天才冒険者リオの英雄譚 童貞・処女しか入れないダンジョンを攻略せよ!   作:ナオ3

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レオネルサイドで前話の続きです。


レオネル 疾る愛

夜の闇を裂くように、僕は駆け続けていた。背に括りつけた業魔の左腕。望んでやまなかった奇跡のかけら。その存在も、若返った自分の姿も、誰にも晒すわけにはいかない。だから、馬よりも速く、地を蹴る足に余計なためらいはない。

目的は一つ。アンナのもとへ、できるだけ早く帰ること。

 

アンナの余命は、もはやほとんど残されていない。医者にも神官にも、もう望みはないと告げられた。だが僕は、諦めるわけにはいかなかった。心臓が破裂しそうなほどの焦りと希望が胸の中でせめぎ合っている。

 

走りながら、脳裏に浮かぶのはアンナとの思い出ばかりだった。

 

アンナとは、生まれた時からほとんど一緒だった。幼い頃から僕は引っ込み思案で、人前に出るのが苦手だった。だが、明るく元気なアンナは、そんな僕をいつも外の世界へ引っ張り出してくれた。彼女の笑顔があれば、どんな困難も乗り越えられる気がした。

 

騎士の家に生まれた僕には、騎士になることが宿命づけられていた。剣を持ち、王国のために戦う。それが僕の役割だと、幼いながらに覚悟していた。でも、不安もあった。自分に務まるのか、責任を果たせるのか。そんなとき、いつも傍らにいて支えてくれたのがアンナだった。

 

 

「大丈夫だよ、レオネルなら絶対にやれるよ」

「私がいるから、怖くないでしょ?」

 

 

いつもそう言って、僕を勇気づけてくれた。

 

やがて、邪竜との戦いが訪れた。僕が絶望しかけたその時、アンナは僕を庇って傷を負った。

あの時の光景は、今も鮮烈に胸に焼き付いている。

それ以降の記憶は無い、気付いたら肉塊の上に立っていた。

話を聞くと僕が邪竜を惨殺したらしいが、どうでもいい。

代償はあまりに大きかった。アンナは子を産む力を失い、余命も長くはないと宣告された。それでも、アンナは決して泣かなかった。いつも通り、僕の前では明るく振る舞っていた。

 

 

彼女が僕を見てくれてる様に、僕だって彼女の事を見ていたんだ。

強がってたのは目に見えていた、とても深く傷ついてたのは僕でも見抜けた。

それでも、僕は彼女と離れたくなかった。彼女の側にいることが、自分のすべてだった。

だから、迷わずプロポーズした。アンナは何度も何度も断った。

「哀れみなんていらない」と。「重荷になりたくない」と。

それでも、僕は引かなかった。

 

 

「アンナじゃなきゃ駄目なんだ」

「君がいない人生なんて、考えられない」

 

 

子供のように駄々をこねるように、何度も何度も告白した。

やがて、アンナは根負けしてくれた。

 

 

「もう……レオネルには敵わないわね」

 

 

そう言って微笑んでくれた時の顔が、今でも目に焼き付いている。

 

 

アンナと結婚したことに、後悔など一度もなかった。だが、世間は違った。王国の騎士団長、竜殺しの英雄が「キズモノ」の女を妻にした――その事実は、僕の想像以上に波紋を呼んだ。

 

 

「哀れな女を救ってやった」「子供を宿せぬ女を愛してやった」

 

 

そんな風に、施しを与えたかのように言われた。

それだけは、本当に耐え難かった。

僕が、彼女じゃなければ嫌だと子供のように駄々をこねて、どうしてもアンナが良かったのに。

施しでも、哀れみでもない。自分の幸せのために彼女を選んだだけだというのに。

 

もしかしたら、自分のエゴで彼女を苦しめていたのかもしれない。

眠れない夜を過ごしたこともあった。

 

