皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第16話 ジンハーク決戦 part1

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

今日も今日とて、毎度の如くハーク城の一室で軍務緊急会議が行われていた。

 

「竜騎士団が全滅するとは一体どういうことだぁ!それもこの短時間に残存する全ての竜騎士が落とされただと!?貴様らは我が王国の防人たる騎士の自覚がないのか!」

 

「かっ、返す言葉もございません......」

 

将軍パタジンの怒鳴り超えに、竜騎士団大隊長は力無く項垂れる。

竜騎士団の全滅ももちろん、前回実施された会議で話し合われた前提やそれを踏まえた防衛方針がすべて覆ったという事実。それに二方面から攻撃を受けているということもあり、会議はこれまで以上に紛糾していた。

 

「くそッ!!既に残っている騎士団はあらかたピーズルに向かわせてしまった後だぞ!このままでは奴らは確実にベイ・ハークからここ王都にやってくる。航空戦力も持たずに、空からあれほどの攻撃をできる相手に一体どうやって戦うのだ!!!」

 

「そ......それならば、王都防衛騎士団にベイ・ハークの奪還を命じさせれば____」

 

「たわけ!!貴様は王都を丸裸にするつもりか!」

 

部屋中にパタジンの怒声が一瞬響き渡り、しかる後に静寂に包まれる。

敵の規模も能力も、生き残りの証言も少ないなかで防衛作戦を考えるのは至難であった。部屋中に大臣級の幹部の怒号が飛び交いなんとかしてこの状況に対処しようとしていたが、具体的な案はほとんど出ず時間だけが過ぎていった。

 

「僭越ながら申し上げます。今回の戦、大日本皇国は陸上戦力を大して投入していない可能性があり、王都の防衛を成せば勝機はあるかもしれません」

 

そんな中、この大騒ぎの中でも一人黙々と図面に向かっていたロウリア三大将軍の一人であるミミネルが立ち上がり、そう見解を述べる。

立ち上がる衝撃で、彼の特徴たる長い髪が靡く。

 

「...ふむ、してその根拠は?」

 

「彼の国は島国であるらしく、そのことは事実であると断言できます。ならば、自ずと軍事力を空と海に特化せざるを得なくなり、陸に関しては大した戦力を保持することができないと考えられます。さらに、前線からの間者の報告では占領しているロドナ基地周辺を管理しているのはクワ・トイネ軍であると報告が上がっております。そうであるならば、十分な戦力を整えて防衛に徹すれば、勝機も十分にあるのではないでしょうか」

 

「わかった。座って良いぞ」

 

パタジンは考える

陸戦とは即ち数だ。同じ人である以上、海や空のように武器の性能差で埋めることも難しい。予備役と各諸侯の兵士を集結すれば、その軍勢は数十万には上るだろう。

だが、それだけではパタジンは決断することはできない。もう何か一手、決断できる何かがほしい。

すると、情報部の若手幹部がミミネルに問いを投げた。

 

「東部諸侯団の生き残りが、敵は砦をも粉砕する爆裂魔法を放ってくると聞いている。貴公はこれをどう対処するべきだと考えているか?」  

 

彼は険しい表情をミミネルに向ける。しかし、ミミネルはその視線を一切介さず自然体のまま発言する。

 

「魔道士ではない自分がどこまで判断できるかわかりかねますが、それほどの魔法ならば、消費する魔力も途方もない量になるはずです。敵が少数である以上、運べる魔石の量にも限りがあります。ヤミレイ殿、違いますか?」

 

「あ?ああ、そうだ。砦を破壊するほどの魔法ならば、我ら魔道士が数十名の魔力を用いて一撃放てるかどうかであるな」

 

「ありがとうございます。敵がどれほどの魔道士を連れているかはわかりませんが、どうにせよ無限に魔力を蓄えているとは考えられません。なので、機動力に優れた騎兵を少数の部隊に分けて突撃させることで、敵を撹乱させ魔法を無駄撃ちさせ魔力を消費させます。

