天才冒険者リオの英雄譚 童貞・処女しか入れないダンジョンを攻略せよ!   作:ナオ3

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テンプレ劇場始まるよ!


3話 とある童貞の青春殺人事件

俺は無言だった。

 

さっきから王様が真面目な顔で語っているけど、頭にまったく入ってこない。

なぜなら……内容が、バカすぎる。

 

――童貞・処女しか入れないダンジョン。

 

事の真相は、想像以上に斜め上だった。

 

しかもその事実が判明するまでの経緯も、真顔で語られるたびに、俺の中にもう一発ツッコミをぶち込みたい衝動が募っていく。

 

でも、言えない。

 

ここでまた叫んだら今度こそ本当に侮辱罪で首が飛ぶかもしれない。

今この場には王、大臣、貴族、騎士団長、メイド(なぜかまだいる)、全員見てる。

 

 ――耐えろ……俺……!

 

叫び出しそうになる喉を全力で押し殺し、ツッコミの衝動を胃の奥に飲み込む。

冷や汗が滝のように流れる。歯を食いしばり、まるで修行僧のような顔になっていたと思う。

 

 

「……っふー……」

 

 

ようやく全身から力が抜けて、なんとか衝動を抑えきった。

生きた心地がしなかった……。

 

俺が正気を取り戻すと、周囲は妙な空気に包まれていた。

 

パーティーメンバーは、俺の顔を心配そうに見ている。

ゼインは眉を寄せ、ミリアは口元を押さえ、ガイルは笑っていいのか困った顔をしてる。レイナは「またか……」って目で俺を見ていた。

 

逆に王城の面々はというと――

 

 

「よく耐えたな」「あれを笑わずに受け止めるとは」「これが真の器……」

 

 

全員が感心した顔で、何故か拍手している。

あの、俺、我慢しただけなんですけど。ツッコミを。

 

……そして、俺はずっと疑問だったことをようやく口にした。

色々と、本当に色々と聞きたいというかツッコミたい部分を棚に上げて。

 

 

 

「……あの、王様。だったらどうして、“童貞・処女しか入れない”ってことを国民に発表しなかったんですか?」

 

 

それが最初からわかっていれば、こんな大騒ぎにもならなかったんじゃないか。

王は一瞬、静かに俺を見て――ゆっくりと口を開いた。

 

 

「逆に聞くが、リオ・ハートフィールド。もし発表されていたとして……そなたなら、どう思った?」

「……っ」

 

 

言葉に詰まった。

 

……いや、そりゃ……

 

“童貞しか入れない”って国中に言いふらされたら、バカにするだろ。

というか混乱するし、噂が独り歩きするし、冒険者ギルドは荒れるし、何より恥ずかしすぎる。

名乗り上げたら、「僕、童貞でーす!」って宣伝するようなものじゃねぇか⋯

冒険者なんてプライド剥げば何も残らない生き物がそんな生き恥晒すわけがない。

最悪なのがダンジョン攻略中は童貞・処女であることを強いられてしまう。

絶対に立候補する奴いないってこれ。

 

 

……黙ってしまった俺を見て、王は穏やかに頷いた。

 

 

「それが答えだ」

 

 

続けて、王は真面目な口調で語り始める。

 

 

「兵士も、騎士も、冒険者も――戦場に生きる者は、いつ命を落とすか分からん。だからこそ、腕の立つ者ほど“悔いを残さぬよう”性経験を積んでおく」

 

 

……さらりとすごいこと言ったな、この人。

 

 

「ルーキーや非戦闘員の中には、確かに純潔を保っている者もいるだろう。しかし――」

 

 

王はわずかに声を落とし、苦しげに目を伏せた。

 

 

「そんな彼らを、この異質なダンジョンに送るのは、“殺せ”と言っているのと同じ。だからこそ、余は……」

 

 

腕の立つ、歴戦の者たちを片っ端から挑戦させた。だが、誰一人として中には入れなかった。

 

――そう。

 

その扉が開いたのは、俺が触れたときが初めてだった。

 

俺が――童貞だったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれ?

