変なモノ、保管します。 作:喋る観葉植物
20XX年(当てずっぽう)、世界はバカの被害に見舞われた――!!
とあるカラオケ店の一室で、フード付きの薄灰色のパーカーを着込んだミレニアムの生徒達が、何やら話し込んでいた。
「どうしましょう先輩!なんだかすごい事になってるみたいですけど~…。」
「大丈夫だって、『名将』ゆいはこの程度は解決できるよ」
「『名将』じゃなくて高橋です!名将はどこぞのUZに対抗心燃やしてる連打の人ですよ!?」
「んな事言ってる場合じゃないですって……いえその、戦略立案をドジってまんまと外部へ流出させてしまったのは間違いなく、ええ。間違いなく、私とユイの責任ですが…。」
三者三様の反応の少女たちは、上から順に〖高橋ユイ〗〖栫井アヤカ〗〖白金スズネ〗
ユイは特殊物保管部で記録管理やサポート役などを、アヤカは異物の確保や "現場" を任されている。スズネはあまり "現場" には出ず、部活内においてのブレイン担当。
「まー、この状況に焦ったってしょうがないよ。それよりこれからどうするか考えよう?先輩…じゃなくって部長も、それでいいですよね?」
「……あー…。うん、いい…と思う……」
一方の此方はいつも通り冷静な技術担当の〖藤木戸ミキ〗と、そのミキから寝てるのではと勘違いされ、おもいっきり肩を揺らされたアオイだ。
さて、前置きというか、どこぞの世紀末の始まりのパロディで雑にまとめられた内容に関しての話に戻るとして。その前に何が起きているのかについても説明する。
時は
ユウカは激怒した、あのロマンチストバカ共を今日こそ制裁せねばならぬと決意した。
「また…またとんでもない額をつぎこみやがったわね……!!」
ユウカには(エンジニア部の云う)ロマンが分からぬ。
セミナーのメンバーとして、常に計算をして頭を悩ませて続けていた。しかし浪費に対しては人一倍に敏感であった。
分かりやすく言おう。
またしてもエンジニア部はやらかした。
被害総額(?)は驚きの百万ながらも、たとえ限界まで毒されていようとも決して「なんだ、そんだけか」と思ってはいけない。アクシデントの報せも込みの事後報告である。
「なんで改造したペットロボットが、窓を突き破って何処かに飛んで行って……そのまま行方不明になるっての!?!?」
「すまないね…。入部希望の子が楽しく改造していたものが、まさかあれ程とは思ってもみなかっんだ。あと、ついでにちょっとだけ手元が狂って危険な機能もつけてしまったから、C&Cとヴェリタス、それから特殊物保管部の方にも声を掛けておいて欲しい」
「どういう機能?」
「レーザーカッター機能と自己増殖機能。あれね、すっごい暴発するんだよ…。」
ユウカはウタハ達と一緒に頭を抱えた。
よりにもよって自己増殖機能を、手元が狂ったとはいえ
ましてやレーザーカッターとかいう、それはもうしっかりと武器としても扱えてしまう機構が付けられたロボットに、
「…増殖頻度は?」
「一日で一体、二日で二体」
頻度は少ないようで安堵した、増殖問題は保管部の子らに任せよう。最悪の状況に陥りそうであれば、特異現象捜査部にでも泣きつけばいい。
コタマ曰く、レーザーカッターの出力もそんなに高くはないらしい。これはどうにかなるわ、勝ったな計算機叩いてくる。
「だいたいそうですね、あのガラスが溶けるくらいでしょうか」
「ん…?」
ところがどっこい、出力は低くない!!圧倒的、圧倒的溶断力…ッ!!
話しが、話が違うだろう…ッ!!あれはガラス細工部がつくった極厚の【超・耐熱ガラス】…ッ!!!
