皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第8話 ロデニウス沖の咆哮

 

クワ・トイネ公国 マイハーク港

 

日本の偵察機より、ロウリア王国から4400隻もの艦隊が出撃した情報を伝えられ、マイハークに基地を置くクワ・トイネ公国海軍第二艦隊は艦船を集結させていた。

何人もの水兵たちが矢避けの盾を甲板の縁に並べ、敵船に打ち込む火矢と、それを漬ける油が続々と船に運び込まれる。

大型弩弓(バリスタ)が船横に配置され、帆の綱が切れていないか確認をする。

クワ・トイネ公国第二艦隊、総勢50隻の帆船は、攻めてくるロウリア軍の艦隊に決戦を挑むべく、出撃準備をしていた。

そんな港の風景を、小高い丘の上にある第二艦隊司令部から、提督バンカーレが眺めていた。

 

「壮観な風景だな」

 

誰に言うでもなく、バンカーレは一人呟く。

 

「しかし、相手は4400隻の大艦隊。彼らの内、何人が生きて帰って来れるだろうか......」

 

パンカーレは窓から目を離し、傍らに控える側近のブルーアイに本音を漏らす。敵の圧倒的な物量を前に、どうしようもないやるせなさが込み上げてくる。

 

「失礼します。提督。ブルーアイ殿。海軍司令部よりからの伝令です」

 

一人の兵士がブルーアイに駆け寄り、伝令の紙を渡し去っていった。

 

「伝令にはなんと書いてある?」

 

「はっ!本日夕刻、大日本皇国より艦隊20隻が援軍としてマイハーク沖に到着する。また、彼らは我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を行うため、観戦武官1名を彼らの旗艦に搭乗させるように指令する.......とのことです」

 

バンカーレは自分の耳を疑った。

 

「20隻....っ!? 本当に20隻なのか!? 200隻の間違いではなく!?」

 

「はい。間違いではありません」

 

「やる気があるのかね彼の国は.....!それに観戦武官だと?そんなもの部下に死ねと言っているようなものじゃないか!明らかに死地だと分かっているところに、部下を行かせるわけにはいかないぞ!」

 

大日本皇国の艦船の詳細を知らされていないバンカーレは、あり得ないとばかりに吠える。

彼らからの常識からしてみれば、当然の反応でもあった。

一時の沈黙が流れる。その時、

 

「.......私が行きます」

 

ブルーアイが発言した。

 

「しかし.....」

 

否定しようとするパンカーレを遮り、ブルーアイは話す。

 

「私はこの艦隊において最も剣術が得意と自負しています。それにあの鉄竜を飛ばしてきた日本のことです。もしかしたら勝算があるのかもしれません」

 

「....すまない。任せたぞ。そして、絶対に生きて帰ってこいよ」

 

「はいっ!」

 

 

その日の夕方頃。

 

大日本皇国の援軍を待っていたマイハーク港は、港湾に人が集まり大騒ぎになっていた。

軍人から市民、商人....老若男女問わず人が集まり、その誰もが目を見開いていた。

 

彼らの視線の先には、100mを軽く超える大型船が次々と入港してくる。中には300mをも超える巨大船が存在している。

 

ブルーアイは海軍が200mクラスの船を臨検したという話は聞いていたが、自分たちの仕事を誇張するために嘘をついたと思っていた。

しかし今、マイハーク港にやってきた船たちは、沖合にいるにも関わらずとてもつもなく巨大で、船を進めるための帆も付いていない。見たことのない艦影にブルーアイは困惑以上に興奮していた。

やがて、奥の平たい船からSH13-飛天が.....彼らからすれば竹とんぼのような鉄の飛行物体が近づいてきた。

羽は見えないほど高速で回っており、物凄い羽音と風が吹き荒れ、気を抜けば思わず吹き飛びそうになる。

 

「大日本皇国海軍です!貴方が観戦武官の方ですか!」

 

ローターの爆音の中、迎えの軍人が大声で話す。

 

「は、はい!観戦武官のブルーアイです。よ、よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします!早速ですが、艦に乗艦するのでこちらにお乗り下さい!」

 

「わ、わかりました!」

 

ブルーアイはその未知の乗り物に乗り込んだ。中に入るとシートはフワフワしており、ほとんど揺れずにヘリコプターは進んだ。ワイバーンよりも遅いが、中は快適で、人が沢山乗せられると考え、確かに便利なものだとブルーアイは感じた。

