誤 ドズル
正 ドレン
コロニー公社イズマ支部:庁舎前
「ウェッ!」
少女の飛び降りをまともに喰らったジョンは少女を受け止め抱いたままゴロゴロと芝生の上を回った。
転がり続けて少女を衝撃から守るため少女が上、ジョンが下の姿勢でようやく2人は止まった。
「はぁはぁはぁ」
少女が息を切らしながらジョンを見た。
(やっぱりカッコいい)
「そうだ、この匂いだ」
自分の首元に顔を埋める少女を見てジョンは困惑した。
今日だけでニャアンと全裸少年に遭遇したが、これは予想外だ。
少女の両手でガッツリと頭部をホールドされたジョンは
(誰なんだアンタ一体…!?)
そう問いかけようとした口は少女の口で塞がられた。
何の躊躇もなく少女はジョンの方に舌を入れようとした。
少女の舌から逃れようとするジョンの舌を少女の舌が絡みつけてくる。
思わず止めようとしたジョンだったが、少女の左手が自身の頬に触れた感触で力が緩みそのまま少女の舌がジョンの口内へと乱暴に侵入した。
少女の左手の感触は明晰夢の中で何度も味わった物だ。
あの左手の持ち主は1人しかいない。
(この子は…マチュなのか)
そう思うと抵抗していた身体の力がスッと抜けていく。
少女は貪るような接吻を続ける。
少女の思念のような物がジョンの直感として伝わってくる。
(ずっとずっとずっとやりたかった)
(誰にも誰にも渡さない)
(別の世界の私にも渡すもんか)
(もう左手だけじゃないんだ。全身で味わいたい)
まとまりのない思念が接吻と同じくらいジョンをかき乱す。
心身共にジョンは少女にグチャグチャにされていく。
建物の影から飛び出した2人を太陽の光が照らしていた。
(センチメンタルだな)
2人の思念を読みながらシャリアは苦笑いを浮かべた。
3階から飛び降りたマチュを追って応接室にいたシャリア、タマキ、部長も庁舎前まで走ってきたが、目の前には凄まじい光景が広がっていた。
ジョンとマチュが芝生の上をゴロゴロ転がりながら獣のようなディープキスをしている。
馬乗りなったマチュは呼吸するために口を離して息を整える。
下になったジョンも口が解放されて空気を求めた。
「君はマチュなのか?…うぉ」
息を整えながらジョンがマチュに問いかけるが、その返答は2回目のディープキスだった。
(アマテさんの言うジョンが、あのジョン君であることは間違いありません。
夢ならともかく現実では初対面なのにあんなチューをするとは2年間の交流の賜物でしょうか…)
シャリアは2人の思念を読みながら隣で今すぐ2人に突っ込んで行きそうな
タマキを必死に抑えていた。
「アマテ…!」
母親からすれば娘がいきなり飛び降りて謎の少年とディープキスを始める異常な光景だ。
訳ありであったとしても異議申し立てをしたくなる気持ちはシャリアにも痛いほど分かる。
だが曲がりなりにも愛し合う2人を邪魔したくないのもシャリアであった。
それがニュータイプのカップルになるかもしれない2人だと思うと尚更だ。
「あの2人に話を聞くのは後にして今は見守りましょう」
「何を!?」
タマキの怒りはシャリアへ向かった。
シャリアの服を掴むとタマキはシャリアを相手に芝生の上で巴投げを決めた。
(全く母娘揃って…)
なおのことシャリアは笑うしかなかった。
「嘘だ...嘘だそんなこTO!」
その光景を見て部長は芝生の上で土下座のような姿勢を取るくらい頭を抱え始めた。
月面都市グラナダ:某パブ
今日は珍しくドレンは昼から1人で酒を飲んでいた。
年休消化で暇になった1日を酒に費やすとはなぁとドレンは酒の酔いに任せて昔のことを思い出していた。
「あの悪魔のせいでみんな」
酒で酔うと思い出すのはあの戦いだ。
シャアがゼクノヴァで消えたあの戦い、歴史は為政者に都合よく改竄されたが、ドレンは忘れない。
「ソロモンにガンダムがいたんだ」
第二次ソロモン会戦の裏話を少し知っている者は宇宙海賊か連邦の特殊部隊の襲撃を受けたのだろうと同情的にドレンに接する。
だが、彼らは何も知らない。
自分達はたった1機のMSによって壊滅させられた。
シャアの起こしたとされるゼクノヴァだってあのMSが引き起こしたのかもしれないのだ。
そのMSについて覚えているのは非常に大型のバックパックを背負っていたこと、そして
「ガンダムだ」
シャアの赤いガンダムとは異なる面構えだったが、あれも間違いなくガンダムだ。
ドレンは神学の知識はない。
だが、あのガンダムの背負いものが神話の世界からやってきたような物だったとはっきり覚えている。
そして、その神の化身のガンダムから自分達を救ったのもまたガンダムだった。
シャア大佐とは異なる赤いガンダムがソドンのブリッジに直撃するはずだったビームから自分達を救ってくれた。
赤いガンダムは接触回線で可能なら任務を続行するように伝え神の化身のガンダムへと戦いに行った。
あの場でドレンはシャア大佐ではない赤いガンダムに問うた。
「お前の名は何か?」
赤いガンダムは答えた。
『オルフェ・ラム・タオ…古い名前だが、他に名乗れる名もない』
その声は幼い子供の声だった。
オルフェと名乗るパイロットが駆る赤いガンダムはソドンから飛び立って行った。
赤いガンダムもまた不思議なMSだった。
背中のバックパックに該当する部分に羽根のような装備が備え付けられていた。
神の化身と羽を持った2機のガンダムが何物だったのかはドレンは分からない。
ただ、ドレンは思うのだ。
一年戦争のような国家総力戦の成れの果てのような戦争でも両国に美学や美徳というのはあった。
だからこそ戦後でもお互いリスペクトし合える話は多い。
だが、あの2機のガンダムは地球連邦軍でもジオン軍の所属でもない。
戦後の調査で地球連邦軍にあのようなガンダムはいなかった。
そもそもまともに使えるガンダムなど殆ど残ってなかったし、あったとしてもルナツー戦の方に回しているだろう。
「お前は何者だったんだ、オルフェ・ラム・タオ」
あのガンダム達は連邦かジオンの掲げる正義、美徳がまるで通用しない。
そんな冷酷な世界からやってきたのではとドレンは酒を飲むたびに思うのだ。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