ユウカは白目を剥いた。
このあと満身創痍のユウカから各部に連絡が入り緊急出動。しかしある事に気が付いたユウカによって、特殊物保管部にのみドクターストップがかかってしまう。
だがヴェリタスの部員から提示された、好物たるメロンソーダとカフェオレの美味しいお店という情報を前にして、件のコミュ障二年生部長が止まるだろうか。
否、止まらない。
「で、聞いてたお店兼最新の目撃地点と一番近いカラオケに来たわけですが――どうします?」
「知らない……」
〘そんなひどいことを言わないでくれ。私だって、今回の件については絶対にあってはいけない事だと理解してるさ。でも起きてしまった以上、なにがなんでも放置はダメだろう?〙
「だったら…問題、起こさないで…。」
〘ごもっとも。まったく、自分の愚かさが嫌でしょうがない…!〙
二年生が三年生を小言で突いている間にも、他の部員たちは各々準備を済ませていく。
「嫌に…なるのは、あと…。今は…なんだっけ?」
〘ペットロボットを捕獲して、誰かが被害を被る前に事態を終了させる〙
「そう、だった……完全に…忘れてた……」
〘しっかり休息をとる事をお勧めするよ。ひょっとすると物忘れなんかは、これまでの無茶や不養生の影響かもしれない。体は資本だ。〙
頭の中のポンコツデジタル辞書をどうにか再起させ、しにそうになりながら無線機越しのウタハと喋るアオイもまた、後輩たちの手によってゴテゴテと装備を追加される。
ネットランチャーとテーザー銃。エンジニア部の手によって魔改造され疑似的なSMGへと変貌を遂げた『MASTER KEY:
室内の雰囲気はいつの間にかペアルック女子会から一転、今にも外へと飛び出してきそうな厳つい重装部隊の待機場所に。
「なっ、なんだこの部屋……強盗か!?」
しかも扉のガラスに映る彼女たちのシルエットはさることながら、中にはスナイパーライフルだの対物ライフルだのと長物を持った者もおり、他の利用客が部屋の近くを通りかかる度に腰を抜かす始末。
「状況確認、
「はい。ヴェリタスによると、予想通りほぼ直進ルートを通っているとのことです」
「はぁ……めんど。でもまぁ…直進、なら…いいか…。ミーティングはここまで……あとは…確実に捕まえる…。」
おまけにこの会話内容だ。残念ながらアオイ達の取ったカラオケルームは、この店の中で最も安い。防音性が低く「襲撃者が居る?!」と怪しまれるのは必然というもの。
更に、ミレニアムが事前にヴァルキューレへ提出しておいた書類に【特殊物保管部】の名前等が載っていなかったのも災いして、案の定通報を受けた『狂犬』率いる調査隊が突入。店内は一時騒然となった。
「部長、違う方の猛犬が来たみたい、外が騒がしいよ!」
「…え?」
そりゃそうなるわと、廊下に出た保管部員全員が思った。
「えっと……今、どう…?」
アオイは招かれざる客 ―といっても風貌としてはこちら側が招かれざる客だが― に出くわさぬよう祈ってから角を曲がり、此方を見て泣きそうな幼子をさりげなくあやしつつ、ドリンクバーのメロンソーダとカフェオレに目移りしながら階段を目指す。
「かなり動いたようで、いずれポイントに到達するかと」
「んー……だったら『
「わかった。
「そう。でも…無理、だったら……すぐ引き返してね…。それと『
「オーライ、ちゃちゃっと回収する。」
改めて状況を確認し、下の階に下りて物陰に隠れながら出口に走る。防具の見た目が余程恐ろしいのかどうかは分からないにせよ、意外と誰も声を上げない。
否、恐ろしいからこそ誰も声を出さないのだ。
青春なんかとは程遠い、対爆スーツとSFチックな戦闘ロボットを一纏めにしたみたいな外見の防具を身にまとった存在など、下手に死角から現れては誰が恐怖せずにいられるだろうか。
時間帯が時間帯なだけに、来店客のなかには学生も当然居た。けれどもどうだろうか。
トリニティの生徒。ミレニアムの生徒。ほか様々な学校の生徒。
どれと比べても場違いな何者かがこそこそと、しかし思い切りよく数名がガラス扉へ突っ走っていく。開けるときだけは慎重なくせして。
動きは可愛い。威圧感の凄まじいガスマスクさえなければ、無駄に目立つ装備でさえなければ。あるいはちゃんとした服装でさえあれば、とっても微笑ましい姿だ。
だがしかし、走っていくのは映画に出てくる悪役の私兵が如きアーマード黒ずくめ。
そんなもん見たら誰だって騒げば殺されるとでも覚悟する、それほどの不審者集団が一目散。
「ッ貴様ら、待て!!」
尾刃カンナが異常に気付くがもう遅い。エレクトリカルな魑魅魍魎達は、アーマーの蒼色の線の残光だけを残して、忽然と姿を消した。
後日この騒ぎは人知れず収まり、とんでもなくイカレたペットロボを生み出した少女は、晴れてエンジニア部の侵入部員候補生となる。
どんな風に今回の騒ぎが収まったのか、どんな子が造ったのかという情報はどこかで出るかもしれないし、出ないかもしれない。
ただ、知っておいて欲しい事が二つある。
一つはここまでの内容のすべてが、佐藤アオイの脳内で実際に流れていた声であるという事。
そして二つに、「近くの何処かに観葉植物がある」とアオイ自身が認識している限り、物語には終わりが無いという事。
「やっぱ、うるさい…。」
実際、自販機からメロンソーダとカフェオレを取り出している彼女の近くにも。
ほら。
「やば…折っちゃった……」
大丈夫、あの保管室で待ってる。
【佐藤アオイ】
つい最近、どこぞのゲーマーなシスターズから、オレンジのヘッドフォンを授かった自称喋り下手なコミュ障。青色は売り切れていた。許せぬ。
過労が祟ってかいよいよ観葉植物がしゃべりだしたと勘違いしているものの、実際には下記のバケモンが『百合に挟まる男』ならぬ『青春に挟まる異物』をやっているだけ。
【たぶん観葉植物】
アオイにとっての『地下生活者』枠。
Q.いつから収容されていましたか?A.またまた御冗談を という嫌がらせの様な現実改変を発生させており、そのせいでアオイは彼の事を知らないどころか、そんなものを収容していたという事すら覚えていない。一応はゲマトリア所属。
正直なはなし深夜テンションの産物で、はっきり言って作者はコレのエミュに苦悩中。誰かのせいにしたいが自分の顔しか思い浮かばない人物。