2機の赤いガンダムがサイコガンダムを囲って飛び回る。
ガンダム達の撃墜を狙ってドゥーは装甲を飛ばすが、簡単に躱される。
逆にガンダム達のビットはサイコガンダムに対して的確にダメージを与えていく。
こういう時のためのゲーツだが、ハンブラビは既に機能不全だ。
予備カメラで残っているビームライフルを滅茶苦茶に撃てばまぐれ当たりは期待できるかもしれないが、そんな物を当てにする時点で追い詰められている、そう思いながらドゥーはビットの動きを見ていく。
シャアの赤いガンダムのビットは恐ろしいが、Iフィールドで無力化できる。
ストライクのビットは実体弾なのでIフィールド関係なしにダメージは与えられるが、ビーム兵器程のダメージは与えられない。
シャアの赤いガンダムのビットがサイコガンダムの懐に潜り込んだ。
ビットからビームが発射される。
コックピットの近くに着弾する。
この時点でサイコガンダムの機能は半減していた。
Iフィールドはバースト寸前、胴体のビーム砲は使用不能、指のビームの片方は使用できない。
関節部は凄まじい強度があるために辛うじて変形機構は使用可能だが、変形しようとした時点で止めをさされるだろう。
「詰みだね」
軍人としてのドゥーは冷静に現状を把握した。
近くに潜んでいるゲーツにドゥーは無線を飛ばす。
「勝負は決したよ。ゲーツ、プラン通りにやる」
この間にもガンダム達の攻撃は続いた。
装甲を飛ばしている以上、サイコガンダムの防御力は大幅に低下している。
そんな状態であっても通常のMS以上の防御力をサイコガンダムは持っている。
自分達の攻撃が大して通じていないと判断したのかビット達はサイコガンダムの全身にあるセンサーを狙っていく。
『分かった。ドゥー、機密保持用の爆弾を設定したら退避するんだ。後はドゥーをハンブラビで回収す…』
「違うよ」
ドゥーはコックピットの奥底にある自爆装置を引っ張り出す。
「サイコガンダムのジェネレーターをイズマコロニー内部で爆発させる!!」
サイコガンダムの頭部の目の前にストライクがガドリング砲を構えて突っ込んでくる。
「僕と一緒に死んでよ、ストライク」
『ドゥー、この…馬鹿野郎!!』
ハンブラビが建物の陰からサイコガンダムに向かって飛ぼうとするが、バーニアの出力が足りずに飛べない。
『一緒に逃げるぞドゥー!!』
ストライクのガドリング砲が頭部のセンサーを破壊していく。
その弾丸は頭部に近いコックピットの装甲を貫通しないが、それでも強い衝撃がコックピットを揺らす。
センサーが死んでいく。
全天周囲モニターに機能不全の報告が追いつけないくらい表示されていき、モニターがブラックアウトした。
自嘲気味にドゥーはサイコガンダムの自爆装置のテンキーを押そうとする。
ドゥーは自爆コード、2887を押そうとする。
テンキーを押し始めた時に突然、コックピット内に合成音声が流れ始めた。
『機体 の 致命的 な 損傷 を 確認 脱出装置 を 起動 します』
『自爆装置 は 無効 に なりました』
合成音声の後、ドゥーがテンキーにコードを何度も打ち込んでも自爆装置は作動しない。
「どうして!?何で受け付けないの!?」
『10 秒後 コックピットブロック を 射出 します 衝撃 に 備えて ください』
ゼクノヴァの時にも落ち着いていたドゥーは、この状態に困惑しながらもシートにノーマルスーツをロックさせる。
隙だらけのサイコガンダムだったが、何故か2機のガンダムは攻撃してこない。
舌を噛まないように気を付けながらドゥーは衝撃に備える。
コックピット全体に強い衝撃が走る。
モニターがブラックアウトしているために周囲の状況は分からないが、ジェットコースターのような衝撃を受けているドゥーは今の自分が宙に浮いているのが分かった。
確かにサイコガンダムにはコックピットが丸ごと脱出装置として機能する。
だが、自動的に脱出装置が機能するなどドゥーは知らなかった。
自動的に脱出装置が機能すると状況によっては危険な場合があるのでこういうのは大抵、手動操作のはずだ。
サイコガンダムはバイオセンサーが周囲の状態を判断してドゥーを逃がしたのだ。
(僕に生きろっていうの?サイコガンダム)
自分を逃がした愛機の名前を思い浮かべながらドゥーは闇の中で大地に叩きつけられる衝撃を覚えた。
サイコガンダムのコックピットブロックが射出されていくのを2機の赤いガンダムを見守っていた。
コックピットブロックを回収するためにハンブラビが生き残ったバーニアで飛んでいく。
ストライクが赤いガンダムに乗るシュウジに語りかける。
『サイコガンダムが言っていたんだ。ドゥーを殺さないで…と』
ストライクはハンブラビがコックピットブロックを回収して地下の整備通路に逃げていく姿を見届ける。
