天才冒険者リオの英雄譚 童貞・処女しか入れないダンジョンを攻略せよ!   作:ナオ3

33 / 73
レオンとの最後の戦いです。


23話 童貞VS竜殺しの後継者? FINALROUND

レオンがゆっくりと歩み寄ってくる。

大地を踏む一歩一歩が、鼓動に呼応するように重く響いた。

 

 

「……最後の一戦を」

 

 

短く、しかし揺るぎない声。

その眼差しには迷いがなく、ただ純粋に剣士として俺を求めている光があった。

 

俺も歩み出す。

足音が重なり合い、やがて互いの剣が届く距離でぴたりと止まった。

構えを取る。

剣の切っ先が、相手の影を指す。

 

 

(……これが最後だ)

 

 

胸の奥に張り詰めた空気が満ちていく。

呼吸を整え、肺に酸素を詰め込む。

全身の筋肉に命令を送り込む。

 

 

(今度こそ俺の全てを――)

 

(この男に、ぶつける!)

 

 

心に巣食っていた迷いが、嘘のように霧散していく。

ゾーンへ、瞬時に入る。

 

だが――。

 

 

(……足りない)

 

 

圧倒的な存在が、目の前にそびえていた。

レオンはまだ遠い。

俺の感覚が鋭くなればなるほど、その隔たりは鮮明になる。

 

 

(これじゃあ届かない……!)

 

(もっとだ……もっと深く……!)

 

 

さらに深く。

心を削ぎ落とし、自我を捨て去る。

思考を切り離し、ただ研ぎ澄まされた剣の感覚だけを残す。

 

――自分が消える。

 

意識が霧散していくその刹那。

 

 

「……っ」

 

 

脳裏に浮かんだのはルミナの顔だった。

不器用に笑いかけ、時に拗ね、時に甘え、時に強がる。

俺の傍に居ることを望んだ、あの小さな存在。

 

 

(……そうだ)

 

 

彼女の笑顔の後に、孤児院のみんなの顔が浮かんだ。

無邪気に夢を語る子どもたち。

大人ぶって背伸びをする仲間。

俺を家族と呼んでくれた、かけがえのない場所。

 

冒険者仲間たちの姿も見える。

共に死線を越えた仲間。

酒場で笑い合い、背中を預け合った時間。

 

そして――王城で出会った人々。

俺を信じてくれた者。

背中を押してくれた者。

時に試し、時に諭し、それでも認めてくれた者たち。

 

みんなが、俺の中に居た。

 

 

(俺は……消えない)

 

 

自分を、取り戻す。

俺は俺だ。

あの娘を守りたい、みんなを守りたい、ただそのために剣を振るう剣士だ。

 

――レオンが近い。

 

はるか遠くにいたはずの男が、今は手を伸ばせば届くほどの距離に感じる。

まだ巨大だ。

まだ遥かに大きい存在だ。

 

だが、不思議と「敵わない」という気持ちは消えていた。

 

俺はただ前を向く。

この一撃に全てを込める。

 

 

「はあああああッ!」

 

「――ッ!」

 

 

同時に剣を振りかぶり、振り下ろす。

 

空気が震えた。

大地がうなった。

鋼と鋼が衝突し、耳をつんざく轟音が広場を埋め尽くす。

 

火花が飛び散り、風が爆ぜる。

ぶつかり合った剣は互いを押し合い、押し返す。

 

腕が軋む。

肺が焼ける。

全身が崩壊しかける。

 

だが退かない。

 

俺は踏み込む。

レオンも踏み込む。

 

互いの全てを込めた一撃が、ただひたすらにぶつかり合う。

 

剣と剣が正面からぶつかり合う。

甲高い金属音が広場を震わせ、火花が散った。

 

レオンは片手。

俺は両手。

 

力の差は歴然だ。

だが俺は退かない。

踏み込み、踏みしめ、全身の力を剣に込める。

 

――この瞬間。

世界は、俺とレオンの剣だけで満たされていた。

 

 

「ッ……!」

 

 

刃と刃が噛み合うたび、衝撃が腕から肩へ、胸郭を突き抜け、背骨を震わせる。

骨が軋み、筋肉が悲鳴をあげる。

心臓が乱れ、肺が圧迫されるような感覚に息が詰まった。

 

 

(このままじゃ……剣よりも先に、俺の身体が壊れる……!)

