天才冒険者リオの英雄譚 童貞・処女しか入れないダンジョンを攻略せよ!   作:ナオ3

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ほのぼのギャグ回です。


レオン 懐かしき青春(黒歴史)

僕はメリルちゃんをソファーに寝かせる。

彼女の表情には、十三歳という年齢には到底見合わない、深く濃い疲れが滲み出ていた。

 

 

「お疲れ様、メリルちゃん」

 

 

労いの言葉に返ってきたのは、か細い呻き声だった。

 

 

「フィオナさまぁ……だめぇ……」

 

「……なんて労しい」

 

 

これだけ苦労人の空気を醸し出す女性が十三歳だと、初見で誰が信じるだろうか。

最近、城で噂になっている、とんでもなくえげつない(そしてドロドロの)恋愛小説を読み漁っているらしいが、それは日々の強烈なストレスの反動かもしれない。

……この娘の将来が心配になってくる。真剣に。

だが、今はメリルちゃんの将来を案じるのは後回しだ。

僕は入口付近でへたり込んで座り込む女性の元に駆け寄った。

セシリア様。

僕の主君であり親友でもあるエドワールの妻。そして、僕とアンナにとって妹のような存在の幼馴染。

今では立派な王妃として国母の威厳を備えている彼女だが、今はまるで迷子になった少女の様に、両手で顔を覆って泣き腫らしている。

 

 

「セシリア様、これを」

 

 

僕は、懐からハンカチを取り出して手渡す。

今日はまだ一度も使っていないから清潔な筈だ。

 

 

「ありがとう……レオン……うっ、ううっ……」

 

 

彼女は涙声で礼を言い、ハンカチで目元を拭う。

その姿は痛々しいが、原因を作ったのが彼女の愛娘である以上、僕からかけられる言葉は少ない。

 

 

「おらおらおらおらおら!!! 変態め!!」

 

「あだだだだだ!? パルシリアの至宝である私の顔に何すんのよ、このクソ猫!!」

 

「おお、すごい」

 

 

視線を向けると、猫がフィオナ様を猛然と攻撃し、それをルミナが面白そうに眺めているという、シュール極まりない光景が広がっていた。

フィオナ様。エドワールとセシリア様の末子にして、パルシリアの姫君。

非常に賢くて、王としての才能は優秀な兄たちを抑えて随一だと、エドワールは評していた。

だが……とんでもなくクセが強い。

今や、セシリア様の血が完全に覚醒したようだ。

僕は、ルミナとフィオナ様、そして猫を見つめる。

ルミナに近寄ろうとするフィオナ様の顔面に向けて、蒼い毛並みの猫が驚異的な跳躍力で連続パンチとキックを繰り出している。肉球の連打だ。

 

 

「肉球パンチ! 肉球キック!! 百裂にゃんこ拳!!」

 

「ぐぬぬ! 猫の分際で生意気な! 顔はやめなさい、顔は!」

 

 

ルミナは、まるで見世物を見ているみたいに目を輝かせている。

確かに、傍から見れば面白い光景だが。

いや、笑い事ではない。

 

 

(フィオナ様なら、歳も近いしルミナの良い友達になってくれると期待してたんだけど)

(いきなり初対面で『お姉ちゃん』宣言か。しかもあの鼻血と熱視線……)

(血が争えないとは、本当だったんだな……。エドワール、君の苦労が忍ばれるよ)

 

 

そして、もう一つの謎。

 

 

(それと、あの猫は一体?)

(ルミナの胸元から、まるで飛び出して来たように見えたが?)

