皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第14話 終幕への会議

クワ・トイネ公国 公都 政治部会議場『蓮の庭園』

 

例によって政治部会が開かれており、首相カナタをリーダーとしていつものメンバーが集まり、会議を行っていた。内容はもちろんのこと、先のギム解放戦における戦果報告である。既に、今月に入って何度会議を開いたか覚えていない。

 

「______以上が、先にギム奪還作戦における戦果報告であります」

 

ノウ将軍から提出された報告書の内容に、誰もが呆然としている。

 

「現在ギムの街は、日本軍との協力のもと復興と防衛拠点化が進められています。また、周辺に散開していたロウリア軍の騎兵隊ですが、それらも全て討伐が完了したとのことです。既に我が国の圏内にロウリア軍の姿はありません。

ですので、我が国に侵攻していたロウリア王国軍は、陸軍、海軍共に壊滅したということです」

 

想像以上の戦果に、誰もが口を開けずにいる。

本来であれば、自国の脅威が去ったと歓喜の声を上げるべきなのだろうが、あまりの戦果に現実味が浮かばないのだ。

 

「.....これは本当に真実なのであろうな?」

 

大臣の一人がそう頭を抑えながら問う。本来なら苦戦を強いるはずのロウリアに圧勝したことが、受け入れられないのだ。

 

「当たり前だろう。わざわざ報告書に嘘をかく意味がない」

 

「だったら何なんだこれは!?確かにギムの町を取り返してくれたことには感謝するが、それとこれとは話が別ではないか!これほどの実力を持っているなんて........まさか、奴らは古の魔導帝国の流れを汲むもの達なのでは!」

 

「それはあり得んだろう。彼らが魔帝に与するものならば、真っ先に我らが奴隷として支配されているはずだ」

 

野次が飛び交い、会議場は喧騒に包まれる。

 

「ま、まあ。これで敵の侵攻は防げたわけですし、ここは我が国への脅威が去ったと素直に喜ぶべきでしょう」

 

かなり無理矢理感はあるが、カナタは取り敢えずそう報告を纏めた。

 

「それで、です。次の議題についてですが...まず手元の資料をご覧下さい」

 

各大臣の前には、日本から輸入した安く上質な紙に書かれた資料が置かれていた。

大臣達はその資料に視線を移す。

 

「なっ....!?」

 

「これは....」

 

誰もが驚愕の声を漏らした。

資料のタイトルにはこう書かれていた。

 

『ロウリア王国首都攻撃許可願い』

 

「日本は我が国から発進した鉄竜で、首都ジン・ハークにある王城に強襲、ロウリア王を今回の戦争の首謀者として捕縛したいとのことです。それに合わせ、陽動の意味を兼ねて地上よりロウリア圏内に侵入し、地上部隊を撃破したいとのことです」

 

日本からの提案に、大臣達は顔を見合わせる。

 

「別に...いいのではないか?我々に損はないし」

 

「それに上手く行けば、戦争を終わらせることができる」

 

「そうだな。我々は大人しく、ギムの復興に尽力するとしよう」

 

政治部会では満場一致で、日本によるロウリアへの陸海空全域における攻撃が許可された。

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

大日本皇国 東京 統合参謀本部

 

認可がおりたことにより、日本軍は本格的にロウリアへの攻撃に対しての最終準備を始めた。陸軍部隊は既にダイタル基地に移動が完了しており、海軍も港で待機している。

 

「さて、ロウリアへの攻撃が許可されたからな。異世界進出の花向けとして、思う存分やるとしよう」

 

第一会議室において、ロウリア首都攻撃作戦についての最終確認が行われていた。

部屋には総司令官の沖田の他に、陸・海・空の参謀総長、海軍陸戦隊司令長官が集まっていた。

 

「今回の作戦は、はっきり言ってほとんどが敵を引きつける陽動だ。戦いの決め手は王城に空挺降下して、戦争の主犯であるハーク・ロウリアを逮捕することにある。

だから派手にやっていこう。

ということで長谷川、概要を頼む」

 

陸軍参謀総長を務める長谷川涼太は、沖田の振りにも問題なく対応し、立体モニターに展開されたロデニウス大陸の地図を使って説明を始める。

 

