皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第7話 ギム防衛戦

 

クワ・トイネとの国境から2kmほどにの平原にて、ロウリア王国東方征伐軍は天幕を広げ野営を行っていた。

野営地のそこらで焚き火が焚かれ、野営地全体を明るく染め上げる。

将兵たちには十二分に食事と酒が配られ、明日の侵攻に向けて士気を高めていた。

そんな野営地を見下ろす小高い丘の上に、将校が集まる天幕があった。

その天幕の一つで、副将を務めるアデムは、酒瓶を傾けながら伝令に明日の指示を伝えていた。

 

「明日、ギムを落としますよ」

 

アデムは、ギムに攻め込む先遣隊約3万の指揮官の任を与えられていた。歩兵2万、重装歩兵5千、騎兵2千、特化兵(攻城兵器や、投射機等、特殊任務に特化した兵)1500、遊撃兵1000、魔獣使い250、魔導師100、竜騎兵150、という大軍である。

これほどの大戦力に本国がどれほどこの先遣隊に期待しているかを感じ、魂が打ち震えるのを感じた。

 

「ギムでの戦利品はいかがしましょうか?」

 

怪しい笑みを浮かべるアデムに、伝令兵が怯えながら話しかける。

アデムは残虐非道という言葉を体現したような男だ。亜人撲滅を心から掲げ、たとえ味方であっても役に立たないと判断すれば即座に殺し、残った家族は奴隷として連れ去る生粋の危険人物だ。

 

「そうですねぇ....好きにして構いませんよ。女は犯し嬲るのも良し、男は腹を掻っ捌き目玉をくり抜くのも良し。ああ、ワイバーンや魔獣の餌にするのもいいかもしれませんねぇ。餌代もただではありませんし、醜い亜人を処理できるし一石二鳥というものです」

 

アデムは酒を片手に嬉々として語り、伝令兵はそれを聞いて顔を青くした。

 

「住民は皆殺し....いや、100人ほどは徹底的に嬲った後に解放しなさい。恐怖を伝染させるのです」

 

「りょ、了解しました!」

 

アデムは人の心を持っていない。そう部下は感じながら、これ以上こいつの下にいたら頭がおかしくなると思い、駆け足で天幕を飛び出し、命令を部隊長達に忠実に伝えた。

 

「...........ふう、やはりパーパルディア製のワインは美味ですねぇ」

 

アデムはその背中を見送り、笑みを浮かべながら酒を仰いだ。

 

 

 

クワ・トイネ公国 国境都市ギム

 

ギムを守るため、クワ・トイネ西部方面騎士団はそのほぼ全数がここに集められていた。

だが、西に陣地を形成しているロウリア軍とは10倍近い数の差があった。

 

(ここを....守りきれるだろうか....)

 

クワ・トイネ西部方面騎士団団長のモイジは、愛用の大剣を顔の前で構え、目を閉じて自問自答を繰り返していた。

街の住人の避難はほとんど完了したが、それでもまだ千人程度の人々が残っている。もし我々が敗北すれば、ロウリアの魔の手が民間人に及んでしまう。

 

「ロウリア軍。依然として通信を無視し続けています」

 

モイジのもとに魔導通信士がやってきて報告する。

 

「そうか.....奴らがいつきてもおかしくないな」

 

「ええ。ですが、我々には大日本皇国の兵器があります。完全勝利はともかく、相打ちぐらいには持って行く覚悟です」

 

ロウリアは五大列強パーパルディア皇国が軍事支援をしている......そんな噂を聞いてしまったモイジは、大日本皇国から送られてきた支援に心から感謝していた。

これならば、例え敗北したとしても、多くのロウリア兵を道連れに出来るだろうと。

 

それぞれの思いを心に浮かべ、無情にも時間が過ぎていく。

 

 

そして新しい朝を迎え、太陽が天頂にたどり着く頃、ギムの西方から赤い煙が天に登っていくのが見えた。ロウリア軍の侵攻の合図だ。それを示すように、通信兵から緊迫した通信が届く。

 

『ロウリア軍!国境を超え、ギムに侵攻中!上空に多数のワイバーンがギム方面へ飛翔!速やかなる迎撃を求む!!』

 

「了解した。直ちに現空域より離脱せよ」

 

『了解し__うあぁぁぁぁぁぁ!!』

 

