皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第17話 ジンハーク決戦 part2

 

ロウリア王国王都防衛騎士団の管轄である城壁監視塔は、敵軍出現を警戒し、24時間態勢で監視を続けていた。先日の敵軍による王都とベイ・ハーク港への奇襲を受け、緊急体制として全監視塔に1人以上の監視員を置いている。

 

「ふぁぁ、眠い」

 

その内の一つである城塞の最も外側にある第17監視塔に配属されているマルパネウスは、眠い瞼をこすりながら外の様子を伺っていた。

 

「ったく、本当に来んのかね、敵の軍隊ってのは」

 

普段は首都防衛のために温存されてきた彼らが根こそぎ駆り出されるということは、なにか王国にとって良くないことが起きているということ。

数で勝る我軍が、クワ・トイネごときに敗北し、こうして国内にまで攻め込まれているというのは考えられなかった。

 

「はぁ、今日は視界も悪いなぁ」

 

今日は嫌に空気が冷え込んでおり、そのせいで周囲が霧に包まれていた。遠くを見通す監視員としては最悪の気分である。

 

「........ん?」

 

そんな中、一瞬。彼は遠きに何かが蠢いているのを感じた。

霧で遮られてはいるが、自分は視力には自身がある。

単眼鏡を取り出し何かが見えた方向に焦点をあわせる。

 

「__あれはッ!」

 

やがて、はっきりとその姿が認識できるようになる。黒く蠢く虫のような怪物が、巨大な、何かよくわからない攻城兵器のような物体が幾つも現れ、こちらに向かってきている。

彼は即座に魔導通信機の回線を開き、集音器に声を上げる。

 

『こちら第17監視塔!東正面より約4kmの平野部に敵部隊を多数確認!敵は多数の魔獣を伴い王都に接近中!繰り返す____」

 

すると、その中の黒き怪物の一体が、何か光を放つ。

 

「なんだいまのh____」

 

風を切る音が聞こえるよりも前に、飛翔してきた物体は監視塔の先端に命中した。大日本皇国陸軍から放たれた15.5cm砲弾は監視塔を直撃し、マルパネウスは塔の残骸と放たれた砲弾の衝撃に身を晒して命を落とした。

 

____ドゴォ__ン.....!!

 

「!?」

 

砲撃が直撃した轟音は凄まじく、その衝撃は王都全体に響いていた。

 

「__何事だぁっ!」

 

自室で仮眠をとっていたパタジンも、身に響く衝撃で飛び起きる。

彼は身なりを整えるよりも先に部屋を飛び出し、窓から見える崩壊する監視塔をその目にした。

 

「なんだとっ!?もう敵が来たというのか!」

 

パタジンは急いで支度を整え、白銀の鎧を身に纏うと急いで指揮所に向かった。

指揮所では、通信兵や軍幹部がを現場と連絡を取ったり、各地の諸侯に招集をかけたりと走り回っていた。

 

「現在の状況は!」

 

「はっ!先程、監視員が王都より東方向に敵部隊を確認。その後、敵の魔導攻撃により第17監視塔は完全に崩壊。爆発の規模からして、魔導中隊が爆裂魔法を使用したのと同規模、いやそれ以上です!」

 

通信兵から聞いた事態に一瞬混乱するも、すぐさま頭をフル回転させ王都の至る所に待機している騎士団に通信を通して指示を通す。

一瞬。ふと、パタジンは先ほどの報告に疑問を感じた。

 

「敵が現れたのは王都から東の方向だったのだな?北西ではなく」

 

「はっ!敵部隊は通信でも東方面に現れたと証言しており、今現在敵が布陣している方角も王都から東方面であります」

 

「ん?待て、やはりそれはおかしい。敵が上陸したベイ・ハークは此処より北西の方向のはずだ。わざわざ周辺を大回りしたわけでもあるまいし、一体どういう___」

 

その時、パタジンの頭に一つの可能性が過った。

 

「すぐにベイ・ハーク監視軍に連絡せよ!敵に何か動きはあるか!」

 

通信兵は急いで魔信機を繋ぎ、ベイ・ハーク方面を監視する諸侯団に連絡を繋ぐ。

東方向にはピーズルが存在し、敵本隊はそこで足止めを食らっており、王都にやって来れるのはベイ・ハークよりやってくる別動隊だけのはず。

そう、そうに違いない。パタジンはそう信じていた。

程なくして、返答が返ってきた。それは、パタジンの予想を最悪の形で的中させるものだった。

 

「ベイ・ハーク監視軍より受信!占領中の敵軍、未だ大きな動きを見られず!

