皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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第1話 転移

西暦2067年 皇紀2727年1月24日

 

東京某所

 

「ふぅ、やっと仕事終わったぁ」

 

()()()()が輝く夜。今日も今日とて日が落ちてもなお活気溢れる大都心。

その中央の一角にある参謀本部において、長官席にて項垂れる男がいた。

沖田帝治。

その名を知らぬ者はこの皇国において数知れず。異世界転移という前代未聞の事態に襲われた日本において、数多の戦いに参加し数多くの偉業を成し遂げ、やがて統合軍最高司令長官の座にまで上り詰めた男である。

 

「お疲れ様です長官。お茶をお持ちしました」

 

沖田の机に茶を置いたのは、秘書である長江峰である。

 

「ああ、ありがとう。.........はぁ、平和だなぁ」

 

「ええ、ですね。最近の騒動ですと...確か、沖縄のビーチにシーサーペントが座礁してた程度ですか」

 

「あと、レーダーになんか引っかかったと思ったら野良ワイバーンだった時か」

 

大日本皇国は異世界に転移してからも沢山の災難に見舞われた。メナスバーン帝国との戦争はほんの始まりに過ぎず。国交を結びに外交官を派遣したら従属命令を出されるなどよくあることで、交渉していたら第三勢力が攻めてきたり、まともに友好を結べた国など両手で数えられる程度しかない。

その後も、増えた魔獣掃討に当たってたら最終的に復活した堕ちた邪神と相対したり、異界から侵略してきた光の翼を持つ軍勢との戦いなど、この短期間で様々な存在との戦闘を繰り返してきた。

 

だが、その最後の戦いも一年半程度前のこと。皇国はその圧倒的軍事力で本土にはほとんど被害を出さず、現在では皇国軍は周辺に出没する海賊や海魔退治に明け暮れ、来るかも知れない異星人なんかのと戦いへ備えている。

 

「ただこうも何もないって言うのもなんだかなぁ、事務仕事ばっかってのは流石に堪える」

 

「いいじゃないですか。その分この国が平和ってことですから」

 

長江が処理し終わった書類を纏める横で沖田は置かれているソファに座り直し、置かれていた自らの相棒の手入れをし始める。

 

「はあ.......けどやっぱ誰かと斬り合いたいなあ、互いの全力をかけて本気で斬り合いたい。あの思わず背筋が凍るような殺気を、今にも届きそうな冷たい剣先を、地に踏み込むほどの重い一撃をもう一度味わいたい」

 

「戦闘狂のようなことを言わないで下さい」

 

「わからんかぁ、いやぁわからないものかぁ。あの一瞬の緊張の良さが」

 

「別にわからなくていいですよ。それに今更ですけど軍のトップが戦場で剣持って暴れるのは普通じゃないんですからね」

 

「ははは、それはそうさ」

 

呑気に談笑にふける彼らを見て、軍の最高指揮官とは誰も思わないだろう。

 

「まあ.......なんか面白いことでもおきねぇかなぁ?」

 

そして、剣の手入れを終えた沖田が先日家族から送られてきた饅頭に手をつけようとした時、異常が起こった。

 

「なんだ...ッ?」

 

明るい。

時刻は午後八時。太陽などとっくに沈んだ時間だ。

だが、窓から夥しいほどの光が走り、部屋は閃光に包まれた。一瞬の出来事に、二人の脳裏に最悪の事態が過る、だが、周囲の民家の無事、そして何より自分自身の体の無事がその可能性を否定する。

 

「何だったんだ.....」

 

光が収まり、小さく呟く。

そんな中、机や部屋に置かれた家具が大きく振動し始めた。

スマホから、あの聞くもの全てを不安な気持ちにさせる警報音がなり響く。

 

「地震だ!」

 

沖田はすぐに付近に落下物がないか見渡し、長江と共に身を伏せた。

 

「長官、この地震おかしいですよ」

 

「どう言うことだ?」

 

「見てくださいこれを」

 

