宇宙港:喫煙コーナー
宇宙世紀に時代が移行しても喫煙という習慣は残る。
紀元前から存続する風習というのは人類が滅亡するまでは消えないのだろう。
一年戦争前までは西暦時代の禁煙習慣が地球全体で支配的だったが、一年戦争中と戦後はストレス緩和のために喫煙が戦前よりも認められるようになった。
おっちゃんは紙タバコを吹かしながら物思いにふける。
喫煙所を有料化する案は以前から存在していたが、ここでは喫煙所の充実とコロニーの維持費に回すという口実で有料化は進められた。
金をとっているだけあって小綺麗だし、ベンチも定期的に交換されているのでコロニー公社の小遣い稼ぎと揶揄されても残り続けている。
おっちゃんにとっては何よりここから見える景色の方が重要だった。
この喫煙コーナーは宇宙港を見下ろせる位置に作られた。
ここからは停泊しているケルゲレンとソドンが一望できる。
早朝の誰もいない喫煙所でおっちゃんは緑に塗り込まれたソドンに鋭い視線を向けていた。
灰皿にタバコの灰を落としていると喫煙所の自動ドアが開いた。
「やっぱりここにいましたか」
そこにはお菓子のココアシガレットを4本咥えたシャリア・ブルが立っていた。
「ケルゲレンが寄航しているので探してたんですよ」
ココアシガレットをボリボリ食べながらシャリアはおっちゃんの隣に座った。
おっちゃんはソドンへ向けていた視線のままシャリアへ顔を向けた。
「大佐のことをまだ許せませんか?」
「人の作った物語の影、顧みられぬ者ありや」
タバコを灰皿に押し付けながらおっちゃんは箱から2本目を取り出した。
「あなたがその影だと」
「自己陶酔と言われても曲げへんで」
おっちゃんは使い捨てライターでタバコに火をつけた。
肺に煙を吸い込み、吐き出された煙が換気口へと消えていく。
「近々、あなた方の力をお借りします」
ココアシガレットからコーラシガレットに切り替えてシャリアは言った。
「昨日、あんたのボスから直々に電話が来た。ソドンの修理と補給、しっかりやらせてもらうで」
サンライズカネバンはスクラップ業者としての顔の他に艦艇の修理も業務の中に含まれている。
一年戦争中のペルガミノが行っていた修理屋事業の一部をサンライズカネバンが引き継いでいる。
そういった経緯もあり、スクラップ業者のサンライズカネバンの仕事としてソドンを修理することは特段不思議な話ではない。
グラナダ:キシリア邸
キシリアはグラナダに居を構えている。
当初は政府官舎に住んでいたが、周囲がザビ家への対応に気を遣っていたことからキシリアはすぐに退居し、この家を買った。
支配者の一角とは思えないくらい小さな家だったが、キシリアはこの家を気に入っていた。
朝からキシリアは弁当型携帯FAXに調理したおかずを詰め込んでいた。
サイド6での会合の準備のため日曜日の午前中だけでも行政庁舎に足を運ばなければならなかった。
おかずを詰め込み終わり、冷めるのを待っていたキシリアの弁当型携帯FAXに着信が入った。
電話の相手はキシリア機関の連絡員からだった。
連絡員は木星船団公社のグラナダ支部に潜入しているスパイからの報告をキシリアに話す。
その内容にキシリアの顔つきが険しくなっていった。
「ジュピトリスが正体不明のMSに襲撃され沈んだか…恐らくそのMSはナガラ衆の一人だ」
『キシリア様、ナガラ衆の大半はイズマに集結しているのではありませんか?』
「イズマからジュピトリスまで飛んで行ったのだろう。2週間もあれば奴らなら往復して帰るのも不可能ではない」
『地球から木星まで往復4年かかるんですよ。そんな短期間で…』
「ナガラ衆なら出来るのだよ。ナガラ衆なら瞬きする間にジオンを滅亡させることができる。忘れないことだ」
連絡員は押し黙ってしまう。
「新たな情報が入ったらすぐに連絡しろ。切るぞ」
そう言ってキシリアは電話を切った。
弁当型携帯FAXのディスプレイのセグメントは
『6th/July/0085 AM 05:36』
の表示が淡々と時を刻んでいた。
「ジュピトリスを沈めたのはミノフスキードライブ搭載機だな」
ため息混じりにキシリアは呟いた。
「ナガラ衆が本格的に動き始めたか」
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