それに、彼らがどれだけの魔道士や魔導兵器を運用していたとしても、ここジン・ハークを落とすならば歩兵を投入しないわけにはいかないでしょう。ならば_____」

 

「そうかッ!!」

 

パタジンはその言葉に何か考えついたのか、がバッと立ち上がる。

 

「敵にいくら機動力と射程に優れた武器や武具があっても、歩兵なしでの進撃は考えられん! となれば、機動力を持って敵に突撃し、乱戦に持ち込めば__!」

 

「なるほど!なまじ破壊力が有るが故に、敵味方入り乱れていれば同士討ちを恐れて魔法を使うことができなくなるのか!」

 

ヤミレイも追うように目を見開き、他の軍議に参加するメンバーもざわつくように言い始めた。

 

「味方諸共吹き飛ばすような非道な奴らならば、クワ・トイネの奴らも自然と離反していくだろう。そうなればたとえ奴らといえど補給が効かず撤退せざるを得なくなる!!」

 

「ああ!敵がどう動こうと、やがて魔力切れは避けられまい。それまで籠城戦を行い、ピーズルにて結集した軍勢と王都騎士団で挟み撃ちにすれば_____ッ」

 

「そうすれば_____王都侵攻を防げるやもしれんッ!」

 

この危機から立ち上がり勝てるかもしれない。

その希望に彼らは歓喜の声を上げた。

 

その後もしばらく会議を続け、残存する諸侯団や傭兵をピーズルに集結させ来るだろう敵本隊を迎え撃ち戦力を削り、幾つかの部隊はベイ・ハーク方面を監視し、王都防衛騎士団はその間ベイ・ハークより進軍してくる別働隊を迎撃し敵に魔導を発動させ魔力を消費させ、属領の都市にいる諸公団が王都に集結するまでの時間を稼ぐという結論に至った。

 

 

 

だが、大日本皇国軍はロウリア軍の予想に反した行動を取っていた。

・・・・・・・・・+・・・・・・・・・

 

中央暦1639年5月24日

 

太陽が辺りを照らすより前の薄暗い暗闇。立ち込める霧で視界が悪い中、大日本皇国陸軍第7師団はジン・ハークのすぐ数キロの所まで迫っていた。

 

「大内田小将。作戦であるとはわかってるのですが、こうも近づくものなんですか?」

 

「仕方が無い。我々は敵に対する陽動だからな。敵の攻撃を受け止める役目な以上、早急に敵に見つかったほうが得策なんだ」

 

41式指揮通信車に乗る大内田と赤崎は、暗視機能付きの双眼鏡で目先に見えるジン・ハークを観察する。

小高い丘の上に立つ、三重の壁に守られた王城。引き連れる現代兵器がなければ、彼らが難攻不落の城塞と表現するのも納得できた。

 

「ただこうも霧が濃いと、相手から見つけられなくなるかもしれんな」

 

大内田がそうボヤつくと、同じ車両に乗車する従軍記者から質問が入る。

 

「あの、それってまずいんじゃないでしょうか」

 

「ああまずいな、すごく拙い。あまり時間が経ちすぎれば敵に籠城戦の準備を整えられてしまう可能性があるし、なにより、王城に籠もられては空挺部隊の安全を保証できない」

 

「それでは...」

 

「ああ、だから此方に注意を引きつけないとな。よし、作戦が開始されたら手始めに城の一番手前にある城壁の塔を破壊するか」

 

「ですが敵の石材の強度が不明です。斜線軸からしてこの角度から撃つと、目標を撃ち抜いた挙句砲弾が内部の市街地に直撃する可能性があります」

 

「それはまずいな....敵国とはいえ、非戦闘員の民間人に被害を与えるわけにはいかない」

 

「ええ、なのでここは自走砲による砲撃で塔を破壊してもらいましょう。榴弾砲による曲射で撃てば塔だけをピンポイントで破壊することができるでしょうし」

 

