8-1
高級ホテル:VIP用ルーム
キシリアとペルガミノの会談は予定調和に終わった。
会談後、ホテルの部屋に戻ったキシリアは会談時のゴマすり全開のペルガミノに内心笑いながら紅茶が注がれたティーカップを手に持った。
紅茶を注いでくれた側近のアサーヴは席を外している。
ティーカップが少し揺れる。
キシリアは紅茶をテーブルに置いて腰に差していたホルスターから拳銃を取り出した。
ドアの前で殴打音が鳴り響き、銃声が廊下に響き渡る。
拳銃を構えながらキシリアは扉の横に立つ。
銃声も暴力の音も聞こえなくなった。
少しの沈黙の後に扉が開く。
「ご無事ですか、キシリア様!!」
サイーヴが部屋に飛び込んできた。
拳銃の銃口をサイーヴに一瞬向けた後、キシリアは銃口を下ろした。
「何があった?」
「連邦の特殊部隊がキシリア様を殺しに来ました」
キシリアの問いにサイーヴ以外の人物が答えた。
キシリアが振り返るとそこには2人の男女が立っていた。
年齢は10代後半、スーツを着こなし年齢以上に大人らしい。
この2人にキシリアは覚えがあった。
「ナガラの使いだな」
2人の男女は頷いた。
宇宙港:ソドン
ガンダムのコックピットの中にいたマチュの身柄は外来部屋に移された。
お目付け役としてコモリも同室にいた。
何故マチュがガンダムのコックピットの中にいたのか?
問いただすソドンのクルー達に対してマチュは渋々事情を話した。
「好きな男の子を追いかけてきたとは…」
ベッドに座り御守りが入ったポーチを握りしめてぼおっと床を眺めるマチュを見てコモリはある意味関心していた。
どういう訳か知らないが、シャリアはマチュがソドンに密航しようとしているのを悟っていたのでわざわざ外来部屋を準備をしていたのだ。
「ソドンは明日出港するから、その時にアマテには降りてもらうよ」
マチュはその言葉に首を横に振った。
「ジョンと一緒じゃなきゃヤダ…」
「ジョン君は仕事でジオンに行くの、アマテとは違うんだよ」
「パスポートもあるし」
「パスポートだけあってもどうしようもないでしょ、お金は?学校は?ご家族は?」
「ジョンがいないじゃん…」
「死にに行くわけじゃないんだから大丈夫だよ」
絶対にそう言うと思ったのでコモリは諭すように言った。
恋のためにここまでのアクションを取れるマチュがコモリには羨ましい。
この間のイズマ観光ではエグザベとは特に何も進展がなく終わってしまった。
そのエグザベも今はソドンを離れてキシリアのチベ、パープルウィドウの方へ行ってしまった。
パープルウィドウは宇宙港にいるソドンとは異なりイズマ宙域に待機しているので何をしているのかも分からない。
キシリアがイズマコロニーに来訪する。この話をコモリを含めたソドンのクルーの大半が知ったのはつい数日前の事だ。
キケロガがイズマに来た時点で何やら嫌な予感がしていたが、まさかのキシリアだ。
キシリアをソドンが護衛しようという話が出てきたので誰もマチュに構っている暇がなく、とりあえずシャリアとコモリが準備していた外来部屋に押し込んだというのが現状だ。
ソドンに密航しようとしたマチュにお小言でも言おうかと思ったコモリだったが、突然スカートのポケットに入れていたポケベルが鳴りだした。
ポケベルの呼び出し相手はもっぱら艦橋だ。
コモリのポケベルは艦内でしか使えない。端末を持っていない、または通信できない時にポケベルが使われる。
普段は端末にメッセージが来るはずだが、ポケベルが使われるということはミノフスキー粒子が撒かれたということだ。
「戦いだ」
コモリはマチュの方を向いた。
「これから戦いになるかもしれない。部屋から出ないで、何かあったら艦内電話を使って連絡して」
それだけ言うとコモリは部屋から飛び出して行った。
「戦い、ジョン…」
マチュはポーチからT字型の金属片を取り出して強く握った。
ベッドの上に置いていたマチュの端末が揺れた。
誰かからメッセージが届いたのだ。
端末のロックを解除してマチュはそのメッセージを見た。
そのメッセージは発信者不明の人物からだった。
マチュは以前にもこの人物からメッセージを受け取っている。
『THRICE UPON A TIME』
『Let's get the beginning』
以前送信されたメッセージの下に新たなメッセージが届いていた。
『ジョンのストライクが蘇る』
『右へ』
意味不明なメッセージだ。
このメッセージの主は自分を知っている。
それでいてジョンのことを知ってる。
このメッセージはジョンと何か関係があるかもしれない。
『イクノカ マチュ?』
「うん、行かなきゃいけない気がするの」
先程のコモリの言葉は無かったかのようにマチュは行動に移る。
白いハロと端末を持ってマチュは部屋を飛び出して行った。
イズマ宙域:ケルゲレン
サンライズカネバンのケルゲレンの艦橋はテレビで中継されている映像に困惑していた。
ソドンへの補給業務のために宇宙港に入港しようとしていたケルゲレンは宙域で待機する羽目になっていた。
コロニー内でテロが発生した混乱の余波で宇宙港から禁止信号が出たせいで入港できずにいた。
そのテロとやらがテレビで中継されていたが、その光景は異様な物だった。
「サイコガンダム、完成してたんか」
おっちゃんは頭を掻きながら壁を殴った。
「おっちゃん、あれもガンダムだよね」
険しい顔でシュウジはテレビを凝視する。
「ガンダムや、でもおぞましい奴や」
テレビに映ったサイコガンダムはゆっくりとその姿を変えていく。
「奴はサイコミュを搭載している。モビル・フォートレスとMSの2つの姿に変形できるんや。モスクのおっさんのマグネットコーティングが無いから出来てないもんかと思っていたが、サイコミュ制御で無理矢理やっとるんか」
「サイコガンダムの弱点は?」
「運用面では問題だらけだが、戦う相手としては隙はない。身体中にビーム砲を積んでIフィールドもある。後は全身の装甲を遠隔操作で飛ばせるらしいで…」
「あの、あんなのが出てきてジャックとアマテは大丈夫なんですか?」
おっちゃんとシュウジの会話にニャアンが割り込んできた。
「サイコガンダムが暴れまわったらイズマは崩壊する。ボンとちっこい姉ちゃんがどうなるか分からん」
淡々とおっちゃんは話す。
ニャアンの顔が青ざめていくのを見たシュウジは艦橋から走り出した。
艦橋から通路を通ってシュウジは考える。
「ガンダム、ジョンとアマテを助けに行こう」
ハンガーに到着するとシュウジは赤いガンダムが秘匿されているコンテナの前に立った。
シュウジの言葉に応えるようにコンテナの中からデュアルアイが光る。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