皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第13話 ギム奪還作戦

エジェイにおいて先遣隊が壊滅した戦いから一日経った今日。

ギムの東方20㎞の位置を、東に進撃する歩兵や騎兵の大軍があった。ロウリア軍の東方征伐軍本隊である。

 

「先遣隊とはまだ連絡がつかないのですか!?」

 

「はっ!先程から魔信で何度も呼び掛けてるのですが、応答がありませ....」

 

「ならば出るまで続けるのです!!!」

 

その軍勢の一角で、副将アデムはいらいらしながら通信士にむけて怒鳴っていた。

彼がここまで荒れているのは、先遣隊として派遣したジューンフィルア率いる東部諸侯団からの定時連絡が突然途絶してしまったからであった。

先遣隊とはいえ、2万もの軍勢である。そうそう敗れることはないはずなのだ。

 

「ワイバーンによる偵察はどうなっています?」

 

アデムは、先遣隊がどうなったのか確かめるべく、12騎のワイバーンをエジェイ方面に向かわせていた。

 

「今だ目立った報告はありません。時間では、間もなく先遣隊が消失した地点に到達するころです」

 

 

同時刻。ロウリア軍の竜騎士の1人、ムーラは、先遣隊がいた辺りに飛んできていた。

 

「なんだこれは....」

 

彼の眼下の下には、まるで月のクレーターのように凹んでいる箇所が幾つもあった。そこは、他の黄緑色の野原とは違い黒く焦げており、そこかしこに黒く焦げた金属片のようなものが散乱していた。

地面に突き刺さったままの旗が、黒く焼け焦げながら風でなびいている。

 

状況確認のため、彼はワイバーンを着陸させ、背中から飛び降りる。

周辺には、有機物が焼けた独特の臭いが充満し、あちこちに人間だったと思わしき体の一部や骨が落ちている。

 

「全滅....したのか....?」

 

そんな馬鹿な.....

盛況なロウリア王国陸軍が敗北するなど、しかも2万という軍勢が全滅するなど考えられない。

だが、現にここに生きている者はいない。

ムーラは魔導通信機を取り出し、報告をする。

 

「こちら第11飛竜隊6番騎ムーラ。先遣隊陣地に到着したが、黒く焼け焦げているだけで付近に生存者は確認できず。引き続き調査にあた___」

 

ガンっ!!

 

「なにっ!?」

 

突如、そんな音が鳴ると共に、手の中の魔信機が弾き飛ばされた。

魔信機は穴が空き、壊れてしまった。

 

「動くな!」

 

ガサっと音がして、振り向くと、ムーラに剣が突きつけられた。気づいたときには数人の男たちが姿を現し、ムーラに武器と思わしき細い物体を向けていた。

これが何かはわからないが、確実に自分の命を奪うものだと確信できた。

 

「武器を捨て、両手を頭の上に上げろ」

 

彼がいたのは先遣隊の焼け落ちた跡地、つまりエジェイ基地のすぐ目と鼻の先なのだ。そんなところに竜が降りてきて、バレないはずがない。

ムーラは言われた通り、腰に下げた剣を外し地面に捨てた。そして、両手を頭の上にあげる。

 

「グルルル……」

 

相棒が怒りの唸り声を上げ、相手をにらみつけるが相手は全く動じる風もない。

 

「やめろ」

 

ムーラが一言呟くと、相棒はシュンと大人しくなった。

 

「..........、敵兵と竜一匹を確保した。輸送手段を要請する。どうぞ」

 

男たちは通信機らしきものを手に持ち、誰かに喋っている。

 

ロウリア王国軍の竜騎士ムーラは、日本軍に捕らえられた。

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

「........通信、途絶しました」

 

場面は戻って東方征伐軍本隊。

音と共に、ムーラの魔信にノイズが走るのは通信士と、隣りにいたアデムにも聞こえていた。

 

「速やかに他の竜騎士もエジェイ方面に向かわせなさい!」

 

アデムは通信士に向かってそう叫ぶ。

 

「クワ・トイネごときに、先遣隊が全滅したですと?」

 

アデムは冷や汗が湧くのを感じた。ありえないはずの事態が起きている。

 

「アデム、何があったのだ」

 

クワ・トイネ侵攻陸軍将軍、パンドールが、部屋に入ってきてアデムに尋ねる。

 

「たった今、エジェイ方面に向かわせた竜騎士からの通信が途絶えました。報告によれば、先遣隊には生存者は確認できなかったそうです」

 