(見た所ルミナを護ろうとしているし、味方らしい、かな?……今は警戒するだけに留めておこう)

 

 

僕は思考を切り替え、セシリア様と同じく入口付近で立ちすくんだまま硬直している若い騎士二人――カイルとアリッサに指示を出すことにした。

二人は完全に唖然としている。無理もない。

喋る猫が突然現れて、自分たちが護衛すべきパルシリアの姫と本気のキャットファイト(物理)を繰り広げている光景なんて、頭が真っ白になって当然だ。

凶悪な魔物とか暗殺者という「明確な敵」なら瞬時に剣を抜いて動けるだろうが、可愛らしい子猫と姫様の取っ組み合いに、騎士としてどう対処すれば良いのか、マニュアルには載っていないだろう。

 

 

「カイル、アリッサ。警護に戻りなさい」

 

 

僕は優しく、しかし有無を言わせぬ声で告げた。

 

 

「ここはもう大丈夫だ。後は僕がなんとかするから」

 

 

僕の言葉を聞いた瞬間、二人は心底救われた表情を浮かべた。

 

 

「お、お願いします……!」

 

「すみません、レオン様……!」

 

 

二人は逃げるように、いや、元の任務に戻る為にそそくさと部屋を出ていった。

これでいい。まだ彼らには、このカオス空間は酷すぎる。

まだ経験の浅すぎる彼らに、この規格外の想定外事態を対処する能力は無いし、精神が削られるだけだ。

それに……。

セシリア様の「恥部」を、これ以上他人の目に晒すのは忍びない。

扉が閉まると、セシリア様は再び深く頭を下げて謝ってきた。

 

 

「ごめんなさい、おに……レオン」

 

 

咄嗟に「お兄様」と呼びそうになるのを訂正する彼女。

昔からの癖だ。

 

 

「いえ、謝る必要はありませんよ。僕は、ルミナの心強い味方が出来たようで、むしろ嬉しいくらいです」

 

 

僕は本心からそう答えた。

形はどうあれ、フィオナ様がルミナに好意(強烈すぎるが)を抱いてくれたのは事実だ。

 

 

「で、でも、良いのです? 貴方の娘(ルミナちゃん)に、私みたいな『変態』の血を引く娘を近づけてしまって……」

 

 

セシリア様は、自分の娘を容赦なく貶しながら不安そうに見上げてくる。

 

 

「ええ。セシリア様……いや、セシリアちゃんの子供の時とそっくりで、見ていて微笑ましいですからね」

 

「ごはぁ!!」

 

 

僕の言葉に、セシリア様は派手にむせた。顔がトマトのように真っ赤になっている。

いや、からかっているわけではない。本当に懐かしいのだ。

僕は、かつてセシリアちゃんと共に過ごした、若かりし青春の日々を思い出す。

 

 

『お姉様! お姉様!! お姉様ぁ!!!』

『駄目よセシリア、落ち着いて。私の本性を隠し通すのよ。公衆の面前でお姉様の胸にダイブしちゃ駄目よセシリア!』

『お姉様の汗が染み込んだ練習用タオル……クンカクンカ……ふぅ、これはキクぅ!!!』

『お、おねえさまの入浴後の裸体……だめ、鼻血が、鼻血が止まらないわ……』

『あああああ! レオネルお兄様といちゃつくお姉様が幸せそうで尊い! でも私の中の何かが弾けそうで、脳が壊れちゃうううううう!!』

 

 

アンナに自身の特殊な性癖(極度のアンナ信者かつ百合気質)を知られない様に必死に取り繕っていたセシリアちゃん。

だが、僕たち男の幼馴染同士――僕やエドワール、ヴァリウス――はその裏の顔を完全に知っていた。

本性を隠すのに必死なセシリアちゃんと、それをフォローする僕たちの涙ぐましい隠蔽工作。

それらのお陰で、アンナ本人に知られない様にしたのは、今となっては本当に良い(そして少し胃が痛い)思い出だ。

アンナは、まさか同性の少女が自分に対して情欲と崇拝の入り混じったドロドロの感情を抱いて近寄ってくるなんて、微塵も想像していなかったから、最後まで気付く事は無かった。

むしろ、アンナは昔から同性にモテていた。特に後輩の女性騎士たちから、熱狂的な支持を集めていたのだ。

そんな環境下で、セシリアちゃんが「少々愛情表現が変わった熱烈なファン」という立ち位置で留まり、ギリギリで一線を越えなかったのは、本当に奇跡だと思う。エドワールの愛があったからこそかもしれないが。

