皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第15話 反抗突撃 ロウリア攻撃作戦!

話は、ジン・ハークにて首脳陣が会議を行っている数十分ほど前に遡る。

 

青々とした草が生い茂る平原の中に、一際目立つ建造物があった。

眼下に広がる草原、そしてその先にあるロウリアとクワ・トイネとの国境線がある林を見渡すように作られたそれは、難攻不落として名高いロドナ基地である。

国境から侵攻してきた敵を受け止めるように要塞が築かれており、付近には国境の警備のための小さな塔が幾つも建てられている。肝心の基地本体は二重の城壁に囲まれ、内側には堀が張り巡らされ、絶対に敵を逃さないつくりになっていた。

 

ロドナ基地の指揮官を任されたバクガ将軍もここを守りきれると確信しており、クワ・トイネから奪ってきた麦で作ったエールを堪能していた。

しかし、そんなロドナ基地は現在喧騒に包まれていた。

砦の一角にある指揮所では慌ただしく人が動き回り、次々と送られてくる魔信に対応が追いつかなくなる。

 

「なんだこれはなんだこれはなんだこれは...ッ!一体どういうことなのだ!!」

 

バクガがジョッキを机に叩きつけるのも致し方ないと言える。

国境防衛部隊から敵軍の侵攻の報告を受けたと報告を受けてからまだ一刻もなっていない。

だが、先程からひっきりなしに報告が飛び続けている。

敵が来たと思ったら次の通信では砦が陥落したと流れ、兵たちは部屋中を走り回る。予想を上回る速度で戦局が押し進められている。

 

「前線は一体どうなっているのだ....!援軍のワイバーンはいつくるのだ!!」

 

「それが.....先ほどから何度も応援要請を送ってくるのですが、「現在迅速に離陸準備を進めている。貴公らは引き続き遅滞戦闘に努めよ」と、帰ってくるばかりで...」

 

「なんだとッ!?くそっ!」

 

既に残存するワイバーンは根こそぎ引き抜かれ、東方部隊に配備されていたワイバーンは全て後方に移動されている。

たがそんな事を知らされていないバクガは歯を食いしばりながら拳を叩きつける。

 

「この地が落ちれば敵はロウリア圏内に侵入するというのに、上は何を考えているのだ...!」

 

そう叫んでいる間にも、森の方からけたましい重い音が幾度となく鳴り響き、ここに敵が近づいてきているのが嫌でも感じさせる。

 

 

「進め進め進めぇ!!大日本皇国の偉力に逆らうとどうなるか分からせてやれ!」

 

「我が戦車の圧を見せつけにいけぇ!!」

 

「行けぇぇ! 叩きのめせー!」

 

各々が口々に叫びながら、全速力で驀進していく大日本皇国軍。

進んでく戦車の周辺に転がるのは、ついさっきまで塔であった粉々になった石垣。

国境を越境して彼らが真っ先に行ったのは、目先にあった砦をありったけの火力で消し飛ばすことだった。ロドナ基地に通信を行ってから1分とたたず砲撃が開始し、一瞬で砦は砦だったものへと変化した。

わざと周囲に男たちの咆哮を垂れ流しながら進軍し、その結果近くにいたロウリア兵は散り散りになって逃げ出す。

 

「フッ!!逃げるのか、敵前逃亡は死罪だぞ!」

 

「ちょっくら我々がおしおきしてやりましょうか」

 

逃げ出したロウリア兵の後を追うように前進する軍団の中から、特徴的な装甲車が姿を現す。

本来銃火器が設置されているはずの車体上部、そして車内にも似合わない透明な輝きを放つ異質な水晶が鎮座する『63式装甲車』が他の装甲車両の前に出てくる。

搭乗員が内部の水晶に手を翳し、何か呪文のようなものを唱える。

すると、それに呼応するように水晶が淡い光を帯び、鼓動するように車体上部の輝きが強まっていく。

車体に張り巡らされた回路を伝い、電力....ではなく()()が駆け巡り、水晶に宿る輝きが増す。

 

そして次の瞬間、森の中に爆炎が弾けた。

 

森が光の粒子が交じる煙に包まれ、そんな中からかき分けるように無傷の装甲車群が現れる。

煙が晴れた後、数十人はいた兵士たちは跡形もなく消え去っていた。

 