「まさか、全滅したとでもいうのか!?」

 

「その可能性は否定できません」

 

パンドールの問に、アデムは苦虫を潰したような表情になりつつ答える。 

 

「もしかしたら、敵はどこか列強からの支援を受けているのかもしれません。ギムにあった魔導砲もそうですし、散らばっていた武器はパーパルディアで使用されている銃のようにも見えました。そう考えれば、ワイバーンをつけていなかった先遣隊が壊滅的被害を受けたとしても、なんら不思議ではありません」

 

「そうか...」

 

まさか、敵もまた自分たちと同じく列強からの支援を受けていたのか。パンドールは憤りを感じた。

すると、アデムが一つ提案をした。

 

「将軍。もし本当に敵が列強からの支援を受けていた場合、現状の軍勢では侵攻が失敗する可能性があります。ですので、私が一度本国に戻り、兵力の増援を要請してきます。馬の足なら、それほど時間はかからないはずです」

 

「.....確かにそうかもしれんな。よし」

 

パンドールからの許可を得たアデムは、馬を駆り出し、一目散にロウリア本国に向かっていった__

 

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

パンドールは本陣を見渡していた。

上空では直掩のワイバーンが編成を組み、大空を悠々と飛行している。

これほどの軍勢ならば、かの古の魔導帝国の侵攻さえも跳ね返せるのではないか。そう思うほどの勇姿があった。

 

「これならば、敵もきっと......」

 

パンドールの精神が少し緩んだその時。

 

突如、上空を警戒していたワイバーンの内、16騎が煙に包まれ、バラバラに寸断された。

 

「何だっ!?何が起こった!」

 

落ちてくる焦げた肉塊。これが敵の攻撃だと、理解するのに数秒かかった。

 

「敵襲!敵襲!」

 

鐘を鳴らす音が響き渡り、対空用のバリスタを上空へ向ける。

すると、空の果てから幾つもの黒い影が現れ、物凄い速さでこちらに接近してくる。

それは羽ばたいておらず、ワイバーンのような飛行生物ではない。その物体は、翼下から2発の光弾を発射した。光弾は、逃げ惑うワイバーンを正確に追尾し、やがて衝突し爆発を起こした。

 

「馬鹿な...っ、ワイバーンが落とされるなどっ!?」

 

彼らの上空に、ワイバーンを撃ち落とした灰色の物体が通り過ぎる。轟音と衝撃波が彼らを襲う。

 

「なっ....速すぎる....!」

 

「ワイバーンなんて比じゃない!なんだあれは!?」

 

わずか数回の攻撃で、上空を飛行していたワイバーンは全て落とされた。

 

彼らにとって、ワイバーンの存在は絶対的なものだった。ワイバーンの数は国力に比例し、これだけの数があればかの神竜にも勝てると思っていた。

それが、ワンサイドゲームのように一方的に撃破されていく。

破壊された竜騎士の血肉は雨となって、戦場に降り注ぐ。

 

「...そ.....そんな.....ワイバーン..が.....」

 

パンドールが唖然としていると、空の彼方から更に巨大な大型の鉄竜が幾つも飛来してきた。

天空にいるはずなのにはっきりと見えるその巨体。

ワイバーンとは比べ物にならない圧倒的な威圧感。

 

(ああ.........これは勝てない)

 

パンドールは理解した。

最初から、今回の侵攻に勝ち目などなかったのだと。

大型の鉄竜の下から、何か黒いものが投下されていく。風を切るような、嫌な音が響き渡る。

パンドールの脳裏に、先遣隊を滅ぼしたとされる、未知の攻撃を幻視した。

 

次の瞬間、地上は灼熱の業火に包まれた。東の方向から、爆炎と衝撃波が人を焼きつくし、空に舞い上げていく。

そして、呆然と立ち尽くしていたパンドールもまた、高温の爆炎と衝撃波に包まれた。

ロウリア三大将軍の一人であり、東方征伐軍指揮官である彼も、他のロウリア兵と共にこの世を去ったのだった。

 

 

 

 

ギムの街に残っていたロウリア軍にも同じく、厄災が降り注いでいた。

万が一の時のためにギムの街に置いて行かれた15騎のワイバーンが休んでいる竜舎に向かって、高速の光の矢が突入してきたが始まりだった。ワイバーンは竜舎ごと押しつぶされて命を落とし、どうにか外にでたワイバーンにも光の矢は突き刺さり、その身を肉片へと変えた。