だが今、僕の背には奇跡がある。

これが本当に彼女を救えるものかどうか、分からない。だが、希望を託すしかない。

もう一度、彼女とやり直したい。普通の夫婦として、何気ない日々を積み重ねていきたい。

もしも許されるなら、子供を抱かせてやりたい。彼女の笑顔を、未来永劫守り抜きたい。

ただ、それだけでいい。

 

鼓動がうるさいほど早くなる。不安と希望が渦巻く。だが、立ち止まることはできない。

魂が急げと叫び、肉体はそれに応える。

すべては、アンナのために。

 

夜明けが近づく。王都の灯が、遥か遠くにぼんやりと見えてきた。

その向こうに、アンナがいる。

もうすぐだ、アンナ――今度こそ、君を救ってみせる。

 

たとえこの身がどうなろうと、君に未来を。

願いを胸に、僕は走り続けた。

 

 

 

 

 

自宅の前に立つと、まだ深い夜の冷気が肌に刺さる。

 

この家は決して小さくはないが、王国騎士団長としては質素だとよく言われる。王都の大通りから少し外れ、目立たぬ立地に、煉瓦造りの落ち着いた外観。

大きな屋敷なら王城の近くにちゃんと用意されている。だが、そちらに落ち着いたことはほとんどない。アンナが気兼ねなく暮らせるよう、静かで、居心地のいい場所がよかった。豪奢さも格式もいらない。ただ、彼女が穏やかに過ごせる空間だけが欲しかった。

 

だが今、その家に帰ることすら容易ではない。僕は若返り、まるで二十歳そこそこの自分に戻ってしまった。

それがどれだけ異常か、誰でもすぐに気付いてしまうだろう。

今の僕の姿を、公にするわけにはいかなかった。

 

そのため、裏口から回り込むようにして家に近づき、まず頼るべきはあの二人だと決めていた。

幼い頃から仕えてくれている執事のエルマーと、メイド長のマチルダ。彼らは両親の代からの忠実な家人であり、同時にアンナの両親でもある。

 

 

夫妻の部屋の窓辺で、そっとガラスを叩く。

 

 

「……エルマー、マチルダ、僕だ。レオネルだ」

 

 

最初は寝ぼけた様子だったが、やがて薄暗い室内からカーテン越しに二つの顔が現れる。驚きと混乱が入り混じった表情で僕を見つめていた。

 

 

「レオ……ネル……様?」

「そんな、いや、間違いなくレオネル様……」

 

 

エルマーが窓を開け、マチルダが手を口に当てる。無理もない。僕の姿は若いころのレオネルそのものだったのだから。

 

 

「レオネル様……その、お姿は?」

 

 

エルマーが戸惑いの声を漏らす。

 

 

「ごめん、説明する事は出来ない。誰にも見られずにアンナの部屋に行けるよう取り計らってほしい。今の僕の姿は公にするわけにはいかないんだ」

 

 

切実な思いが自然と声に滲む。

マチルダが少し震えた声で言う。

 

 

「……どうされたのです、レオネル様」

 

「……お願いだ。アンナに会いたい。メイドや使用人にバレずに、アンナの部屋に連れて行ってほしい。どうか……頼む」

 

 

アンナの部屋は人の通りが多い所にある、体調が急変したときに速やかに対処する為に。

メイドが頻繁に様子を確認するから人目につかずに忍び込むのは無理だ、どうしても助けがいる。

 

夫妻はただならぬ気配を感じ取ったのか、一瞬顔を見合わせる。長年仕えてきた経験と、親としての直感。二人の中で、ただごとではないことがすぐに伝わったのだろう。

 

 

「……アンナを救えるかもしれないんだ。――それだけは信じてほしい」

 

 

自分でも驚くほど弱い声だった。だが、どんな奇跡も、もはや疑っている暇はない。

 

 

「ああ……アンナ……」

「レオネル様……アンナをお願いします」

 

 

涙声でそう告げると、夫妻は即座に行動に移った。老体には不釣り合いなほど素早く、だが静かに部屋の中を片付け、寝間着の上に上着を羽織って、僕に合図を送る。

 

 

「こちらへ……」

 

 

エルマーが静かに言い、マチルダが足音を忍ばせて先導する。

 