 

 

幾度も、幾度も。

刃が鳴り響き、俺の身体を苛む。

呼吸が荒くなり、視界が揺れる。

 

――その時。

 

レオンの剣筋に、見覚えのある感覚を捉えた。

以前、俺の渾身の一撃を片手で受け止めたときのこと。

彼は力を腕だけで支えたわけではなかった。

足下の石畳にひびを走らせ、衝撃を地面へと逃がしていたのだ。

 

 

(あれだ……!)

 

 

深く潜ったゾーンの中。

世界の流れが、俺には見えていた。

剣から伝わる力。

足裏を通じて大地へ抜けていく感覚。

 

今なら――俺にもできる。

 

 

「はッ!」

 

 

次の一撃。

レオンの剣が俺の刃を叩いた瞬間、全身を駆け巡る衝撃を、俺は腕から腰、足裏へと流し込んだ。

石畳がバキリと音を立て、足下に細い亀裂が走る。

 

 

――痛みが、和らいだ。

 

 

「……!」

 

 

レオンの目が見開かれる。

ほんの一瞬、驚愕の色を浮かべて。

 

だが休む間はない。

俺はさらに踏み込み、逆に剣を叩き込む。

 

 

「うおおおおッ!」

 

 

レオンの剣にぶつかる。

衝撃が再び体を貫く。

だが今度は違う。

力の流れを掴んでいた。

地面へと流しつつ、刃の威力だけを逃さずに相手へ返す。

 

金属音が一段と鋭くなる。

剣と剣が噛み合い、爆ぜるような音が広場に轟いた。

 

 

「……っ!」

 

 

腕に走る衝撃は消えない。

だが制御できる。

逃がすべき力と、ぶつけるべき力の境界を見極め、ただ前へ出る。

 

 

「――ッ!」

 

 

何度も、何度も。

剣と剣が激突するたびに石畳がひび割れ、粉塵が舞い上がる。

俺の呼吸は荒く、汗は滝のように流れる。

だが――退かない。

 

目の前でレオンの口元がわずかにほころぶ。

 

 

「……見事」

 

 

低く、しかし確かに聞こえた。

称賛の言葉。

 

次の瞬間、彼はさらに剣を振るった。

今までよりも重く、速く。

俺を試すように。

俺はそれを正面から受け止める。

 

火花が散り、轟音が響く。

俺とレオンの剣戟は、なおも激しさを増していった。

 

――この瞬間だけは、俺は確かにあの大樹に迫れている。

 

そう信じて、俺はさらに剣を振るう。

 

衝撃が骨の芯を震わせる。だが退かない。

踏み込み、踏みとどまり、全てをぶつける。

 

深く――さらに深く、ゾーンの中へ潜り込む。

すると剣と想いが交わり、理解が流れ込んでくる。

 

 

(……これは……?)

 

 

剣に宿ったものが、俺に響いてくる。

ただの力じゃない。

ただの技術でもない。

 

――人生だ。

 

レオンの歩んできた日々が、断片のように伝わってくる。

詳細まではわからない。だが、大まかな輪郭だけは鮮烈に掴めた。

 

愛して、愛される人生だった。

 

 

 

彼女とは産まれてからほとんど一緒に過ごしてきた。

最初はぎこちなかった想いも、時を重ねるごとに自然と寄り添い合うようになった。

共に笑い、共に涙を流し、戦場では背中を預け、平穏の中では日々を分け合った。

彼女が隣にいるだけで、どんな苦難も越えられると信じられた。

 

 

 

 

友とは言い争いもしたし、拳を交えたことすらあった。

だが、それは決して絆を壊すものではなく、むしろ深めるものだった。

肩を並べて酒を飲み、馬鹿をやり、互いに愚痴を零し、笑い合った。

彼らがいたからこそ、孤独を知らずにすんだ。

 

