天才冒険者リオの英雄譚 童貞・処女しか入れないダンジョンを攻略せよ!   作:ナオ3

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ヴァリウス視点の話になります。


ヴァリウス 奇跡を求め願う

 

月が冴え冴えと空に浮かんでいた。

全ての準備が整ったのを確認し、深く息を吐いた。

 

 

「動くなよ、レオネル」

 

 

俺は浄化済みの左腕にあたる部位を丁寧に魔法の布で包み込み、それをレオネルの背にしっかりと括り付ける。さらに、魔法の糸で補強し、絶対に落ちないように念を入れる。レオネルの表情は、鬼気迫るほど真剣だった。あいつの気迫は時にこっちが引くほどだが、今日ばかりは――いや、いつにも増して凄まじかった。

 

 

「行け」

 

 

短く告げる。レオネルは一言も発さず、全力疾走で夜の野を駆け抜けていく。その後ろ姿を見送りながら、思わず苦笑が漏れた。

 

 

(……あいつ、やっぱり俺には真似できない)

 

 

あいつの必死さ――誰かを救うことだけを考えて、己の全てを投げ打つ、あの無謀さ。それを真っ直ぐに“美しい”と思える自分が、案外人間くさいのかもしれないとふと感じる。

 

俺はレオネルの姿が闇に消えるまで見届け、それから再び、月明かりのもとに戻った。黒くねじれた肉が純白に浄化され、静謐な輝きへと変わっていた。

 

 

「……オリジン」

 

 

呟いた声が夜気に溶けていく。

俺は、月明かりに照らされた純白の遺骸を、時間を忘れて眺め続けていた。

 

 

「オリジン……まさか、俺が生きているうちに、また観ることができるとはな」

 

 

この遺骸には、未知なる力の奔流が宿っている。それが「オリジン」だ。

細胞の一つ一つが、本来の構造を遥かに凌駕し、魔力をも塗り替えていく根源の輝き。

俺はかつて、遠い先祖たちが伝説としか語らなかった奇跡の一端を、今まさに目の前にしている。

 

 

「なあ、先祖たちよ……オリジンが俺の目の前にあるぞ」

 

 

小さく笑って、夜空を仰ぐ。

俺の家系、グランツ家はアーカディア学術都市の研究者の血を引く。だが、その誇り高い一族は、証明されるはずの真理――すなわちオリジンの存在を巡って迫害され、王国へと逃げ延びた。

追われた理由は単純だった。オリジンの証明によって、それまでの魔術理論や歴史ある研究がすべて過去の遺物にされてしまうのを恐れた者たちが、己の既得権益を守るため、証明に挑んだ者たちを抹殺しようとしたのだ。

 

 

「……ああ、なんて下らない」

 

 

俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

高潔な意思も、現実の権力争いと保身の渦に飲まれれば、ただの泥水に沈むだけだった。

俺の先祖たちは、確かに誇り高い理想と倫理観を持っていた。オリジンの証明も、決して自分の名声や権力のためではなく、魔法の真理を開き、世界の難題を解決する希望として行われていた。

 

 

だが現実は――誰もが知る通りだ。

 

 

「くっくっくっく……俺は、高潔とは程遠いがな」

 

 

独り言ちて、肩を竦める。

この遺骸、純白の輝きを放つオリジンの残滓を見つめていると、次から次へと「可能性」が頭に浮かんできてしまう。

このエネルギーは、人の命を救い、あるいは不老不死すら実現するかもしれない。

新たな武器に応用できるかもしれないし、王国の国力を跳ね上げる根幹資源にもなりうる。

あるいは、完全な魔法障壁――絶対防御の盾にも。

遺伝子の改変、魔術の再定義、医療や農業への応用――いや、それだけじゃない。魔力の原理そのものを書き換える新しい理論体系の構築も可能だ。

 

 

「……やはり、俺は人々の役に立てる、なんて殊勝な動機では動けないか」

 

 

俺はただ、未知なるものの可能性だけを、際限なく追求したいだけだ。

それが世界の役に立とうが、逆に混乱を呼ぼうが――本音を言えば、そんなことはどちらでもいいのかもしれない。

そう自覚しているからこそ、俺は自分自身に苦笑せざるを得なかった。

 

