おっぱい大作戦   作:そらまめ

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今回のお話で第10話は終了です。
1ヶ月くらいかかりましたね。


9-10 モックアップ

サイコガンダムとナガラ衆が引き起こしたイズマコロニーでの騒動はグラナダにも伝わっていた。

キシリアのお忍びでの来訪も相まってグラナダとジオン本国、それぞれの行政府は大騒ぎになりながらも自体の把握に努めようとしていた。

 

「ありゃどう見ても連邦軍だ!!連邦め、クーデターでも起こそうってか!?」

「地球連邦政府は関与を否定しています。何なら軍の応援も送ると言ってますよ」

「連邦軍のMSて何ができるってんだ…それ言ったら俺らも戦時中のマイナーチェンジばっかだな」

「キシリア様は無事らしいがとにかく最寄りの基地から緊急出航、初動対応艦を急がせろ、帰ってこない奴は放っておいてもいいから急げ!!」

 

グラナダ基地での騒ぎを尻目にミゲルはエレベーターで地下に降りて行く。

グラナダ基地の地下にある謎の研究施設「天国の記憶」への直通のエレベーターだ。

天国の記憶は一年戦争時代にシャロンの薔薇を収容して研究していたが、第二次ソロモン会戦のゼクノヴァと同時期にシャロンの薔薇は消失してしまった。

 

得られたデータは他の研究施設に回されていることから、シャロンの薔薇が無い天国の記憶には価値がなくなり、定期的な保全検査を除いて殆ど利用されていないはずだった。

しかし、最近になって天国の記憶にキシリアとその配下が立ち入っているという話が、ミゲル達が所属するギレン派に伝わった。

 

ミゲルの目的は天国の記憶に潜入し、キシリア達が何をしているのかを探ることにあった。

 

「ずいぶん潜るな…」

秘密の研究施設と言ってもエレベーターは基地内で使われている物と同型で珍しくはない。

ミゲルは体感的にエレベーターの乗っているのが長く感じた。

エレベーター内のデジタルカウンターが地下100階を表示し、動きが止まった。

扉がゆっくりと開く。

扉の先には非常灯で照らされた一本道の暗い廊下がある。

「さぁ、何が出てくる」

ミゲルも扉に負けず、ゆっくりと外へと降り立った。

 

非常灯とフラッシュライトで照らされた通路はミゲルが想像する以上に綺麗だった。

天国の記憶はグラナダ基地運用開始当初から存在しており、かなり年季の入った施設というのがミゲルの知識だった。

しばらく使ってないなら相応に劣化しているだろうとミゲルは思い込んでいた。

 

目の前の廊下は埃っぽく無いし、非常灯も問題なく点灯している。

保全検査以外にも定期的に掃除されているのだ。

 

(人の手が入ってるな、でも薔薇がない以上ここには何の価値もないはずだぞ)

 

複数ある扉の1つをミゲルは開けた。

そこは空中通路のような場所で周囲をガラスが覆っている。

博物館にあるような説明パネルみたいな物もある。

ズムシティにある戦争博物館に似たような空間だ。

 

MSハンガーの作りに似せてある。なら作りは本物と大体同じだ。

扉の近くに照明を点灯させるボタンがあるはずだ。

どうせ人間は自分以外いないのだから点灯させようとミゲルは決めた。

案の定、扉の横に「照明」とネームライターで貼られたスイッチがある。

「スイッチオン!!」

ミゲルは気合を入れてスイッチを入れた。

 

バッと照明が点灯し、世界が明るくなる。

ミゲルの見立て通りここはMSハンガーのようだ。

何で研究施設にMSハンガーがあるんだろう、ミゲルがそう疑問に思いながら後ろを振り返る。

 

そこには見たこともないようなMSが並んでいた。

 

巨大な空間に見た目もサイズもまるで異なるMS達が並べられていた。

この場所がMS博物館なら分かるが、ここは軍の研究施設だ。

「なんだこりゃ…」

ミゲルはとにかく通路の奥まで歩いてみることにした。

一歩一歩が重くなる錯覚を感じながらミゲルは並べられているMSと通路に設置されたMSの説明パネル、名前しか書かれていないがそれを見比べて行く。

「リーオー、デミトレーナー、ドートレス、フレック・グレイズ…見たことも聞いたことも無いぞ」

サイズはMS-06よりも小さく、外見から見るに統一性と呼べる物が全く無い。

あまりにも意味不明なMS達だが、デミトレーナーという名前のMSの表面をよく見てみるとFRPで出来ていた。

 

(モックアップか、でもなんで?)

 

MSを製作する際の検討用として作られるモックアップはミゲルも戦争博物館で見たことがある。

ここに置かれてあるMS達の大半がFRP製のモックアップで一部はMSの部品が組み込まれているようだが、動くことはまず無さそうだ。

 

並べれているMS達に一瞬だけ怯えたミゲルだが、彼らが偽物だと分かった瞬間、ミゲルの気持ちが軽くなった。

同時にミゲルの中に疑問が湧いてくる。

 

MS開発の中で没になったMSというのは大量にあるだろう。

そのモックアップが天国の記憶の中で保管されている。

キシリアとその仲間達が時折ここに視察に訪れて使えそうなMSを再検討している。

そう考えれば自然だとミゲルは思った。

 

だが、先程ミゲルが思った通り、ここにあるMS達の多くはジオンのMSとは関係があるようには思えなかった。

サイズもデザインからもジオン系とはまるで縁がないように見える。

 

(一年戦争のプロパガンダか?)

