地下隔壁通路を赤いガンダムの後ろをストライクがジークアクスの左マニュピレーターを引いて歩いていく。
彼等の目的地はケルゲレンだ。
お尋ね者の赤いガンダム、窃盗品のジークアクス、正体不明のストライク、どう見ても怪しさしかないメンバーがこのままイズマコロニー内部にいても仕方がない。
赤いガンダムはこれまで通り秘匿、ストライクはジョンの姿に戻れば何とかなるが、問題なのはジークアクスだ。
軍艦から最新鋭MSを持ち出したのだから穏便に済むとはストライクとなったジョンには思えなかった。
マチュが罪に問われるくらいならいっそ自分が罪を被るか…とジョンが考えていたところにシュウジから提案があった。
「おっちゃんが何とかしてくれるかもしれない」
シュウジ曰く、サンライズカネバンの社長はコネクションが広いのでこの件を穏便に済ませることが出来るかもしれないというのだ。
ジョンの立場ではジークアクスの件はどうしようもない。
これに関してはシュウジの言葉に乗ることにした。
マチュにも意見を求めようとしたジョンだが、当事者であるマチュは先程から何も返事をしない。
明らかにマチュがおかしい。
ジークアクスがストライクの右マニュピレーターを強く握りしめる。
早くマチュをコックピットから降ろしたいジョンだったが、イズマコロニー内にナガラ衆とドゥー達の仲間達が伏兵として残っていることを考えると無闇にイズマコロニーに残れなくなった。
致し方ないにしてもジョンとシュウジはあまりにも目立ち過ぎた。
その道連れのようにマチュも連れていくしかなかった。
『…聞かないのか?シュウジ』
『何を?』
『僕がガンダムになったことだ。当事者の僕ですらよく分かってないんだ』
赤いガンダムとストライクはワイヤーを通した接触回線で話をしていた。
無線だと傍受される危険性があったのとスピーカーで話した場合は音を聞かれるかもしれないと考慮したからだ。
『君がジョンならそれが全て、細かいことを気にする必要はない…とガンダムが言っている』
『信頼サレテイルナ、ジョン』
ストライクが背負っているガンバレルストライカー(ハロ)も会話に混じってくる。
ジョンは自分の身体がMSになったという事実にショックこそあるが、不思議と身体がMSであることへの違和感は無かった。
人間の身体のようにストライクは動く。
コックピットに表示されるデータは思考の中に表示されるのでストライクが今どういう状況なのかもすぐに分かる。
今のストライクは稼働に必要なバッテリー残量がかなり減っている。
あと数時間でまともに戦闘できなくなるだろう。
少しでも節電するために今のストライクは赤色から灰色に変わっていた。
ストライクはフェイズシフトと呼ばれる特殊な装甲で覆われている。
この装甲は電力を流すことで装甲の色が灰色からカラフルな色に変わり、非常に強力な防御力を発揮する。
しかし、その防御力を機能させるためには常に電力を供給している必要がある。
今のストライクはフェイズシフトの装甲に電力を流していない状態、フェイズシフトダウンと呼ばれる状態で通路内を移動していた。
赤いストライクがいきなり灰色に変わったことにシュウジは少し驚いていたが、
「お洒落だね」
の一言で済ませてしまった。
しばらく歩いていると赤いガンダムが立ち止まった。
目の前にはエアロックがある。
どうやらここからシュウジは侵入してきたらしい。
この場所にはジョンも見覚えがあった。
『懐かしいな、この間もここに来たな』
ここは以前、ソドンでジョンがデジタルマイクロカセット男に襲撃された際、シュウジが赤いガンダムで助けに来た後に訪れた場所だ。
またここに来るとは思っていなかったジョンは少し感動してしまった。
『作業艇にはMSを2機載せられる。ガンダムとジークアクスを載せたいんだ。ジョンは…』
シュウジの言葉にジョンは察した。元の身体に戻れないのか聞いているのだ。
『戻ロウカ、ジョン』
『どうすれば戻れる?』
ガンバレルストライカー(ハロ)は元の姿に戻れる方法を知っているらしいが、ジョンは知らない。
ストライクの仕様は変身した時にすぐに分かったが、ストライクから人間に戻れる方法というのは頭に入ってこなかった。
『イメージスルンダ、自分ノ姿ヲ』
その言葉に従ってジョンは自分の身体をイメージする。
ジョン・マフティー・マティックス
未だによく分からない自分自身、それに付き合っていかなければならない自分自身…
そんなジョンの脳裏に明晰夢の中のマチュに化けたストライクのイメージが一瞬浮かんだ。
イメージのマチュが遠ざかり、後には自分自身が残る。
気付くとジョンの目線が先ほどよりもずっと下、赤いガンダムの足が目線に合うくらいになっていた。
視界もストライクの時よりもずっと馴染みのある代物だ。
ジョンは頭上を見上げた。
そこには自分を見下ろす赤いガンダムの頭部がある。
ジョンは元の姿に戻れたのだ。
『ドウダ、人間ノ身体ハ』
ジョンの足元からハロの声が聞こえてくる。
見るとそこにはガンバレルストライカーからいつものペットロボットに戻ったハロの姿があった。
「こっちの方が馴染みがあるよ」
ジョンの後ろからハッチが開く音がした。
ジョンが振り返ると、ジークアクスのコックピットのハッチが開いていた。
そこから白いハロが現れ、続いてマチュが姿を現した。
コックピットとジョンの位置は離れている。
だが、それでもジョンには分かった。
明晰夢での2年間と現実世界のどんな時でも見ることが無かった。
マチュは目を腫らすほど泣いていた。
(何故、泣いているんだ。マチュ…)
シュウジから呼びかけれるまでジョンはマチュの目をずっと見ていた。
目が普通ではない。
その目をジョンはつい最近にも見たことがある。
(ニャアンと同じ目だ)
あの情念とも執着とも呼べる危険なオーラを持った目でニャアンと同じようにマチュもジョンを貫くように見つめていた。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