......その前に、ロウリア王国の地理について説明しておこう。

王都であるジン・ハークは、ロウリア王国の中央よりやや北に存在する。街全体を高さ30mの壁が囲っていて、街の中央、なだらかな丘の上に王城であるハーク城が建っている。街の周囲は広い平原が広がり、城壁に立っている監視塔が目を光らせている。

そして、ジン・ハークから北西に8kmほどの位置の海に面した海岸に、港湾都市ベイ・ハークが存在する。

他国、主に支援を受けた列強国との交易の場で、先のロデニウス沖海戦の大船団が出航した地でもあり、今も何とか生き残った数百隻の船が停泊している。

そして、クワ・トイネとロウリアの国境から森林地帯を抜けたところに、要塞基地ロドナがある。昔まだロウリアが力をつける前にクワ・トイネから国土を守る為に作られた要塞であり、そこまでの頑強さはない。だが付近には小さな砦がいくつかあり、騎兵や重装兵を迎え討てるようになっている。

....そう、騎兵や全身鎧の歩兵なら。

 

「沖田司令の言うとおり、この作戦の殆どは敵を誘き寄せるための陽動です。まず、第一段階としてロウリアとの国境を突破します。そして、敵の目を我々に向けさせる必要があるので、目先にある要塞基地ロドナを攻撃、無力化します。敵はこの段階で王都防衛に、王都の東方にあるピーズルに兵を集め、我々を迎え撃とうとするでしょう。

ロウリア一の工業力を持つピーズルを落とすために、我々は全軍を持ってして攻撃すると敵は予想するでしょうからね。

ですが、我々はその後部隊を二つに分け、主力と陽動に分けて行動します。第七師団を主力とした攻撃本体はピーズル北方のアテナ平原を抜け、王都ジン・ハークを目指し、ピーズルに展開している敵軍を拘束する為に、第二砲兵連隊、第三歩兵師団の第二部隊はピーズルへ派遣します」

 

ロウリア軍の軍需物資の生産を一手に担っているピーズルには多数の鍛治工房が乱立している為、ここが落とされればロウリア軍の武具の補給が立ちいかなくなってしまう。ロウリア軍にとって重要な都市だ。

つまり確実に死守しようと戦力を向かわせてるだろう。

 

「敵がピーズルに目を向けている間に、今度は海上艦隊で北方のベイ・ハークを攻撃し、停泊する大量の木造船を破壊。基地に対して砲撃を行った後上陸し、同地を占領します」

 

説明を区切ると同時に、空軍参謀総長の倉橋翔流が補足を加えた。

 

「ここは私達の出番ですな。敵軍船及び港湾基地を爆撃、それと同時に王都方面にも編隊を飛ばします。おそらくロウリア軍も航空戦力を向けてくるでしょうが、たかが空飛ぶトカゲ。一方的に叩き落としてご覧に入れましょう」

 

「ワイバーンだからって油断するなよな。

んでだ、制圧したベイ・ハークにも敵は奪還部隊として戦力を送ってくるだろうから、敵はジン・ハーク防衛、ピーズル、ベイ・ハークと3つに戦力を分散しないといけなくなる。

そして、敵がそれらに釘付けになっている隙に空挺部隊がヘリボーンで王城に降下し王を拘束し確保。全作戦終了、ってとこだな」

 

「どことなくメナスバーン戦争を思い出しますな」

 

「だな」

 

沖田が最後に説明を締め、会議は細かい作戦行動のすり合わせの為の質疑応答に移った。稼働する航空隊や艦艇の編成を行い、どれをどのタイミングで行うかを決めていく。

最終段階で作戦を長引かせれば王城内に大量の兵士がなだれ込んでくるのが容易に想像できるため、できるだけ早急に作戦を終わらせなければならない。

現状でわかっている限り、ロウリア王国軍は本当に中世規模の軍隊であると推測されるため、大規模な攻撃が可能な戦略級兵器の使用は行わない。

 

「ああ、言っとくけど、当日俺は作戦指揮できないから、困ったことがあったら長谷川によろしく」

 

すると、突然沖田が資料を片手にそんなことをぼやいた。

事前打ち合わせにもなかった突然の言動に、振られた長谷川が勢い良く頭を上げ目を点にする。

 

「え?それは一体何故......?」

 

海軍陸戦隊司令長官を務める篠塚蓮が、当然ではあるがそう質問する。

それに対して帰ってきた答えは...