……あれ?

 

童貞だったから?

じゃあ……俺以外のメンバーは――弾かれた……?

 

つまり。

 

つまり……!?

 

俺は、静かに、しかし確実に、真実に気づいてしまった。

 

ずっと見ないようにしてた。心のどこかで気づいてた。でも気づかないフリをしてた。

 

震える視線を横に向ける。

 

ゼインは額に手を当てて、目を逸らしていた。

ミリアは顔を真っ赤にして、わずかに俯いている。

ガイルは鼻をこすっていて、レイナは無表情で腕を組み、壁を見ていた。

 

……全員、死ぬほど気まずそうだった。

 

……あ、ヤバい。

 

今、俺、めっちゃ固まってる。

目の前に広がる光景は、認めたくない現実そのものだった。

 

俺以外のパーティーメンバーが――全員、弾かれた。

つまり、入れなかった。

つまりつまり、そういうことで。

 

 

「……あっ」

 

 

声にならない声が漏れた瞬間、謁見の間の空気が一気に重くなった。

 

王城一同、全員の目が俺に注がれていた。

 

だがそれは、あからさまな哀れみや嘲笑ではなかった。

むしろ、いたたまれなさと気まずさの詰まった――まるで「ご愁傷様」と言いたげな、あの空気。

 

大臣たちは咳払い一つできず、兵士たちは物音一つ立てないように静まり返っている。

誰もが空気に殺されそうな顔をしていた。

 

そして――

 

俺が見てしまった。

目を逸らしたかったパーティーメンバーの顔を。

 

ゼイン。ミリア。ガイル。レイナ。

 

全員、蛇に睨まれたカエルみたいな顔してた。

目は泳ぎ、呼吸も浅く、顔がこわばっている。

 

いやいやいや。なにこの地獄。

なんで俺、童貞のせいで精神的な拷問を受けてんの!?

 

と、その空気を切り裂くように――

 

 

「……尋ねづらいが、聞かねばなるまい」

 

 

王が、絞り出すように言葉を口にした。

少し震えていた。恐らく、これまでの人生で最も聞きたくなかった質問だったに違いない。

 

 

「〈暁の剣〉の皆よ……そなたたちは……童貞・処女なのか?」

 

 

王城謁見の間で、王様に性経験を問われる冒険者パーティー。

冷静に考えても状況がめちゃくちゃすぎる。

 

しばしの沈黙。

 

やがて、最初に口を開いたのは――ガイルだった。

 

 

「……俺とレイナは、互いに……その、初めてを……交換した」

「……ええ。遠征の帰りに……その、ね」

 

 

レイナも小さくうなずく。

 

俺は、意外といえば意外、納得といえば納得だった。

 

 

「あー……二人ってよく言い争ってたけど、そういう関係だったんだなあ」

 

 

まるで他人事のように脳内で整理していた。

うん、まあ、よくある流れだ。仲が悪そうに見えるのに、実はってやつ。

 

次に視線が向けられたのは――ゼインと、ミリア。

 

 

「……俺たちも。互いに……捧げ合った」

 

 

ゼインが短く言い、ミリアが小さく頷いた。

 

その瞬間――俺の脳内で、何かがバキィン!と音を立てて割れた。

 

……捧げ合った?

ミリアと……ゼインが?

 

うそ、だろ……?

 

視界がぼやけた気がした。

その理由を、俺は知っていた。

 

俺は、ミリアのことが――好きだった。

 

ずっと昔から。

一緒に育って、一緒に笑って、一緒に冒険して、ずっとずっとそばにいたミリアのことを。

近いうちに、彼女が十八の誕生日を迎える時に、告白しようって……本気で、考えてた。

 

けど――もう、そのタイミングは二度と来ない。

 

なぜなら、彼女の隣にはもう、別の“選んだ相手”がいる。

 

頭の中が真っ白になった俺に、王が沈痛な声で語りかけてきた。

 

 

