ショッピングモール:第2公共広場(お好み焼き大会会場)
さて、ナガラ衆の話をどこから切り出そうかとジョンとニャアンは悩んでいた。
誰が聞いてるかも分からないお好み焼き大会会場で話すわけにも行かないし、かと言ってこの機会を逃せばナガラ衆に目をつけられた関係者一堂が集まる機会はもうないだろう。
ニャアンは自分の不安を誰かに相談したかったし、ジョンはナガラ衆に目を付けられたマチュ、ニャアン、シュウジの身の安全を確保したかった。
「ジョンとニャアンは何かに困ってるみたいだね」
そんな2人を見てシュウジが気にかけた。
「実はな、超自然的な話についてみんなに話したいんだが」
「信じてもらえるかは分からないけど」
ジョンとニャアンは異口同音に話した。
幼馴染ゆえか、息のあった会話にマチュは嫉妬が混じった嫌な顔になりそうなのを必死に隠した。
「幽霊でも見たの?」
「ある意味そうかもしれない。実態がまるで分からないという点では」
マチュはジョンの様子から相当に深刻な問題であることは伺えた。
それを自分に相談してくれないことにも苛立ちを覚えた。
「ナガラ衆のことかな」
対するシュウジは呑気にコーラの入った紙コップを手に持って飲み始めた。
「ああ…よく分かったな」
「君と会う時は毎回ナガラ衆絡みだもんね。人に聞かれたくない話なんでしょ?だったらいい場所がある」
シュウジはシモダとペイルライダーとシモダがいる方向を指差した。
そこには口論している2人をシバく女性の姿があった。
「あの人はアンキー。サンライズ・カネバンの副社長をしている人だよ。あ、おっちゃんが社長だね」
「サンライズカネバンの社長と副社長が揃って屋台をやっているのか?」
2人はアンキーに頭を下げると屋台へと戻っていった。
その後ろ姿を呆れて見るアンキーの肩にはショルダーバッグの中に入れられているジョンのハロとは別個体の白いハロの姿があった。
そのハロはジョンのハロと似ているが、細かなところで異なる。
ジョンのハロが薄緑色、アンキーのハロは白色で上部にスピーカーを彷彿とさせるような部品が存在し、その印象は大きく異なる。
ジョンに抱えられたハロがアンキーのハロの視線がこちらに向いていることに気付く。
『同族、イヤ少シ違ウナ』
コンチはアンキーのハロに手を振った。
「サンライズ・カネバンでは毎月どこかの映画館を貸し切りにして色んなことをやるんだ。映画を見たり、ちょっとした会議をしたりね。今日はここの映画館のシアター6を貸し切りにしている。ジョンの話もそこでしたら?」
その提案は渡りに船だった。
ジョンはニャアンの方を見た。
ニャアンもジョンを見て頷いた。
「分かった。その時間、貰うよ」
ナガラ衆についてマチュは無知だった。
ジョンが巻き込まれた事件にそういう名前のテロリストが関わっている、ということしか知らない。
ナガラ衆について深刻な表情を浮かべるジョンとニャアンについて2人だけの秘密を共有していると思って嫉妬したくらいだ。
ジョンとシュウジがおっちゃん達の屋台へと歩いていくのを見た後、席に残ったのはマチュとニャアンの2人だけだ。
「あの…アマテさん」
聞きづらそうにニャアンがマチュを見て言った。
「さんはいいよ。それよりもナガラ衆って何なの?」
彼らが振り回されている、その「ナガラ衆」というのは何か。
「私もよく分かんない…」
その答えに脱力したマチュだったが、いつのまにかニャアンの後ろにペイルライダーとシモダが立っていることに気付いた。
「話は聞かせてもらったぞ。ナガラ衆ともなれば解説には私が必要だろう」
「「誰?」」
サンライズ・カネバンは不審者しかいないのだろう。マチュとニャアンの声がハモる。
「俺の名はシモダ。訳あって世を忍ぶ仮の名だ。俺はナガラについての研究を進めている。
そのためにジ科大を追われたようなものだが…シュウジとその友達もまたナガラに振り回されいるようだな。
話を聞く分に映画館で何やら重大発表をするみたいじゃないか。微力ながら彼らの手助けをしよう」
フハハハ、とシモダは高笑いを天に叫んだ。
