天才冒険者リオの英雄譚 童貞・処女しか入れないダンジョンを攻略せよ!   作:ナオ3

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テンプレファンタジーの始まりです。
※文章を大幅に修正しました、視点をリオ主体にパーティーメンバの描写を追加しました。王国の正式名称はパルシリア王国に設定します。


1話 汝は童貞なりや?

雲は低く、光を遮っていた。王都から東へ三十リーグ。かつて農地として拓かれ、今は放棄された廃村地帯を、二人の王国兵が巡回していた。

 

先頭を進んでいた兵士が急に馬を止めた。廃屋の裏手、草木に覆われた地面の先に、見慣れぬ構造物が立っていた。

 

 それは白だった。雪のように汚れなく、曇りもひび割れもない。五メートルを超える高さと幅を持ち、まるで建造物の一部のように、地面から直接生えている。扉のような縦長の継ぎ目が中央にあり、装飾は一切なかった。

 

 

「……なんだ、あれは」

 

 

兵士の声に、後方の相棒が応えない。二人とも馬を降り、慎重に近づく。構造物は静かだった。周囲には風も音もなかった。ただ、そこに存在しているだけで空気が張り詰める。

 

神々しい、という言葉が浮かぶほどの威容だった。だが、それは感嘆ではなく、畏怖に近いものだった。

 

 

「近づいてみる」

 

 

先に進んだ兵士が手を伸ばした。指先が白い扉に触れた瞬間、閃光が走った。爆音はなかった。ただ突風のような力が周囲を押し払い、兵士の身体が浮き上がり、数メートル先へ弾き飛ばされた。

 

背中から地面に落ち、土煙を上げて転がる。駆け寄った相棒が呼びかけると、意識はあった。だが指先は赤く焼け、手袋が裂けていた。

 

報告は即座に王都へ送られた。

 

王国は現地へ調査隊を派遣し、周囲を封鎖した。魔術師が魔力を測定しようとしたが、反応はあったものの内部構造は測定不能。門の内部は完全に外界を遮断していた。

 

兵士、冒険者、神官。あらゆる手段が試された。誰が触れても、吹き飛ばされた。破壊も、干渉も、突破もできない。

 

白き門は静かに立ち続けた。魔物も現れず、入口も開かず、ただ威圧だけが存在した。

 

王立魔術院はこの構造物を「白の宮殿」と命名し、高位の神性干渉がある可能性を報告した。人の手で造られたものではなく、ダンジョンの外殻が地上に現出していると仮定された。

 

王国は冒険者たちへの依頼を拡大した。門に触れること。中に入れる者がいるか試すこと。報酬は高額、条件はただ一つ。門に接触せよ。

 

それでも誰一人、中へ入ることはできなかった。

 

門は白く、冷たく、ただ黙して存在していた。

 

三ヶ月が経過した。王都の冒険者協会を通じて、さらに広く依頼が送られた。

 

そしてある日、その依頼が一つのパーティーへ届いた。

 

報酬、目的、期日。すべてが明示された文書を読み終え、五人の冒険者は無言でうなずいた。

 

準備はすでに整っていた。誰もが迷いなく立ち上がった。

 

彼らは王都を発ち、白き宮殿へと向かった。

 

そのパーティーの名は〈暁の剣〉。

 

 

 

 

パルシリア王国所属の冒険者パーティー〈暁の剣〉。

俺、リオ・ハートフィールドはそのリーダーをやっている。孤児院育ちの幼なじみ五人組、パーティーを組んでから五年。今では王国中で俺たちの名前を知らない者はいないくらいの新進気鋭のパーティーになった。

 

 

今日は王国兵に案内されて、一同で“ダンジョン”の前に立っている。

 

 

ダンジョン――というには、あまりにも荘厳な白い宮殿。汚れ一つ許さない神々しい白、その堂々たる威容。三ヶ月前、突如現れた異様なダンジョン。王国が派遣した兵も、騎士も、冒険者も、誰ひとり中に入れた者はいない。皆、扉に触れた瞬間に吹き飛ばされたそうだ。俺たちの番が回ってきたのは、もはや最後の希望みたいなものだろう。