戦闘魔法の行使、及び補助のために作られた63式装甲車は、魔晶石から精製、削り出した水晶が設置されている。水晶そのものに魔力が充填されているので、例え魔力のない、魔法の心得がないものでも呪文を唱えれば簡単な魔法なら扱えるようになるのだ。

 

邪魔者がいなくなった日本軍は、掃討を行いながらロドナ基地目掛け前進していく。

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

 

「来るぞ!」

 

一方、森を抜けた当たりに布陣するロウリア軍諸侯団第二陣。ロドナ基地の真正面に布陣し、いつでも敵を迎え討てる準備を整えていた。

 

「みな気を引き締めろ!」

 

先程から森で聞こえ続ける謎の轟音。立て続けになる地響きに兵士達は恐れ、馬に乗る団長に鼓舞される。

しかし、森から出てきた存在を目にして、彼らは驚愕した。

 

「なんだありゃ!?」

 

「あれは....生き物なのか!?」

 

「新手の魔獣か!?」

 

ゴロゴロと動く鉄の塊。戦車など見たことないものからすれば、それは化け物に見えるだろう。

土煙を上げながら前進してくる50式戦車を見て、ロウリア兵達は恐怖に包まれる。

 

「怯むな!この世に倒せぬもの等存在しない!歩兵隊、騎兵隊、敵に突撃せよ!!」

 

「弓隊、放て!」

 

号令の元、一斉に矢が放たれ、歩兵や騎兵が50式戦車の部隊に向かって突撃を始める。

しかし、放たれた矢が届く前に、戦車の砲口が光る。

放たれた砲弾は兵士たちのど真ん中に着弾し、ロウリア兵を吹き飛ばす。

彼らの放った矢も、当たり前だが、車体の装甲に阻まれ音を無らしながら弾かれる。

 

砲弾は連続して放たれ、更に『40式装甲車ロ型』の支援攻撃が行われ、歩兵隊や騎兵隊、さらに彼らから離れたところにいた弓隊も雨あられのように飛んでくる砲弾や擲弾により消し飛ばされていく。

 

「うがぁぁぁぁっ!」

 

「腕ぇ!俺の腕はどこ__ッ」

 

「くそっ!こんなん聞いてないぞ!敵はクワ・トイネじゃなかったのかよ!!」

 

程なくして、日本軍は数分と立たずに戦線を突破。前方に見えるロドナ基地に目標を定めていく。

 

 

「なんということだ....ここまで速く突破されるとは....」

 

幹部からの報告に、拳を震わせ、気を落ち着かせるためにエールを掻っ込むバクガ。

少し気を離したと思えば、その一瞬で謎の爆発が何度も自軍を襲い、あっという間に前方に布陣していた部隊を壊滅させてしまった。

これにより、後はこのロドナ基地に残る部隊のみとなった。バクガは、あの魔導攻撃に基地が耐えられる自信が湧かない。

 

「だがッ!ここにはまだ勇敢な戦士が控えている!全部隊攻撃開始!なんとしてもここを守り抜くのだ!!」

 

故に、迫りくる未知の敵に対し、バクガは突撃を指示した。

四方の門から続々と兵士たちが出陣する。

誰もが雄叫びをあげながら敵に向かって突撃していく。

しかし、そんな突撃を許すはずもなく、薙ぎ払うように車載機関銃による弾幕が放たれて、次々と兵士を蜂の巣にしていく。

 

「くっ、ならばこれはどうだ!魔獣を放て!!」

 

バクガがそう命じると、ガコンと大きな音が周囲に鳴り響く。

城壁に築かれていた檻が開かれ、そこから激しい土煙を上げながら何かが飛び出してくる。

大型の車並みの大きさはあろうイノシシが、それも目に見えるほどの鋭い牙を持った魔猪の群れが解き放たれる。

全身を天然の筋肉の鎧に包まれたその肉体は矢を通さず、木をなぎ倒し岩をも砕き馬車など木っ端微塵に粉砕する。

周囲にいる兵士などお構い無しに駆け抜けて行くその姿にロウリア兵は士気を高め、再度武器を持って立ち上がり声を上げながら駆けだしていく。

魔猪の群れが相手なら、あの鋼鉄の怪物のその足をも止められるだろうと。

 