深夜の家は、普段の昼間とはまるで別の顔を見せる。寝静まった廊下の隅々に目を配りながら、夫妻は熟練の仕草でメイドや下働きと鉢合わせないように動いてくれる。いざというときのために、何度も非常時の手順を話し合っていたのだろう。

アンナの部屋までの道のり、途中ですれ違う者もいない。

 

その間、僕の胸は不安と期待で高鳴っていた。エルマーもマチルダも、僕の頼みを無条件で信じてくれた。そのことが、何よりありがたかった。

 

やがて、夫妻はアンナの部屋の前で立ち止まった。

 

 

 

 

 

僕はアンナの眠る部屋に足を踏み入れた。長年住み慣れたはずの我が家なのに、今はまるで知らない場所のように感じる。扉を閉めると、エルマーが小さく頭を下げて言った。

 

 

「レオネル様、どうかアンナを……」

 

 

僕は深く頷いた。

 

 

「アンナは僕の妻だ。絶対に助ける」

 

 

――本当は確信なんてない。どんな奇跡を起こすのかも分からない。だが、いまさら疑ってなどいられない。希望に縋るしかなかった。

 

 

「誰にも見られないようにしてくれ」

「はい」

 

 

エルマーはそれだけ言い残し、そっと扉を閉めて退出した。

 

部屋にはアンナの寝息だけが静かに響いている。月明かりがカーテンの隙間から差し込み、ベッドの上の彼女の顔をぼんやり照らしていた。かつては快活で、笑顔が眩しかったアンナ。その面影は今ほとんどない。頬はこけ、肌も青白く、まるで枯れた花のようだった。

 

最近は会話すらできていなかった。声をかけても、手を握っても、ほとんど反応がない。

 

 

(アンナ……もう、時間がないんだな)

 

 

アンナの命の灯火は、今にも消えそうだった。

 

僕は背負ってきた業魔の左腕を取り出す。見た目はただの肉塊。だが、これに望みを託すしかなかった。

 

 

「……頼む。生きてくれ……!」

 

 

手が震える。だが、もう迷いはなかった。肉を齧り付き、しっかりと咀嚼して柔らかくする。そして、アンナの唇にそっと口を重ねて口移しをする。

 

 

「お願いだ、アンナ……頼む……」

 

 

祈るような気持ちで、何度も、何度も肉を口移しで食べさせた。アンナは最初、何の反応も示さなかった。けれど、数度目の口移しのあと、苦しそうな声をあげた。

 

 

「……っ、あ……」

 

 

驚いた。最近のアンナは、何をしてもほとんど反応を示さなかった。けれど今、苦しそうではあるが確かに生きている証――声が出ている。

 

 

「大丈夫だ。僕が、ここにいる。君を絶対に――絶対に助けてみせる……」

 

 

僕は全身が震えながらも、口移しを続けた。アンナは時折呻き声を漏らし、顔を歪める。もしも、この行為が彼女を苦しめているだけなら――そんな不安が頭をよぎる。それでも、やめるわけにはいかなかった。

 

 

(お願いだ、耐えてくれ――!)

 

 

何度も祈った。もう一切の躊躇はなかった。ただ、奇跡を信じ、命の糸を繋ごうとするだけだった。

 

やがて、骨のひとかけらまで口移しで食べさせ終えた。僕は荒い息をつきながら、アンナの顔を見つめた。

 

――その変化に、息を呑んだ。

 

アンナの肌から青白さが消え、ほんのりと紅潮している。やせ細っていた頬はふっくらと張りを取り戻し、体全体から生気が感じられた。なにより、年老いたはずの彼女が、まるで二十歳の頃のような若々しい姿に変わっている。

 

その呼吸は穏やかで、しっかりと胸が上下していた。

僕は思わずアンナの肩を揺さぶった。

 

 

「起きてくれ。……僕だ、レオネルだ!」

 

 

胸が張り裂けそうだった。これが現実かどうかも分からない。

 

やがて、アンナがゆっくりと目を開けた。寝ぼけたように、こちらを見つめる。

 