 

 

兵士たちは俺たちを見ている。ちょっと期待もあるのかもしれないが、大半は「あぁ、またダメだろうな」って顔をしていた。

 

 

 

 

「さて、リーダーの俺から行くか」

 

 

 

俺がそう言うと、メンバーの反応が返ってくる。

 

 

ゼイン・クロウ。クールでぶっきらぼうだけど、誰より仲間思いな男。普段の言動は冷静そのものだが、ピンチになれば命も惜しまない熱さを隠している。あいつの魔剣技は、大型の魔物だろうと一撃で葬る。

 

「吹き飛ぶ前提で言うなよ」とため息。

 

でも、ちゃんと俺を見ている。その目はいつも、俺たちのために燃えている。

 

 

ガイル・バロック。重戦士で、巨躯のくせに細かいところにも気を配れる頼れる男。どんな敵でも絶対に後退しない、背中で引っ張るタイプだ。

 

「お姫様のように受け止めてやるから、飛んで来いよ」と豪快に笑う。

 

どんな強敵でも一歩も引かず、その背中がどれだけ頼もしいか、俺は知っている。

 

 

レイナ・ブライトフォード。魔術師で、頭も切れるし、魔法の腕も王国随一だ。レイナがパーティーにいる限り、どんな魔物が出ても怖くないと皆が思っている。

 

「まったく、いつもいつもそうなんだから、リオは……」

 

呆れたような、でもどこか安心したような表情。怒った顔も好きだ。なんだかんだ言って、あいつは俺の背中を一番見てくれている。

 

 

ミリア・セレスティア。パーティーの僧侶、癒し手。そして、俺の最愛の人。優しさにあふれてるけど、それ以上に心の芯が強い。子どもの頃から、いつだって隣にいてくれた。どんな怪我でも、あいつが治してくれるから、俺はここまで無茶ができたんだ。

 

 

「気を付けてリオ。怪我したらいくらでも治すけど、しないに越したことはないよ?」

 

 

そんな声をかけてくれる。ミリアの言葉が、俺の最後の勇気になる。――俺はきっと、今もミリアに助けられている。

 

 

兵士たちは、そんな俺たちのやり取りを微笑ましそうに見ている。けど、誰もが「まあ今回もダメだろう」と、リオが吹き飛ぶのを救助する準備まで始めている。

 

 

 

「それじゃ、いってくるぜ。ゼイン、ガイル、吹き飛んだら頼むぞ」

 

 

 

ゼインが「だから吹き飛ぶ前提で話すな」とため息をつき、ガイルが「お姫様のように受け止めてやるからな」とまた笑う。

レイナは「リオ、本当に慎重にね」と眉をひそめ、ミリアは「大丈夫。リオならきっとできる」と小さく微笑んでくれた。

 

 

深呼吸して、俺は扉に手を伸ばす。

覚悟はできていた。どれだけ派手に吹き飛ばされても、笑い飛ばしてやろうと――

 

 

……その瞬間、扉が音もなく、すうっと開いた。

 

 

 

「あれ……?」

 

 

 

呆然とする俺。

拍子抜けして立ち尽くす。

 

 

誰も何も言えなくなった。俺自身も、何が起きたのか理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

扉が開いた。

あまりに自然に、あまりに静かに――ただ、俺が手を触れただけで。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

拍子抜けしたまま、動けなくなっていると、すぐ背後で誰かが駆け寄ってくる気配がした。

 

 

 

「リオ! 大丈夫か?」

 

 

 

ゼインだ。続いて、ガイル、レイナ、ミリア。みんなが俺のもとに走ってきた。

だけど、俺に近づいた瞬間――

 

 

 

「――うわっ!?」「え?」「きゃっ!?」「なっ……」

 

 

 

バチンと見えない壁に跳ね飛ばされたように、全員が吹き飛んだ。

俺は咄嗟に叫ぶ。

 

 

 