魔法通信が突如として途絶えた。恐らく撃墜されたのだろう。その言葉を聞き、モイジはすぐに指示を出す。

 

「第1飛竜隊、第2飛竜隊は全騎上がれ!!銃兵と重装突撃兵は塹壕に配置、命令があるまで待機せよ!全騎兵は右翼で待機!!重装歩兵を前に歩兵を後ろにし後方で待機!弓兵は最大射程で支援しろ!!機関銃と野砲は射程に入りしだい攻撃せよ!!魔道士は後方で回復魔法に専念せよ!!全員で、風向きをこちらを風上としろ!!」

 

飛竜が舞い上がる。全力出撃の24騎全員が空を羽ばたき、まるで空を覆わんとしているワイバーンの軍勢に突撃をかける。

 

戦いが、始まったのだ。

 

・・・・・・・・・・+・・・・・・・・・・

 

 

「ふん。わざわざ屍になりにきたのか。哀れな者たちだな」

 

先頭を突き進む竜騎士団団長アルデバランはそう自らに向かってくる飛竜達に憐れみの言葉を呟く。

そして、アルデバランはまるで獲物を捉える獣のように目を細める。

 

「導力火炎弾一斉射用意!!一撃で敵飛竜隊を沈める!!」

 

75騎ものワイバーンが横に展開し、徐々に口内に火球が形成されていく。

 

「発射5秒前、4 3 2 1 発射!!」

 

掛け声と共に、凡そ75発もの火炎弾が放たれる。圧倒的面制圧の弾幕。これを受ければどんな飛竜でもひとたまりもなく焼け落ちるだろうとアルデバランは確信した。

 

だが、クワ・トイネ軍のワイバーンは突如として急上昇を初め火炎弾を避けてしまった。

落とせたのは5騎程度だった。

 

「なっ!!何故落ちない!!?あんな挙動をすれば滑り落ちるぞ!?」

 

太陽に突っ込むように上昇した彼らは旋回をしお返しとばかりに火炎弾を叩き込む。

カウンターを受けたロウリア竜騎士10騎あまりが燃え盛り落ちていく。

 

クワ・トイネ軍の飛竜隊は日本から輸出されたフルハーネス型安全帯を搭乗者、ワイバーン両方に装着し連結している。これにより手綱だけでは落下していた急激な上昇や下降も容易となり、今回のように火炎弾を回避できたのだ。

やがて両軍はドッグファイトとなり、敵味方入り乱れる乱戦状態となった。

 

クワ・トイネ公国軍は日本からの支援装備により善戦する。しかし、ロウリアとの数の差には抗えず全滅した。

だが、ロウリア軍もかなりの被害を受け、30騎あまりが撃墜された。

 

「おぉおのれぇ!!亜人共の分際でぇ!落に死ねると思うなよ!」

 

アルデバランは激怒していた。本来であれば、クワ・トイネの竜騎士なんぞ10騎程の被害で殲滅出来ていたはず。なのに想定より多くの被害が出てしまった。

やがて、陣地から飛び立った竜騎士隊第一陣はギムから10km地点に差し掛かった。目の良いものでなくとも、上空からなので下方に存在するギムを視界に入れる事が出来る。

 

「地上支援を行う!!農奴共を焼き払え!!」

 

既に敵の竜騎士は全滅している。これならば、一方的に敵兵を嬲り殺しにすることができる。

そう確信したロウリア竜騎士隊はギムの要塞目掛け、上空3000mから急降下を始めた。

 

___その時、彼らに悲劇が襲った。

 

 

地上 ギム防衛陣地

 

「敵ワイバーン急速接近!!急降下!!」

 

「対空防御!!全高射砲攻撃初め!!」

 

日本から輸入された、30mmの大型の機関砲が二門搭載された87式自走高射砲と、四輪式40mm対空機関砲がギムに接近する目標に照準をあわせ、火を吹いた。

 

・・・・・・・・・・+・・・・・・・・・・

 

ギムの要塞に接近したアルデバランは、地上で何かが光ったのを感じた。

そして次の瞬間、幾つもの光弾が高速で接近してくるのを認識した。

 

「な、何!」

 

光弾はあまりにも高速で接近し回避行動もままならず、相棒のワイバーン共々全身を貫かれ、その命を落とした。

大量の光弾がまるで光線のように空に放たれ、飛竜を撃ち落としていく。

更には接近した光弾がワイバーンのすぐ手前で爆発し、空中に黒い煙の花を咲かせていた。飛び立った破片がワイバーンの羽を破き、地に落としていく。

 