あの、甘酸っぱくもカオスな青春時代を思い出す。

懐かしい過去を思い出して、思わず口元が緩む僕。

対照的に、自分の黒歴史の扉をこじ開けられてしまい、羞恥のあまり悶え苦しむセシリア様。

セシリア様が、これ以上の惨状を防ごうと、フラフラと立ち上がり、猫と取っ組み合っているフィオナ様を引き剥がそうとする。

 

 

「フィ、フィオナ……離れなさい……!」

 

 

だが、僕はその手を優しく、しかし力強く制止した。

 

 

「引き離しては駄目です」

 

「えっ?」

 

「やめましょう。今無理やり引き離すと、多分、反動で暴走しますよ?」

 

 

僕は経験則から忠告する。

 

 

「昔の貴女みたいに、お風呂を覗こうとしたり、下着をこっそり盗もうとしたりと、手段がより過激になるだけです」

 

「いやぁぁぁぁぁ……! やめてぇぇぇ!」

 

 

僕の容赦ない未来予測(過去の事実)に、セシリア様は頭を抱えて崩れ落ちた。

 

 

「未来が鮮明に見えるぅぅぅぅぅ……! 過去に戻れるなら、あの頃の私を殺したいぃぃぃぃぃ!!」

 

 

身悶えするセシリア様を見下ろしながら、僕は心の中で親友に語りかけた。

 

 

(エドワールが此処に居なくて、本当に良かった……)

(今頃、彼は応接室で、アンナとリオ、そしてヴァリウスと一緒に、国家の存亡に関わるようなシリアスな空気で話し合っているだろうし)

 

 

僕は、過労で倒れそうな友の顔を思い浮かべる。

 

 

(ああ、彼が……あの親バカのエドワールが、愛娘であるフィオナ様の『覚醒』を知る瞬間を想像すると、本当に気が重い……。胃薬を用意しておいてあげよう)

 

 

ため息をつきつつ、僕は再び娘たち(と猫)の方へ視線を戻した。

物理的なキャットファイトは膠着状態に陥ったのか、戦いは舌戦へと移行していた。

 

 

「だーもう、ちょこまかと! うっとおしいのよ駄猫!!」

 

「はっ、鈍間なお姫様に捕まるもんか! 幾らでも邪魔してやんよ、変態娘!!」

 

 

フィオナ様がドレスの裾を振り乱して怒鳴れば、ステラ(と名乗った猫)も負けじと毛を逆立てて言い返す。

 

 

「私は変態じゃない! 『尊い』対象に対する愛が、少しだけ一般人より強すぎるだけの、純真な乙女よ!!」

 

「その純真さの方向性が狂ってるって言ってんだよ! だったら僕は神様だ! リオ君とルミナを護る守護神だぞ!!」

 

「はあ!? あんたみたいなちんちくりんが神様なら、私はウルトラスーパーデラックスゴージャスワンダフルミラクルシャイニングゴッデスよ!! ひれ伏せい!!」

 

「だっせええええええ!! なんだそのセンス!? 長くなれば良いってもんじゃねぇぞ!! 聞いてる僕が恥ずかしくなるわ!!」

 

「ぐぬぬぬぬ!!」

 

「しゃあああ!!」

 

子供の喧嘩だ。完全にレベルの低い口喧嘩である。

そんな、顔を突き合わせて口喧嘩する両者を見たルミナは、またしても首をコテリと傾げて、無邪気な声で言った。

 

 

「やっぱり、なかよし?」

 

「「違う!!」」

 

 

綺麗にハモる一人と一匹。

息がピッタリだ。

喧嘩する程仲が良いと言う言葉が、これほど似合う状況もないだろう。

 

 

(さて、そろそろ止めないと)

 

 

僕はゆっくりと二人の間に近づいていった。

 

 

「そこまで」

 

 

