おっぱい大作戦   作:そらまめ

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8-10 ニャアンの情念

「ジャックがガンダムになっちゃった…」

 

 

 

イズマコロニーの内部の状況はインターネットの配信を通して外部からでも見ることが出来た。

ミノフスキー粒子の対策も進み、有線通信からコロニー内部に点在するライブカメラがイズマコロニー内部の撮影を続けていた。

 

サイコガンダムの登場から光の翼、更にはゼクノヴァが発生した事態にサイド6全体が混乱を極めていた。

 

誰もこの状況についてこれない。

 

理解し難い怪異がイズマコロニー全体を覆っているのは間違いない。

それが何なのか、ごく一部を除いて誰も理解できずにいた。

 

この騒動で宇宙港は一時閉鎖、そのためにコロニーに入港しようとして締め出された大小様々な宇宙船群は宙域に設けられた待機エリアで足止めを食うことになった。

コロニーの中はどうなっているのか?

このような状況なので待機エリアに設けられたインターネット回線からコロニー内のライブカメラの映像を動画サイトから見ている者もいた。

 

シュウジが赤いガンダムでイズマコロニーに向かった後、ケルゲレンは待機エリアの一角に停泊していた。

待機エリアに向かう前、ケルゲレンからはシュウジと赤いガンダムを回収するための作業艇を発艦させていた。

「ジョンとアマテを助けに行く」

その一言だけを残してシュウジは赤いガンダムで出撃した。

そんなシュウジの行動におっちゃんはぶつくさ文句を言いながらも彼の支援するための指示をケルゲレン全体に出していた。

 

回収用の作業艇の準備から赤いガンダムを秘匿するコンテナの作成、赤いガンダムの追跡、周囲の情報収集を各部署に指示を出していた。

「シュウジはイズマに侵入した。シュウジはイズマでグラフティを描いていた時期があった。その時に使っていたエアロックから入ったって…ニャアン、死にそうやないか」

洗濯物が干してあったり、冷蔵庫があったりして生活感のある艦橋の一角でニャアンはモニターを凝視していた。

各部署とのやりとりを一通り終えたおっちゃんは顔面蒼白のニャアンの元に駆け寄る。

モニターに映し出される光景を見て思わずおっちゃんは真顔になる。

 

モニターには動画サイトで中継されているライブカメラの映像が映し出されている。

そこにはゼクノヴァの光が次第に弱くなっていき、シュウジとは異なる赤いガンダムがバーニアもスラスターも使っていないにも関わらずゆっくりとコロニーの大地に降りていく光景が映し出されている。

動画のチャット欄に書き込んでいる人達も困惑しているようだ。

 

「ボンやな」

おっちゃんは険しい顔でモニターに映るガンダムを見つめる。

「知ってたの?」

震えた声でニャアンはおっちゃんに聞いた。

「ニャアンにはまだ言ってないな、ワシとボンの話」

「ジョンが覚えてないだけでおっちゃんと知り合いだってシュウジが言ってた」

「覚えてない方が幸せなんや」

ガンダムはカメラの死角になっている所に入ったのでニャアン達からは見えない。

 

 

 

イズマコロニーからパルダコロニーへ

この1週間はニャアンにとっては激動の1週間だ。

同じサイド6内でも引っ越すのであればそれなりに手間がかかる。

書類上の手続きや生活用品の買い出し、新天地への慣れ…

それでもニャアンには新鮮な時間だった。

 

イズマで難民登録をする時には苦痛だった書類作業も今回は全く苦にならない。

運び屋をやっていた時代よりも圧倒的に安定した生活になり、しかも周囲に頼れる大人達もいる。

おっちゃん、シイコ、アンキー、ジェジー、ナブ、ケーン、シーマ…

シモダはあまり頼りにならない。

仕事はまだまだ始めたばかりで怒られることもあるが、それでも昔に比べればずっと良い。

ここまで自分を導いてくれたのはジョンだ。

ニャアンはジョンに感謝してもしきれないくらいだ。

 

ニャアンはジョンが好きだった。

たとえ昔の記憶が無かったとしても好きであることに変わりようがなかった。

だからこそ、あのアパートでのジョンの言葉とショッピングモールでジョンがマチュと恋人同士であると聞いた時は辛かった。

あの喫茶チェーンでのジョンとマチュは自分には辿り着けない領域に互いに足を踏み入れているようにニャアンは思えた。

あの2人はいずれ夫婦になるだろう。

そういう直感がニャアンにはあった。

 

ニャアンはジョンを諦めるしかなかった。

 

だからこそ、ニャアンはパルダコロニーに行くことに抵抗はなかった。

だが、パルダコロニーにいるとニャアンはジョンのことを毎日考えていた。

毎日端末でやりとりしているのもあるが、それとは違う感情があった。

 

ニャアンはジョンと似ているシュウジが気になっていた。

バイクで自分を迎えに来てくれたシュウジ、それがジョンに見えたのだ。

初めて乗ったバイクが怖くてニャアンは気付かなかったが、ジョンもマチュをバイクに乗せて並走していたらしい。

 

忙殺を極めた1週間の中でニャアンはおっちゃん宅でシュウジと共に同じ時間を過ごした。

ジョンと似ているようで違う。

そんなシュウジを見ているとある時、シュウジはニャアンに申し訳なそうに言った。

 

『僕はジョンの代わりにはなれない。君は僕を通してジョンを見ている』

 

その言葉にニャアンは初めて気付かされた。

自分はまだジョンのことを諦めきれていない。

諦めたふりをして楽になりたいだけなのだと。

それでもどうしようも無かった。

ジョンの心はマチュに囚われている。

マチュもジョンを絶対に手放さないだろう。

 

『もし、戦争がなかったら僕達はどうなってたんだろうね』

「一緒になれたと思う、ジャック」

あの時のジョンの問いにニャアンは今更だと思ったが、心の中のジョンに答えた。

 

ジョンが変身した赤いガンダムを見た時、ニャアンの心の中に燻っていた何かが再燃しようとしていた。

「ジャック」

モニターに映し出された赤いガンダムをニャアンは撫でた。

「私はまだ諦めきれてないんだ…」

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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