だが、残念ながら、むしろそんな重装甲の相手こそ戦車の真価。力の見せどころ。

戦車部隊に属するその一角、150mm電磁投射砲を搭載した『50式戦車改』は向かってくる巨体に、その特徴的とも言える四角い砲塔を向ける。

 

「照準よし、撃てぇ!!」

 

そして、轟音と共に150mm砲弾が一斉に放たれる。

放たれた砲弾は砦にむけて撃っていた榴弾ではなく徹甲弾。

電光のような速さで突き抜けたそれは、迫りくる魔猪の丁度眼と眼の間、眉間に突き刺さる。

寸分違わず眉間に打ち込まれた砲弾は尚も推進力を失うことなく直進し、やがて魔猪を完全に貫き射線上にいたロウリア兵を巻き込みながら城壁に激突する。

音を立てて崩れ落ちる城塞。

穴から血を吹き出して倒れる魔猪。

 

希望が打ち砕かれた。

頑強と謳われていたロドナ基地の城壁がいとも簡単に破壊された。

その絶望的な光景に、ロウリア兵は一瞬足を止めてしまう。

無論、その隙を見逃す日本軍ではない。

 

「ん?なんだこれは...!」

 

「魔法陣?!?」

 

突如として、彼らの足元に禍々しい輝きを放つ魔法陣が展開される。

そして、それは輝きを増し...

 

ドゴオオォォォォォォ!!!

 

地上に、いくつもの燃え上がる爆炎の柱が出現した。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

「ぐあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙助けてくれぇぇ゙ぇ゙ぇ゙」

 

魔法陣の内部にいた兵士たちは生きたまま焼かれ、悲鳴が響き渡る。

 

無論、この魔法は日本軍によるものである。発動した爆炎術式は起動すると円形魔法陣を展開させ、内部に数千度の炎を出現させる。魔法陣より外側に被害を及ぼす事はないが、内部にいるものは塵すら残らない。

 

「なっ、なっ、なっ...」

 

今さっきまで共に戦っていた仲間が生きたまま焼却されるのを見て、今度こそロウリア兵の士気はガクッと落ち、絶望が広がる。

 

「だ、だめだ......あんなのどうやって戦えばいいんだぁ!?」

 

「いやだ!俺はもう嫌だっ...!こんなん勝てるわけねぇ!!」

 

「魔帝だ!!魔帝が復活したんだ!」

 

やがて、恐慌状態に陥った者たちが陣形を抜け出し、がむしゃらに逃亡をし始める。

 

「なっ!?き、貴様等!敵前逃亡はしざ__}

 

しかし、それを静止しようとする間もなく再び魔法陣が展開し兵士たちを焼き尽くし、残る歩兵や騎兵にも銃弾の弾幕が叩き込まれる。歩兵は短い絶叫を発して地面に倒れ、騎兵は馬とともにあの世へ召される。鎧を着ていようと、関係ないとばかりに命を散らしていく。

数ではこちらが圧倒的に優勢のはずなのに、こちらの攻撃は一切刃が立たない。敵の攻撃はこちらを容易く蹂躙できるほどに強力であり、次々と兵達が倒れていく。当たればワイバーンにさえ致命傷を与えることが出来るバリスタですら、敵には全く効かない。

 

「おのれ.......ッ忌々しき未知の軍勢め__」

 

バクガが叫んだその時、放たれた砲弾が城壁の塔を粉砕し、その瓦礫がバクガの方に降り注ぐ。

銃弾が飛び交う戦場で、バクガ将軍は瓦礫に頭を打ちつけられ、糸が切れたように倒れていった。

 

かくして、ロドナ基地守護隊であるロウリア軍3万人は全滅し、ロドナ基地は崩壊した。

大日本皇国軍は1時間後には森を完全に抜け、本格的にロウリア王国領内へと踏み込んでいった。

 

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

「パタジンよ。現在の敵の位置はどうなっている」

 

先日の慌ただしい会議から一夜明け、緊急防衛体制を整えたハーク城。

玉座に座るハーク・ロウリア34世の質問に、ロウリア王国騎士団将軍パタジンが答える。

 

「はっ、クワ・トイネ公国より我が国に攻め込んできた敵軍は、バクガ将軍率いる要塞基地ロドナを陥落させた後、工業都市ビーズル方面に向けて進軍しております」

 

「ふむ。して、倒せるのか?」

 