優しく、しかし逆らうことのできない威圧感を少しだけ混ぜて、フィオナ様と猫の動きを止める。

そして、それぞれの襟首(猫は首根っこの皮、フィオナ様はドレスの後ろ襟)を摘まんで、ひょいっと優しく持ち上げた。

無礼だけど、仕方が無い。

 

 

「きゃあ!?」

 

「にゃんとお!?」

 

 

宙ぶらりんになって、手足をバタバタさせる一人と一匹。

 

 

「取り敢えず、お互いに落ち着いて自己紹介から始めようか」

 

 

僕は、両手にぶら下げた二つの命を交互に見つめ、特に猫の方に視線を固定した。

 

 

「特に、猫ちゃんはね」

 

「うにゃ……」

 

 

僕の視線に射すくめられ、猫は少しだけ怯えたように耳を伏せた。

 

 

「名前を教えてくれるかい?」

 

 

僕が穏やかに尋ねると、猫は少し得意げに胸を張って答えた。

 

 

「僕の名前は……ステラ! ルミナに貰った名前なんだ! よろしくね!」

 

「ステラ、か。良い名前だね」

 

 

ルミナが名付けた?

本当に、彼女(多分雌?)は誰なんだ?

 

 

「え〜と……あなたは、ルミナの、お父さん?」

 

「……!」

 

 

僕は内心で驚愕した。

この猫ちゃん、いや、ステラは……僕とルミナの血の繋がりを知っているのか!?

だが、僕が驚愕の反応よりも早く、フィオナ様がステラの言葉に激しく反応した。

 

 

「は、はああああああああああ!!? ルミナに名付けて貰ったって、おま、おま、おまああああああ!!?」

 

 

ギリギリギリッ!

フィオナ様から、凄まじい嫉妬のオーラが立ち昇る。

八歳の子供とは思えない、嫉妬の炎に灼かれ歪んだ顔をしている。

 

 

「私を差し置いてルミナに名前を貰うなんて……万死に値するわ!!」

 

 

フィオナ様、エドワールとセシリア様に頂いた立派な名前があるでしょう?

どうやら、フィオナ様の耳には「ルミナのお父さん」という爆弾発言の部分は全く聞こえていないようだ。ホッとした。

もし、僕がルミナの実の父親だとバレたら、この暴走状態の姫様がどんな反応をするかわからない。

『お義父様! ルミナを私に下さい!』と、初対面で土下座しかねない勢いだ。

 

 

「へっへ〜ん、いいだろ〜。僕の方がルミナと絆が深いんだい!」

 

「むきいいいいいいいいい!!! 許さない許さない許さない!!」

 

 

ステラがさらに煽り、フィオナ様が噴火する。

これ以上拗れたら、僕の手に負えなくなる。

それこそ、アンナを呼びに行かなければならなくなる。

 

 

「うん、ストップだ。両者落ち着きなさい」

 

 

僕は少しだけ腕に力を込め、二人を軽く揺さぶった。

 

 

「取り敢えず、テーブルについて話をしようか?」

 

 

僕の静かな威圧感に、二人(一匹?)は渋々といった様子で頷く。

 

 

「……うん」

 

「……ええ」

 

 

僕は二人を床に下ろし、ルミナの方を向いた。

 

 

「ルミナも、一緒にお茶飲もうか」

 

「ん」

 

 

ルミナは素直に頷き、ちょこんと椅子に座る。

僕は、部屋の隅で未だに項垂れているセシリア様を見た。

少しは落ち着いたかな?

