「やっちゃぇー!!ブッチュー!!」
2人のキスにテンションが上がりまくったコモリが叫ぶのと同時にその視界が闇に覆われる。
「え?」
困惑するコモリの身体が次第に窮屈になる。
身体が窮屈になった訳ではない。
段々と視界が元に戻ってくる。
ボヤケていた視界が元に戻ると同時にコモリは今の自分がいる場所を改めて思い出した。
コモリは何処かの艦のハンガーにいたはずだった。
だが、それは夢のような瞬間だった。
コモリはガンダムG3のコックピットの中にいたままだ。
コックピットのディスプレイには夜のイズマコロニー内部が映し出されていた。
各所で煙が立ち、火災が起きている場所もある。
先程から接触回線でオペレーターのセファがコモリに呼びかけている。
『コモリ少尉!!』
「…バイオセンサーが誤作動したみたい…」
『無事ですか!?』
「今どうなっているの…」
コモリのバイタルはソドン側でモニターされている。
セファが言うにはコモリは20分ほど気絶していたらしい。
戦闘中なのでG3からコモリを引っ張り出すことも出来なかったらしい。
『キシリア様は無事です。テロリストのMAはパイロットが脱出したので活動を停止しました。ソドンは現在パープルウィンドと合流してタンクトップ姿のシャリア中佐とキケロガを回収後、イズマコロニーから出ます』
何が起こっていたのかは気絶していたコモリは分からない。
とにかくキシリアが無事でMAを止めることが出来たのであれば最低限、ソドンの目的は達成できた。
ただ、コモリは気がかりなことがあった。
「ジークアクスとアマテは…?」
ジークアクスの動向はソドンでも監視していたはずだが、混沌の中でロストしてしまったようだ。
『MAを撃破した赤いガンダムと正体不明のMSと一緒にロストしました』
コモリの中にハテナマークが浮かんだ。
そういえば、どうやってテロリストのMAが撃破されたのかはその過程をコモリは知らない。
それを察したのかセファが補足を入れる。
『キケロガが撃墜された後、ゼクノヴァが発生しました。そのゼクノヴァの中から赤色のガンダムが出てきました』
「ゼクノヴァ!?」
自分が気絶している間に大変なことが起きていることをコモリは初めて知った。
しかも一年戦争末期に発生したゼクノヴァとは異なり、何かが出てきたらしい。
『赤色のガンダムはMAを交戦、その途中にgMS-αが赤色のガンダムに加勢、2機でMAを撃破しました』
gMS-α、シャアの赤いガンダムだ。
以前にもソドンからジョンを拉致していたのでイズマに再び現れても不思議ではない。
だが、ゼクノヴァから現れた赤いガンダムとは?
「何がどうなっているの?」
『私も知りたいですよ…ゼクノヴァの動画を送りますね』
コモリの疑問を察してセファはG3のコックピットに動画データを送った。
高速な接触回線だから出来る芸当だ。
G3に備え付けられたマルチタブレットに動画が転送された。
タブレットに付いているタッチペンでコモリは動画を再生した。
動画はソドンの光学カメラから撮影されたものだ。
ゼクノヴァから現れる影から次第に全容が見えた時、コモリは背筋が凍り付いたような錯覚を覚えた。
そのMSの姿はあのよく分からない艦のハンガーにいた灰色のMS、あのイケメンがいうところの「ストライク」に色を塗ったような代物だったからだ。
ケルゲレンのMSハンガーに作業艇が収容されていく。
赤いガンダムとジークアクスを載せた作業艇の収容作業に管制室から参加していたニャアンは赤いガンダムが健在であることに安堵しつつも隣にいるジークアクスに対して不信感を抱いていた。
(このガンダムのせいでジャックは…)
管制室のガラス越しから見えるジークアクス、ジョンにはとても大切なのだろう。
おっちゃんは別件でケルゲレンから離れているのでニャアンは現状をよく分かっていない。
ジオンの最新鋭MSをケルゲレンに収容するというからにはイズマコロニーの騒動を込みで相当な大事なのだろうとはニャアンも分かっていた。
元々、ケルゲレンはソドンへの支援のためにイズマコロニーまで出張ってきたのでジークアクスの収容もソドンからの依頼なのかとニャアンは思っていた。
作業艇にはジョンが変身したガンダムは載っていない。
だが、ニャアンの直観はジョンの居場所を分かっていた。
ジョンはジークアクスのコックピットに乗っている。
しかもジョン以外にも誰かが乗っている。
作業艇の収容が完了し、赤いガンダムのコックピットが開く。
コックピットからのんびりとシュウジが降りてくる。
ニャアンの予想通りというかシュウジはノーマルスーツを着ていない。
そんなシュウジに呆れつつ、ニャアンは解放されたジークアクスのコックピットを見た。
ジークアクスからジョンが降りてくる。
「ジャックだ」
ジョンの健在な姿がニャアンには嬉しかった。
ジョンはドラムバッグとスケボーをハンガーの床に置くとコックピットに戻る。
コックピットからジョンは誰かの手を引いて降りていく。
ジョンが手を引いている人物を見てニャアンの表情が次第に固まっていく。
「なんでアマテが乗ってるの…?」
『理屈はない。でもね、私はジョンに会うために生まれてきたのかもしれない』
『ジョンは割れたスマホみたいなの、このスマホはジョンなの』
ニャアンがマチュとまともに会話をしたのはあの時のショッピングモールの時だけだ。
それでもマチュの人となりをニャアンは好きだった。
だが、ジョンが絡む話以外だ。
「アマテがジャックを戦いに行かせたの?アマテがジャックを不幸にしたの…?」
管制室にいるほかの先輩達に聞こえないような小声でニャアンは呟いた。
「そこは私の居場所だったのに…」
ガラス越しに荷物を抱えたジョンがマチュの手を引いて歩いていく光景をニャアンは見えなくなるまで凝視していた。
掘り下げが足りないと感じる主要人物
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ジョン・マフティー・マティックス
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アマテ・ユズリハ(マチュ)
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ニャアン
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シュウジ・イトウ
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シャリア・ブル
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シロウズ
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サンライズカネバン社長
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シイコ・スガイ