グラナダ:グラナダ行政庁舎(キシリアの執務室)
FAXの機械音だけが静寂に包まれた執務室に響き渡る。
椅子に腰かけたキシリアは送信が終わった用紙を見て満足そうに頷き、FAXの下部にあるおかずに触れないように用紙を持ち上げてデスクに置いた。
キシリアはこのFAXの音が好きだ。
ピィーヒョロロロロロロォォォォォ、というこの音だ。データを送っている感があって好きなのだ。
昼時で食事も兼ねてキシリアはFAXの下部に取り付けた弁当を食べようと思った。
プラスチックの容器に入れた箸を取り出して何から食べようかとキシリアは考えた。
キシリアの愛用する弁当型携帯FAXに盛り付けたオカズはキシリアが早朝に作った物だ。
冷凍食品に頼っている所もあるが、女子会に持って行っても恥ずかしくない出来栄えであるとキシリアは自負している。
弁当を食べながらキシリアは考える。
2週間後に行われるイズマ・コロニーでの会談に向けて護衛としてキケロガの使用許可とエグザベ・オリベ専用のMSの準備を進めてる。
キケロガはグラナダを既に出発し、会談前にはソドンと合流する段取りは済ませてある。
本来ならソドンにエグザベ専用のMSを搭載してからイズマ・コロニーへと向かわせる予定だった。
だがエグザベのMS、ギャンに対してのハクジ装備が間に合わず結局後手に回ってしまった。
見方によってはナガラ衆との打ち合わせ内容を考えるのならある意味では良かったのかもしれない。
機能不全のクアックスを適当にボコボコにしてもらわなければならなかったのでこれがギャンだったらまた変わってくるだろう。
「エグザベ少尉には悪いことをしたな」
キシリアは思い返す。
エグザベがイズマ・コロニーへ向かう直前、彼とマ・クベが近衛師団のMSハンガーで語り合う姿があった。
マ・クベはエグザベ専用機に改装中のギャンを見ていった。
『すまない、まだ調整不足でな。ギャンは一年戦争後も精力的に改修を続けてきた。クアックスの方が最新型なのは事実、しかしこのギャンのポテンシャルはクアックスを上回るはずだ。君がここに帰ってくる頃には完成している』
生真面目なエグザベも自身の専用機となるギャンを見て心躍らせているようであった。
『エグザベ専用ギャン(ハクジ装備)、エグザベ・オリベ少尉の新たなる剣だ』
『はい!このギャンを使いこなして見せます!!』
『キシリア様のために頼むぞ』
マは深く頷いた。
キシリアとナガラ衆はお互いの目的の為にお互いを利用している。
ナガラ衆は自分達の目的が達成したならばジオンのことなどどうでも良い立場にある。
キシリアと自身の派閥が探すシャロンの薔薇の代替をナガラ衆は持っている。
「月の処女か」
彼らがシャロンの薔薇の中に眠る少女の事を指す言葉だ。
箸を止めてキシリアは下書きの隣に置いたプロフィールデータの写しの用紙を手に取った。
下書きを送る前、弁当型携帯FAXにはアセットからプロフィールデータが送られてきた。
プロフィールデータの顔写真を見てキシリアは微笑む。
「ナガラ衆は知るまい。月の処女という名を持つ女はもう一人いる」
FAXの解像度の粗さもあるが、写真の顔写真の下にある名前はアマテ・ユズリハと打たれている。
「本当の月の処女はアマテ・ユズリハだ。まさか生きているとは思わなかったぞ」
用紙を置いてキシリアは窓の外を眺める。
グラナダの上空にはゼクノヴァで欠けたソロモンが浮いている。
「ゼクノヴァ…」
キシリアの願いはただ一つ。
ソロモンに消えた赤い彗星に思いを馳せながらキシリアは食事を再開した。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