俺は静かな光の中で、ふと幼い自分を思い返していた。

 

俺は母という存在を知らずに育った。物心ついた時にはもう、父だけが唯一の家族だった。

だが父と俺の関係は、世間でよく語られるような「親子」とはほど遠かった。

父は俺に、親としてではなく、師匠として接してきた。

生活の隅々まで律し、余計な情を挟まず、ひたすら「学び」と「研究」のみを要求する日々。

けれど、不思議なことに、俺はそこに一切の不満を持ったことがなかった。

むしろ、あの厳しさこそが「当たり前」だったし、

何より――魔法の研究こそが、俺の生きがいだった。

 

どんなおもちゃよりも、どんな遊びよりも、

魔法式を読み解き、新しい魔術理論に触れ、実験しては仮説を立てる。

それが楽しくて、嬉しくて、寝食を忘れるほど没頭した。

 

父はそんな俺を、特別に甘やかすこともなかった。

成果を見せれば淡々と評価し、失敗すれば冷静に原因と修正を指摘する。

あれが親の愛情だったのかどうか、今となっては分からない。

ただ、当時の俺は「父の厳しさ」こそが自分への最大の期待だと受け取っていた。

 

だがある日、父は俺に命じた。

 

 

「ヴァリウス、お前の魔法は確かに素晴らしい。だが、魔法の研究は人と人との繋がりなしには成り立たぬ。――他者と交流しろ」

 

 

正直、その言葉を聞いた時は、不満でいっぱいだった。

「無駄なことをさせるな」と心の中で何度も呟いた。

魔法の真理を追い求めるのに、なぜわざわざ他人と付き合わねばならないのか?

むしろ人付き合いこそが、研究の邪魔になるのではないかと、本気で思っていた。

 

だが、今になって分かる。

父は、俺自身の“危険性”を、俺以上に理解していたのだ。

 

――知識に溺れ、成果に執着しすぎれば、人は容易く堕ちる。

己の世界に閉じこもり、他者を拒絶する者に、決して魔法の真理は開けない。

父は、そうした道の果てを誰よりも恐れていたのだろう。

 

しぶしぶ外の世界に出たが最初はやはり馴染めなかった。会話のペースも、相手の意図も読みづらい。

正直、誰が何を考えているのか分からず、気疲れするばかりだった。

 

だが――

人生というものは、不思議な出会いで満ちている。

 

エドワールとの出会いは、俺にとって転機だった。

あいつは、他者に対して壁を作らず、常に理性と誠実さで接してくれる男だった。政治家としての冷徹さ、人間としての優しさ――

すべてが混ざり合い、彼にしかない独特の魅力を生んでいた。

エドワールとは幾度となく論争を重ねた。

ぶつかり合い、互いの理論を高め合ううちに、「他者との交流」そのものが、

俺の知識をさらに深めるきっかけになることに気づかされた。

 

レオネルとの出会いは、もっと単純だった。

あいつは、純粋で、ひたすら真っ直ぐな奴だった。

論理とか打算とかよりも、己の信念と正義だけで動く。

ときに愚直で、危うくもあるが、その“無垢さ”が、俺にはまぶしく映った。

 

アンナもまた、強い女性だった。

一見すると物腰柔らかだが、中身は男勝りで胆力があり、

自分の幸せも他人の幸せも、同じ熱量で追い求める。

困難な時こそ最も力強く、周囲に希望を与え続ける――

俺は、アンナの“人間くささ”に強く惹かれていた。

 

三人と友人になれたこと――

それこそが、俺の人生の最大の転機だった。

 

もしも、父の命令通りに他者と関わらず、

ずっと一人で魔法の研究だけに明け暮れていたら、

今の俺はなかっただろう。

 

自分の“危うさ”も、“限界”も、他者との関わりで初めて知ることができた。

父はきっと、それを分かった上で命じたのだ。

 

今、こうして振り返ると、苦笑いしか出てこない。

 