対空砲というものは地球においては、音速で飛翔する航空機には効果を発揮できなくなったが、誘導弾や無人偵察機に対しては有効である。

レシプロ戦闘機と比しても低高度までにしか到達できないワイバーン相手には、充分すぎる兇器だった。

ワイバーンの強固な鱗をものともせず貫き、全身をズタズタに引き裂いていく。

 

また一人、また一人と仲間が落ちていき、やがてその数が20を切ったところで飛竜隊は撤退していった。

 

「オォ!!やったぞ!」

 

「本当にワイバーンを撃退できた....」

 

「流石は日本の兵器だ!」

 

「喜ぶのはまだ早いぞ!!敵歩兵が来る!砲撃隊と小銃隊は配置につけ!!」

 

歓喜する兵員をモイジはたしなめ、指示を出す。

銃兵は塹壕に潜り銃を構え、砲兵は角度の調整を行い砲弾を装填する。

どんどんと雄叫びと、大地を踏み鳴らす衝撃が近づいてくる。

 

そして......時が来た。

 

「野砲、射程圏内です!」

 

「よし!!全野砲撃ち方用意ぃ!!___ぅてぇぇぇ!!」

 

表面を草で覆い隠された、6門のFH70-155mm榴弾砲が放たれ、まるで雷鳴の如き轟音が鳴り響く。

その轟音の少し後に、進軍する歩兵隊の中に幾つもの爆炎があがり、大地をえぐり取りながら衝撃で人が弾き飛ばされる。

 

「弾着確認!!続けて撃て!」

 

そして第二射、第三射と放たれ、その度にロウリア兵が薙ぎ払われ宙を舞う。

 

 

「なっ....なんなんですかコレは...っ!一体何が起こっているのですかっ!!」

 

アデムはわなわなと手を震わせていた。

1騎で1000人の兵に匹敵すると言われる精鋭のワイバーンが、たかが蛮族の群に30騎近く落とされ、それどころか陣地から謎の光弾が放たれ、バタバタと落ちていきみすみす撤退する羽目になった。

それだけでも、アデムにとっては度し難いほどの怒りを募らせていた。

だが、これはあまりにも状況が違う。

敵陣地で何かが光り轟音が響けば、数秒後には自軍で爆発がおこり、兵たちが木っ端微塵に吹き飛んでいく。

 

「ぐっ....どうやら敵には優秀な大魔道士がついているようです!ですが、既に相手の飛竜隊は壊滅済み!!竜騎士団に第二次攻撃を要請しなさい!!」

 

アデムは、このまま一方的に攻撃を受けるのはあまりに不愉快に感じていた。

 

「全軍はこのまま前進!クワ・トイネの奴らは軍民問わず魔獣の餌にするのです!!」

 

「「うおおおおおおおおおお!!!」」

 

進軍太鼓の音とともに、パイク騎兵を先頭にして全軍が突撃する。その間でも、砲撃は絶えまず降り注ぎ、仲間の血しぶきや肉片が辺りに飛び散り、それを踏み越えながら突撃していく。

魔道士の攻撃ならば、接近さえすれば攻撃することはできないだろうと、そう判断した。

だが、ここでもアデムは間違いを犯した。

 

ズダダダダダダっ

 

「なっ!」

 

そんな音が聞こえたと思えば、部下たちが次々と血しぶきを上げ地面に倒れていく。

大日本皇国に給与された62式7.62mm機関銃や89式5.56mm小銃により、いともたやすくロウリア兵の命を刈り取っていく。

 

「ええい!忌々しいぃ!!重装歩兵を盾にし前進!特科部隊も攻撃開始!物量で押し潰すのデス!」

 

ロウリア軍はひたすら突撃した。重装歩兵を、大型魔獣を盾にし進軍する。やがて弓が届く距離になり、矢や毒矢が放たれる。アデムの命令で未だ無事な投石機から石が飛ばされ、西部方面騎士団に降り注ぐ。

 

「うがぁぁぁぁっ!」

 

「ぐはあぁ゙ぁ゙!!」

 

「うぅ゙腕がぁっ.....」

 

「怪我人は後方に下がれ!!砲撃隊は投石機を優先的に破壊しろ!!」

 