 

 

 

家族とは血の繋がりはなかった。けれど、そんなことはどうでもよかった。

同じ屋根の下で、同じ食卓を囲み、同じ痛みを知り、同じ未来を語った。

互いの心を寄せ合うことで築かれた絆は、血を分けたそれ以上の強さを持っていた。

守りたいと心から思えた存在が、そこにはあった。

 

 

 

 

街を歩けば誰かと交わした挨拶。子供たちの笑顔、老いた者との他愛ない会話。

祭りの日には共に歌い、豊作の日には共に喜び、災厄の時には共に立ち上がった。

名も知らぬ人々と交わした数え切れぬ時間が、いつの間にか心を支えてくれていた。

 

 

レオンはそれら全てを深く愛し、そして確かに愛されていた。

その実感が、確かな温もりとして剣に宿っている。

 

 

(……ああ……重いわけだ)

 

 

戦いなんて、本当は好きじゃない。

愛する者たちと共に、平穏に暮らしたい。

その想いこそがレオンの願いだった。

 

だが――奪われた。

傷つけられた。

踏みにじられた。

 

その憤りが、怒りとなり、剣に燃え移った。

愛と怒り――これこそが、この男の剣に込められた想いの源泉。

 

俺は笑みを浮かべる。

苦笑だ。

いや、認めざるを得ない。

 

 

(重くないわけがない)

 

 

この男に比べたら、俺なんて羽毛のようだろう。

彼の剣に込められた重さは、俺の何倍も、何十倍もある。

 

 

だが――。

 

 

(それでも……!)

 

 

負けない。

負けてたまるか。

 

俺にだって、大切なものはある。

軽いかもしれない。

大したことは無いかもしれない。

平凡かもしれない。

 

 

だが、それでも――。

 

 

(それが俺の大切なものなんだ)

 

 

胸を張る。

俺の中に宿る想いを、全て叩きつける。

 

孤児院のみんな。

冒険者仲間。

王城で出会った人々。

そして――ルミナ。

 

どれも平凡かもしれない。

誰かに笑われるかもしれない。

だが俺にとっては、かけがえのないものだ。

 

 

(これが俺だ、レオン!)

 

 

剣に想いを込め、叫ぶように叩きつける。

鋼と鋼が火花を散らし、空気が爆ぜた。

 

レオンもまた、俺を理解していると確信する。

彼の剣から流れ込む感情の中に、俺を認める光があった。

 

そして――レオンは微笑んだ。

俺の叫びに応えるように。

互いの想いを交わした返事として。

 

俺も笑う。

笑いながら、剣を振り抜いた。

 

この一瞬、剣と剣は確かに語り合っていた。

互いの人生を背負い、互いの想いを重ね、ぶつけ合う。

 

この一瞬、剣と剣は確かに語り合っていた。

言葉を交わすことなく、鋼の響きの中に込められたすべてが流れ込んでくる。

 

互いの人生を背負い、互いの想いを重ね、ぶつけ合う。

ただの稽古ではない。

ただの模擬戦ではない。

魂そのものを削って、剣という形で交わしていた。

 

 

そして―

 

 

(これは……?)

 

 

鮮烈なイメージが俺の胸を貫いた。

流れ込んでくる。剣越しに、相手の深奥から。

 

失われるはずの未来。

アンナ。

彼が何よりも大切にしている伴侶。

 

そして、失われた過去。

●●●――。

そこには、言葉にできない強烈な喪失の痛みがあった。

 

その二つを取り戻してくれた「恩人」。

返しても返しきれないほどの恩。

ただ一度の奇跡で、彼の世界を変えてしまった存在。

 

 

(すごい……)

 

 

俺には理解できない。

何をしたのか、どんな経緯でそうなったのか、まるで見当もつかない。

だが、痛いほどに伝わってきた。

 

胸が切なくなるほどの感情。

感謝と敬愛、そして誓い。

 

 

(確かに……その人が危険になるようなら……)

 

 

その未来を守るために、レオンは命をかけるだろう。

いや、迷いすらせずに、全身全霊を賭けるに違いない。

その覚悟が、剣を通して流れ込んでくる。

 

 

――だが、それでも。

 

 

(俺は……!)

