おっぱい大作戦   作:そらまめ

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早朝の公園、ジョガーも犬の散歩をする人もまだ来ないその時間帯の噴水広場に二人の人影があった。

 

「あと2週間だね」

 

穏やかな表情をした紳士然とした老人が、ベンチに座りながら鳩に餌やりをしている。

 

「バスク・オムの一派もサイコガンダムとハンブラビの輸送を始めています。パイロットのドゥー・ムラサメ、ゲーツ・キャバも一緒です」

 

その隣に、虹色の水着の女性が真面目な顔で答える。

 

「彼らの作戦は単純だ。サイコガンダムとハンブラビで陽動を仕掛ける。その間にエコーズをホテルに送り込んでキシリアを暗殺する」

 

老人は指鉄砲を地面に撃った。

 

「ここではクランバトルがスポーツ化したため、本線のような赤いガンダムとジークアクスとの戦闘は考慮されていません。しかし、陽動目的ならあんなサイコガンダムでも役に立ちます」

「キシリア暗殺計画は妙なところで本線をなぞったみたいだ」

「ところで」

 

と老人は言った。

 

「あの子、起きたらしいじゃないか」

「数日前、棺から精神だけが抜けて王子に会いに行ったようです」

「そのせいで空調機が壊れちゃった。まぁいいか、バスクくんをアシストしよう」

「今は再び眠っています。…昨日、王子の居場所を特定しました」

 

虹の水着の女性は持っていたタブレットを老人に渡した。

タブレットにはジョンの個人情報が表示されている。

現住所のイズマ支部社員寮の枠を見て、老人は笑った。

 

「じゃあ、予定通りだ。キシリア暗殺計画当日にジョン君を誘拐しようね」

「キシリアについてはどうしますか?」

「Hi-MD男とデジタルマイクロカセット男に彼女の護衛は頑張ってもらおう。『クライアントのキシリア様』には時が来るまで生きてもらわねばならない」

 

噴水は噴き上がることなく、静かに水面を作っている。

 

「アマテ・ユズリハ、ニャアン、シュウジ・イトウの動向は?」

「アマテは本線のアマテと交わりそうになりましたが、何とか追い返しました。

ニャアンは運び屋、ただし違法インストーラーデバイスの需要が大幅に減ったので別の違法品の運び屋をしています。シュウジはサンライズ・カネバンの社長のところで居候をしています」

 

少しの間を置いて、老人は言った。

 

「本当にあの3人組はお互いに全く面識がないんだね」

 

その言葉に虹色の水着の女性は、悔しそうに答えた。

 

「3人組はお互い交わることのない青春を過ごしています」

 

それを聞いて、老人は静かに首を横に振った。

そんな老人に気づかれないように、虹色の水着の女性の口元が歪んだ。

 

あるジョガーが公園に一番乗りで噴水広場までやってきた。

人の気配がする方向を見たが、そこには誰も座っていないベンチしかなかった。

 

 

 

5人のハイバリーハウス学園の生徒を乗せたタクシーは、ショッピングモールに向けて走っている。

前世紀にはあれだけ困難だと言われた自動運転のタクシーも、ハロの運転するバイクと同じくらいここでは当たり前の光景だ。

 

「アマテ、ちゃんと歌ってね。この間42点だったでしょ」

「そうだった? 30点だった気がするけど」

 

車内は賑やかでも、マチュの心はここにはなかった。

タクシーの車窓から見える街並みを見ながら、マチュはジョンのことを思う。

 

ディープキスをしたことは間違いではなかった。

問題なのはタイミングだ。

タマキをある程度納得させた上でジョンとの交流を認めさせる。

その上でやれば、さしたる問題にはならなかった。

なんならその次へとスムーズに進めることができた。

しかしだ。

 

(ジョンは私から離れようとしている…)

 

現実でのジョンの言動を見て、マチュは確信した。

ジョンは何かにつけて自分から離れようとしている。

ジオンに行く件だって、ジョンの意見次第で覆ったかもしれないのに彼は同意した。

 

(…逃すものか)

 

理由は何となく分かる。

分かるからこそ彼を逃すわけにはいかない。

逃したら彼は静かに消えていくに違いない。

そんなことは許さない。

ジョンは自分の人生を良くも悪くも滅茶苦茶に変えたのだ。

人の人生に介入したのならば、相応の責任は取ってもらう。

 