「そうだな。よし、砲兵隊に連絡。作戦が開始され次第城壁の塔を砲撃せよ」

 

「はっ!」

 

搭乗する通信兵は素早く指示を伝達し、自走砲隊は砲撃の準備を整える。

地平線が明るく照らされ始めるその中、各車の出発準備は完全に終了した。作戦開始の号令がで次第いつでも行動を開始できる状況であり、隊員達は腕を回して気合を入れたり、食べそこねた握り飯を口に放りこみながら開始時刻を待つ。一国を終わらせる戦い。彼ら兵達は緊張に身を包み、張り詰めた空気が周囲を支配していた。

 

「大内田小将、全軍に宛てて無線が届いています」

 

すると、そんな中通信兵から報告が届く。作戦開始間近で全軍に向けて通信を飛ばすような存在、彼らは一人しか思いつかなかった。

 

「沖田司令からか。時間的には訓示かなにかかな」

 

そう言うと共に大内田はすぐに指示を飛ばし、通信を開く。

 

『あっ、あーッ聞こえるかな諸君!!俺だ!お馴染みの沖田帝治最高司令長官だ。...どうだ、聞こえているか?聞いてないやつがいたら警笛を鳴らして叩き起こしてやれ」

 

予想通りと言うか、発された声は沖田のモノだった。

短期間で皇国軍の最高司令長官に成り上がった稀代の英傑。知略、能力、戦闘力全てを兼ね備えたサラブレットにして、現在の皇国の顔の一人として国民からの人気も高い人格者。そのくせ、変なところで俗っぽく、面白いことは率先して参加しようとする。

とにかく、色々な印象、側面がある男であるが、彼の声を聞いて、作戦に参加している軍人達は皆一様に耳を向けた。

 

『今日はいい朝だ!正に天気晴朗、我らの門出に相応しい日だといえる。なに、霧が出ている?問題ない、むしろ素晴らしいことだ!陽光が霧を貫き辺りを照らすように、俺たちも新世界という霧を打ち払い、我が国を照らす太陽となって、祖国の地に光を届けてやるんだ!

この戦いは、新世界に我が国の在り方を示す為の重要な戦いになる。よって_______

______あぁ?そうか、長くタラタラ喋っててても仕方がないか。仕方ない、簡潔明瞭にするが、これだけは肝に銘じておいてほしい。

この戦いはただの戦争にあらず、我が皇国の未来と、安寧がかかった戦いなのだ!この作戦が失敗すれば戦争は泥沼化し、ようやく取り戻した我らの食卓は再び悲しい姿に変わることになる。

そして何より、なにより!我が国の新たなる友である幾人ものエルフ、そして獣人達がロウリアの恐怖に震えることになる。そんなことは...そんなことは断じて認められない!考えても見ろ!まだ幼い少女が、狐耳が生えているというだけで命を狙われるんだ!そんなことが許されてたまるか!ケモ耳が生えているから、耳が尖っているから、たったそれだけの理由だけで迫害されることなど、あってはならない!』

 

沖田の怒涛の訓示から繰り出された尋常ならざる熱量のケモ語りに、一周回って冷静になり思わず笑いが溢れてくる。

先ほどまでの張り詰めた空気は離散し、空気が軽くなっのを感じられる。だが、それに反し各員の士気はこれ以上ないほど高まる。

 

『最後にこの言葉を残す。皇国の興廃はこの一戦にあり!!各員、一層奮励努力せよ!貴官らの粉骨砕身の活躍を期待する、以上!!皇国の黎明に勝利を!!』

 

沖田の言葉を合図とし、各地に展開する車両のエンジンが咆哮を上げる。第7師団の戦車中隊を先頭に、前進を始める。

 

作戦開始と共に、地平線から日輪が姿を表し、周囲を燦々と照らし始める。

それは、第7師団の丁度後方よりもたらされ、彼らに新たなる日の出を祝福しているように思えた。

 

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