「はっ!!敵軍の数は1万に満たないという報告が上がっております。ピーズル近郊にはスマーク将軍率いる4万の兵力を展開しており、簡単には破ることはできないでしょう。それどころか、ここで殲滅してご覧に入れます!」

 

「うむ。バクガには悪いが、ロドナ基地は旧式の砦であるゆえに、敵の持つであろう魔導兵器には耐えられず落ちると考えていた。だが、ピーズルを落されるようなことはさせるな、くれぐれも任せたぞ!」

 

「ははっ!大王様のお言葉、胸に刻み込み、必ずやこの国を守ります!」

 

これで、なんとかなるはずだ。

玉座に深く座りなおしたハーク・ロウリア34世は、そのように考えていた。

 

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

 

ロドナ基地陥落から数日後

 

ロウリア王国の北側に存在する港湾都市ベイ・ハーク。

その港にあるロウリア王国海軍北方司令部の一室にて、海将ホエイルが物憂げな様子で窓から港を眺めていた。

港には、幾つもの軍船が整然と並んでいる。

その姿は美しく、どんな相手にも勝てるという自信が湧いてくるはずだった。

 

(あれは戦いではない。一方的な殺戮だ.....)

 

彼はロデニウス沖の海戦を思い出し震えていた。

自分たちの攻撃可能範囲外から、一方的に撃破される屈辱と恐怖。まるで、鍛えられた武人と生まれて間もない赤子を比べるような実力差がそこにはあった。

今も尚その傷は癒えておらず、継ぎ接ぎの帆や色味の違う木材で補強された船体が幾つものある。

 

(あの時大日本皇国軍の撤退指示に従っていれば、状況は変わったのだろうか)

 

頭の中に浮かぶのは、作戦の前日に共に酒を飲み交わした彼の上司、シャークンの姿。

彼もまた先の海戦で行方不明となってしまっている。

実際は日本に捕虜の一人となっているのだが、撤退行動中だったた彼がそれを知る由もない。

 

(どうすれば、あの化物どもに勝つことができる....?)

 

彼は頭の中で何度も考えを巡らせていたが、何もいい考えが浮かんでこない。

ふと、彼はある空気を感じ取り、頭を上げた。

嫌な予感がする。

どこからか風切り音が聞こえてくる。

次の瞬間、目の前に停泊していた軍船が猛烈な爆音をあげて爆発した。木造の軍船は木っ端微塵に吹き飛び、火の点いた木材の破片が港に降り注ぎ炎上する。

更にベイ・ハーク上空を、轟音を鳴らしながら灰色の物体が通過していく。

これほどの惨状を生み出せる存在を、ホエイルは一つしか知らない。

 

『敵襲っ!!敵襲っ!!総員戦闘配置!!敵は大日本皇国だ!全軍船は直ちに出航!王都の竜騎士団にも連絡を入れろ!!』

 

カン! カン! カン! カン!

 

港湾内に警鐘が鳴り響く。

魔信機で指示を飛ばした後、ホエイルも急ぎ旗艦に向かい建物から出て走り出す。その間にも敵の鉄竜.....『A7-彗星』や『FA39-流星』が上空を旋回し、投下された約180個のMk.83爆弾は軍船を的確に破壊していき、港湾を瓦礫で満たしていく。

因みに、現在の皇国軍が使用している航空爆弾は国産の250kg爆弾が基本であり、米軍のMkシリーズは殆どが廃棄予定として倉庫に押し込められ、使用されないでいた。

今回はその在庫処分もかねて、特別にロウリア軍へ大盤振舞をしているのだ。

 

「くそ!大日本皇国め、ふざけた挨拶かましやがって!」

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

『ベイ・ハーク海軍司令部より緊急伝達!現在ベイ・ハーク港湾基地が敵の攻撃に晒されている。待機中の竜騎士団は緊急発進、交戦中の敵勢力を撃滅せよ。続いて、敵は王都を攻撃してくる可能性がある。第2、第3飛竜隊は緊急発進後、王都上空の警戒に当たれ。繰り返す__」

 

ジン・ハーク郊外で待機していた竜騎士団は、緊急出撃の指示を受けて速やかに準備を整えて竜舎に向かって走る。

その中には、先日試験に合格し晴れて竜騎士となった新人のターナケインの姿もあった。

緊急の状況でも落ち着いて、訓練通りに落下防止用のベルトを確かめ、腰に短剣をつけ革製の兜を被る。

出撃準備を終えた彼は竜舎に向けて走って向かい、相棒のワイバーンに歩み寄る。

 