父のことを理解できるまで、ずいぶん遠回りをしたものだ。

だけど、その遠回りこそが、人生に深みを与えるのだろう。

 

エドワール、レオネル、アンナ――

この三人が居なければ、俺はとっくに道を踏み外していた。

今では、心の底からそう思える。

 

 

人生の道のりは遠く、魔法の研究もまだ終わりは見えない。

けれど、今の俺には、支えてくれる友人たちがいる。

 

その事実が、何よりの救いだった。

 

――俺は一人ではない。

俺には、正しい道へ導いてくれる友がいる。

共に悩み、時にぶつかり合いながら、歩んでいける仲間がいる。

 

もし、あのまま一人きりで研究の世界に没頭していたら、俺はどこかで道を踏み外していただろう。

父が危惧した“危うさ”を、自覚もせぬまま暴走していたに違いない。

 

今、こうして月明かりの下、オリジンという奇跡に再び出会えた。

だが、それを正しく扱い、未来へと繋げるためには、俺一人の力では決して足りない。

 

 

(父さん、あんたの言った通りだったよ)

 

 

心の中でそう呟き、俺は静かに夜空を仰ぐ。

 

 

父の最期――

それは、俺の人生の中で最も鮮烈に焼きついた記憶だ。

 

あの夜、父は最後の実験に挑んでいた。

オリジン――永遠の真理、根源の力、魔法理論の頂点にして、誰もが夢見ながら手に入れられなかった奇跡。その存在を証明するため、父はあらゆるものを犠牲にしてきた。

父にとって研究こそが人生の全てだった。

それが俺には痛いほど分かっていたから、父の背をただ黙って見つめていた。

 

父は何も言わなかった。

ただ、淡々と準備を進めていた。

魔法陣を描き、魔力回路を張り巡らせ、論理と理論の粋を集めた複雑な構造体を組み上げていく。

その指先に宿る緊張と、瞳に浮かぶ狂おしいまでの執念。

俺は息を殺して、その全てを見守っていた。

 

やがて、父は最終的な詠唱を唱え、最後の魔力を込める。

空気が震え、空間が歪む。

見たこともない光が迸った。

 

――その瞬間、俺は目を奪われた。

 

あれは、まさしく無限の可能性を孕んだ光。

何もかもが再構成され、世界が“新しく生まれ変わる”ような感覚。

魔法の根本原理すら塗り替えてしまう、純粋な力の奔流。

俺は、死ぬまでこの光景を忘れることはないだろう。

 

だが、父は――その光を見ることができなかった。

 

静寂の中で、父が俺を振り返った。

 

 

「……ヴァリウス。お前は……見えたか?」

 

 

俺は、ただ頷いた。

言葉では、とてもじゃないが説明できない。

全てを超越した“何か”を、この目で確かに観た。

だが、それをどう伝えればいいのか分からなかった。

 

父は、長い沈黙の後、「そうか……」とだけ呟いた。

 

その後、父は何もしなくなった。

あれほど熱心だった研究も、日課だった論文書きも、全て手放した。

まるで何もかもに興味を失ってしまったかのようだった。

それからの父は、信じられないほどの速度で老け込んでいった。

かつては威厳に満ちていた背中も、今や枯れ木のように頼りなくなり、やがて床に臥すようになった。

 

死の淵に立たされた父は、俺を枕元に呼んだ。

財産や研究の相続について淡々と伝えた後、またしても口を閉ざした。

もう何も言うことがない、そんな諦めの色が父の瞳にあった。

 

だが――俺には納得がいかなかった。

研究をしなくなった魔法使いなど、屍も同然だ。

父さん、お前らしくもない。

 

 

「父さん、何故研究をやめたんだ?」

 

 

父は、天井を見上げたまま答えた。

 

 

「オリジンの証明は成された。後はお前が好きにしろ。続けるのもよし、打ち切るのも構わない。悔いはない」

 

 

その言葉に、俺は静かに反論した。

 

 

「嘘だな。未練ばかり、悔いなんて溢れそうになってるだろ? 本心を言えよ」

 

 