やがて、小さかった船達の全貌が上空から明らかになる。そのどれもが....とても大きい。中でも、真ん中に位置する船は特に大きく、その中央にはどっしりとした建造物が乗っていた。

 

「な、なっ、なんという大きさだ....あの艦は船の上に城を乗せているのか!?」

 

ブルーアイは改めてその大きさに驚愕する。

 

(そうか.....これほど大きければ、それだけ大量の砲が搭載できる。海戦の際には、あの大量の砲が火を吹いて敵船を破壊していくのだろう。確かに、これならば一隻でもかなりの敵船を沈められるな!)

 

ブルーアイは、ここ数ヶ月で新たに身に着けた知識をもとに日本の力を理解しようとした。

やがて、ヘリはゆっくりと着艦する。

降り立った彼は、案内の軍人に連れられて艦内に入っていく。

 

対ロウリア派遣艦隊

《第17任務部隊》

 

主力艦隊

 

大和型戦艦『信濃』総旗艦

摩耶型防空巡洋艦『摩耶』『鳥海』

阿賀野型突撃巡洋艦『神通』

陽炎型駆逐艦『親潮』『早潮』『雪風』『磯風』『空風』

秋月型防空駆逐艦『冬月』『涼月』『春月』

伊900型潜水艦『伊963』

 

後方支援艦隊

 

出雲型軽空母『出雲』『姫路』:旗艦

摩耶型防空巡洋艦『身延』

吹雪型駆逐艦『潮』『曙』『朧』『漣』

 

彼が乗り込んだ『信濃』で、更に様々なことに驚愕する。

 

(何だこの艦は......鉄でできている?どうやって浮いているんだ)

 

疑問は尽きないまま、艦内を歩いて進んでいく。

 

(中が明るいし、ほんのり暖かい......何か燃やしているのか?それとも、光の魔法?これは魔導船か?)

 

そんなことを考えている内に、彼は艦長室にたどり着いていた。そこには艦隊指揮官と艦長がいた。やってきたブルーアイを敬礼で迎える。

 

「お待ちしておりました。桑十稲派遣艦隊指揮官を務める 阿良気延吉(あらきのぶよし)中将と申します。そして隣が....」

 

「信濃艦長の下田数詩(しもだかずし)大佐です。よろしくお願いします」

 

「クワ・トイネ公国第二艦隊から派遣された。観戦武官のブルーアイです。こちらこそよろしくお願いします」

 

簡単に握手を済ませて、現状説明に入る。

 

「早速ですが、簡単に作戦の概要を説明させて頂きます。我々は既にロウリア軍の艦隊の位置を把握しており、ここより西側500㎞の位置に彼らはおります。速度5ノット程度と非常に遅いですが、確実にこちらに向かってきています」

 

下田は、机の上に簡単な海図を広げ、両軍の艦隊に見立てた駒を置く。

 

「我々は明日の朝出航し、ロウリア軍に警告を行います。彼らが此方の警告に従い、撤退してくれればそれで終わりですが、それを無視した場合は当艦隊の火力を持ってこれを撃滅します」

 

「魚雷や誘導弾はあまりにコスパが悪すぎるので、基本的には敵艦隊には艦砲で攻撃します。敵飛竜の攻撃が予想されますが、それは支援艦隊の航空隊が、撃ち漏らしたものはSAMで対処する予定です」

 

「今日はこのままここに留まりますので、今日はゆっくりとお休み下さい」

 

ブルーアイは驚いた。彼らは20隻の艦隊のみで大艦隊に戦いを挑むつもりなのだ。ブルーアイは不安だったが、大日本皇国艦隊がどんな戦いをするのか楽しみでもあった。

その日の夜、ブルーアイは『信濃』の食堂でカレーライスという辛めの料理に舌鼓をうち、彼にあてがわれた部屋で、クワ・トイネの軍船には絶対にないふかふかのベッドに入り、ものの数分で睡魔に襲われ、眠りについた。

 

 

 

翌日 早朝

 

朝の6時、艦隊に総員起こしの起床ラッパが鳴り響く。その1時間後に朝食を済ませたブルーアイは、『信濃』の艦橋に登って来ていた。

 

「おはようございます。ブルーアイさん、昨日は良く眠れましたか?」

 