 

 

「セシリア様、是非一緒に」

 

「……はい! その前に……」

 

 

セシリア様は、フラフラと立ち上がると、凄まじい迫力でフィオナ様の方を向いた。

母親としての、そして「先輩」としての威厳に満ちたオーラ。

 

 

「フィオナ。後で、貴女にはたっぷりとお話があります」

 

 

ゴゴゴゴゴ、と音がしそうなプレッシャー。

だが、フィオナ様は全く怯むことなく、堂々とした態度で言い放った。

 

 

「後悔は無いわ!!」

 

 

胸を張る八歳の姫。

ああ、やはりこの娘は大物だよ、エドワール。色々な意味で。

末恐ろしい。

 

 

「はぁ……。余り上手ではないけど、僕がお茶を入れようか」

 

 

僕は苦笑しながら、部屋に備え付けられているティーセットに手を伸ばした。

 

 

「さて、お茶の準備を……ルミナ?」

 

 

僕が立ち上がり、ポットにお湯を注ごうとした時。

ふとルミナを見ると、彼女は椅子から立ち上がり、驚愕の表情を浮かべて、何もない空間をジッと見つめていた。

 

 

「リオ……」

 

 

リオ?

リオがどうしたんだ? 今、彼は別室でエドワールやアンナ達と話をしているはずだが。

ルミナの視線の先には何もない。ただの壁だ。

だが、彼女の目には、僕たちには見えない「何か」が映っているようだった。

 

 

「リオ!!」

 

 

ルミナが、突然、悲痛な声を上げて叫んだ。

その声には、先ほどまでの無邪気さは欠片もなく、心を引き裂かれたような深い悲しみがこもっていた。

その瞬間。

ルミナの小さな身体が、眩い光に包まれた。

 

 

「きゃあ!?」

 

「ええ!?」

 

 

フィオナ様とセシリア様が、光の強さに目を閉じて悲鳴をあげる。

数秒後、光が収まると――。

そこには、子供の姿のルミナは居なかった。

代わりに立っていたのは、アンナの実用的な服を着こなした、「大人の身体」を持つルミナだった。

先ほど、アンナが説得で封印させたはずの、大人の姿。

突然の変貌。

だが、ルミナは周囲の驚きなど全く気にする素振りも見せず、振り返りもせずに窓の方へと駆け出した。

 

 

「待ってくれ、ルミナ!!」

 

 

僕は慌てて手を伸ばし、呼び止める。

だが、ルミナは止まらない。

その動きは、先ほどの子供の時とは比較にならないほど速く、しなやかだった。

ガシャン!!

ルミナは、躊躇することなく、その細い体で窓ガラスを突き破り、王城の庭へと飛び出していった。

割れたガラスの破片が、キラキラと光を反射しながら床に散らばる。

 

 

「どうしたんですか!?」

 

「一体何が!?」

 

 

窓ガラスが割れた激しい音を聞きつけたのだろう。

廊下に待機していたカイルとアリッサが、血相を変えて部屋に飛び込んできた。

 

 

「レオン様、ご無事ですか!? 今のは……」

 

「うう……」

 

 

カイルの言葉を遮るように、ステラの弱々しい呻き声が聞こえた。

見ると、ステラは床にへたり込み、ぐったりとしていた。先ほどまでの元気な威勢はどこにもない。

 

 

「ちょっと、どうしたのよ、クソ猫!?」

 

 

フィオナ様が、喧嘩相手の異変に気付き、慌ててステラに呼びかける。

だが、ステラは答えない。ただ、虚空を見つめて震えている。

 

 

「リオ君が……」

 

「リオさんが、どうしたの?」

 

 

セシリア様が、不安そうに身を乗り出してステラに尋ねる。

ステラの大きな瞳から、ポロポロと、大粒の涙がこぼれ落ちた。

 

 

「リオ君が……泣いてる……。すごく、悲しんでる……心が、張り裂けそうなくらい……」

 

 

ステラの言葉が、重く部屋に響き渡る。

リオが……泣いてる?

つい先ほどまで、僕たちと普通に話していた、あのリオが?

 

 

「何があったんだ、リオ!?」

 

 

僕は、ルミナが飛び出していった、割れた窓枠へと駆け寄り、遠くを見つめた。

胸騒ぎがする。

ただ事ではない。

ルミナの突然の変貌。

ステラの涙と、リオの悲痛な感情の伝播。

何かが、決定的に壊れようとしている。

そんな、最悪の予感がした。




セシリアさんの黒歴史回でしたw












リオ君は今、地獄を見ています。
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