ドラゴンボール Cove R Comics 10 作:やま おさ
食品売り場に戻るべく、エレベーターに乗った悟空。
「オラが行きてぇのは、ここじゃあなくて。地下一階って所に行きてえんだけど」
レストラン街で聴いたようにエレベーターガールに地下一階へと向かってくれるように告げる。
「こう、固てぇ箱に肉の絵が描いてあるのが、いっぺえあるところだ」
と、両手の指で缶詰めの箱を表現して、自分が望んでいるのは食器や食事では無く、食品が売っている所であるとも伝える。
すると、
「地下一階、食品売り場ですね」
悟空が望むフロアがエレベーターガールに伝わった。
「そして、それは缶詰めですね」
と、言う言葉の後に、エレベーターガールも手を四角にして、缶詰めの形を表現する。
「そう!。それだ、それ!」
悟空とエレベーターガールの思惑が一致した。
「それでは、地下の食品売り場に参ります」
そのようなやり取りの末に、漸く本来の目的地に戻れる事になる。
その一方で、ブルマは、
「やっぱり、迷子に成ってるみたいね」
一応の買い出しが済んだのか、フードコートで買ったソフトクリームを食べながら、悟空を探しつつ食品売り場を進む。
「まあ、建物内から出ていなければ、良いんだけど・・・」
と、言っているブルマであるが、悟空が心配してたような、怒っている様子は見られない。
何故ならば、悟空は建物内から出ていないと、ブルマは確信をしているから。
しきりにデパートに関心を持っていた悟空を鑑みれば、店内に留まっていると想像は出来る。
「でも、食品売り場にはいないのよね・・・」
デパート内の商品で悟空が一番興味を持つのは食べ物。
他には、それほど興味が無いはずで、かつ、どのような品物がデパートで販売しているかを知らない。
そして、大人しくしているようにと忠告をしているのだから、自分の意志で地下一階から離れる事は無いと思う。
「と、なれば・・、」
自らが知らず間にフロアを離れてしまう理由は分かる。
それを確認するために、ブルマは売り場から少し離れた広間に移動をする。
そこは、悟空が地下一階から消えたきっかけとなった場所。
エレベーターホールである。
「そう。孫くんはエレベーターに乗ったはず。だったら、どこで降りたのかをエレベーターガールに聞けば良いのよ」
と、言うのが、ブルマの分析。
言わなくても分かる事であるが、建物内のフロアを移動するにはエレベーターの他に、エスカレーターや階段がある。
しかしながら、エスカレーターと階段は移動する際に、上下階へ向かう事は眼に見えて分かり、対してエレベーターは仕組みを知らない限り、自らが望む事が無くてもフロア移動を叶えてしまう。
故に、悟空が消えた訳はエレベーターにあり、その結果エレベーターホールに来たブルマである。
「まあ、私の分析力なら当たり前の答えよね」
と、言う訳で、エレベーターが到着するのを待ってみる。
「あっ、来た」
エレベーターが地下一階に到着した。
「姉ちゃん、ありがとな!」
その扉が開いた途端に、エレベーターガールに礼を言う声が聞こえて、悟空が飛び出して来たまま、ブルマの腰の辺りに顔をぶつける。
「あっ、痛て!」
勢い余って飛び出したので、鼻の辺りを打ったのか両手で顔を擦る。
反面、ブルマの方はエレベーターの到着次第に、悟空が現れた事で自分の分析が正しかった事の理解が出来た。
しかしながら、呆れるように両手を腰に当てて、溜め息を吐いてみる。
「ふうっ、やっぱりね」
こうして、再会した二人ではあるが、
「おっ!、ブルマだ」
「ブルマだ。じゃあ、無いわよ。食品売り場に居なかったから、探しちゃったじゃない」
先程の様子では、それほど気にはしていないようであるが、一応は言うべき事を言う。
「悪りぃ、この箱に乗ったら、色んな場所に行っちまったんだ」
分かるとは思うが、箱とはエレベーターの事。
そのエレベーターの扉は未だ開いていて、エレベーターガールは手を振って、悟空が言った礼の言葉に応えている。
「おう!、ありがとな!」
再び、悟空からの言葉。
そして、エレベーターガールが軽くブルマに頭を下げた後に扉が締まり、再び業務に戻って行った。
「また、上に行くんだな・・」
エレベーターホール上の数字が変わっていくのを眺める悟空。
行く先々のフロアで知り合った人々への感傷、はたまたレストラン街の食事に未練があるのかは不明だが、感慨深くエレベーターを見送る。