 

一年戦争のEMS-10のプロパガンダを巡る話をミゲルは聞いたことがある。

それとは別に計画だけのMSをあたかも存在しているようにでっち上げて連邦軍の諜報機関を騙すといった話もある。

 

歴史を見れば西暦時代の国家総力戦があった時代にも似たようなことをしていたとフラナガンスクールの授業でミゲルは習っていた。

 

(一年戦争時代のモックアップを天国の記憶で保管している…戦争が終わったならさっさと処分するだろう。それにキシリア達がここに来る理由づけにはならない)

 

どうもこの空間の存在がしっくりこないなと思っていると見慣れたMSのモックアップが展示してあることにミゲルは気づいた。

 

紅白に塗り込まれているが、ゲルググのモックアップが展示されていた。

 

見慣れた顔があったのでミゲルは少し安心してゲルググの前へと歩く。

多少の違いは試作段階故の物だろうとミゲルは思い、説明パネルを読む。

 

(RGM-79 ジム、ジムっていうのか…ジム?)

 

説明パネルと目の前のゲルググをミゲルは何度も見返すが説明パネルは何も変わらない。

 

(RGM-79は連邦の軽キャノンだぞ、何かと間違えてないか?)

 

ゲルググ改め、ジムと紹介されたMSのモックアップは多少の違いを加味してもゲルググにしか見えない。

ゲルググのことを抜きにこれを軽キャノンの親戚と考えれば、まぁ似ていないこともない。

ゲルググの脚には存在した推進剤タンクがジムには存在せず、ジムからは連邦軍のMSの作りに似た物を感じる。

 

(当初ゲルググはジムという名前だったが、開発の過程でゲルググという名前に変わった…だったらRGM-79は何なんだよ)

 

見慣れたMSだと思ったら実は全くの別人だったことにある種の恐怖体験をミゲルは覚え、この空間から一度出ようとした時だった。

 

突然、照明が消えた。

 

何の予兆も無くいきなり照明が消えたことにミゲルの心臓が跳ね上がった。

この空間の照明は自動で切れる作りではない。

誰かが照明を切ったのだ。

 

フラッシュライトを付けようとするが、手が震えて思わず落としてしまう。

円柱形のフラッシュライトは暗闇のどこかに消えていく。

暗闇に目が慣れていないのでミゲルは懐中電灯を手探りで探そうとするが見つからない。

ミゲルは今、軽いパニック状態なので端末のライト機能を使おうという発想には至らない。

 

ペタ、ペタ、ペタ…

 

通路の向こう側から足音が聞こえる。

素足と廊下が密着する音がミゲルの鼓膜に響き渡る。

「誰だ!?」

足音はミゲルに近づいてくる。

ミゲルは恐怖心の中でその足音の主を確かめようとする。

だが、嘲笑うかのような多数の目線をミゲルは覚えた。

ミゲルは周囲を見渡す。

 

モックアップ達のカメラアイが一斉にミゲルをロックオンしていた。

 

闇の空間に光る目が自分を見ていることにミゲルの恐怖心が限界まで膨張し、そして破裂した。

 

「ウワァァァァァァァァァァ!!」

 

ミゲルはフラッシュライトの回収をせずにそのまま元来た道を転がるような勢いで走っていく。

先程まで動いていなかった、動くはずのないリーオー、デミトレーナー、ドートレス、フレック・グレイズのカメラアイが光ってミゲルを見つめる。

何回も無様に転がりながらミゲルは元来た扉まで引き返した。

ここまで来ると恐怖心の中に不条理に対する怒りも湧いてきていた。

扉の横にあるスイッチを押そうとする。

だがスイッチはオンのままだ。

ミゲルは何回もオンオフを繰り返すが、光が闇を照らすことはない。

 

ペタ…ペタ…ペタ…

 

足音は変わらずにミゲルに近付く。

再び恐怖時がぶり返し、ミゲルは扉の向こうへと転がるようにして飛び込んだ。

 

薄暗い非常灯に照らされた廊下は先程までは不気味に感じていたが、今ではむしろ安堵感すら覚えていた。

元来た道を引き返して行くと遠くから

 

ペタ…ペタ…

 

足音が聞こえてくる。

足音の方向を振り向かずにミゲルは叫んだ。

「お前なんなんだよ!!」

どうにかエレベーターまで辿り着くとミゲルはすぐにエレベーターの開閉ボタンを押して中に飛び込んだ。

急いで扉を閉めて1階に戻ろうとする。

 

エレベーターがゆっくりと閉まる。

閉まっていく扉の向こうにミゲルは見た。

そこに少女のような人影があった。

扉が完全に閉まり、エレベーターが上へ上へと上がって行く。

ミゲルは先程の光景を冷静に推測しようとするが、心が完全に落ち着いたのはエレベーターが1階に到着してからだった。

 

 

 

ミゲルが見た少女のような人影はエレベーターのデジタルパネルが1階に到着したのを見届けると、元来た道を戻って行く。

空中廊下に人影が入ると先程の闇が嘘のように照明の明るさが支配していた。

 

モックアップ達もミゲルが見たような動きはない。

人影が照らされる。

その人影はミゲルが見た通り少女だ。

一糸纏まとわぬ姿をモックアップ達に晒しながら素足で廊下を歩いて行く。

黒に近い髪色が照明に照らされる。

「お前何なんだよ」

少女がミゲルの言葉を反芻する。

「アマテ・ユズリハ」

アマテと名乗る少女はミゲルが見ることの無かった空中廊下の奥へと消えていった。

掘り下げが足りないと感じる主要人物

  • ジョン・マフティー・マティックス
  • アマテ・ユズリハ(マチュ)
  • ニャアン
  • シュウジ・イトウ
  • シャリア・ブル
  • シロウズ
  • サンライズカネバン社長
  • シイコ・スガイ
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