皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第19話 ロデニウスに日が昇る

「ロウリア王国敗北」

 

その第一報が伝えられると、クワ・トイネ公国中の町中から大歓声が上がった。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

「戦争が終わったのか!?」

「ロウリアが負けた!これでクワ・トイネは安泰だ!」

「やった!やったぞ!!」

 

人々は家を飛び出し、街道に躍り出て大いに喜んだ。

一年前、日に日に増していく軍事力と逃げ出してきた亜人の証言から、ただロウリアに怯えるしかなかったクワ・トイネ。

戦力の差は歴然。戦いになれば、成すすべもなく蹂躙されてしまうのだと誰もが思っていた。

 

「「クワ・トイネ公国ばんざーい!!!」

 

だが、その予想は覆された。

新たに出現した隣国のおかげで、クワ・トイネは滅びの運命を迎えることなく、今も尚この地に存在しているのだ。

 

飲食店やギルド、役場に設置されている魔力通信を利用したラジオからニュースが流れると、人々は仕事も忘れて喝采を響かせる。その日は朝から晩まであちこちで宴が行われ、国中で歓喜の声が聞こえた。

 

 

 

「_______以上を、ロウリア王国に対する講和の条件といたします」

 

ロウリア王国への勝利に民たちが戦勝気分に浮かれる中、クワ・トイネ公国の都市マイハークでは今後のロウリア王国の在り方を決める講話会議が行われていた。

参加していたのは、ロウリア王国からはパタジン、マオス、ヤミレイ等の政府首脳陣、クワ・トイネ公国からは首相カナタと外務卿リンスイ他外務局の人員。

クイラ王国からは国王であるビルガメスと宰相のエルテドゥ、祭司長のシュデリ、大日本皇国からは藤城、外務大臣である大久保、特別外交官の川波、そして最高司令長官として沖田が参加していた。

 

開催の挨拶がなされると共に、三カ国からは講和に対する条件が並べられた。

全てを列挙すると長いので彼らの話は飛ばすが、纏めるとクワ・トイネ公国からは、

 

○ロウリア王国は、クワ・トイネ公国への侵攻に対する謝罪を行うこと。

○ロウリア王国は、クワ・トイネとの国境より10kmを非武装地帯とすること。

◯ロウリア王国は、クワ・トイネ公国国内で行った虐殺で犠牲になった人々の遺族へ賠償を行うこと。

○ロウリア王国は、今後一切、クワ・トイネ公国・クイラ王国に対し武力的侵攻、もといそう解釈できる武力行使の一切を認めないことを約束する。

◯ロウリア王国は、クワ・トイネ公国に対し、亜人奴隷4万人を引き渡すこと。

 

また、大日本皇国からは、

 

◯ロウリア王国は、ギム虐殺に関わったもの及びクワ・トイネ国内で略奪や虐殺などの非人道的行為を行った者を速やかに引き渡すこと。

◯ロウリア王国は、大日本皇国に対する地下資源の調査と、それに対する採掘権限を容認すること。

◯ロウリア王国は、上記に伴うインフラ設備の建設の許可をすること。また、それに付随する大日本皇国の機材の搬入を認めること。

◯ロウリア王国は、大日本皇国の企業によるロウリア王国内における自由な経済活動を容認すること。

◯ロウリア王国は、賠償として大日本皇国、クワ・トイネ公国、クイラ王国に対する免税特権を認めること。

◯ロウリア王国は、国土防衛に必要な戦力を超えて、軍事力を保持してはならない。

◯ロウリア王国は、国内に大日本皇国軍の駐屯を認めること。

 

といった条件が述べられた。

 

クイラ王国は、ロウリア王国と直接的戦闘はしておらず、兵力を少しクワ・トイネに派遣した程度で合ったため、今回は何か要求することはなかった。

 

なお、この条約案が受け入れられない場合、ロウリア王国は全交戦国が参加する会議を開催することを要請でき、その場でもう一度講話条件の話し合いが行われる。その会議でも条件が受け入れられない場合は、交渉決裂とみなし大日本皇国軍による軍事行動に踏み切ることも併せて記された。

 

「.....少し、時間を頂けますかな」

 

「どうぞ。気が済むまで、そして悔いの残らないように」

 

自分たちだけで考えたいと、彼らは別室に移動した。パタジン、ヤミレイ、マオス等は渡された条約の草案に目を通す。

 