(知りたいことはいっぱいある。5年前に何があったのか、私のことをどう思っているか。でもね、ジオンに行けば私から逃げられると思っているなら見通しが甘々だよ、ジョン)

 

明晰夢で問い詰めようにも、ここ数日は見られていない。

理由は分からない。

現実で会えたから夢を見なくなったのか。

現実で再び会おうにも、タマキから無言の圧力がかかっている。

ここでマチュが行動を起こせば、タマキもシャリアも実力行使で何かしらするだろう。

慎重に動かざるを得なかった。

 

マチュは世界を呪った。

なぜ、世界は自分とジョンを遠ざけようとするのだろうか?

同時にマチュは自身を呪った。

明晰夢での交流で線引きをした付き合い、これがダメだったのだろうか。

 

『私はジョンが好きだ』

 

この感情を2年前に言ってしまえば良かったのだ。

そうすればもっと早くジョンに会えたし、2年前に買ったコンドームを後生大事に持ってる必要はなかったのだ。

明晰夢で毎日会えることに甘えていたとしか言いようがない。

 

(私らしくないな)

 

過ぎた事をいつまでもウジウジ考えるタチではないマチュだが、メンタルは今どん底に近かった。

 

「どこかで思いを整理しよう…」

 

(やっぱり男の子絡みね)

(あのアマテさんを落とすとは)

(王子様とか)

(あのナンパ男の金玉を蹴飛ばすようなアマテさんをあんな顔にするとは、やるわね)

(憂いているアマテさんも素敵)

(アマテは暴走すると何するか分かんないよ)

 

マチュ以外の四人は、言葉を介さずに目線だけで会話していた。

 

 

 

ソドンでは、ガンダムクアックスのオメガサイコミュの動作試験を3日間ほど進めていたが、依然としてピクリとも起動すらしない。

ハード、ソフトのバグかと問題にはなったが、あらゆる原因を模索した結果、動かない理由は一つだけだと判明した。

 

「人間の問題か」

 

テーブルに額をつけながら、エグザベは呻いた。

 

「サイコミュなんて相性の問題だよ、エグザベ君が悪いわけじゃ」

 

エグザベの落ち込みようを見てフォローしようとしたコモリの横で、シャリアはエグザベが口をつけていない牛乳瓶を手に取って飲み始めた。

 

「ご馳走様」

 

牛乳瓶を置いて、シャリアは壁に寄りかかった。

 

「コモリ少尉、Gクアックスのデータを見て気づきましたか?」

「オメガサイコミュ、起動にまでは至らないにしても、何かに反応しているんですよね」

 

コモリはタブレットに表示された試験データのコピーを見ながら言った。

オメガサイコミュは何かに反応している。

原因を突き止めようにも、ソドンの艦内設備で調べられるのも限度がある。

オメガサイコミュが動いているようにも、落ち込んでいるエグザベには何のフォローにもならない。

そんなエグザベを見て、シャリアは思いついた。

 

「エグザベ君、コモリ少尉と一緒にイズマ観光してきたらどうですか?」

「「え?」」

 

二人は二種類の困惑の表情を浮かべた。

エグザベは「何で?」という疑問を浮かべていた。

コモリは少し顔を赤くしていた。

シャリアは知っている。コモリはエグザベに対して気がある。

年長者のお節介と部下への休養も兼ねての話だ。

 

「申請は出していますし、上陸することは問題ないでしょう」

「行こう、エグザベ君!」

 

その言葉を聞いて、コモリは高速で居室から出て行った。

 

「ちょ、コモりん!?」

 

思わずプライベートでの呼び名になるくらい困惑しているエグザベを見て、シャリアは彼の肩を叩いた。

 

「上陸ついでに君に会ってほしい子がいます。彼には私から連絡を入れておきますので、コモリ少尉と一緒にね」

(この人、それが狙いなのか?)

 

シャリアは自身の端末を指で触りながら言った。

エグザベも急いで身支度を始める。

コモリのウキウキ具合も気がかりだが、どうもシャリアの考えがエグザベには読めなかった。

その1時間後、エグザベとコモリのペアはイズマの地へと降り立った。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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