「おはようございます。ええ、船の上であんな寝心地のいい布団で寝たのは初めてです」

 

「それは良かった。出撃は8時になりますので、それまで艦内を散策して構いませんよ。8時にはここ艦橋に戻ってきて下さい。我々はCICに行かねばなりませんので」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

ブルーアイは案内人にあてがわれた軍人に付き添わられて、開示が認められている艦内を散策し、提出する報告書に書き記していった。

 

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

 

 

その頃、第17任務部隊から西方数百キロの海上を東進するロウリア軍の後方にて、

 

「ロウリア軍、変針せず、速度5ノットにて概ね想定通りに航行中」

 

「了解」

 

通常動力型では最強クラスの隠密力を誇る『伊900型潜水艦』。

その中において”クルミ”の諢名を持つ『伊963』がロウリア軍の後方にて、潜望鏡深度にまで浮上する形で追跡していた。

その状況は水上艦や航空機のレーダーに引っかかるし、水上艦より小さいとは言え目視で発見する事も可能なので、潜水艦にとってリスクのある潜航状態だが、ロウリア軍はそもそも潜水艦という概念自体知らないし、見つかった所で変なクジラにでも思われるだけなので、問題はない。

 

「もうすぐ作戦開始時刻だ。『信濃』に敵艦隊の現状を報告せよ」

 

艦長席に座りながら腕を組む男、栗炭は通信兵に告げる。

 

 

午前8時 マイハーク港 信濃CIC

 

「『伊963』より『信濃』へ電文」

 

「読め」

 

「はっ!『伊963』より旗艦『信濃』へ。ロウリア軍、進路そのまま、速度5ノットにて東進中。尚、内訳はガレアス船100、キャラック船500、ガレー船多数を見とむ」

 

通信士の報告に、阿良気は満足そうに笑みを浮かべ、声をあげる。

 

「おいでなすったか....全艦に通達!これより作戦行動を開始、マイハーク沖にてロウリア艦隊を撃滅する!!」

 

「抜錨する!錨を上げぇ!」

 

「機関前進原速!!」

 

阿良気率いる第17任務部隊は出港ラッパと共に錨をあげ、マイハーク市民からの激励の声を受け取りながら抜錨した。

マイハーク入口に聳え立つアーチ上の海峡を抜け、艦隊は速力を上げる。

 

「なんて速度だ!我が国のどの船よりも速い!」

 

艦橋にてその様子を眺めていたブルーアイは驚愕の声を上げた。

 

帆も張っていないのに、クワ・トイネのどの軍船よりも早く航行する。それに、艦同士の距離が離れている。密集する必要はないのだろうか?

そんなブルーアイの疑問をよそに、艦隊は進撃していく。

 

「そろそろかな。副長、警告のために哨戒ヘリを発艦させろ」

 

レーダーにいくつもの点が現れるのを視認し、作戦を開始する。

後方の格納エレベーターからSH13-飛天が姿を表し、メインローターとティルトローターを回すと、ゆっくりと甲板から浮上し、『信濃』前方に去っていく。

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

ロウリア王国東方討伐海軍 旗艦『レバレース』

 

「いい景色だ。美しい」

 

艦隊司令官の海将シャークンが、旗艦となる木造船の上で呟いた。

大海原を突き進む4400隻もの大艦隊。見渡すばかり船、船、船、最早海面が見えないほどだ。

それぞれの船が、大量の水夫と陽陸軍の兵士を乗せ、突き進む。

目指すは、クワ・トイネ公国経済都市のマイハーク。

 

パーパルディア皇国からの軍事支援と、6年という年月をかけて準備されたこの大艦隊。

最早この艦隊を止められるものは、ロデニウス大陸には存在しない。

いや、もしかすると列強国であるパーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。

 

(いや、パーパルディアには砲艦という、船そのものを破壊できる兵器があるらしいな......)