エグザベ専用ギャンとブルーディスティニー1号機の戦いはエグザベ有利に進んでいた。
ハクジとシールドは最初の段階で破壊されたが、ビームサーベルを駆使して戦いを続ける。
『やるじゃないか、やっぱりガンダムだったから負けたのでは?』
押されているのにHi-MD男の声は楽しそうだ。
「何を…!」
対するエグザベは必死に食らいついていた。
ブルーディスティニー1号機は左腕を根本から切られ装甲はボロボロだ。
それでもどこか余裕があるようにエグザベは見えた。
必死なエグザベだが、冷静に周囲を見渡すことも忘れていない。
3機のガンダムの戦いには驚きながらも、テロリストが機体を破壊されながらも脱出したことをエグザベは確認していた。
ミノフスキー粒子も薄れて無線通信も可能になったのでエグザベはパープルウィンドに報告を上げつつ、テロリストの追跡を依頼する。
『向こうの方も決着がついたみたいだな』
Hi-MD男は奇策を打った。
残った右腕からトリモチランチャーをギャンの右脚関節部に打ち込んだ。
MSの馬力なら関節についたトリモチの粘着くらいは無理矢理動かせるが、今のギャンの状態では話が別だ。
左腕を切られた後、ブルーディスティニー1号機はサーベルとバルカンで脚部の関節回りを狙っていた。
関節部は装甲が分厚いので意味がないとエグザベは思っていた。
だが、トリモチを打ち込むのであれば話は別だ。
ギャンのボロボロになった装甲にトリモチが入り込んで右脚関節部が機能不全を起こす。
その僅かな隙をついてブルーディスティニー1号機はギャンの懐に入り込んでサーベルを持つ右腕を切り落とす。
「ナンブサン!!」
倒れこみながらエグザベはお返しと言わんばかりに左腕でブルーディスティニー1号機の胸部コックピットを殴った。
(これくらいの衝撃を受けたならパイロットは無事では済まない)
エグザベは倒れこみながらギャンのバーニアを使ってブルーディスティニー1号機から距離を取る。
狭いホテルの屋上がボロボロになっていく。
胸部コックピットが凹んだブルーディスティニー1号機だが、何事も無かったように右腕のサーベルを右脚のふくらはぎの収納部に仕舞った。
『もう少し戦いたかったが…ナガラ衆はチームプレイでな、帰ってこいと言われた』
「なっ」
どうみてもコックピットは潰れているはずだ。
なんで生きているんだ!?
『君にヒントを与えよう』
エグザベの動揺を察したのかHi-MD男はブルーディスティニー1号機の歪んだコックピットハッチを右手でこじ開けた。
ギャンのカメラでエグザベはコックピットを見た。
そこには誰も乗っていなかった。
「どうなってるんだ?無人機?でも」
『有人だよ、間違いなく。俺達は自分の身体のようにモビルスーツを動かせる。痛覚は人間とは異なるがな』
ハッチを閉めるブルーディスティニー1号機はギャンに背を向けて歩き始める。
ブルーディスティニー1号機の足音と歪んで閉め切れないハッチが揺れる音が響く。
『ナガラ衆は進化したニュータイプの一種だ。そして繰り返される黒歴史の陰で暗躍してきた。すべてはナガラのために…でも今回は違う』
ブルーディスティニー1号機はギャンの方に振り返る。
バイザーの中にあるデュアルアイの視線がギャンのコックピットにいる自分を見ているような錯覚をエグザベは受けた。
『ナガラ衆が世界に君臨するために我々は王子を擁立しようとしている。そのためにキシリア・ザビとも協力関係を結んでいる』
エグザベは耳を疑った。
Hi-MD男の言っていることは分からない。
だが、イズマコロニーで活動しているテロリストがキシリアと協力関係を結んでいるという話は聞き捨てならない。
「キシリア様と関係があるのか」
『ヒントはここまでだ。エグザベ・オリベ少尉』
エグザベはHi-MD男が笑ったような気がした。
『このまま行けばナガラ衆がこの宇宙世紀を支配する。それを止めれるのは君達だ』
ブルーディスティニー1号機がホテルの屋上から飛び降りる。
『また君と戦えるのを楽しみにしているぜ』
ホテルの屋上にはボロボロになったギャンが残される。
ギャンのコックピットからエグザベはゆっくりと降りる。
遠くからサイレントとAI音声が聞こえてくる。
不思議とブルーディスティニー1号機が大地に着陸した音はエグザベは聞こえてこなかった。
遠くにあるサイコガンダムは主を失って座礁している。
2機の赤いガンダムはどこかにいなくなってしまった。
「キシリア様…」
あの超自然的なテロ集団とキシリア様が繋がっている。
Hi-MD男の欺瞞工作かもしれないとエグザベは思ったが、その可能性が示唆されただけでもエグザベにはショックだった。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