匂い、揺れ、手狭な通路…
コモリは自分が今、軍艦の中にいることに気づいた。
艦内のデザインレイアウトは地球連邦の艦に何処となく似ている。
だが何かが違う。
前に地球連邦軍との交流事業の一貫で艦艇見学のために訪れたサラミス級とマゼラン級のようなレイアウトではない。
「どこなの?ここ…」
先程までガンダムの搭乗していたことをコモリはすっかり失念していた。
バイオセンサーのことなど脳裏から消えていた。
ソドンではない軍艦の中をコモリは1人歩く。
理由もなく、ただ人に会いたかった。
歩き続けて少しばかりたった頃、コモリは人を見つけた。
ハンガーらしき場所へ向かって行列ができている。
行列に並ぶ人達は民間人ばかりで軍人らしき人影はない。
民間人の来ている私服もだいぶくたびれており、誰も彼もが疲弊していた。
それでも彼らの表情は明るい。
(この人達は避難民だ。艦に避難してきたの?)
一年戦争時代の戦場写真、ビデオに記録された難民達の事をコモリは思い出す。
「あ~あ、ヘリオポリスにパソコン置いてきちゃったのがなぁ」
「しょうがないわよ、生きてるだけでもラッキーなんだから、退職金で新しいの買ったら?トール」
「問題なのはデータだよ、ミリアリア達の写真もパソコンの中に入ってたんだ」
列の中に一際若い集団があった。
その人数は6人、少年3人、少女3人という人数比のバランスが取れた集団はまだ10代、雰囲気から察するにまだ学生だというのにそれなりに修羅場を経験してきたような雰囲気を持っていることをコモリは感じ取った。
「アマテと同い年くらいかな、それにしても…」
コモリは行列の行く先を見た。
ハンガーの中には一機のシャトルが駐機している。
彼らはシャトルに乗ってどこに行こうとしているのか。
「久々のオーブか、どこに行くかな。ワンダースワンのゲームでも買うかな、サイはどうするの?」
「カズイ、オーブ以外では戦争をしてるんだぞ」
「乱暴でもなんでも戦争をしているんです、プラントと地球、コーディネイターとナチュラル、あなた方の外の世界はね…だっけ」
「今となっちゃ懐かしいよ…ザフトの奴ら大気圏突入にまで襲ってくるかな」
「第8艦隊が守ってくれるんだから大丈夫じゃない?」
サイとカズイという少年の会話を聞くに彼らはオーブという国に降りるらしい。
何やら聞き馴染みのない単語が聞こえてきたことにコモリは不安を覚えていた時だった。
彼らの後ろからパイロットスーツを着た少年が歩いてきた。
パイロットスーツの上からオリーブカラーのM65フィールドジャケットを羽織り、綺麗な金髪を携えている。
金髪の少年が近づいてくることに6人の中で1人の少女が気付いた。
少女の紫色の瞳が少年を射抜く。
「オルフェ…」
オルフェと呼ばれた金髪の少年は少女に軽く手を振った。
「挨拶に来たぜ」
そういうとオルフェは少女の肩を叩いた。
「ハルマさんとカリダさんも心配してるだろうから、寄り道も程々にな」
ポニーテールにまとめた少女の茶髪が揺れる。
「そうだ、フレイ」
少女の隣で気まずそうな表情を浮かべるフレイという名の少女を見てオルフェは笑った。
「キラを頼むぜ」
それだけ言うとオルフェはトール達の方へ向かって歩いていった。
楽しそうなオルフェの姿を見てトール達も嬉しそうに振り返る。
「オルフェ!!お前も一緒に乗れば良かったのに~」
「退職金たっぷり貰ってくるんだよ、アラスカに行ってな」
トールと楽しそうに話すオルフェを見てキラは寂しそうに見つめる。
フレイは小声でキラに話しかける。
「まだ時間はあるわ、ちゃんと話してきたら?」
「うん…」
「あんなにギャハッハッしてるけどオルフェ、だいぶ気を遣ってるわよ」
「ラクスさんとアスランの件もあったしね、フレイこそお父さんと一緒に行かなくて良かったの?」
「パパが無事ならいいのよ。危ないところをオルフェ達に助けて貰ったし」
トール達との別れの挨拶が終わったのかオルフェはキラ達の横を歩いていく。
「じゃあな」
オルフェはキラとフレイに右手の人差し指と中指を合わせた小さな敬礼をして列から離れていく。
その光景を傍観者のように見ていたコモリは彼らに声を掛けようとした。
ここはどこなのか、君達は何なのか、何が起きているのか…
それを問いかける前に列の中からキラがオルフェを追って飛び出して行く。
その後ろ姿を見てフレイは満足げに頷く。
コモリは男女のイザコザが気になってしょうがない性分であった。
コモリの視点から見ればオルフェとキラは恋人みたいな関係なのだろうと推測できた。
しかも2人は美男美女だ。
野次馬根性が勝り、コモリも2人の後を追っていく。
そんなコモリを見ても周囲は何も反応を示さない。
まるでそこに何もいないように振舞っている。
オルフェとキラはMS用ハンガー内に設けられた通路の上にいた。
2人はハンガーに固定されているMSを見ていた。
コモリも吊られて視線の先にあるMSを見た。
「ガンダム…」
視線の先にあるのはガンダムだ。
だが、シャアのガンダムような赤色でもジークアクスのカラフルな色合いでもない。
全体が灰色だ。
イエローのデュアルアイが灰色の中でも輝いて見えた。
「今からでも一緒にオーブに行けないの?」
キラがオルフェに縋る。
茶色のポニーテールが揺れる。
「俺はストライクが気に入ってるんだ。地球連合の物だが、アラスカに到着するまでは見届けたい」
「もうこれ以上戦ったら死ぬかもしれないんだよ、死んじゃったら2度と会えないんだよ」
キラの言葉にオルフェは困ったような表情を浮かべ、右手でキラの顎を軽く持ち上げる。
アゴ食いである。
この先の展開を予想してコモリのテンションが高まる。
「生きていればいつでも会えるさ」
オルフェの言葉の後、2人の唇が重なる。
静かな時間が流れる。
2人の時間を灰色のガンダムが静かに見守っていた。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