父は、一瞬、顔を歪めた。

そして、堰を切ったように言葉を溢れさせた。

 

 

「……憎い」

 

 

その一言から、父の感情が爆発した。

 

 

「憎い、憎い、憎い、憎い、憎い!!!」

 

 

父は俺を睨みつけ、まるで獣のような声で叫んだ。

 

 

「ヴァリウス、お前が憎くてしょうがない!!!!!」

 

「何故だ、何故なんだ!? 何故俺がオリジンを観ることが出来なかった!?」

 

 

俺は思わず訊き返した。

 

 

「俺が、オリジンを観たことを疑ってないのか?」

 

 

父は即座に怒鳴る。

 

 

「疑うわけがないだろうが!」

 

「お前は天才だ、親の贔屓目抜きにしてもな!」

 

 

心底悔しそうに叫ぶ。

 

 

「ああ、お前が観たというならそれが事実なんだろうな!」

 

「お前が居たから……俺はオリジンを観ることが出来ないと証明されちまったんだ……!」

 

 

厳格で無口な人間の本性が曝け出される。

 

 

「畜生!」

 

「俺があれだけオリジンを追い求めていたのに」

 

「息子だけが観ることが出来ただと!? ふざけるな!!!」

 

 

父は、もはや憎悪そのものという形相で、俺を睨みつけて言い放った。

 

 

 

 

 

「お前なんぞ……居なければよかった」

 

 

「こんなにも苦しい思いなど、せずに済んだんだ……」

 

 

 

 

 

 

言い終えたとき、父の力はすべて抜け落ちていた。

そのまま、目を閉じ、永遠の眠りについた。

 

俺は、しばらく何も言えずに父の傍に座っていた。

憎しみ、嫉妬、絶望――父が最期に見せたものは、父という人間の底の底に沈んでいた「本心」だった。

だが、それを聞けて、俺は不思議と安堵した。

 

 

(父さん、やっぱりあんたは親だよ)

 

 

俺は、誰もいない部屋で、小さく呟いた。

 

 

「……ありがとう、父さん」

 

「その憎悪と苦しみこそが――」

 

「俺を愛してくれた証だろ」

 

 

俺は、あの夜の父の叫びを、永遠に忘れない。

 

父は、自分の弱さも、嫉妬も、絶望もすべて、俺にぶつけてくれた。

その痛みが、俺にとっては何よりも強い“愛”の証だった。

 

俺はあれから、父が遺した研究と、父から受け取った全ての想いを抱えて、魔法の道を歩き続けている。

 

父の憎悪も、苦しみも、すべて受け止めて、俺は進む。

オリジンの光景と、父の絶叫を胸に刻みながら――

 

 

俺はもう一度、遺骸に目を落とす。

内部を巡る光、その一つ一つが、紛れもなく「オリジン」だと分かる。

何の迷いもなく、俺は確信できた。

この感覚、過去に一度だけ――父の最期の実験で目にしたあの「光」と同じものだ。

 

 

「父さん、あんたの実験は無駄じゃなかったよ」

 

 

思わず呟いてしまう。

あの時、あの場所で観た“可能性の奔流”――あれがなければ、俺は今目の前にあるこの輝きを“オリジン”だと断言することはできなかったはずだ。

 

 

「……あれがあったから、遺骸に含まれてるのがオリジンだと分かったんだからな」

 

 

父なら、きっと不機嫌に笑いながらこう言うだろう。

 

 

「自分で観ることが出来なければ意味が無い、とわめくだろうけど」

 

 

月の光は静かに遺骸を照らし、俺の心にも静かな熱を灯す。

 

 

この輝き――

 

それは、あらゆる可能性を孕んだ“原点”だ。

命を甦らせることもできるし、不治の病を治すこともできるだろう。

逆に、戦争の道具として使えば、どれだけ多くの命を奪うか想像もつかない。

 

オリジンは、良くも悪くも――

「可能性そのもの」だ。

 

救いにもなり、絶望にもなる。

人を幸せにもできるし、破滅にも導く。

 

俺の頭の中には、利用方法が無数に浮かんでは消えていく。

医療、魔術、兵器、再生、進化、そして時には支配や淘汰すらも……。

 