 

パタジンは顔を青くする。

 

「何と言うことだ!!つまりこいつらは敵本隊ということか!!ピーズルを迂回して、あの街道もない荒野を進軍してきたというのか!?」

 

パタジンが信じられないのも無理はない。なんせ馬の蹄や馬車の木製ソリッドタイヤなどは、整地された地面でないと割と簡単に沈み込んでしまい、まともに動けなくなってしまうのだから。

だが、これによりピーズルにて敵戦力を削り、王都にて上陸してきた別働隊を迎え撃ちながら各諸侯の軍を王都に結集させて防御を固めるという当初の計画が瓦解することになった。

 

「くっ!だからといってやることは変わらん!第一城壁に詰めている騎兵連隊に威力偵察を命じよ!機動力で肉薄し、敵の魔力を消費させるのだ!無理はするなよ、爆裂魔法以外の攻撃を確認したら、速やかに城壁内に戻るのだ!」

 

「はっ!!」

 

パタジンの命令は伝令兵によって直ちに騎兵隊に伝達され、第一城壁の東城門が開かれ騎兵部隊が出撃した。

 

「我ら第32騎士団は一番槍の栄叡を授かった!!勝機は速さにあり!全力で駆けろおおォォ!!」

 

その集団を形成する一派である騎士団団長ヒージは部隊に属する仲間を鼓舞し、馬を蹴り一気に駆け出した。鬨の声が上がり、後を追うように総勢400頭の軍馬が駆け出して行く。

敵までの距離は約4km、馬の足であれば4、5分で敵陣に到達できる距離だ。ヒージは敵の遠距離攻撃魔法を警戒し少数の部隊に別れ、ジグザグに動きながら部隊を先導する。

やがて、読み通り敵の長い棒状の何かから幾つもの爆炎が放たれた。

 

「撃ってきたぞォ!!さんかぁぁい!!」

 

ヒージは即座に指示を出し部隊を散らばらせる。空から降ってきた攻撃は音を切り、地面を抉る。後方にいた数騎が爆炎に飲み込まれたが、迅速な指示のおかげかまだ大半の騎馬が残っている。

2kmの地点に到達すると、更に馬の速度を上げる。

 

「ん?」

 

そこまでの距離まで近づいた彼は、前方に展開する箱型の物体から多数、光の弾が騎兵に飛んでくるのが見えた。

その時、前方にいた数騎が血飛沫をあげ、崩れるように倒れた。

 

「なっ、何だこれは!?」

 

ヒージは運良く回避したが、他の騎士たちは光弾に次々と身体を撃ち抜かれていき、鉄の盾で武装した騎士ですら、盾ごと体を破壊され意味を成せず倒れていく。

一瞬にして数100騎の命が失われる。彼の目の前で仲間や部下たちがその実力を振るうまでもなく、無慈悲にあっさり処理されていく。

 

「おのれぇ....おのれぇぇェェェ!!」

 

騎士団長ヒージは怒りに燃え、先陣をひたすら激走する。仲間達の声も聞こえない。彼はただ一人馬を走らせる。

瞬間、彼にも同じ量の弾幕が前方より降り注ぐ。

 

「ぐふぅッ_!....」

 

一瞬にして彼の肉体は蜂の巣となり、血飛沫を撒き散らす。馬から崩れ落ち、他の者と同じく物言わぬ肉片へと変わる。

 

「退避だッ、退避しろ!! 我々の任務は敵を倒す事は二の次だっ!」

 