 

 

握る手に力がこもる。

心の奥底から叫びが噴き上がる。

 

 

(ルミナと……もっと遊びたいんだよ!)

 

 

ケーキを頬張って驚いた顔。

積み木の塔が崩れて「あーっ!」と叫んだ顔。

拗ねて頬を膨らませる顔。

嬉しそうに俺の袖を引っ張る顔。

 

その一つひとつが、俺にとってかけがえのないものだ。

その日常を、これからも積み重ねたい。

ただそれだけの理由。

それだけの願い。

 

けれど、それは決して軽んじられるものではない。

俺にとっては、剣を振るう理由になる。

命を懸けるに足る、ただ一つの真実だった。

 

剣と剣が、なおも火花を散らし続ける。

視界は冴え渡り、全ての動きが見える。だが――。

 

 

(……終わりは近い)

 

 

俺は確信していた。

いや、認めざるを得なかった。

 

レオンから学んだ技術を、必死でなぞり続けてきた。

衝撃を足元へと流し、肉体への負荷を和らげる。

それによって今までなら一撃で吹き飛ばされる衝撃を、こうして受け止められてきた。

 

だが――練度が違いすぎる。

レオンは自然に行えることを、俺は意識を研ぎ澄ませてようやく真似ているにすぎない。

差は歴然。

 

そして今、俺の体は限界を超えようとしていた。

 

骨のきしみが耳の奥に響く。

筋肉は悲鳴を上げ続け、細胞一つひとつが崩壊していくような感覚がある。

深くゾーンに入ることで痛覚を押さえ込んでいるが――切れた瞬間、業魔との戦いをも凌駕する地獄が待っているだろう。

 

 

(すまない……)

 

 

心の中で呟いた。

まだ俺は、全てを見せ切れていない。

それなのに、ここで終わってしまうことが申し訳なくてならない。

 

俺の想いが漏れたのか、あるいは感じ取ったのか。

レオンがふと剣を止めた。

 

 

「……そろそろ、終わりにしましょう」

 

 

静かな声音。

だが、確かな決意がこもっていた。

 

レオンはゆっくりと両手で剣を構える。

彼の剣にはほとんど傷がない。

新品だと告げられても信じるだろう。

それほどまでに、完璧だった。

 

自然と、自分の剣へ視線を落とす。

 

……ボロボロだった。

刃こぼれは激しく、何本も大きなヒビが入っている。

ここまで持たせたのが奇跡のような有様だ。

数合も持つかどうか、いや、一撃で砕け散ってもおかしくない。

 

 

「……はは」

 

 

思わず苦笑が漏れた。

同じ剣を扱っているはずなのに、どうしてこんなに違うのか。

技量、重み、歩んできたもの――すべてが差になって、剣に現れているのだろう。

 

 

「近づいたと思ったけど……遠いなぁ」

 

 

言葉にしてみると、不思議と胸が軽くなった。

悔しさもある。

だが悲観はなかった。

 

俺は剣を構える。

ボロボロの剣だ。

だが、それでもいい。

 

 

(ここで、俺の全てをぶつける)

 

 

息を吸い込み、肺の奥まで酸素を満たす。

全ての力を込めて――心も、技も、想いも。

それを一振りに託す。

 

レオンが静かに頷いた。

その瞳は、戦いを終わらせる者のもの。

だが同時に、俺を認める者の目でもあった。

 

緊張が極限まで張り詰める。

次で決まる。

 

俺とレオンは、互いの全てを剣に込めて、構えたまま、意識をさらに深く沈める。

呼吸の音すら遠のき、世界の輪郭が溶けていく。

 

さらに奥へ。

 

そこには、自分と剣と、ただ流れる力しか存在しない。

世界に満ちる膨大な力が見えた。

風が揺れ、空気が震え、大地が脈打つ。

それらすべてが一本の線となって自分へ注ぎ込まれてくる。

 

 

(もっとだ……もっと深く……!)