「.......マオス殿。この条約をどう考える」

 

「正直、もっと厳しい要求をしてくるのだと思っていた。彼の国が温厚であるというのは事実のようですな」

 

厳しい要求。国家解体までとはいかなくとも、国王家の断絶や領土の割譲、莫大な賠償金やそれを元にした国民の奴隷化などを要求されるのではと身構えていたロウリア王国にとって、この要求は想像もつかない程に軽い物であった。

大半が経済的な制裁で国家主権は維持されることに、少し安堵の感情を浮かべた。

 

「だが、この軍についてはやはり厳しい。特にこの『大日本皇国軍の駐屯の容認』他国の軍隊が我が国領内を彷徨くとなれば、軍内で反発を招くやもしれぬ」

 

パタジンは他国の、それも自分達が足元に及ばないほどの強国の軍隊が自国内で影響力を待つことに不安を拭えなかった。

しかも、『国土防衛の為の必要な戦力を超えての軍事力を認めない』というのも、パタジンからすれば不安の種になった。どの程度までなら軍備を保有しても許されるのか、大日本皇国の匙加減によっては、実質軍の解体というのもあり得るのではないだろうか。

それに、彼の不安はそれだけではない、

 

「パーパルディアの軍隊を思い出して見よ。兵隊教育の為に彼らを受け入れた後に真っ先に行ったのはなんだ?彼らは、我らが敵わないことをいいことに強姦、無銭飲食とやりたい放題しておったではないか。

私は、それが繰り返されるのではないかと考えて仕方がない」

 

「......彼らが強国であることを盾に我が国の民に非行を働く可能性は十分にあるだろう。しかし、それ以前に我々は敗戦国だ。何をされるにしても拒否権はない。

本来なら一方的に条件を突きつけられ、問答無用で搾取されることになるだろうが、だが、彼らは我らに歩み寄り選択する自由を認めてくれている。それだけでも十分ではないか」

 

「それはわかっている。だが.....」

 

マオスは、それでも受け入れられないものではないとパタジンを説得した。

 

「パタジン殿の不安も理解できるが、ここまで歩み寄ってくれている譲歩案にケチをつけるのは得策とは思えん...」

 

「しかしッ! ヤミレイ殿は、彼の国の軍人が民に不貞を働くのを黙って見ておれと申すか」

 

「そうとは言っておらぬだろう。だが、所詮この世は弱肉強食、弱者は強者の申し付けには黙って従う他あるまいよ」

 

ヤミレイの放った言葉に、パタジンは屈辱の表情を浮かべ震える手を握る。

 

「.........彼の国の国民性を理解していないことには推測の域を出ない。で、ある以上、ここは彼らを知るものに話を聞くべきではないか?」

 

今回の条約に対して、相手国へ詳細を求めることは特に禁止されていない。

マオスの提案にパタジンは即座に頷いて、参考となる者が部屋に呼ばれた。

 

「ふぅ.....なるほど、それで俺が呼び出されたってわけか」

 

落ち着いた様子で、新調されたソファに腰掛けながら用意された茶を飲んでいるのは沖田だ。

 

「其方が、あの強大な軍隊を統括する者なのか」

 

「ああ、大日本皇国軍最高司令長官沖田帝治だ。こうして顔を合わせるのは初めてだな」

 

沖田のその言葉に、パタジン達は緊張を浮かべる。沖田としては威圧するつもりもなく、あくまで平静な状態なのだが、ロウリア側からすれば彼は列強をも凌駕するかもしれない国家の軍部の最高責任者なのだ。緊張するのも無理はない。

 

(この男が、我らを簡単に打ち負かした敵軍の将だと言うのか......若いな。

だが、どこか魅力を感じる男だ───)

 

パタジンは武人として、沖田のことを心の中でそう評価する。

──この若さで全軍の将とは、どれほどまでに優秀な男なのだろうか。

 

「大日本皇国の将よ。貴公に問いたい、この条文にある『皇国軍の駐屯の容認』について......」

 

パタジンは、自身が懸念している事柄についての説明をし、沖田の返答を待つ。

 

「..........確かに、このぐらいの文明の時代なら、そこを気にするのも無理はない、か」

 

沖田がそう呟くと、パタジンの方に向き直し答えた。

 