団長を失った彼らに後方にいた隊長の一人が部隊の撤退を指示する。

その後も不可視の光弾による攻撃は続き、僅かな生き残りのみが帰還した。

 

生き残った騎士団の中、団長を失った故に次点で位が高い者がパタジンに報告する。

 

「将軍__敵は...礫のような小さな"光弾"を信じられない速度で放ってきます.....それは鎧も貫き....体を粉砕します...」

 

「ご苦労ッ、良くぞ生きて戻った!すぐに治療を受けよ」

 

パタジンが労いの声を掛けると同時に、彼は意識を失う。パタジンは彼を医務室へ運ぶよう命じると、他の騎士団長と共に次なる一手を考える。

 

「撹乱作戦自体はうまい線をいっていた。実際、敵の爆裂魔法は騎兵隊の後方で発動しているものが多かったからな」

 

「ならば次も少数の部隊で敵を撹乱し近づくべきか」

 

「しかし、あの光弾の攻撃は厄介だぞ。一直線に接近するだけでは諸共餌食になる」

 

「だがあの魔力投射量を考えるなら、大量の人員を投入した人海戦術を行えば敵の目を逸らせるやもしれん。.....人的被害は相当な物になるだろうがな」

 

「この際被害に構ってられん!騎兵隊のみで使い物にならない以上、多数の部隊を同時に稼働させるのが最も効果的だ。敵の光弾の貫通力が高いのなら、ここは防御力重視の重装歩兵を出すべきだと私は考える」

 

敵の動きを警戒しながら暫く案を練り、一刻も経たず内に次なる策が命じられる。

作戦としては、重装歩兵部隊を前面に展開させ、密集隊形で敵陣に前進させる。盾で光弾を引き付けている内に歩兵部隊と騎兵部隊が敵の死角となる門から出陣、重装歩兵部隊が敵を食い止められていれば密集隊形を取りながら突撃、全滅したならば散開し一斉突撃するという物だった。

パタジンは心の中で、誉ある重装歩兵騎士団を『肉壁』として使わざるを得ないことに重苦しい思いを感じていたが、覚悟を決め、騎士団の出動を命じる。

しかし、そんなパタジンに対して彼らの士気は高かった。愛すべき祖国を守る為、彼らは立ち向かう。

 

「敵は強い!!だが、我らの後ろには愛する家族が!未来ある子供達がいる!我らが家族を守るために、我々の未来を守るために!全霊を尽くせ!!ロウリア王都騎士団重装歩兵、これより総員出陣ッ!!」

 

「「「ウオオオォォォォォォォォ!」」」

 

「「「突撃ぃぃぃぃぃ!!!!!」」」

 

兵達の咆哮が王都に木霊する。正面から重い盾を持った重装歩兵大隊が、密集陣形でゆっくりと前進して行く。

これほどの重装備、普通の兵士が持てば体力が持たないだろう。だが彼らは重装歩兵の精鋭。誇りがあり、守らなければならない者がいる。

騎兵達の残骸を通過した辺りで、敵の魔獣が動きを見せる。

 

「攻撃がくるぞォォォ!!」

 

即座に騎士団長が吠える。団員たちは盾の強度を信じ、壁のように盾を構えその腕に力をこめ衝撃に備える。

しかし___

 

「グハッ!」

 

「ギャッ!」

 

その思いとは裏腹に、放たれた光弾はその盾を軽々と貫いていき、その身を破壊していく。整然と並んでいた重装歩兵は次々に倒れていき、また一人、また一人と数を減らしていく。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 

だが、そんな中でも唯一人諦めない者がいた。スワウロ、彼は他の兵士とは違う妻から持たされた盾を斜めに構えて、光弾を弾き飛ばしながら踏みとどまっていた。

盾越しにスレッジハンマーで叩かれているような衝撃が絶え間なく響き、骨が軋んでいくつもの内出血が起きる。

しかし、それでもスワウロは倒れない。

 

「勇者だ.....我軍に勇者が現れたぞ....!」

 