 

 

剣を握る両腕が震える。

筋繊維が切れ、血管が悲鳴を上げ、骨が砕けそうになる。

だが構わない。

 

剣は叫び、肉体は軋む。

それでも俺は、なお集める。

限界の、そのさらに向こうへ。

 

やがて、全身が悲鳴のように震えながらも、力は集束していった。

一本の剣に。

一人の肉体に。

 

 

(これが……!)

 

 

その時だった。

目の前のレオンがわずかに頷いた。

俺の準備が終わったのを確認したのだろう。

 

次の瞬間――レオンの剣に力が奔流する。

 

早い。

あまりにも早い。

俺が必死で集めた時間よりも遥かに早く、レオンは力を剣に満たしていく。

その剣は神域の如く光を帯び、ただ振るわれるのを待っていた。

 

だが俺は怯まない。

当然のように受け止める。

震える剣を、崩壊しかけの肉体を、なお構えて前へ突き出した。

 

 

(これが……!)

 

 

心臓が爆ぜるほど高鳴り、意識が白熱する。

その叫びは魂の奥底から溢れた。

 

 

「――リオ・ハートフィールドだ!!!」

 

 

その瞬間、確かに聞こえた。

レオンの声が。

 

 

「……見せてくれ。貴方を」

 

 

剣士としての声。

同じ戦場に立つ者としての声。

願いにも似た響きが、俺の心に火を点けた。

 

 

(ああ……見せてやる!!!)

 

 

俺は剣を振り下ろす。

自分の全てを込めて。

過去も、未来も、現在も、想いも――この一撃に。

 

レオンが剣を構える。

静かに、だが揺るぎなく。

その剣は俺の全てを受け止めると告げていた。

 

そして――。

 

二つの剣が、ぶつかり合った。

 

――ガァンッ!!

 

轟音が響く。

光が弾ける。

力と力、想いと想いが交錯する。

世界が割れ、大地が悲鳴を上げた。

 

それは、ただの剣戟ではなかった。

互いの存在そのものをぶつけ合う、最後の一撃だった。

 

 

――ドゴォォォォン!!!

 

 

床石が割れ、壁が軋み、空気が爆ぜる。

壁が悲鳴を上げるように軋み、石造りの建物全体が不気味に揺れた。

空気が爆ぜ、熱と衝撃が混じり合って肌を叩きつける。

 

押し返す力と押し寄せる力が均衡を崩し、互いの想いを剣に宿してせめぎ合う。

視界が揺らぎ、天地の区別さえ曖昧になる。

ただ、この一撃に全てが込められていると本能が告げていた。

 

それはただの剣戟ではなく――世界を揺るがす、魂と魂の衝突だった。

 

 

(……っ!)

 

 

握る手に伝わる感覚が変わった。

俺の剣が、悲鳴を上げている。

刃こぼれだらけのそれが、耐えきれずに砕け散っていく。

 

ガキィィン――!

 

鋼の絶叫。

次の瞬間、俺の剣は細かな破片となって四散した。

破片は光を反射しながら宙を舞い、まるで散る星のように見えた。

 

衝撃を真正面から受けた俺の身体は、もう立っていられなかった。

脚が痙攣し、肺が焼けるように痛み、意識が急速に遠のいていく。

 

 

(ああ……ここまでか……)

 

 

まだ伝えたいことがあった。

まだ剣を振るいたかった。

まだ、この男と斬り結びたかった。

 

けれど、もう腕は動かない。

視界が揺れ、力が抜けていく。

 

最後に見たのは、俺を見つめるレオンの姿だった。

その瞳には、憐れみでも優越感でもない――ただ、静かな敬意が宿っていた。

 

 

(……なら……いいか……)

 

 

そう思った瞬間、俺の意識は闇に呑まれた。

 

 




アンナさんが見たらきっとジェラるでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。