「ふうっ。孫くん、色々な人に迷惑を掛けたんじゃあないの?」
悟空と共に降りてきたエレベーターガールの様子から、行った先々で何をしてきたかは想像が出来る。
「うん?。でも、みんな、ブルマの事を知っていたぞ」
「何それ?、どういう事?」
色々なフロアでブルマの名を聞いて、無事に食品売り場に戻ってきた事を伝える。
「ああ、そういう事ね・・。まあ、私の名前が知れているのは当たり前。どれだけ日本橋デパートで買い物してきたか、分からない位なんだから」
何だか、鼻息が荒い。
最も、国一番のデパートで名前が知れ渡っているのだから、自慢話にはなるのだろう。
それは兎も角。
「でも、迷子にならなくて良かったわ。私の名前が売れているっていうのも、悪い事では無いって事ね」
「あぁ、おかげで面白かった」
十二分にデパート巡りを楽しんだらしい。
「それとな、亀仙人のじっちゃんがいたぞ」
「亀仙人?」
偶然に出会った亀仙人の名前に、ブルマも意外に思う。
「女の下着売り場に行くって言ってた」
「何、考えてんの。あのじいさん」
何を考えているかと言われても、名目は悟空達の胴着を仕立てる為であるが、当たり前のように理解が及ぶ訳もないし、悟空からも詳細な事は言ってもいないのだから、変に思われても仕方が無いし、明らかに変だ。
「それより、孫くんの服。何か濡れてない?」
最上階で付いた涎は大分乾いてはいるが、染みは残っているせいで見た目は益々悪い。
「あぁ、よだれだ。一番上で旨そうな飯を見ていたら、濡れちまった」
「レストラン街まで行ってたの?」
「あぁ。で、オラ何か喰いてぇんだけど・・」
腹の辺りを抑えて、空き腹をアピールする。
「う~ん、レストランで食事するのも良いんだけど、今日は買い出しの後に勝負をするから時間が無いわ」
と、言って、空いた腹の足しになるかと、自分が持っていたソフトクリームを渡す。
「これも冷てぇな」
初めて食べるソフトクリームにも興味津々だ。
「それより、自分の食べ物はどうしたの?」
「あっ、忘れてた!」
そう、元々がブルマから離れた理由が、自分の食料を買う為であって、すっかり忘れたまま戻って来てしまっている。
「じゃあ、急いで買い物してきちゃって。もう、大分時間が掛かっちゃってるから」
「お、おう。じゃあ、行ってくる!」
そして、悟空は食品売り場に消えて、再び戻ってくる。
無論、カートいっぱいに食べ物を詰め込んいる。
「予想はしていたけど、随分と買うわね」
と、再びフードコートで買い求めたアメリカンドッグを噛りながらのブルマ。
「何だ、それ?」
「孫くんのもあるわよ」
赤いケチャップとマスタードが載ったアメリカンドッグを受け取る。
「これ、旨ぇけど。黄色いのが一寸辛いな」
と、言うのが、アメリカンドッグの感想。
「じゃあ、食べながらで良いから、お金を支払いに行くわよ」
「お、おう!」
興味深くマスタードを少しずつ舐めながら、レジへと進んで行く。
「孫くん、自分で会計してみる?」
「あぁ、そんな事を言ってたな」
何人かが並ぶレジ。
ブルマと悟空は自分の番になるまでに、買い物中に話していた支払いの事を口にする。
「じゃあ、お金を渡すわね」
と、言って、何枚かの紙幣を取り出す。
「何だ、ゼニーてっ奴じゃねぇか?」
片手に食べ掛けのアメリカンドッグを持ちながら、ブルマが差し出す紙幣を眺める悟空。
「そういえば、天下一武道会で見たかもね」
天下一武道会の賞金は50万ゼニー、結構な額だが悟空は優勝を逃したので、現物を手にしていない。
その紙幣をレジ係に渡す。
「お釣りは150ゼニーです」
返ってくるのは小銭。
「紙を渡したら、丸いやつが却ってくる・・」
「そう、それで食べ物は孫くんの物」
「ふ~ん・・・、金と引き換えにするって事か・・」
初めて知る世の中の仕組み。
「そう、大抵の物はお金が無いと手に入らないわ」
「・・・・、」
便利なのか不便なのかと思うのは、人各々なのだろうが、初めて知る事に興味は持つ。
お釣りで返って来た小銭を繁々と眺める悟空。
「なるほどな・・・」
そして、食料の買い込みは済み、ドラゴンボールを賭けての勝負が始まる。
「ああ。でも、何すんだ?」
と、アメリカンドッグに続き、自分の物になったサンドイッチを噛りながら聞く。
「そうね・・・」
お互いの服装をデパートの外でアピールして、人だかりが多い方が勝ち。
「そんな感じ」
「ファッションてっ、奴か・・」