これほどの力を、どう使うかは持つ者次第。

正義も悪も、その時々の都合で変わってしまう。

そう、これは単なる

 

 

 

 

奇跡

 

 

 

 

 

夜風が微かに俺の頬を撫でた。

 

オリジンの考察に没頭していた思考が、ふと途切れ、見上げれば、雲間から冴え冴えとした月が顔を覗かせている。

 

 

「……レオネル」

 

 

無意識に、俺の口から親友の名が零れる。

あの時――浄化したばかりの業魔の左腕を背に、

夜の闇を裂くように疾走していったレオネルの姿が、まぶたに焼きついて離れない。

 

必死の形相。

背中に背負うものの重さを、ひしひしと感じさせる決意。

あいつは一度決めたことを、決して曲げない男だ。

 

 

「アンナ……」

 

 

月に祈るような気持ちで、俺は今にも消えてしまいそうなアンナのことを思う。

かつて誰よりも強かった彼女が、今は床に伏し、

その命の灯火が今にも消えそうになっている。

 

 

「……間に合ってくれ」

 

 

この言葉は――

俺の人生で、初めて本心から誰かに“祈る”気持ちを込めた瞬間かもしれない。

俺は研究者で、理屈の生き物で、神や運命や奇跡なんて、どこか他人事のように思っていた。

だが、今夜だけは違う。

 

どうか、レオネルが間に合ってくれ。

どうか、アンナの命が繋がっていてくれ。

あいつらの未来に、奇跡が残されていてくれ――

 

俺はそっと、浄化された業魔の遺骸を撫でる。

月の光が照らすその純白に、低く囁きかける。

 

 

「……お前が、本当に奇跡を起こせるなら」

 

 

「俺ではなく、あの二人に与えてやってくれ」

 

 

「俺には、必要無い」

 

 

本心だった。

俺は自分が傷ついても、報われなくても、どうでもよかった。

この手の中に“奇跡”があるのなら、

この世界で一番それを受け取るべきなのは、あの二人だと心から思った。

 

 

(ああ、そうだ……)

 

(レオネルとアンナ……)

 

(あそこまで一途に強く、愛し合える二人こそ――)

 

(奇跡を得られるべきだ)

 

 

思わず自嘲気味に口元が歪む。

 

 

――こんな自分がいることに、心底可笑しさを覚える。

 

 

「くっくっく……」

 

「……あーはっはっはっはっは!」

 

 

夜空に響く、自分の笑い声。

思えば、俺はこれまでずっと「ロクデナシ」を自称してきた。

真理の探究のためなら、倫理も人情も置き去りにして突っ走る自分。

誰の気持ちも考えず、ただ未知の可能性だけを求めていた。

それが、俺という存在だと――そう信じていた。

 

 

「……俺は、ロクデナシだと思っていたが」

 

 

浄化されたオリジンに、ポンと手を置いて囁く。

 

 

「どうやら、違ったようだ」

 

 

あいつらの幸せを願って、こんなにも切実に祈る夜が来るなんて、

 

 

(……やはり、あいつらと関わったせいだな)

(他人と関わることで、ここまで自分が変わるとは思わなかった)

 

 

月がますます冴え、夜空の星々がきらめく。

 

 

「……頼んだぞ、レオネル。お前なら、どんな絶望だって覆せる」

「アンナ、お前こそ奇跡を手にするにふさわしい」

 

 

そう呟きながら、俺はもう一度オリジンに視線を落とした。

 

 

「奇跡の根源よ。俺ではなく、あの二人に微笑んでやってくれ」

 

 

夜風が優しく吹き抜ける。

胸の中の祈りが、ほんの少しだけ温かさを生んだ気がした。

 

――本当に、俺はもう「ロクデナシ」じゃないのかもしれない。

それが、今はただ、少しだけ誇らしかった。

 

 




ロクデナシを自称する奴は実はロクデナシじゃないの良くある。
狭くて深い情の男ですヴァリウスさんは。
エドワールさんは根回しの為に離脱しています。
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