エーテルの女王はホロウにて   作:._.

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二話

旧都陥落から数年後。

とあるホロウにて、不幸なホロウレイダーが彷徨っていた。

 

「……チっ、ツイてないわ。簡単な依頼のはずだったのに、なによあのバカみたいな量のエーテリアス!──ビリーとアンビーはホロウを出たでしょうし、ここで助けを待つしか……」

 

突然大量発生したエーテリアスから逃走した彼女は、疲れから足を縺れさせて転んでしまう。

他に伏せた彼女が反射的に閉じてしまった目を開くと、彼女の視界いっぱいに黒い靴が映し出された。

すぐさま目の前に誰かが立っているのだと理解し、慌てて立ち上がる。

 

「──っ!……誰?」

「こちらのセリフだ。ここは私の縄張りだぞ」

 

彼女の目の前に現れたのは、黒い表地に蛍光緑の裏地のコートを肩に羽織った女だった。

 

「……へ?あぁ〜、アンタのシマだったワケ?それなら気をつけて頂戴!ここから先にありえない量のエーテリアスが湧いてるの!」

「そうか」

 

彼女の言葉に、謎の女は表情ひとつ変えずに受け応える。

 

「……えっと、ここはアンタのシマなのよね?すぐに出て行きたいんだけど、今のアタシにはキャロットがないの、外まで案内してくれないかしら?」

「……なぜ?」

「い、いやだから、外に出たいのよ。アンタのビジネスを邪魔しちゃっても申し訳ないから……」

「ホロウは全て私のものだ。お前たちのこれまでの足取りも全て把握している」

 

女が手を中空に翳すと、周囲からエーテルが集まり、結晶化して歪な剣を形作る。

 

「──死ね」

 

エーテル結晶の剣が振り下ろされる。

ホロウレイダーここが運の尽きかと目を瞑ったが、死の瞬間は訪れない。

 

「──待たせたわね、ニコ」

「親分、コイツは……?」

「喧しいぞ、人間如きが」

「……敵みたいだな」

 

剣を防がれた女は背後へ飛び退き、剣先を地面へと叩きつける。

 

『っエーテル活性上昇中!ニコ、気をつけて!』

 

ビリーが抱えていたボンプがそう言うが早いか、三人を囲むように大量のエーテリアスが湧き出した。

しかし、三人もいれば雑多なエーテリアスは次々に切り捨てられ、撃ち抜かれて消滅してゆく。

 

「……モルガン」

 

アンビーが言葉を溢した。

 

「お前、兵士か」

「違う、私は邪兎屋の従業員よ」

「私をモルガンと呼ぶのは、私を殺そうとする軍兵士のみだ。……私はお前たちを許さない、許してなるものか!」

 

肉眼で捉えられるほど濃いエーテルが彼女から放たれ、それと同時に虚空からエーテリアスが発生する。

 

「なっ、エーテリアス!?どうやって……っ!」

「ニコ、退がって!」

 

再び振り下ろされたエーテル結晶の剣をアンビーが受け止めた。

 

「……エーテル統括能力、厄介ね」

「ほう、()()はそう呼ぶのか?」

「あなたしか持たない能力を呼称するために付けられた名前よ」

「ふむ、そうか。教えてくれた礼はしなければな、せめて豪勢な墓を立ててやる」

 

攻撃の手は止まない、状況を打開するためにはどうすべきかとニコは必死に考え、そして……

 

「ねぇアンタ!アタシたちと一緒に一儲けしない!?」

「……ヒトモウケ?」

「ディニーをたんまり稼いで贅沢暮らしをしてやるのよ!」

「……ディニー?」

「それさえあれば、何とだって交換できるのよ!アンタが欲しい情報だって!」

「……話を聞こう」

 

ニコは最初に、彼女の能力で作れるエーテル結晶はどれほどのものかと聞いた。そう聞かれた彼女が作った結晶は凄まじい大きさと純度を誇る最高級の一品だった。

それを受けてニコが話した計画はこうだ。

その一、彼女が作った結晶を邪兎屋が外で売り捌く。

その二、分け前は5:5である。

その三、そうして得たディニーを彼女の分け前から一番託してもらい、それを使って情報を探して彼女に伝える。

その四、彼女は復讐を終え、邪兎屋は大金持ち!

 

「…ど、どうかしら……?」

「残念ながら私は……」

「復讐は終わってる。今のあなたが探してるのは、『自分は何者か』そうでしょ?」

「……そうだな」

「…最後にあなたが人前に出てから十年が経ってる。ホワイトスター学会は残されたデータからあなたを解析しているはず、私たちが探すのは復讐の相手じゃなくてあなたを解析したデータ。これでどう?」

「……よかろう。ならば、即刻立ち去るが良い」

 

彼女が手元に生成したエーテル結晶をニコに投げ渡したかと思うと、邪兎屋の三人の足元に裂け目が出来上がり、その中に落下した邪兎屋の面々は気がつけばホロウの外にいた。

 

「……夢じゃないわよね?アレ」

「えぇ、その証拠にニコの手元にエーテル結晶が残ってる」

「……散々な目にあったけど、命あっての物種よね。早速アイツとの約束の品を探しましょ!」

 

その後、邪兎屋とその周囲の人々は、先ほどの少女を中心とした数奇な運命に巻き込まれることとなるが、それはまた別の話である。

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