おっぱい大作戦   作:そらまめ

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スラム:アパート(ニャアン宅)

 

夢から覚めたジョンの目の前にはニャアンの寝顔があった。

驚いてジョンの後頭部が壁に軽くぶつかった。

ニャアンの寝顔を改めて見る。

いるべきところにいる安心感、人間はこうあるべきだという確信に満ちた安らぎをジョンはニャアンから感じた。

同時にニャアンに対して僅かでも下心を抱いたというのも事実だ。

ニャアンから漂う安い化粧品の匂いがそれを増幅させようとしていた。

だが、ニャアンのポニーテールに抱いたような下衆さのようにすぐに消えていった。

「ニャアン」

眠っているニャアンにジョンは語る。

「戦争がなくてあのままアイランドイフィッシュで暮らせてたら今頃どうしてたんだろうね」

少なくともニャアンは難民になることはなかった。闇バイトで生計を立てるような状況にまで陥らなかっただろう。

(ずっと言えなかったけどさ、昔の僕はニャアンの事が好きだったんだぜ)

それは真心だ。

友人としても異性としてもだ。

ニャアンを逃してナダと共にイシュタムとの戦いへ赴いたあの時。

それがジョンの初恋の終わりだ。

「もし、戦争がなかったら僕達はどうなってたんだろうね」

5年前のニャアンが自分に対して満更でもない感情を抱いていたことを当時のジョンもうっすらと察していた。初恋も成就する打算もあった。

恋人になっていたか、お互い違う人を好きになっていたか、疎遠になっていたか、変化なしか…

それでも今よりはずっと良いだろう。

今のジョンはマチュと向き合わなければならない。

「僕はマチュのことが好きだ」

昔、誰かに言われた。

『ひどいよっ、卑怯で臆病でずるくて弱虫な癖に…どっかいっちゃえ!!』

誰に言われたのかも忘れたが、その頃から自分は大して変わっていないだろうという悪い自信がジョンにはあった。

「僕は馬鹿だ」

ジョンはニャアンを起こさないようにベッドから起き上がった。

ニャアンが自分に掛けてくれたブランケットを今度はニャアンへと掛けなおす。

床に置いていたドラムバッグを手に取るとジョンは玄関へと向かう。

スリッパから外靴へ履き替えて再びジョンはニャアンの方へと振り返った。

何も言わずジョンはニャアンの家の扉を開けて外へと去っていった。

扉がオートロック機能でロックされた。

その音が部屋中に響いた。

いつの頃からか起きていたニャアンはジョンが眠っていた場所を凝視していた。

涙腺から涙が零れる。

そのことにニャアンは気づかない。

その涙がニャアンの目に宿った情念を洗い流すことはなかった。

 

『待チクタビレタゾ、ジョン』

スラムのエリアを出て歩き始めたジョンの目の前にバイクに乗ったハロが現れた。

「待ち伏せしてたのか」

道路脇に停まっていたハロは退屈そうに台座の上を転がっていた。

『ソノ顔ヲ見ルニ、女ヲ泣カセタナ』

自分でも憂鬱な顔をしている自覚があるのでこの妙なハロにはお見通しなのだろう。

「ある意味そうかもしれないな」

ため息をつきながらジョンは言った。

『生キテイレバ、ドウシテモ誰カヲ泣カセル決断ヲ下サナケレバナラナイ時ガアル…』

『他人ノ命ヲ背負イ、未来ガ何モ分カラナイ中、少シデモ良イ未来ノタメニ決断ヲ下ス。コノ恐怖ガ分カラナイ愚カナ者ハ一定数イル。ジョン、オ前ハソウイウ人間ニハナルナヨ…』

