだ。
『君!大丈夫だったかい!?』
通信用のワイヤーをガンダムに飛ばした軍警察のザクが心配そうな声で話しかけてきた。
「えぇ、何とか」
向こうからすれば襲われているように見えたのだろう。先ほどの話を語っても混迷するのでジョンは話を合わせることにした。
『怖かったろう、赤いガンダムに出くわすんだから』
「ガンダム、あれが…」
『赤いガンダム、ジオンのシャアが乗っていた機体らしいけど現存してたんだな』
『とにかく、他の人も連れてコロニーに帰ろう』
軍警察のザクに連れ添われながらガンダムは待っていた作業員達と合流した。
その間、ジョンはショウジが描いていたサイケデリックアートを頭に思い浮かべていた。
何かモヤモヤするのだ。昔どこかで見たような気がする。
大して出来の良くない脳髄を掘り下げようと努力するが一向に頭のモヤは晴れない。
『お前、あれがガンダムだって気付かなかったのか。相変わらず呑気だな』
そんなジョンをみながら赤いガンダムの話を聞きながらチーフは笑っていた。
ジョンもとりあえず笑いを作った。
宇宙への扉が閉まるのをガンダムの後部カメラが捉える。
ジョンはシュウジの言葉を思い出す。
『ジョン、強そうな名前だね』
「僕は逃げてばかりさ」
名前を褒めてくれたシュウジの前では言えなかった。名前は好きだが、それに見合った生き方をしている自信がジョンにはなかった。
宇宙への扉はゆっくりと閉まった。
全員がコロニーの中に入った時刻は5時12分
夜が明けるまではもう少し…
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