「そうだな。まず内には憲法_____法律の上の更に強力な法、っていったらわかるか?それに基本的人権の尊重が明記されている。これによって、誰であっても最低限の人権が保証されるんだ。人権ってのは、まあ人間として当然認められ得るべき権利。例えば『殺されず生きる権利』『教育を受けて、報酬を得て働く権利』『自由に服を着て自由に食べ物を食べる権利』『差別されず、平等に生きる権利』『尊厳を持ち、辱められない権利』とかだな。だから、たとえ敵対国や敗戦国の人間であろうと、人道に反した行為は行わない。なので、そちらが懸念しているようなことはないから安心してほしい」

 

「なんと!では相手を奴隷にするのは、略奪や強姦は」

 

「勿論、全て禁止してる。もし居たやつがいれば即刻職権を剥奪の上厳罰が与えられるのでご心配なく」

 

パタジンは信じられない思いでいた。彼等の常識では、戦争に負ければ国は滅ぼされ、民は奴隷として酷使されるのが当たり前だと考えていた。

 

「..........貴公の国は、随分と民のためを思った考えをお持ちなのだな」

 

「ああ、我が国は民主主義だし、何より───民の人生と暮らしを保証し、守るのが国家機関に生きている者の使命だからな」

 

沖田はそう言って用意された茶を飲み干すと、席を立ち上がり扉の方に向かっていった。

パタジンは、もう一度条約文に視線を向けた。

 

 

 

数時間後、会議室に戻ってきたロウリア側は条約文を原則的に受け入れることを了承。その後、両国間での会議が行われ、幾度かのすり合わせが行われた。

最終的に講和条約は以下の通りに纏まった。

 

◯ロウリア王国は、クワ・トイネ公国とクイラ王国に対し正式に謝罪し、ハーク・ロウリア34世の退位を以てこれを認める。

○ ロウリア王国は、旧支配地域の今後の独立を認める。

◯ロウリア王国は、王国内の戦争犯罪者を速やかに大日本皇国に引き渡しすものとし、最高裁判所における軍事裁判によって裁かれるものとする。

◯ロウリア王国は、国土防衛の為必要なだけの最低限の軍事力を保持することを認め、これを超える戦力を保持してはならない。

◯ロウリア王国は、クワ・トイネ公国との国境線西側10kmを完全非武装地帯とし、この地域では狩猟等の生活に必要な武器保有以外の一切を認めない。

◯ロウリア王国は、国内に存在する全ての亜人奴隷を解放し、人間と同等の権利を保証する。

◯ロウリア王国は、王国領内における大日本皇国軍の駐屯を認める。

◯ロウリア王国は、大日本皇国の企業参入を認め、市場の全面開放等自由貿易体制に参入する。

◯ロウリア王国は、大日本皇国に対する地下資源の調査と、それに対する採掘権限を容認する。

◯ロウリア王国は、上記に伴うインフラ設備の建設の許可をすること。また、それに付随する大日本皇国の機材の搬入を認める。

◯ロウリア王国は、賠償として大日本皇国、クワ・トイネ公国、クイラ王国に対し今後20年関税を優遇する。

 

提示された講和条約の文章に、クワ・トイネ、クイラ、そしてロウリア王国が署名し、最後に大日本皇国の首相が署名したことで、正式にロデニウス大陸での戦争が終了したことが発表された。同時に、締結されたこの『マイハーク講和条約』も公開され、ロウリア王国が近代化に向けて進んでいくことが世界に示された。

その後、クワ・トイネ公国で勝利の報道がなされたのと時を同じくして、ロウリア王国は全国民に対し、戦争に敗北した旨を正式に発表した。

 

ロウリア王国は退位したハーク・ロウリア34世に代わり、新たに王太子を王とする立憲君主制国家に移行することを示した。

パタジンなどによるロウリア臨時政府は、国境付近に散らばる部隊に対し、直ちに武装を解除し、クワ・トイネ軍や大日本皇国軍に投降するように呼びかけた。だが、パタジンの予想と異なり、特に大きな騒動もなくロウリア軍は速やかに武装解除し、国民たちも敗北を受け入れていた。

というより、亜人殲滅にヤケになっていたのは一部の王侯貴族だけで、平民の中には隠れて亜人を保護している者なんかもいた。更にいえば、ロウリア王国は今回の侵攻は『恒久的平和のための大陸統一』と国民に説明していたため、国民達は自分達が平和に暮らしていけるのであれば、何も気にしていないようだった。

 

 

─────しかし、敗戦が伝えられて一週間も立たぬうちに、争いの火種がくすぶり始めた。

 