その後間もなく飛んできた敵の鉄竜は幾つもの光弾を放ちながら飛び回り、物資の倉庫などをどんどんと焼き払っていった。

そこに、別の飛竜が合流してくる。高速でぐるぐると回る何かが頭の上についている。その飛竜は他の鉄竜よりも速度は遅いものの、航空戦力を失ったロウリア軍にはどうこともできない。

ある飛竜は恐ろしいまでの速度で光の礫を放ち、生き残っているロウリア兵をミンチ肉に変えていき、ある飛竜は横に飛び出した部分から光の矢を雨のように降り注ぎ、バリスタや瓦礫で作ったバリケードを吹き飛ばしていく。

 

「うがぁっ...!!誰か、誰か助けてくれぇ!!}

 

「くそっ! 何なんだよこれは!」

 

兵士達にとって、阿鼻叫喚の地獄絵図。既に建物は軒並み破壊されており、聞き慣れない羽音に怯えながら必死に物陰に隠れている。

 

数十分後、轟音を鳴り響きかせながら町から離れていく鉄竜を見て、生き残った兵士たちは安堵のため息をもらす。

 

だが、ギムへの反抗はまだ終わりではない。

 

 

「全部隊、前進せよ!!」

 

キャタピラやタイヤが地面を抉りながら移動する音が響く。

空爆を隠れ蓑にしてギムを包囲していた第7師団が行動を開始したのだ。

『30式戦車』を全面に押し出し、それに装甲車、トラックも続いてギムの街になだれ込んでくる。

バリケードは先行したAHF14-隼の攻撃により破壊されており、難なく市街に侵入することに成功し、向かってくるロウリア兵に銃撃を浴びせながら進んでいく。

 

「1時方向に敵影!!」

 

「撃てッ!」

 

バリスタを撃とうとしたロウリア兵に主砲を合わせ、それもろとも粉砕する。

 

「くそっ!...矢を!矢を放てぇ!!」

 

生き残っている上級士官がどうにか指示を飛ばす。

必死に弓を引き絞り、戦車に向けて放つ。だが、当然刺さりなどしなず弾き飛ばされ、お返しに130mm砲弾が飛んでくる。

 

「怯むな!!戦え!行け!行けぇ!」

 

どんどんと進軍してくる敵に対し、ロウリア兵は己に発破をかけ剣を抜き突撃していく。

だが、こちらはそんなこと歯牙にもかけず、砲塔に取り付けられた12.7mm重機関銃で敵を薙ぎ払いながら進軍する。

 

「よし!敵は虫の息だ!総員、下車戦闘!」

 

壊れた噴水が見える中央の広場に届くかというところで、次なる戦闘が開始される。

歩兵連隊が装甲車やトラックから飛び降りて、小銃や機関銃を構え攻撃を開始する。

放たれる銃弾は簡単に鎧を貫き、ロウリア兵は次々と倒れていく。

 

そして、それに続き.....

 

「ここ、ギムはクワ・トイネの物である!未来永劫、これが崩されることは絶対にない!!我が国を侵す侵略者の手から、ギムの町を取り戻すのだ!!______かかれぇぇ!!!」

 

「全軍突撃ィ!!!ロウリアを叩きのめせ!」

 

「クワ・トイネの怒りを思い知れぇ!!」

 

ウオオオオオォォォォ!!

 

剣を掲げるノウの号令に呼応し、槍を構えたクワ・トイネ歩兵隊が鬨の声を上げながら突撃する。ギムの民を虐殺された彼らは怒りに燃えており、ロウリア兵を許すつもりは毛頭なかった。

瓦礫だらけになった市街地を身軽に駆け、ロウリア兵を追い詰めては斬り倒していく。

ロウリア軍は先程の度重なる空爆で疲弊しており、ギム防衛を担っていた将軍も戦死してしまったがためにまともな統率ができていなかった。

みるみる内に敵は倒れていき、作戦が開始された2時間後には掃討が完了した。

ギムの街に立っているロウリア軍の姿はなく、残っているのは死体か、戦意を損失して捕虜になった者だけである。

クワ・トイネ兵は万歳三唱でこれを讃え、エジェイ基地では宴が行われた。

ギムの街は、一ヶ月ぶりにクワ・トイネに戻ってきたのだった。

 

 

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