「リオ・ハートフィールド。……おぬしは、童貞か?」

 

 

重々しい問い。

今なら笑ってごまかすこともできる。

怒ってごまかすこともできる。

でも――俺はもう、隠しても意味がないことを知っていた。

 

だから、絞り出すように――言葉を返した。

 

 

「……はい……童貞です……」

 

 

言った瞬間、なんか心の中のダムが壊れた。

 

 

「……好きな女の子と……結ばれるまで、誰ともしようとしたことがありません……」

 

 

誰も聞いてないのに、言わなくていいことまで口から出ていた。

でも止められなかった。

 

そう――それが、俺の答えだった。

 

それは俺の中でずっと大事にしてきた想いだった。

恥ずかしいとか、情けないとか、そんな感情を飛び越えて――ただ、真実だった。

 

沈黙。

 

誰も何も言わない。

ただ、静寂が支配していた。

 

そのときだった。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

ミリアのその小さな声は、風が吹いただけでも消えてしまいそうだった。

 

でも、俺にははっきり聞こえた。いや、聞こえてしまった。

 

その瞬間、頭の中が真っ白になる。

 

――あ、ミリア。

 

今の“ごめんなさい”って。

 

もしかして。いや、たぶん――いや、絶対。

 

気づいてたんだ。

 

ミリアは、俺がミリアのことを好きだって、感づいてたんだ。

 

そう思った瞬間、全身から血の気が引いていくのが分かった。

 

こめかみに汗が伝う。呼吸が詰まる。鼓動の音がうるさい。

 

俺の様子に気づいたのか、ミリアがさらに青ざめた顔になる。

ゼインも隣で顔を強張らせている。

 

ガイルとレイナは……もう、分かりやすすぎるくらい目を逸らしていた。

 

……そっか。

 

俺以外の全員、知ってたんだな。

 

――俺が、ミリアのことを好きだって。

 

なんで誰も言ってくれなかったんだろう。

どうして俺だけ、置いてけぼりだったんだろう。

笑い話のネタにすらできないくらい、苦しかった。

 

 

「リオ!」

 

 

王の声が遠くで響いていた。

けれど、もう届かない。音だけが耳に流れてくるけど、心まで届かなかった。

 

何人かの側近がそわそわと立ち上がりかけ、兵士や騎士たちは兜を取って黙礼し、メイドたちは口元を押さえて俯いていた。

――なんでだよ、おい、やめろよ。

 

その雰囲気はまるで、俺の葬式じゃないか。

 

そして、俺は――笑った。

 

 

「っは……っくく……あはは、ははっ、あっははははは!!!」

 

 

声にならない笑いが、腹の底からこみ上げる。

止まらない。おかしくて、涙が出そうで、いや、たぶんもう出てる。

 

ガイルも、レイナも、ゼインも、ミリアも。王様すら、何も言えなかった。

誰も止めない。誰も笑わない。

 

俺の笑い声だけが、静かな謁見の間に響き渡っていた。

 

そして――

 

ぴたり、と笑いが止まる。

 

 

「…………嘘だ」

 

 

口が勝手に動いた。

 

 

「嘘だ……嘘だ……嘘だ……嘘だ……嘘だ……」

 

 

呪文のように繰り返していた。

 

でも、どこまで言っても、どこまで繰り返しても、

世界は変わらない。ミリアはゼインを選んだ。それが事実だった。

 

 

「嘘だあああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?」

 

 

悲鳴のような叫びが、王城を震わせる。

 

全員が、目を閉じて、泣いた。

誰一人、笑わなかった。

兵士も、騎士も、貴族も、メイドですら、皆、目を潤ませていた。

 

 

 

 

 

 

この日、王城謁見の間で――

 

 

 

 

 

 

リオ・ハートフィールドの青春は、死んだ。

 

 




幼なじみの裏切り、寝取られ、まさにテンプレ!
BSS?...知らないなぁ?

童貞・処女しか入れないダンジョンは◯○○◯しないと出られない部屋からインスピレーションを得ました。
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