中世時代の封建国家は、自治能力を持つ諸侯貴族があちこちに存在し、それぞれが私兵団を所有していたり領地を管理していたりした。

敗戦したことで中央政府の影響力が低下した現在、それら貴族等がそれぞれ好き勝手に動き始めたのだ。

最も、その殆どは新たに設立される王国議会の貴族院の席に座ることで収束したが、それに対し、ロウリア臨時政府に従わず反発する貴族達がいた。

以前から中央政府に反発していた貴族や、私利私欲の為に領民を弄ぶ悪徳貴族、今回の戦でクワ・トイネの領内で蛮行を働いていた貴族達だ。

彼らは、ロウリア臨時政府や大日本皇国の言葉を無視し、兵を挙げてジン・ハークにむけて進軍を開始したのだ。

大多数のロウリア兵は、国境越境から瞬く間にロウリア国内を走り回りジン・ハークにたどり着いた日本軍に対しある種の畏怖の念を抱いていたために、反抗しようなどと言う発想事態浮かばなかった。

大型の鉄でできた船、呆気なく落とされていくワイバーン。

そして極めつけは、城塞をいとも簡単に破壊するあの咆哮を放つ鉄の兵器郡。

 

敵として相対したからこそ、あの攻撃にさらされることを考えると震えが止まらなくなった。

だが、実際に日本の戦いをその目で見てない諸侯貴族らは、中央政府が自分達を貶めるために法螺を吹いて幻覚を見せているんだと決め付け、また賠償として抱えるであろう莫大な負債を恐れ、ロウリア臨時政府打倒のために動き出したのである。

先の戦争でロウリア王国軍は壊滅状態であり、これらを向かい打てる戦力はほとんどないといってもいい。

ロウリア政府はこの状況故に、恥を忍んで治安維持のために残っていた大日本皇国軍に救援を求めた。

 

_______そして、ロウリアが救援を求めて3日後昼間、彼らにとって悪魔のような存在がロウリアの空を駆け回った。

日本の戦闘機や攻撃機部隊である。

日本は、空軍機に各地の貴族の領地上空を中心に飛び回らせることで、圧倒的な技術力の差を見せつけたのだ。

実際に自分の目で見て敵わないと心が折れたことで殆どの諸侯は抵抗をやめたが、尚も中央政府に恭順の意を示さず兵を引き上げない貴族等は各個撃破、制圧され、更には『C-3』を元にして新たに開発されたガンシップ、『AC030-雷空』の初の実戦飛行の残滅作戦の目標となる栄誉を得た。

元となった機体と同じように左旋回をしながら、籠城する砦にむけて砲撃や銃撃、そしてミサイルなどによる爆撃をお見舞いする『AC030-雷空』

空を超え、雷鳴のように鳴り響く轟音に、ロウリア民はますます「大日本皇国に逆らってはならない」と勝手に平伏するようになった。

因みに、この件に対応した沖田氏は、

 

「仕事が終わったと思ったらまた仕事か」

 

と、ぼやいたとかなんとか。

 

また、政治の方面でも変化があった。

マオス等による改革により、王権神授説に基づいた法律を全て廃止。階級特権も、帝国時代の日本程度のものにまで縮小化された。

そして最も特質すべきは、『諸侯らは中央政府に実権を返納せよ』という号令を各地の諸侯貴族に出したことだ。これは、それぞれの諸侯に任せていた地方統治を中央管轄にし、軍事、司法、行政、財政を国家単位で円滑に行おうとする試みだ。

ようは昔日本にて行われた『廃藩置県』のようなものである。

勿論、これにも反発する貴族等がいたが、先日挙兵した諸侯が軒並み打倒されてしまったという報告を受けていた為に大々的に動くことができず、最終的には貧民街の扱いを国に押し付けれること、貴族院議員として王都在住と国からの高給が約束されたことで、反発は収まっていった。

 

今までの封建制度による地方分権体制を解体し「中央集権国家」に移行、ロウリア近代化への第一歩を踏み出した。

こうして、急速に諸侯等による争いは終結していった。

 

 

・・・・・・・・・・+・・・・・・・・・・

 

第三文明圏 列強国 パーパルディア皇国

 

「ロウリア王国が負けただと!?」

 

パーパルディア皇国国家戦略局課長のイノスは、部下であるパルソの報告に目を丸くして声を上げた。

 