長江が沖田にスマホを見せ緊急地震速報の画面を表示した。

何がおかしいかは一目で分かった。

日本は世界でも類を見ない地震大国だ。だが、日本全土で震度3の地震が同時に発生している。

 

「なん何だ一体....」

 

不可思議なことが立て続けに発生している。

やがて、揺れが小さくなってきた。

 

「.......おさまったか?」

 

沖田が立ち上がったと同時に机に置かれていたスマホが鳴る。

咄嗟に手を取り、電話に出た。

 

「なんだ」

 

『沖田、大丈夫か?』

 

「ああ俺は大丈夫だ。そっちは?」

 

『こっちも問題ない』

 

「さっきの閃光は一体なんだ?」

 

『さあな。だがただの災害ではないのは確かだ。これから官邸で緊急会議を開く』

 

「わかった。すぐに向かう」

 

電話を切り、速やかに指示を出す。

 

「長江、首相官邸で緊急会議がある。至急ヘリを飛ばしてくれ。それと、空軍は指示があり次第速やかに偵察機を発進できるよう即時待機。海軍に防衛艦隊は近海の警戒態勢を厳とし、陸軍は配備地域の巡回を開始せよ」

 

「了解しました!速やかに伝達します!」

 

そして、部屋には沖田一人が残り、誰もいない部屋で静かにため息をついた。だが、その表情は笑みを浮かべていた。

 

 

 

「さて、暫くは退屈せずにすみそうだな」

 

 

 

 

首相官邸 会議室

 

「これより緊急会議を始める」

 

大日本皇国の首都東京にある首相官邸。その中にある会議室内では重々しい雰囲気に包まれていた。

 

「まずは現状を報告してくれ」

 

最初に声を発したのは、内閣総理大臣である藤城平一郎。沖田とは小学校からの付き合いであり、普段は真面目で国民のことを第一に考えた政策に取り組み、歴代最高の支持率を持つ。だが、この時は明らかに険しい顔つきをしていた。

 

内閣危機管理監が説明をする。

 

「はい。本日20時頃、日本全国で震度3、マグニチュード12相当の地震が同時に発生しました。また、同時刻に日本全国で凄まじい閃光に包まれた現象が発生しました。」

 

「閃光....他国からの核攻撃...じゃあないんだね?」

 

「ええ、念の為放射線濃度の調査を命じましたが、何も変化は確認できませんでした。また大規模核撃魔法の反応も調べましたがこれも同じく、少なくとも速報で届いている分では放射線量も魔力反応も確認されてません」

 

「そもそも、何処か被害が生じている所はあるのか?」

 

「確認できた分では、爆風なども確認されていない為、一次被害は確認されていません」

 

その言葉に藤城は安堵のため息をついた。少なくともどこかからの攻撃ではないとわかったからである。

 

「念の為、国内に展開する各軍にはいつでも対応できるよう即時待機を命じてある」

 

「わかった、助かる。それで?何かわかったことはあるか」

 

藤城の問いに、後ろの官僚から資料が渡され、それを読み上げる。

 

「現在状況を確認していますが、各国の大使館と連絡が取れなくなりました」

 

「宇宙センターからの情報によると、上空の星の位置が変化しており、またパルマキア大陸が消失し、別の大陸が出現していると」

 

その言葉に、藤城は考えを巡らす。

 

「それは....何と言うか...」

 

「ええ、8年前の転移事変とほぼ同じ現象です」

 

「ということは」

 

「はい。我が国、大日本皇国は、再び異世界に転移したものと思われます」

 

閣僚達に騒めきが起きる。

 

「もしや、ここは地球なのでは!?」

 

「いや、地球なら元の衛星との通信が可能だろうが、そのようなものは確認されてない」

 

「なんなんだよ一体..」

 

前回の異世界転移時から在籍する閣僚は、再び発生した異常事態に頭を抱えた。

 

「わかった。では国内の方はどうだ。混乱などは発生していないか?」

 

「国内においては、警察官などの誘導により大規模な混乱は発生していません」

 

「幸いにも、今回は通信衛星なども一緒に転移しているらしく、ネット環境への影響は見られてません」

 