マチュとニャアンは他人のふりをして目を合わせなかった。
ショッピングモール:映画館(シアター6)
映画館での重大発表はお好み焼き屋の屋台の撤収から諸々の作業を含めて3時間後の午後4時を回った頃から始まる予定となった。
その間にマチュはニャアンとお茶会の続きをしていた。
本当はジョンとずっといたかったが、彼はシュウジと共にバタバタ動き回っていたために彼の邪魔はしないでおこうとマチュは決めた。
時間になるまで先程の喫茶チェーン店に2人はいた。
注文を頼んで開口一番にニャアンが口を開いた。
「ジャックはアマテに執着している」
マチュとニャアンはお互いに悪い印象は持っていなかった。
仲良くなれる。
そういう確信がお互いにあった。
だがジャック、ジョンの愛称だが、彼話になるとニャアンの目の色が少し変わる。
「アマテとジャックは付き合ってるんだよね?」
「アマテはジャックのどこが好きなの?」
ニャアンはジョンに対する思慕は半ば諦めていた。
ニャアンはジョンが欲しかった。
だが欲しかった相手はもう自分の方を向いていない。
あの時、ジョンが言っていたように戦争が無ければこんなことにはならなかったはずだ。
今日という時間だけで見てもジョンとマチュの関係にニャアンが割って入る余地などないと突きつけられた。
無理にでも入ろうとすれば絶交されるだろう。
それでも、とニャアンはマチュに聞きたかった。
なぜジャックのことが好きになったのか、その返答次第で自分を納得させたかった。
そんな思いを抱くニャアンの表情を見てマチュは彼女の意思を感じた。
ニャアンがジョンに好意を抱いていると言ってもマチュは譲る気は全く無かった。
やっと会えたのだ。
初めてデートらしいこともできたのだ。
理想とは程遠い現実の中でマチュはジョンの手を握った。
せめてニャアンの思いにマチュは誠実に答えたい。
マチュは言った。
「理屈はない。でもね、私はジョンに会うために生まれてきたのかもしれない」
そう言うとマチュは膝に置いていたリュックから端末を取り出した。
マチュの端末の画面は割れていた。
「綺麗でしょ」
割れた画面をなぞるようにマチュは言った。
「スマホ、割れちゃってるけど…」
ニャアンは呆気に取られる。
「これね、ジョンとキスする時に割れちゃったんだ」
ジョンと現実で初めて会った時にイズマ支部の3階から飛び降りた時にジョンとぶつかった時の衝撃でマチュの端末は割れてしまった。
割れた画面をマチュは愛おしそうに触れる。
「Let's get the beginning」
あの時、ジョンがイズマ支部の近くに来た時に送信者不明のメッセージが届いていた。
『THRICE UPON A TIME』
この次に来たメッセージが来た。それが
『Let's get the beginning』
だった。
このメッセージが来た時、マチュには不思議な確信があった。
『ジョンが来る』
それが3階から飛び降りるきっかけになったというのはマチュしか知らない。
マチュはその話をニャアンにも話した。
「ジョンは割れたスマホみたいなの、このスマホはジョンなの」
ニャアンは困ってしまった。
マチュがジョンを慕っているのは分かったが、やっぱり17歳が出せるような凄みではない。
(ジャック、あなた一体何したの…)
ジョンが絡む話以外ではマチュとニャアンは2人が抱いたイメージ通り、不思議と馬が合った。
2人の話は映画館に向かうまで続いた。
楽しそうなマチュとニャアンの様子を遠くから見ていたマチュの友人達は安堵を浮かべて激しく落ち込む2名を引っ張りながらカラオケチェーン店へと去って行った。
2名はジョンとマチュがお好み焼きを食べさせ合う光景を見てからずっとこうだ。
「子供のころから、ヒーローに憧れてた…」
「私の心はボロボロだ…」
「いつまでグズグズしてるのよ。アマテさんの元気が第一、さっ何か歌おう?」
「ミッドナイト・リフレクションかRebirthでいい?」
「もうどうなってもいいや」
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