イズマ支部:MS運用部応接室
((もうどうなってもいいや))
ユズリハ母娘はヤケクソの境地に立たされていた。
いくらマチュが明晰夢でジョンに会ったと主張しても、客観的には初対面の少年に一方的にディープキスを3回かまして逆レイプ直前まで及んだ。
タマキに関しては外交3部の立場を利用してコロニー公社に乗り込み、私情を優先してMS運用部の部長とジオンの佐官クラスの軍人に暴言を吐いて、あまつさえ殴り合いに至ってしまった。
あの時は両者共に感情のままに動いた行動だが、頭を冷やしてみると顔が青ざめるを通り越して諦めの境地だ。
(母娘揃って似てますよねジョン君)
(まさかあの時の付き添いの人がタマキさんだったとは…)
シャリアとジョンは思考を通して話している。
何故か出来てしまったので喋らずとも2人は意思疎通が出来ていた
(人間頑張ればテレパシーが使えるもんだな)
(こうやってる時点で普通の人じゃありません)
自暴自棄なユズリハ母娘と違ってジョンとシャリアは比較的のんびりと話していた。
とは言ってもジョンも
(もうどうなってもいいや)
の境地に立ち、彼の上司である部長も
(もうどうなってもいいや)
の境地に立っていた。
シャリア・ブル以外全員
「もうどうなってもいいや」となっていた。
「熱烈な出会いだったとは思いますが、頭が冷えましたかアマテさん」
誰もその場を仕切らないのでやむを得ずシャリアが仕切ることにした。
「はい…」
テーブルを挟んでジョンとマチュは3mくらい離れているが、先程の件が無ければ3㎝くらいの距離だっただろうとジョンは確信していた。
(3cmじゃなくて3mmでしょう。ちなみにコンドームの厚さは0.01mmから0.1mm以上までありますよ)
(中佐、今回の件大事にする気か?そもそもの原因は僕にある)
ジョンとシャリアは意思疎通をしあっている間は応接室は沈黙に包まれている。
この会話以前にマチュとタマキの謝罪があったが、それ以降あまり会話が続いていない。
(しませんよ。それよりもあなたにお願いしたいことがあります)
(なんだ?)
(私達と一緒に来てくれませんか)
ジョンの隣に座るシャリアは自身の端末に映る写真を見せた。
(あなたが動かしているガンダム G3は今度ジオン工科大学で改修の予定がありましたね?)
ジョンの脳髄がフル回転で記憶を掘り起こしていく。
確かにこっちの方で新装備のいくつかを作業に使用した後、機体をサイド3を持っていくという話があった。
サイド3へガンダムを持っていく手筈を整えるのに部長が関係各所に連絡して回っていたのをジョンは見ている。
(それをソドンがやることになりました。あなたにはガンダムのパイロットとしてソドンに乗ってもらいたい)
(いいのか?)
ジオン軍がいくら一流大学が所有するMSといえどわざわざ持っていくのか?
そもそも大学側の用事はガンダムであって自分ではないだろう。
第一、シャリア・ブルが中佐といえどそのようなことを軽率にいえる立場の人間なのか?
あらゆる疑問がジョンの脳内に湧いてくる。
(私があなたに用事があるのも理由ですが、まぁ詳しくは後で話しましょう)
「ユズリハ部長、さっきの件はもう水に流しましょう。いいですねジョン君。運用部長?」
「「はい…」」
ジョンは「YES」以外の選択肢がない。
完全に蚊帳の外になっていた部長もついて来れなくなって「はい」としか言えない。
「ただ、運用部長。ガンダムを持っていく件ですが、ジョン君もセットでいいですね?」
「ジ工大に改修で持っていくやつですよね…えっジョン?」
部長は不意を突かれた。ガンダムだけで良いと思ったらジョンも連れていくというのだ。
「これでさっきのトラブルはチャラにしましょう」
(まるで人身御供だな…)
要はユズリハ母娘のトラブルをチャラにする代わりにジョンをジオンに出張させろという話だ。
イズマ・コロニーに帰ってくるのはいつになるか。結構な冒険になるぞとジョンは悟った。
「えっ、あのそれって…」
マチュが口を挟んだ。何の話かはよく分からないが、なんとなくマチュは察していた。
ジョンが自分から離れてしまうと。
「ジョン君にはジオンまで出張して貰います。アマテさんとはしばらく会えなくなりますよ」
マチュの動作がフリーズした。
何を言っているのか理解したくないような目でマチュはジョンを見た後、フリーズした。
「これでいいですねユズリハ部長、ジョン君がいない間2人で話し合ってください」
「…はい」
タマキはここにいる全員に向かって言いたいことは山ほどあった。
だが、自分の首が飛ぶようなことをチャラにしてくれたし、ジョンと娘を物理的に離してくれる期間を用意したシャリアの言うことに対して「No」という返事を言う立場には無かった。
地球:日本某所 アマラカマラ商会
「我々は運に恵まれている」
「約3週間後、キシリアが5年ぶりに月を離れる…」
「シャリア・ブルの特殊部隊はテロリストに襲われて艦は機能不全、軍警はまともに使えるザクは多くない。チャンスは今しかない」
廃墟のビルの一室で2人の男が立っていた。
1人はバスク・オム、もう1人はゲーツ・キャバ、彼らは地球連邦軍の人間ではあったが、あまり大きな声で動ける立場でもないし、これからやろうとしていることも決して誇れる話でもなかった。
3週間後、イズマ・コロニーへ非公式に訪れるジオン公国の2大トップであるキシリア・ザビの首を討ちとろうとテロを画策していた。
とはいってもここまで来るのは非常に苦難の道のりだった。
テロを起こすためのMSと人員を地球連邦軍のニュータイプ研究機関のムラサメ研究所から借用し、そしてどうやって首を討ち取るか?
それを現実の物とするために彼らと彼らに協力するジオンの内通者の苦労はあまりにも多い。
テロリストのプロジェクトXと呼ぶべき戦いがキシリア暗殺計画なのだ。
「歴史に名を刻めよ、ゲーツ・キャバ中尉」
バスクのその言葉をゲーツは綺麗な敬礼で返した。
彼らは何も知らなかった。
そして今回の計画の柱となるMSのパイロットを務めるドゥー・ムラサメも
「ナガラ」について何も知らない。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