「敵、さらに来ます!!」

 

「後方に、増援の飛竜隊を確認!!」

 

「怯むな!弾が無くなるまで、撃ち続けろ!」

 

クワ・トイネ側は迫り来るロウリア軍を撃ち続けた。永遠に思える時間の中で、一発でも多くの銃弾をロウリア軍に浴びせようと、撃って撃って撃ち続けた。次第に弾薬が不足し初め、投石機から放たれた石弾が野砲の砲塔を破壊し、第二次飛竜隊の攻撃で機銃も溶かされ、人員にも動かなくなるものが増え始めた。

 

そして____

 

「団長、全砲弾が尽きました」

 

兵の一人が指揮官であるモイジに報告する。

 

「......斬り込むぞ」

 

モイジはそう言って大剣を構え、突撃の体制を取る。

他の兵も、剣を、槍を、斧を、持てる武器を持ってモイジに続いた。

 

「突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

「うらあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「クワ・トイネに栄光あれ!!」

 

「クワ・トイネ公国万歳ぃィィィィィィィ!!!」

 

モイジの号令と共に西部方面騎士団は突撃した。この時の両軍は、どちらも酷い有様だった。ある者は銃剣で刺殺し、ある者は槍で頭部を貫き、喉元を刺し切る。モイジらが切り込みを行った時、まだ残弾が残っていた機関銃があった。群衆を切り抜けたクワ・トイネ兵は容赦なく5.56mm弾を放ちハチの巣に変えていく。

 

その数十分後に西部方面騎士団はモイジ以下全員が戦死し、ギムは陥落した。

 

戦闘結果

クワ・トイネ公国西部方面騎士団 約3000名 全滅

ロウリア王国東方討伐軍 約3万名 戦死約6300名 負傷者1200名

この内、陸戦戦力では先鋒となって突撃した重装歩兵と騎兵隊に被害が集中していた。また、竜騎兵は150に対して、被撃墜、騎乗者の再起不能、ワイバーンの再起不能、合わせて82と、現代戦であれば壊滅判定の大損害だった。

 

「くそっ!亜人風情にこれほどの損害が出るとはっ!」

 

アデムは怒りのままに、モイジの遺体を切り裂き鬱憤を晴らしていた。想定よりも遥かに大きい損害が出たことで、アデムは自らの経歴に傷をつけられたと感じ、怒りに震えた。

更に、その怒りを増幅させるのが、眼の前にある()()()()()()

 

「なぜ、クワ・トイネごときが牽引式魔導砲を持っているのですか!!我が国でさえ手に入らなかったものだというのにっ!!」

 

そこにあるのはFH70-155mm榴弾砲だった。一部は飛竜や投石機の攻撃で破壊されているが、数える限り6門程度はある。

ムーか、パーパルディアか、一体どこの誰がこの国を支援したのか.....

頭を回したところで、永遠に終わらぬ不快感と憤りを感じ初めたアデムは、早々に頭を切り替えた。

 

「はぁ......それで、戦利品の方はどうなってますか?」

 

「はっ!かなりの人数が避難していましたが、少なくない数がおります」

 

「そうですか。ならば一通り楽しんだ後は、命令の通り100程を解放して殺しなさい。この亜人どもの遺体は、串に刺して都市の周りに立てて置きなさい」

 

「なっ!!」

 

部下はアデムの言葉に唖然とした。部下は騎士として、祖国の為に戦い死んだ者ならば、例え敵でも無碍に扱うべきではないと考えてきた。

だから、アデムの騎士道精神もなにもない言葉に心から絶句した。

 

「どうしたのですか?早くやりなさい」

 

「はっはい!了解しました!」

 

アデムの命令に従い、兵士たちは民家から金品から食料まで奪い尽くし、逃げ遅れたエルフの家族を捕らえ、男は魔獣に生きたまま食わせ、妻と娘は凌辱した。

このことは解放された住人が付近の村々に伝え、クワ・トイネ政府にも認知された。そして、大日本皇国は同盟国救援と安全保障条約に基づき、ロウリア王国に宣戦を布告した。

 

 

 

 

 

 





初めての戦闘シーンです。近代武装の戦いは中々に表現が難しいです。


・四輪式40mm対空機関砲
旧陸軍の5式対空機関砲に似たデザインの対空砲。
ドローンなどへの対策とした量産性に優れた対空砲が求められたことで開発された。
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