 

「……レオ…ネル…? なんだか、若いわね……」

 

 

弱々しいが、しっかりとした声。アンナは寝ぼけ眼で僕の顔を見つめ、夢でも見ているかのように微笑んだ。

 

 

「アンナ……! よかった、本当に、よかった……!」

 

 

堪えきれずに涙があふれた。僕は彼女を強く抱きしめる。震える手で、何度も彼女の名を呼んだ。

 

 

「レオネル……もう、いくつになっても子供なんだから……」

 

 

アンナは呆れたように、けれど優しい声で僕の背を抱き返してくれた。

その温もりに、ようやく僕は救われた気がした。

 

 

「……本当に、生きていてくれてありがとう……!」

 

 

声にならない嗚咽が漏れる。けれど、それでよかった。いまこの瞬間だけは、奇跡が僕らに微笑んだのだ。

 

僕は、彼女の耳元で何度も何度も、「愛している」と囁いた。アンナはそのたびに、ふっと笑ってくれる。

 

夜明け前の静寂の中、僕たちは二人きりの世界にいた。過去も未来も、この一瞬の奇跡の前には無意味だった。

 

たとえ、これが夢でも――もう一度、アンナを抱きしめることができた。その幸せが、胸の奥にずっと残り続ける気がした。

 

 

 

 

 

アンナの部屋に朝日が差し込み始める頃、僕の胸は落ち着かない高鳴りで満たされていた。昨夜の出来事がすべて夢のようで、何度も彼女の頬や手を確かめずにはいられなかった。アンナはベッドの上でゆっくりと身を起こし、目元を何度もこすったあとで、ようやく僕の方を見た。

 

 

「ようやく、頭がハッキリしてきたわ」

 

 

まだ眠たげな、けれどどこか冴えた声。その瞳に聡明な光が戻っているのが嬉しかった。

 

僕はそれだけで胸がいっぱいになったが、言うべきことが山ほどあることを思い出し、口を開く。

 

 

「アンナ、信じられないかもしれないけど……」

 

 

だが、アンナは僕の言葉を手のひらで制し、真剣な表情で僕を見つめる。

 

 

「待ちなさい、レオネル」

 

「アンナ?」

 

 

彼女はしばし考え込むように顎に手を当てると、静かに語り出す。

 

 

「若返ったあなたと私、ただならぬ事態が起きたことだけは分かるわ」

 

「ここで話すのはやめなさい」

 

 

アンナは落ち着いた口調で続ける。

 

 

「若返り、そして死にかけた私が健康になった。……知られたら王国が崩壊するわね」

 

 

あまりの冷静さに、思わず苦笑してしまう。

 

 

「ああ、昔と変わってない」

 

 

アンナは大きなため息を吐きながら、僕に向かって少し怒ったように言う。

 

 

「あなただって変わってないでしょーが!」

 

 

二人で顔を見合わせて、思わず笑い合った。

まるで昔に戻ったようだった。あの頃の僕らと何も変わらない。だからこそ、この時間が愛おしくてたまらなかった。

 

 

「すっかり忘れてた。君ってこうだったんだよなぁ……」

 

 

アンナは複雑な表情を浮かべながらも、冗談めかして言い返す。

 

 

「死ぬ寸前になれば少し位しおらしくもなるわよ」

 

 

僕は思わず微笑みながら答える。

 

 

「うん、やっぱりアンナは元気な方がいい」

 

 

照れ隠しに背を向けるアンナだったが、どこか誇らしげな笑顔を浮かべていた。

 

 

「まあ、少しは女らしくしてみるわ。母親になれそうだし」

 

 

その言葉に、僕の思考は一瞬止まる。

 

 

「えっ?」

 

 

アンナは自信に満ちた瞳でこちらを見つめる。

 

 

「妊娠できる。なんとなくだけど、わかるの」

 

 

驚きで言葉を失う僕を見て、アンナは少し不安げな顔になる。

 

 

「なによ……子供、欲しくないの?」

 

 

僕は我慢できずに、アンナを強く抱きしめていた。

 