「うおおおォォォォ!!勇者に負けるなぁァ!突撃ィィィ!!」

 

その勇敢な姿は、敵の戦力に心が折れかけていたロウリア軍にとって希望の光に写った。彼の姿を見た兵たちは勇気づけられたのか、全力で大地を駆けながら左右から日本軍を包囲しようと突撃する。

 

 

「なんだあいつは...戦車隊の機関銃撃を防いでいるぞ」

 

当然ながら、その光景は日本軍も目撃しており、銃弾を弾き飛ばす姿に驚きを隠せないでいた。

 

「12.7mmをも防ぐなど....中世の技術では考えられない。やはり異世界特有の技術が使われていると見るべきか」

 

「呑気なこと言ってる場合か!!20mm徹甲弾を撃ち込め!」

 

40式装甲車イ型に搭載された20mm機関砲が目標に標準を合わせ、敵に対し水平射撃を行う。放たれた対物徹甲弾頭は一瞬でスワウロに届いたが、頑強な盾は尚も貫かれることを許さず弾き返す。

 

「嘘だろ!!20mmを喰らっても壊れないのか!?あり得ない、一体どういうことだ!」

 

「赤崎、落ち着け。落ち着け!そう、一度深呼吸だ、よぅし」

 

「ふぅ...失礼。取り乱しました」

 

「なに、私もその気持ちはわかる。だがここは異世界であるのを思い出せ。旧世界でも壁をぶち破る奴とか砲弾を殴り飛ばすような奴がいたんだ。なんか凄い盾が出てきても不思議じゃない」

 

「ええ、そうですね。失礼しました。しかし、20mmが効かないとなると後は戦車砲か誘導弾、爆炎術式を使う他ありませんが...」

 

「いや、わざわざ奴一人にそれだけの火力をぶつけるのは効率的じゃない。他の兵士が全滅しているのを見るに、あの盾だけが特別製なのだろう。既に部隊が全滅している以上彼一人にできることなどない。ここは様子を見て______」

 

「大内田少将!散会していた敵兵が迫ってきます!」

 

狼狽する赤崎を落ち着かせていると、通信兵から切羽詰まった報告が飛んできた。

 

「英雄の登場に鼓舞されたか...だが包囲されるのはまずいな。ますます敵兵一人に構ってる場合じゃない」

 

虎の子戦車といえど、数で囲まれれば不利になる。数十人で囲んでハッチの内部に侵入されれば、流石の戦車といえど無力化される。特に四方八方に展開されては、その分弾幕は薄くなるのだ。そして戦車は広範囲に及ぶ爆発は出せない。

それに、もし全方向を包囲され、後続の部隊。そして補給部隊と切り離されると、後退するしかなくなる。

そうなると、ピーズルを迂回してきたことが裏目に出てしまい、大きく国境付近まで撤退することになるのだ。

 

「魔導科中隊に攻撃を指示、それとヘリ部隊に支援を要請しろ」

 

大内田はベイ・ハーク沖に待機していた厳島型強襲揚陸艦『厳島』と『松島』に待機中のヘリ部隊に上空支援を要請した。すぐさま陸軍の地上攻撃ヘリ『AHM34-狗鷲』10機、『AHF14-隼』3機が離陸し、ジン・ハーク方面に向けて飛行を開始した。

 

離陸したヘリ部隊はすぐにベイ・ハーク上空に到達する。爆音を鳴らしながら飛行するヘリは地上からも十分認識できるほどで、ベイ・ハーク方面を監視していたロウリア兵たちは海岸の空から何かが飛来してくるのを認識し、それをジン・ハーク防空指揮所へと伝達した。

 

「ベイ・ハーク方面より通達!大日本皇国のモノと思わしき飛行物体がこちらに接近中!数はおよそ10騎!」

 

「なに!飛行物体だと!?鉄竜ではないのか!?」

 

「いえ!生物とは形容しがたきもので、鉄竜ほどの速度はないとのことです!」

 