 

「困った時は長谷川に投げとけば、どうにかしてくれるからさ。長谷川は優秀な軍人だからな」

 

「違いますそっちを聞いてるわけじゃないです」

 

「.......」

 

「.......長官、もしやまたお一人でどこかに行く気ですか」

 

明らかに何かを隠している様子の沖田だったが、長江の言葉に観念したのか、一つ息を吐いて口を開く。

 

「どうやらギム奪還作戦の時、少し前にロウリア本隊から逃げ出したやつがいたらしい。それでドローンでそいつのことを確認したら、ギム虐殺の首謀者である敵将のアデムだと報告が来たんだ」

 

「首謀者、ですか。逃してはいけませんね....」

 

「だろ?だから俺が直接出向いて相手をしようかと」

 

沖田のその返答を聞いて、思わず呆れるようなため息が漏れる。

またいつもの戦闘病か、と。最高指揮官のはずなのに前線で暴れたがるこの人は。いや、むしろ前線で暴れたがるからこそ指揮官を押し付けられたと言うべきか。

 

「はぁ...まあ構いませんが。ですが行くのであれば、軍属の護衛を一人は付けてください」

 

「んん〜。なんだ長江、俺がそんな簡単に負けると思うのか?」

 

「それでも、です。どうせ杞憂でしょうけど、長官は長官であり、この国の最高幹部の一人であるという自覚を持って下さい」

 

「へいへい」

 

そんなこんなで沖田の話も終わり、明日の明朝を持ってして作戦が開始されることが決定した。

 

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

 

「本当に......全滅したのか...?」

 

暗く淀んだ空気の漂う王城の一室にて、思わず身を乗り出しながら玉座に座るハークが呟いた。

 

この部屋には現在、王国騎士団将軍パタジン、王国宰相マオスや宮廷魔導士ヤミレイを筆頭に、多数の軍幹部や国防の要が勢揃いしていた。

こうなった理由は、少し前に舞い込んできた一つの報告にあった。

 

「はっ、クワ・トイネ公国征伐に出陣した陸軍総指揮官のパンドールとの定時連絡が途絶え、未だ連絡がついておりません。東部諸公団指揮官のジューンフェルアは勿論のこと、副将であるアデムも行方不明のまま。ギムの町も奪い返されたことから、おそらく征伐軍は壊滅したものと思われます」

 

クワ・トイネ征伐に派遣された軍勢が撤退を一切できず通信機ごと壊滅してしまったせいで、部隊が壊滅していることに気づくのが遅れてしまったのだ。既に戦いが終わって数日が経過してしまっている。

 

「海軍も先のロデニウス沖海戦で壊滅的被害を受け今だ再建の目処は立っていない。海将シャークンも行方不明のままで、現在は臨時指揮官としてホエイルを当てている」

 

「加えて言えば、航空支援で派遣したワイバーン400騎あまりを既に失っている。残っているのはここジン・ハーク防衛用のワイバーンと、ピーズルに駐屯している15騎のワイバーンしかいない」

 

予想以上の大損害に、誰もが唖然とした様子で顔を青く染める。

 

「我々の援助があったのに何という体たらくか...」

 

「あれほどの戦力をむざむざと消費するとは...期待していたが、やはり蛮族と言わざるを得ない」

 

「このような醜態を晒す国に、最早我々が手をかける価値もない」

 

ロウリア首脳陣が悲惨な雰囲気の中、パーパルディアの使者は悪態を吐きつけるが、ロウリア側は誰も言い返せない。

黒いローブの集団が扉から出て行き、部屋は嫌な静寂に包まれる。

そして、この戦況に我慢ならなかったのか、一人の幹部が机を叩き、立ち上がりながら怒号を放つ。

 

「どういうことだ!敵は野蛮な亜人族ではなかったのか!何故クワ・トイネごときにここまで負けている!?我が国の兵はいつのまに腑抜けたのだ!」

 

「控えよ!!王の御前であるぞ!」

 

「しかしッ!」

 

兵を侮辱するような貴族の言葉に、会議場は一触即発の空気に包まれる。

そんな中、マオスが一つ息を吐き、自らに視線を集める。

 

「恐らく、大日本皇国という国のせいだ」

 