 

「産んでくれ」

 

「いいわよ」

 

 

その瞬間、僕の中の男の本能が、久しぶりに熱く騒ぎ出す。若返った体のせいだろうか、それともずっと枯れていた想いが爆発したのか、もう自分でも制御できない。僕はアンナをベッドに押し倒す。

 

アンナは驚いたような、そしてどこか嬉しそうな顔で僕を見上げる。

 

 

「もう、レオネルったら……」

 

 

僕はそのままアンナの唇に口づけようと身を乗り出した。

 

 

――と、そのとき、部屋の隅から不意に咳払いが二つ、響いた。

 

 

「コホン、コホン」

 

 

驚いて振り返ると、そこにはエルマーとマチルダの夫妻が立っていた。

 

 

「……レオネル様、秘密にしなければならないのに、痕跡が残るようなことをしてはいけませんよ」

 

 

夫妻の真面目な声に、僕は一気に力が抜けてベッドの上でしおれるしかなかった。

アンナは呆れ顔で、でも少し嬉しそうに文句を言う。

 

 

「もう、お父さんお母さん、無粋よ!」

 

 

夫妻はそれでも厳しい顔のままだったが、ふとアンナに目を向けると、堪えていた涙が溢れ出す。

 

 

「アンナ……本当に、本当に……」

 

 

アンナはベッドの上から、やさしく微笑んで二人に言った。

 

 

「おはよう、お父さん、お母さん」

 

 

その一言で、夫妻はもう堪えきれずにアンナの元に駆け寄り、娘を強く抱きしめる。マチルダが涙を拭いながら「生きていてくれて、ありがとう」と何度も何度も繰り返した。

 

エルマーも、肩を震わせながら「よかった、よかった」とだけ言って、何も言葉が続かなかった。

 

アンナは幼い頃のように「ふふ、お父さん、そんなに泣かないで」と両親の背を撫でる。

 

その光景を、僕は胸の奥が熱くなる思いで眺めていた。

こんな幸せな朝がまた訪れるとは、想像すらできなかった。

 

アンナが僕の方を振り返る。

 

 

「レオネル、来なさい」

 

 

促されて、僕は夫妻とアンナのそばに歩み寄る。三人で抱き合う姿に加わり、自然と僕も腕を回した。

 

家族の温もり。自分が本当に欲しかったものが、ここにあると感じる。アンナの肩越しに見えるエルマーとマチルダの涙は、僕の心をさらに強く締めつける。ああ、これが僕の守りたかった幸せなんだ、と胸の奥に確信が宿る。

 

 

「ありがとう……ありがとう……」

 

 

気づけば、僕の頬にも涙が伝っていた。

しばらく四人で抱き合っていると、アンナがそっと顔を上げて微笑む。

 

 

「さあ、みんな……私は大丈夫。元気になったの。だから、心配しないで」

 

 

マチルダは娘の手を取ったまま、震える声で答えた。

 

 

「アンナ……奇跡よ、奇跡だわ……」

 

 

エルマーもまた、かつての厳格な執事らしさを忘れて、父親の顔で何度もうなずいた。

 

 

「レオネル様……感謝してもしきれません」

 

「……僕も、まだ信じられない。けど、これは奇跡だ。アンナが生きている、それだけで……」

 

 

アンナがそっと僕の手を握り、「これからは、みんなで新しい人生を始めましょう」と力強く言ってくれる。

 

その言葉に、僕はうなずきながら、心の奥底から感謝の思いを送る。

 

 

(ありがとう、リオ殿、エドワール、ヴァリウス。本当に、ありがとう――)

 

 

こうして僕たちは、再び家族としての一歩を踏み出した。

夜明けの光の中、温もりに包まれた幸せをかみしめながら、僕は心の底から願うのだった。

 

――これからの日々を、大切に生きていこう。どんな未来が訪れようとも、この幸せだけは決して手放さないと。

 

そして、奇跡をくれた全てに、静かに感謝を捧げた。

 

 




とんでもなく重いなこの夫婦。
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