「みんな!?」

 

 

 

けれど、すぐに皆が立ち上がる。

ゼインが唸りながら膝を叩き、ガイルが「いてて……」と頭を掻いている。

レイナはローブをはたき、ミリアは大丈夫だと手を振ってみせた。

 

 

胸を撫で下ろす。

本当に、全員無事でよかった。俺が扉に触れた瞬間に起きたことだ――でも何がどうなっているのか、全くわからない。

 

 

そのとき、少し離れたところで待機していた兵士たちが、ざわついた。

兵士長が、明らかに警戒しつつ俺に近づいてくる。吹き飛ばされないギリギリの距離を保ち、深く頭を下げた。

 

 

 

「リオ・ハートフィールド殿。……どうか、今すぐ王城へ。陛下が、そなたと謁見を望んでおられる。王命により、速やかに同行していただきたい」

 

 

 

頭を下げ続ける兵士長。その声は真剣そのものだ。

俺は、まだ状況が飲み込めないまま小さく返事をした。

 

 

 

「……はい……」

 

 

 

断れるはずもなかった。

 

 

 

 

王城。謁見の間。

 

俺たち〈暁の剣〉は玉座の間に並んで膝をついていた。

王直属の兵士に案内され、謁見を求められたときはただ困惑していたが――こうして玉座の前に立つと、その緊張感が否応なく胸を締め付ける。

 

パルシリア王国の頂点、エドワール三世陛下。

普段は重厚な装飾に包まれた王衣を身にまとい、堂々と玉座に座っているはずのその人が……今は、どこか言いづらそうに眉を寄せていた。

 

視線を落とし、何かを言いかけて――躊躇して、また口を閉ざす。

 

なんだ……?

何か、言いづらいことがあるのか?

まさか、俺たちがダンジョンに入れたことで王国に不利益が出たとか――?

 

そんな焦りが胸をよぎるなか、王のすぐ横に控えていた大臣が一歩前に出た。

 

 

「陛下、それでは私より――」

「いや」

 

 

王は低い声でそれを制した。

 

 

「これは……余が直々に問うべきことだ」

 

 

玉座に座したまま、王は静かに告げた。

その言葉の重みに、大臣も他の側近たちも息を呑んだように口を閉ざした。

 

謁見の間に、重たい沈黙が落ちる。

俺は喉が鳴るのを堪えながら、ちらりと隣を見る。ゼインも、ミリアも、ガイルも、レイナも、みんな緊張した顔で王を見つめていた。

 

しばしの沈黙ののち、王は静かに立ち上がる。

 

 

「〈暁の剣〉の五名よ。立て」

 

 

低く、だが威厳ある声。

俺たちは一斉に姿勢を正し、膝をついた状態から立ち上がった。

 

玉座から数段下がった場所まで降りてきた王は、まっすぐに俺たちを見据えている。

その目は真剣で、決意に満ちていた。

 

 

「……近くで見ると、まだ若いな」

 

 

呟くように言ったその言葉に、俺は一瞬だけ戸惑う。

だがすぐに気を引き締めた。何を言われるにしても、ここでふざけるわけにはいかない。

 

何が起きているのか分からない。けれど、王がここまでの覚悟を持って俺たちに言葉を向けようとしている。

それを受け止めるのが、今の俺たちの役目だ。

 

王は一歩、また一歩と近づいてきて、やがて俺たちの目の前に立つ。

 

 

「リオ・ハートフィールド」

「……はっ」

 

 

思わず背筋が伸びる。

王の視線が俺にだけ向けられる。

 

なぜ俺だけ?

仲間たちのことではなく、俺に――?

鼓動がうるさい。

汗がこめかみをつたう。

まるで剣を向けられているような、異様な緊迫感の中で――

 

王は、口を開いた。

 

 

「そなたは……童貞か?」

 




今まで開けられなかった扉が主人公にだけ開けられる、これぞテンプレ!
暁の剣はミリア以外18歳で後少しでミリアも18歳になります。
この情報を覚えておくと少し楽しくなります。
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