「まあそのおかげで、この情報が一瞬で拡散されて、一部店舗で商品の買い占めなんかも発生してるんだがな」

 

官房長官である由太がそう悪態をつく。

 

「そうは言うなよ江西。受動性が強すぎるのは確かに良くないが、ここは通信に影響がなかっただけ良しとしようぜ」

 

沖田の言う通り、前回の転移では衛星などは地球に置き去りになってしまった為、GPSは勿論様々な通信機器に影響が出たのだ。

 

「そうも言ってられませんよ沖田長官。もし本当に異世界転移が再び発生したのなら、我が国は資源輸入国を全て失ったことになります。石油や鉄などの資源は他国からの輸入に頼ってきましたが、それらが全て途絶えたとなると、我が国は一年も立たずに立ち行かなくなります」

 

「ちょっと待て、綺衣羅諸島沖に見つけた海底油田はどうなったんだ」

 

「現在プラットフォームを建設中です。ですが、稼働可能になるまで最低でもあと2年はかかります。そもそも、このままでは建設機器の燃料の在庫が危うくなり、最悪建設自体がストップする可能性もあります。そうなったら今度こそお終いです」

 

経済産業大臣が口にし、農林水産大臣も青ざめた顔で話す。

 

「ご存知の通り、我が国の食料自給率は70%程度であり、それなりの量を他国からの輸入に頼っていました。飛空島やジロフロントの開発によって多少は増加傾向にありますが、それでも持って八ヶ月、統制をすれば一年程度かと....

それに、漁業に関しても、一部栽培漁業施設が消えているのが確認されていますし、海流の変化から新たに取れる魚介類の調査も必要です」

 

現在の大日本皇国の食料自給率は、現代日本よりも高い水準にある。日本国内の食料自給率が異常に低いことを懸念した当時の総理であり、現総理の祖父である藤城大介による令和農業大改革が行われ、いくつもの食糧を自国で補えるようになった。だが、小麦、トウモロコシなどは未だに外国だよりなのが現状だった。

 

「ぐずぐずしていても何も始まらんな。幸いこういった転移災害に対する事前マニュアルは用意してある。

沖田、すぐに例の南西の大陸に偵察機を飛ばしてくれ。

オーストラリアと同じように穀倉地帯や天然資源があるかもしれない。

由太は記者会見の準備をしてくれ。

それと、新たな観測衛星の打ち上げを宇宙センターに連絡しろ」

 

「了解しました」

 

「沖田、頼めるか?」

 

「当たり前だ。すぐに空軍に伝達する」

 

「頼んだ」

 

こうして、会議は終了した。

一時間ほど後に藤城は記者会見を行い、日本が再び別の異世界に転移したことを正式に国民に発表した。

ネット掲示板などを通じてこの情報はすぐに国民全員に広まり、あちこちでパニックになるものが続出した。

だが、国民の象徴たる天皇陛下が声明を出したことにより、それらは静まっていった。

 




キャラクター

・沖田帝治(おきた ていじ)
役職 大日本皇国統合軍最高司令長官
皇国最強の剣の使い手であり、"剣聖"の称号を持つ。過去の戦争では敵の銃撃を全て弾き飛ばし、火炎弾を一刀両断する超人行為を行う。神速の斬撃を放ち、もはや"剣ではない何か"と呼ばれるまで昇華してしまっている。
顔が広く、色んな所に知り合いや幼馴染がいる。

・藤城平一郎(とうじょう へいいちろう)
役職 内閣総理大臣
史上最年少の総理大臣にして、日本国を導くカリスマ性を持っている。
祖父を継ぎ、国民のことを第一に考えた政策に取り組み、歴代総理大臣最高の支持力を持ち、国民からの人気も高い。
沖田とは幼馴染。
既婚。

・由太江西(ゆだ こうせい)
役職 内閣官房長官
藤城の盟友にして生粋のアニメ好き。
多少口は悪いが、彼の心情をよく理解し的確にそれを言葉にできる。
名前のせいでいつ裏切るのかなどとネタにされているが、本人は日本国が大好きであり身を捧げる思いである。


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