通信士の言葉を聞いた管制指揮官は、拳を机を叩きつけた。

 

「くそッ!ワイバーンが後10騎ほど残っていれば迎撃できたというのに!」

 

竜騎士団が壊滅している以上、彼らにできることはない。ワイバーンが絶対追いつけない速度で駆ける鉄竜ならばともかく、それ以下の敵ならば勝算はあるかもしれないのに。

敵が迫っているのに、なにもすることができない。

その状況に、彼らは許容できない思いを感じていた。

その時___

 

「私が行きます」

 

指揮所の扉に、兜を携えた一人の男が立っていた。

 

「第2飛竜隊所属ターナケイン。僭越ながら、先程のお話、聞かせてもらいました。私の相棒はまだ健在です。私ならば、今こちらに接近している飛行物体を迎え撃つことができます」

 

ターナケインの言葉に、指揮官は思わず驚愕した。

 

「聞いていたのならわかるだろう。敵の飛行物体は10騎近い数がいるんだ。君一人でいったい...」

 

「大丈夫です。私の相棒は優秀ですから。それに、敵はこちらが航空戦力を全て損失したと思っています。ですので、その油断につけ込み奇襲を仕掛けます」

 

管制指揮官は渋い表情を浮かべ、苦悶する。

だが、ターケナインの、彼の覚悟が宿る瞳を見て、意を決した。

 

「....わかった。第2飛竜隊ターナケイン、離陸を許可する」

 

「ありがとうございます」

 

ターナケインは離陸の許可をもらうと、兜を被り、愛騎にまたいで直ちに離陸していった。

彼等は先のミサイル攻撃から上空を飛行するのは危険だと判断して、地面を這うような低空飛行で日本のヘリ部隊へと向かって行く。

敵も気づいてるかもしれないが、今のところ、こちらに攻撃してくる様子はない。

 

「見えた!」

 

上空に、見慣れない飛行物体が複数確認できた。

鉄竜の轟音とはまた違う、けたましい音を鳴らすそいつは、確かに彼等に襲来した鉄竜とは比べ物にならないほどに遅かった。

ターナケインは編隊を目視で捉えると、手綱を引き方向を真上に向けて一気に上昇させた。

目標は、敵からの反撃を避けるために編隊の一番最後尾にいる攻撃ヘリ。

射程距離に問題はない....いける。

 

「__落ちろッ」

 

合図と共に、ワイバーンの口から導力火炎弾が放たれた。

 

ビーッ!!

「なっ!敵機だと!?」

 

「すぐに回避行動に移れ!」

 

機内に鳴り響くアラームに驚きつつも、咄嗟に操縦桿を倒して横滑りするように機体を機動させた。

『AHF14-隼』がいたところを下から上に向けて火炎弾が通り抜けていき、その熱は機内でも感じさせる。

 

「クッ、避けただと!? 化け物めッ!」

 

必殺の一撃を回避されて、ターナケインは思わず毒ついた。

 

「次は決める!喰らえッ!」

 

ワイバーンの口に、再び動力火炎弾が生成され隼を落とそうと放たれるが、寸前のところで避ける。

 

「クソ!ちょこまかと!」

 

ターナケインは再度攻撃を交わされたことに悪態をつくが、決して視線は外さず目標を追いかけ続ける。

他のヘリ部隊本隊から徐々に離れていっているが、ターナケインはそのことは意識せず、むしろ後ろから敵の仲間が攻撃をしてこないことに安心して敵を追いかけ続けた。

 

「そう簡単に当てられるものかよ。橋本、いつでも射撃できるように準備しろ」

 

「了解!」

 

ヘリの機内でも、レーダーでターナケインが追ってきていることは確認しており、『AHF14-隼』を操る村田は銃手である橋本に砲撃の準備を指示する。下手に本隊と近い距離にいると流れ弾が友軍に当たりかねないために、十分な距離があることを認識すると思いっきりスロットルレバーを捻り、機体を翻らせ機首を真後ろに向ける。

 

「なにッ!」

 