「今日も頼むぜ。相棒」

 

甘えてくるワイバーンの頭を撫でた彼は、手綱をつけ、落下しないように鞍を取り付ける。

ふと目を向けると、先輩達は既に支度を終え離陸を開始していた。

 

「おっと、どうやら出遅れてしまったみたいだ」

 

ワイバーンの腿に足をかけ、背中に乗る。

先輩達が離陸を終え滑走路が空くと、ターナケインは滑走路に侵入する。

 

「よし、いけッ!」

 

ターナケインの合図と共に、相棒のワイバーンは勢いよく地面を蹴り上げ離陸を開始する。走り始めたワイバーンは離陸可能な速度に達すると、重い体を浮き上がらせ、広い空に舞い上がる。

ロウリア王国軍の花形である彼らは、自国を奇襲してきた不届き者を倒すために、敵のもとへと向かっていった。

 

.......

....

..

 

__無論、その様子をただ眺めているわけではない。超高高度からロウリア空域全域を警戒していたE797早期警戒管制機のレーダーは、ジン・ハーク方面から白い光点がいくつもディスプレイの上に映りだしていく様子をしっかり捉えていた。

 

「こちらベータ1。王都方面より出現した飛行物体。数およそ120。時速約200キロ、ベイ・ハーク方面に接近中」

 

オペレーターがそう伝えつつ、ロデニウス沖に展開しているクワ・トイネ公国派遣艦隊第2任務部隊総旗艦、最上型巡洋艦『志摩』とのデータリンク通信を開始する。

 

『了解。現時点でのUnknownをすべてEnemyに設定。予定通りこれを撃滅せよ』

 

「了解」

 

全目標の特定、設定が終わると、上空を飛行しているであろう攻撃部隊に通達を送る。

敵航空部隊の撃滅を言い渡された飛行隊は即座に迎撃体制に動いた。

爆弾を落とし終えたことで身軽になった機体を翻らせ、パイロットたちは定められた手順に従い、迅速に攻撃準備を行う。

既に、彼らのレーダーにもこちらに接近してくる飛行物体の存在を認識している。

 

「敵航空騎接近、攻撃用意」

 

敵機の目標を振り分け、レーダーロックを掛ける。

 

「目標コンタクト、誘導弾射程圏内」

 

「攻撃開始、FOX-2、fire!」

 

友軍戦闘機にミサイル発射の合図を送って、一幕おいた後に操縦桿のボタンを押し込む。翼下に装備されたミサイルの燃料に火が灯り、発射炎を上げながらランチャーより飛び出し、一直線に目標へ飛翔していった。

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

第2、第3飛竜隊は王都上空を警戒するために、街を見渡すように旋回していた。

数十騎のワイバーンが空を飛び回る姿は壮観で、王都に住む国民たちはその勇姿を一目見ようと街に溢れていた。

ロウリア王国新人竜騎士ターナケインも、先輩達に混じって王都上空の警戒に当たっていた。

 

「ん?」

 

ふと、空に何かが見えた気がした。

 

「せんぱ___」

 

そう声をかけようとした瞬間、目の前を飛んでいたワイバーンが急に爆発した。

ワイバーンは上に乗る騎士諸共肉片へと変貌し、血しぶきを撒き散らしながら地に堕ちていく。

 

「なっ!?」

 

その事実を認識するのに一瞬以上の時間がかかった。

突然の事に理解が追いつかず、顔についた血を拭うのすら忘れる。

 

「っておおい!!?勝手に動くな!どうしたんだ相棒!?」

 

また4つの爆発が空に生まれるのと同時に、ターナケインのワイバーンが突如として急降下を開始した。彼は愛騎と一体となる素晴らしい機動技術を持っていたが、戦場においてワイバーンが本能的に恐怖した場合の対処方法はまだまだ未熟だった。

 

「くっ.....!!怯えているのか!空の王者たるお前が!?」

 

ターナケインの叱責を受けてもなお彼のワイバーンは急降下をやめず、地面すれすれの地点まで降下した後に翼で衝撃を逃しながら胴から転げるように着地した。

その衝撃は凄まじく、ターナケインが握っていた命綱がちぎれてしまい彼は地面に転げ落ちた。

 