 

彼は、一瞬でてきた野心の炎を理性で打ち消す。やはり、第三文明圏最強の列強国であるパーパルディア皇国に挑むのは危険が大きい。

ならば今すべきことは、クワ・トイネを落とし、自身の名をロデニウスに広めることだ。

 

「提督!東からなにか飛んできます!」

 

マスト上にいる見張りの水兵からの報告で、シャークンは思考の海から現実に引き戻される。

彼は、艦隊の進行方向である東の空を見た。小さい黒い点が、徐々に近づいてくる。

 

「ん?.......なんだあれは?ワイバーンか?」

 

シャークンは一瞬そう思ったが、

 

「いや、違う?新種の飛竜か?」

 

虫のような灰色の無機質な物体がバタバタバタと聞き慣れない音を立ててこちらに飛んでくる。

そのあまりの音に、甲板上の兵士達もそれを見上げざわつき始める。

 

『我々は大日本皇国海軍である。ロウリア王国海軍艦隊に警告する。貴艦隊はクワ・トイネ公国の領海に侵入している。速やかに回頭し、引き返せ。繰り返す、速やかに回頭し、引き返せ。要求に応じない場合、武力にて排除する』

 

驚くことに、飛行物体は人が乗っており声が聞こえてくる。

 

大日本皇国......確か、数ヶ月前に接触してきた謎の新興国.....と自身の記憶を掘り返していた。

 

ワイバーンをほとんど持たない未開の蛮族であり、それどころか外交団に獣人を連れてきて我らを試すような視線を向けてきた為、外務局が門前払いしたと、職員が話していたような.....

 

すると、戦団の上空に静止するそれに向かって、水兵が矢を放った。しかし、高高度を飛ぶ飛行物体に当たるはずもなく、当然ながら矢は届くこと無く海に落ちた。

暫くの間上空を旋回し続けたそれは、東の空へ飛び去っていった。

あれは一体なんだったのか.....その答えが出る前に、見張り台から新たな報告にが入った。

 

「提督!島が!前方に島が見えます!」

 

「島だと?この辺りに島はないはずだが....」

 

シャークンは自身の目で確認するために、天然石をレンズ代わりにした原始的な望遠鏡で見張り員が指していた方向を見る。

 

「な、なんだあれは!」

 

望遠鏡で除いた先には、確かに島のように巨大な物体があった。だが、その色は灰色であり、草や木も生えていおらず、シャークンの知る島とは全く違う形状をしていた。

そして、それはシャークンの目がおかしくなっていなければ、ロウリア艦隊へ近付いているように見える。

 

「まさか.....アレは船なのか?」

 

彼らが驚いているのをよそに、小島と思われた船は驚くべき速度で接近してくる。そして、艦隊最前列の帆船の横に回り込み平行に航行し始める。

 

『これが最後警告である!速やかに回頭し引き返せ!繰り返す、速やかに回頭し引き返せ!さもなくば攻撃する!』

 

先程と同じように警告を発する。

シャークンはその船(神通)の大きさに圧倒されていた。

 

「しかしっ!こちらは4400隻の大艦隊!たった一隻で何ができる!全艦、あの船に向けて攻撃せよ!!」

 

命令を受けた帆船が旋回し、敵に距離を詰める。距離が200mを切った所で、一斉に火矢が放たれる。

しかし.....火矢は、カンッ、カンッと音を立てて全て弾き飛ばされた。

 

「刺さらぬ、燃えぬ、まさかあの艦は鉄でできているのか!?」

 

シャークンが驚きの声を上げている間にも、艦はタービンの出力を上げ、船団から急速に離れていき艦尾を見せる体制になった。

その様子を見て、水兵達は喜びの声を上げる。

 

「ヒャッハアァァァァ!!逃げやがったぁ!!」

 

「敵は随分とビビりみたいだぁ!こりゃ俺たちの勝ちだな!」

 

その水兵達をよそに、シャークンは言い表せられぬ嫌な予感を感じた。

 

(敵はデカいが数は我が軍のほうが圧倒的だ....なのに、なんだこの不安感はっ....!)

 

シャークンのその不安感は、直後に最悪の形で証明された。

 

突如、雷鳴の如き轟音が鳴り響き、島のような船の一部から炎が噴き出た。

 

「なんだ?勝手に爆発したのか?」

 

一斉射撃の発射炎を見て、シャークンは油か何かに引火して自爆したのかと勘違いした。それは他の水兵も同じで、敵艦が勝手に爆発したと思い、頬を緩ませる。

 

すると、空の彼方からヒューという音が聞こえてきた。

直後___

 

ドオォォォォォン!!

 

「なっ、なんだっ!?何が起こったんだ!?」

 

周囲に絶望が撒き散らされた。

船団の前方に船を軽く上回る巨大な水柱が現れ、近くにいた数十隻の軍船が打ち砕かれ、消滅した。

 

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