「…分かっているさ」

今のニャアンも自分に対してある程度好意を抱いていたのをジョンは察していた。

彼女の優しさもあるだろうが、そうでなければ幼馴染とはいえ異性を家には上がらせないだろう。その気持ちを蔑ろにしてしまったとジョンは思った。

「ニャアン、ごめんな…」

ハロが持ってきたバイクに跨り、取り付けていたヘルメットを被ったジョンは操縦をマニュアルモードに切り替えた。

車が通行していないタイミングを見てジョンはバイクを発進させた。

バイクを走らせているとジョンは疑問に思っていたことを口に出した。

「そういえば、元々のバイクのカギはどうした?部屋にも事務室からもなくなってたぞ」

その問いにハロは答えた。

『ソノバイクノキーハ…ハロガ飲ミ込ンダ』

 

 

CL環状6号線:地下鉄車内

 

「キケロガの投入が決まったそうだ」

アセットの老人から言われたことにエグザべは軽くショックを受けた。

ギレンとキシリアを中心にして渦巻くジオンの勢力争いにフラナガンスクール主席でガンダムクアックスのパイロットを務めるエグザベ・オリベもある意味必然のように巻き込まれる立場にある。

そもそもガンダムクアックスのパイロットである彼がなぜガンダムから離れシャリアと共にコロニーで活動しているのか?

政治的にエグザべはキシリア派に所属している。

一方でエグザベと行動を共にするシャリア・ブルはキシリアからギレンのスパイであるという疑いがかけられていた。

アンノウン1の件の仕事もあるが、それと共にエグザベはシャリアの動向を監視する立場にある。

今回シャリアがコロニーの大地に降りたのはコロニー公社の支部に用事があるからであったが、これ幸いとエグザベも同行した。

隣にいるアセットの老人と情報交換のためにもっともらしい理由をつけてエグザベはシャリアと別行動を取っている。

その中で禁止兵器に指定されたキケロガをイズマ・コロニーに持ってくるという話が出たのだ。

「3週間後、ここで非公式の会談が行わるのはお前も知っているだろう」

「イオマグヌッソの件でキシリア様がいらっしゃるという」

「そうだ。その護衛のためだ。お前のガンダムと予備のギャンだけでは力不足とみたのだろう」

それでも禁止兵器を持ち込むのはさすがに過剰すぎないかとエグザベは思ったが、老人にはその心中を見透かされていた。

「ナガラ衆の登場と自分の尻すら拭けず、戦時条約を盾にコロニー公社に助け舟を求める軍警ともなれば、特例としてすんなり通ったよ」

 

 

イズマ支部:MS運用部応接室

 

「一年戦争、第二次ソロモン会戦の時のことです」

シャリアは3人の顔を見ながら言った。

「連邦軍がグラナダにソロモンを墜落させる作戦を阻止するため、4隻の艦隊でソロモンに突入しようとしました」

その話はマチュも知っている。わずか4隻のなぐりこみ艦隊とゼクノヴァの奇跡、デイヴィッドの授業でも取り上げられていた。

「しかし、そこで私達は謎のMSに襲撃を受け、甚大な被害を受けました」

マチュはえ?と思わず口に出した。授業では確かになぐりこみ艦隊は甚大な被害と引き換えに作戦を成功させたと授業では語られていた。

「艦隊はソドン以外は轟沈、ソドンも撃沈寸前、私の乗るキケロガは完全に破壊され、シャア大佐のガンダムは半壊するほど損傷し、もはや作戦どころではありませんでした」

マチュの目の前にいるのは灰色の幽霊の異名を持つパイロットだ。

シャリアが嘘をつく理由はないが、歴史の授業とは話が違いすぎる。

「そんな時、シャア大佐のガンダムとは違う赤いガンダムが突然現れて謎のMSと交戦、結果として我々は救われました」

そういえば、とシャリアは言った。

「そろそろ休憩しませんか。この話は長くなるので…それと」

シャリアは部長を見て受話器のジェスチャーを取った。

「そろそろジョン君を呼び出しましょう。良いですよね2人とも」

いつの間にか場を仕切るようになったシャリアだが、話が落ち着くならまあいいかとタマキは思った。

マチュはゆっくりと頷いた。

(やっと会える)

そんなマチュの思考を読んでシャリアは思った。

(センチメンタルですね)

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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