「は!ロウリア王国は大日本皇国の軍に敗北し、先日正式に『マイハーク講和条約』が結ばれ両国は完全に終戦状態となりました。また、講話となっていますが、戦況は一方的なものだったようであり、事実上の完全降伏した形のようです」

 

「馬鹿な!あのロウリアが降伏だと!?あの国はロデニウスではかなりの規模を持つ国だったはずだ、我々の支援もあったのに文明圏外国家などに敗れるはずがないだろ!!」

 

「そうではありますが、既にこの条約はロデニウス大陸国家全体に公開されており、ロウリアの国内に大日本皇国の人間が多数出入りしているのも確認できます。国王ハーク・ロウリア34世も退位させられ、政治体制も大きな改革が始まっております。このことから、ロウリアは完全な形で大日本皇国に敗北したと考えられます!」

 

「簡単に言ってくれるな!我が国がロウリアにいくら投資したと思っている!?それらが全て無駄になったと皇帝陛下のお耳に入られては国家戦略局自体が危機にさらされるんだぞ!それどころか、私やお前の命すらどうなるかわからんわ!!」

 

「も、申し訳ありません!!」

 

二人どちらもが冷や汗をかきながら、報告書を前に声を上げる。トスンとイノスは課長椅子に倒れるように腰掛け、ため息をつく。

 

「はぁ......それにしても大日本皇国か......ロウリアほどの国力を持つ国が、それも我が国が援助をした国がそこらの蛮族に負けるとは到底思えん。敵は一体どのような兵器を使ったのだ?」

 

「それが......ロウリア軍に潜ませていた局員に大日本皇国の調査を命じましたが、命じたその日に戦闘に巻き込まれて死亡した模様です」

 

「商人に偽装した者をジン・ハーク内に派遣していただろ。彼らを経由して王国民から情報は聞き出せなかったのか?」

 

「いえ、聴取自体はできたのですが、その......一様にあまりに現実離れした意見しか出ないそうで___」

 

局員がまとめた報告書に書かれた内容を読み上げるが、

 

──音よりも早く飛ぶ鉄竜が追尾する光の矢を放ち、ワイバーンを一撃で落とす。

──鋼鉄の魔獣が爆裂魔法で騎兵を薙ぎ払い、城門を一撃で木っ端微塵に吹き飛ばす。

──鎧や大盾をも貫通する光の礫を連続で放つ。

──人を蒸発させる爆炎魔法を展開する。

等、

 

「情報操作が入ってるではないか?自分達の武力を誇示するために出鱈目を撒いているのか、民に幻覚を見せ洗脳しているのか、どちらにしろ小賢しい連中だ」

 

「我々が得た情報は外務局に報告した方がよろしいのでしょうか?」

 

イノスはその言葉に思わず水を吹き出し、信じられないものを見るような目を向けながら詰め寄る。

 

「馬鹿者が!自ら死地に飛び込むような真似をしてどうする!?あそこにはあの女がいるんだぞ!確実に皇帝陛下に報告する。そうなったら私達は終わりだ!」

 

「で、ではどうすれば!」

 

「破棄しろ!我々が関与しているという証拠になり得るものは全て抹消するんだ!棚の中金庫の中全て探し出して火をつけよ!メモ用紙一枚たりとも絶対に残すな!!我々と、国家戦略局の未来の為にもな!」

 

イノスはそういうと、束になった書類を揺らめく炎が燃える暖炉の中に投げ込んだ。ロデニウス大陸の民間人や商人たちから聞き取り、集められた調査資料はすべて焼却され、ロウリア王国への支援に国家戦略局が関わっているという情報は全てが隠蔽された。

 

・・・・・・・・・・+・・・・・・・・・・

 

───こうして、ギムでの虐殺から始まったロデニウス全体を巻き込む動乱は、この世界では常識ハズレの速度で日本、クワ・トイネ公国連合軍の勝利という形で幕を閉じた。

 

ギムの地には、ロウリア軍による大虐殺を後世に残すために、モイジ含む守護隊の名が刻まれた石碑と平和公園が作られた。

 

この戦争における大日本皇国の死傷者は0人であり、負傷者も骨折程度くらいしか居ない。文字通り、完全な勝利と言えるだろう。しかし、この戦争はあくまで序章であり、これから日本は苦難の旅路を歩き続ける事になるのを、今はまだ知る由もない。

 

 




これで二章は終わりです。
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