「いたたた......畜生、相棒!一体どうしたんだ!?}

 

今までの訓練でこんなこと起こしたことはない。彼は相棒に詰め寄ろうとしたが、その相棒は天に視線を向け身を縮めながら震えていた。

ターナケインもつられて上空を見上げると、そこには悲惨な光景が広がっている。

 

「なッ.....なに!?」

 

彼らの目線の先には、何らかの攻撃によって次々と爆散する仲間たちの姿があった。100騎以上あった竜騎士はその数を減らし、最後に残った2騎が今身を散らした。

 

この悲惨な光景は王都に住まう人々も目撃していた。精鋭たる竜騎士団に何がおこったのかわからず、誰もが自分の目を疑った。だが頭上から何か、赤黒い物体が降ってくるのを見て、それが何かを認識した途端阿鼻叫喚の叫び声をあげた。

 

「うわぁぁぁぁ!!何だ!!何が起こっている!!」

 

「いゃぁぁぁぁ!!」

 

降り注ぐ血を頭から浴び狼狽する商人達、凄惨な光景に耐えられず金切り声を上げる女性。王都全体が大混乱に陥り、防衛騎士団が異変を察知するまでそう時間はかからなかった。

 

 

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

ロウリア王国 ベイ・ハーク

 

「なに!?応援に来た竜騎士団が全滅だと!」

 

「はッ!ならびに飛行場も敵の手によって壊滅、我が方は完全に制空権を損失しました!」

 

衝撃的な報告を受けて、ホエイルは残存するロウリア艦隊の旗艦で膝から崩れ落ちてしまった。

航空戦力は全滅し、滑走路も竜舎も爆撃され、飛行場は機能を損失している。

更に言えば、敵は一切の被害を受けていないという。一切の、何の損害も与えられていないのだ。

 

「て、提督!敵がッ!!沖合に島のような影が!?」

 

「何だと!?」

 

ホエイルは船室を飛び出し、甲板に出る。マストに登る必要があるかと思われたが、そんなことせずとも、はっきりとその存在を認識できた。

 

「貴様らか...ッ! 日本軍!!」

 

ホエイルを何度も悪夢で苦しめ、4000隻以上も存在した軍船を一方的に沈めた、恐怖の船がその姿を顕にする。港から10kmほどの距離、だがホエイルはその距離でも敵の攻撃が届くことを理解していた。

 

「くっ....!どうすればッ、どうすればいいのだ....!!」

 

ホエイルは必死に策を講じようとするが、何一ついい考えが浮かんでこない。

そして、彼が狼狽えている中、敵艦の前方につけられた箱が回転し、突き出た3本の筒がこちらに向けられた。

ホエイルを目を上げたその時、艦がピカッと光、煙に包まれた。

 

「まずい!!退避!総員退避!海に飛び込むんだ!俺達じゃ奴らに勝てないッ!!急___」

 

ズドオオォォォォォォォン!!

 

巨大な水柱と雷鳴のような爆音が轟き、爆発が軍船を包んでいく。

放たれた砲弾は丁度、彼のいた船首を直撃した。

海将ホエイルは大日本皇国軍に一夜報いることも叶わず、猛烈な光とともにこの世を去った。

 

将を失い、航空戦力をも失ったロウリア軍はどうすることもできず、皇国海軍に蹂躙された。

その後も数多の艦砲射撃に晒されたベイ・ハークの港は完全に崩壊し、兵站、港湾施設は残さず破壊された。完全に心を折られた彼らはその後上陸してきた軍勢にも一切の抵抗をせず、生き残った兵士は降伏し捕虜として捕らえられた。

 

 

 




補足

63式装甲車
全長:7.5m
幅2.8m
最高速度:120キロ
装備: 魔力制御宝珠2基(車体上部+制御用車内部)
  陽式結界発生装置

皇国軍が遠方でも高出力の魔法を行使するために開発された最新の装甲車。車体自体は39式装甲車を流用している。
車体上部に、パラボラアンテナにも見えるガードに包まれた水晶が鎮座する独特の外見を持つ。
水晶そのものが魔力の塊のような物なので、魔法の心得がないものでも呪文を唱えるだけで簡単な魔法なら扱えるようになる。
なお、使用可能な魔法とその呪文は軍により一冊の資料集に纏められており、一台につき一冊配備されている。
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