ターナケインは突如後ろに旋回したヘリの機動に驚愕する。

だが、直ぐ様彼はヘリの下に伸びる長い細い筒が輝くのを目にする。

 

(まずッ__)

 

「良し、撃てぇ!!」

 

村田の声と共に橋本はトリガーを押し込み、機体下部に取り付けられた30㎜チェーンガンから閃光が放たれる。

 

「クゥ!」

 

ターナケインは咄嗟に愛騎を左下に急降下させ、間一髪で攻撃を躱すことができた。しかし、全てを避けることは出来ず、相棒のワイバーンは翼の一部を貫かれ、空いた穴から血が吹き出す。

 

「相棒、耐えるんだ!まだ勝機はある!」

 

痛がる相棒にターナケインは必死に激昂を飛ばす。自分が最も信頼するターナケインの激励に応える様に、ワイバーンも叫ぶのを耐えて体勢を立て直し次の攻撃の準備に備える。

 

「ちッ、外したか」

 

「だがこれで後ろは取れた!追うぞ!」

 

村田機は傷を追ったターナケイン騎の後ろを取り、追撃を行う。続けて30mm機関砲を放つが、ターナケインは空をジグザグに飛行し放たれる弾丸を交わし続ける。

 

「空の王者を舐めるな!」

 

そして、自分と敵が南の方角を向いた次の瞬間、彼は手綱を思い切り引き、太陽に向けて勢いよく上昇させた。

反射的に、ターナケインの動きを目で追った二人は太陽の強力な光に目を眩ませてしまった。

 

「くッ、眩しい...!」

 

目が眩んだことで動きが緩慢になったその隙を見逃さず、ターナケインは隼の後ろに取り付く。ワイバーンの口内に導力火炎弾が生成される。それは先程まで以上に大きく、全身全霊の魔力を込めて練り上げられ、確実に敵を落とすという気概を見せつける。

 

「空の王者を舐めるなよ!喰らえぇぇ!!」

 

自らの全てを出し切るほどの全力の一撃、風を裂き空気を燃やすように、火炎弾は隼に向けて放たれる。

至近距離から放たれた渾身の火炎弾は、驚異的な機動力を持つ隼でも回避することは難しく、吸い込まれるように機体の後部に命中し、巨大な炎が上がった。

 

「やった....やったぞ.....ッ!」

 

歓喜の声を上げるヒトカゲ。

敵に火炎弾が直撃したのをその目で見て、ようやく敵に一夜報いれたと、思わず笑顔が滲んでくる。

しかし、煙の中にまだ影が健在であることに思わず眼が眩んだ。

 

「まだ浮かんでいられるのか!?最大出力で発射したのに!」

 

その叫びに、まるで合わせるようにローターの風圧で煙がかき消されると、機体の後部が黒く焼け焦げている以外全く弱った様子のない隼がその姿を現す。

ターナケインの胸中に絶望のような落胆と、己の不甲斐なさが溢れてきて感情を支配した。

__すまん、相棒....

尚も飛び続けたことで、翼から流れる血が止まらず、だんだんと高度を落としていく。

相棒は最期の力を振り絞って、ターナケインの身を守るようクッションとなって、地面に滑り落ちた。

 

____だが、

ターナケインには平然と飛んでいるように見えた隼だが、その外見とは裏腹に異常振動を伴いながら高度を落とし始めた。

 

「エンジン内温度上昇!テールローター停止!」

 

「駄目だ!!機体の姿勢が維持できない!」

 

機内に耳を割くような警報音が鳴り響く。後部に位置するテールローターは真っ黒に焦げ変形し、完全に機能を停止していた。メインローターの回転反動を打ち消す力が無くなったことで、機体は姿勢を維持できず急速にスピンを始める。

 

「エンジン出力低下!あの丘に不時着するぞ!」

 

前方に小高い丘が見えると、そこに向けて何とか機体を動かそうとするも、機体はオートローテーションを起こし始め制御不能になる。

そして、隼は轟音を鳴らしながら地面に不時着___もとい墜落した。

 

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