入り込んできたマオスの声に、一度静まる。

 

「大日本皇国だと?ワイバーンもまともにもたない蛮族だと聞いているが?」

 

「しかし、戦況悪化の原因はこの日本にあると考える他無いのだ。報告によれば、日本は列強国のような魔導兵器を多数保有しており、その一部をクワ・トイネに供与したのだという。残念ながら、その魔導兵器については詳しくはわからないが...」

 

「魔導兵器とな...だが、その程度で本当に東方征伐軍が全滅するのか?博識で知られるヤミレイ殿なら、この状況が理解できるのではないか?」

 

話を振られたヤミレイは、何を考えたのか唸るような声を出しながら答えた。

 

「うむ......伝承....追尾する光の矢......人智を超える力........!まさかっ、まさかっ!!大日本皇国とは古の魔導帝国、若しくはその末裔なのではッ!!?」

 

ヤミレイの放った言葉に、会議室に集まる誰もが騒然とする。

この世界において知らぬものはいない古の超大国。絶大な軍事力と多種族を圧倒する技術力を持って世界を支配し、その傲慢な欲は神までをも下そうとした。

神々は怒り、帝国に対し星を落とした。

星の落下を防げないと判断した魔導帝国は"時"を超越する魔法を発動し、その大陸ごと消滅した。

 

『彼の地にて再び甦りし刻、世界は再び我らにひれ伏すだろう』

 

それだけ書かれた不壊の石板を残して。

 

「確かに....それならばワイバーンを持たないのも理解できるし、これだけの被害が出るのも説明がつく」

 

「いやいやいやお待ちくだされ。本当に魔導帝国ならば、周辺国と国交を結び友好関係を築くようなことをするとは思えない。それに、伝承では魔導帝国が復活する際は『昼間が一瞬、光のない暗闇に包まれる』とあるが、その様な現象はありましたかな?」

 

マオスはそう言うが、最悪の想定から現実逃避をしているようにも見えた。

 

「近事は、『夜が一瞬、輝かしい光に包まれる』という現象はあったが...マオス殿に一理ある。彼の国を上げたのは早計だったな。すまぬ」

 

何処からか上がった声をマオスが否定し、発言者であるヤミレイもその発言を訂正した。だが、これで状況は振り出しに戻っただけだ。

 

「ともかく、このままではギムへの再侵攻どころか、大日本皇国による逆侵攻の可能性も想定せねばなるまい」

 

仕切り直しとして、パタジンがそう呟いた。

 

「そうだな。幸い、ここジン・ハークは国境から離れており、途中には工業都市ピーズルやいくつかの町が存在する。ここはやはりピーズルに戦力を集中させ、籠城戦を取りながら敵を迎撃するべきでは?」

 

「奴らも後方に敵を残した状態で王都に来ることもないでしょう。敵がピーズルで足を止めている隙に再度ギムの町を奪取し、双方から挟み撃ちして一網打尽にすればよい」

 

「そうであろうな。よし、スマークに伝えよ。西方部隊と北方部隊を率いてピーズルに向かい、現地に駐屯する兵と合流せよと。

それから、国境には諸侯らから徴収した兵を配置し、ここジン・ハークは監視体制を強化し、24時間交代で監視に当たらせよ」

 

パタジンが命じたことで、軍幹部に安心感が生まれる。東方征伐軍が敗北したのは、敵が地の利を生かした戦法を使用したからに違いない。たかが少数の魔導兵器で我が軍が全滅するなど考えられないからだ。

だが防衛戦ともなれば、地の利はこちらに味方する。

こちら側の方が数は多い。例え魔導兵器を持っていたとしても、挟み撃ちにしてしまえば、精強な我が軍なら確実に敵を撃ち倒してくれる。

彼らはそう信じていた。

 

「緊急!!緊急!!」

 

扉を蹴破るような勢いで、男が息を切らしながら飛び込んできた。

 

「国境要塞基地ロドナより報告!!赤い丸を描く旗を持つ不明国が国境を越境!鋼鉄の魔獣複数を連れて我が領内を進軍しております!!」

 

「来たか!」

 

ガタンと立ち上がる幹部たち。

この時、これがロウリア史上最も長い夜の始まりになるとは、ここにいる誰も思いもしなかった。

 

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