皇国の黎明 大日本連邦皇国召喚   作:星ノ河

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誤字脱字報告ありがとうございます。




第4話 使節団来日

クワ・トイネ公国 外務局 会議室

 

外務局のある部屋で、使節団として派遣される者たちの顔合わせ件、日本の事前情報の共有が行われる。

 

「はあ....」

 

使節団の一人に選ばれたヤゴウは、静かにため息をついた。

昨日、帰り際に同僚から今回の使節団入を羨ましいと言われた。

まあわからなくもない。ただ、使節団派遣は、別に珍しいことではない。

公国も属するここ『文明圏外国家』では、割とよく国王が変わり国名が変わったり、大国が分裂して幾つかの国が生まれることがある。

そう言うことが有ると都度使節団を派遣するのだ。

だが、そういった国々は政治体制の変化で大きな混乱がおこっていることが多く、治安が悪化している。

他にも、クワ・トイネ公国は文明国からの流れものなどで圏外国家にしては高い文化水準にある為、派遣先は自国より技術が断然低いことが多く、衛生環境が整っておらず謎の感染症にかかることもある。

 

そして何より飯がまずい。

 

薄汚れた水に何かを潰したもの、焼いただけの魚など、もちろん嫌がらせでもなく精一杯のもてなしでだ。

 

だが、今回は違う。

『大日本皇国』

ワイバーンが全く追い上げない速度で空を駆ける鉄竜。200mもの帆をつけずに航行する巨大船。片手で持てて、通信、手紙、地図の閲覧、何でもできる輝く板など。

 

「信じられないな....」

 

ヤゴウは配布されている資料を見てそう呟いた。

もし、これら全てが事実ならば列強国をも凌ぐ技術を持っていることになる。羽ばたかずに飛ぶ機械仕掛けの鉄竜や、帆を張らずに航行できる船などは、列強国第1位・2位のミリシアルとムーしか保有してないはずだ。

輝く板に関しては全く持って意味がわからない。

 

列強を超える国力を持つかもしれない国、日本。彼は、日本という国に大きな興味を持ち始めていた。

 

「みんな集まったな。これより、事前会議を始める」

 

使節団団長の号令により、みな意識を切り替える。

小さな会議室で行われているこの会議は、使節団として派遣される外務局の5名と、軍務局の将軍ハンキの計6名で行われる。軍務局の人間がいる理由は、大日本皇国の軍事力を見抜くためである。

 

「今回の我々の一番の目的は、大日本皇国がどのような国かを確認し、我が国と共に歩むべき相手かどうか判断するためである。かの国は我が国と国交を結びたいと示しているが、何を考えているか解らないのが正直な所だ。覇権主義なのか、ロウリアのような亜人に対する差別思想があるのか、何のために我が国と国交を結ぼうとしているのか、それを調査するのが我々の仕事だ」

 

団長の言葉に、使節団全員が頷く。

 

「大日本皇国がどのような程度の国なのかは不明だが、マイハークに停泊しているあの巨大船を見る限り途方もない技術を保有していると思われる。理解していると思うが、くれぐれも相手を刺激しないよう言動には十分注意するように。それと、大日本皇国が何に強く何に弱いかを調査し、我が国が優位に立てる部分を探してほしい。では、配られた資料を見てくれ」

新たに配布された資料に皆は目を通す。

 

「大日本皇国側の説明によれば、今回は彼等が移動手段と船舶を提供してくれることになっている。出発は三日後の昼過ぎ。皆しっかりと準備しておくこと。

出発の2日後の夜に日本本土の地方都市『フクオカ』に上陸しそこで、三泊する。そこで皇国の安全に行動するための常識を教え込まれる。あちらの外務省によれば、皇国の常識を知らないで勝手に外出すると、車という馬車のようなものに踏まれて死んでしまう可能性があるらしい。

そして出発から5日後の昼には『リニアシンカンセン』なる乗り物で首都『トウキョウ』に向かう。15時頃に到着の予定で、そこの『帝国ホテル』で一泊し翌日には皇国政府との会談が行われる。7日後からは、皇国の都市や文化財の視察を行う」

 

.........?

ヤゴウは疑問に思った。時系列がおかしいと。

事前に目を通した資料によれば、日本本土は我が国から1300km近く離れている。船なら一ヶ月以上はかかる距離だ。船舶が2日で到達できる距離ではない。それに、フクオカからトウキョウまでも1000km近く離れている。にも関わらずその日の内に到着するとは一体どういうことだろうか。

あの鉄竜ならともかく、『リニアシンカンセン』は地上を走る乗り物らしい。

日本という国はどうやら、我々の基本常識が通用しない国のようだ。

 

 

三日後 マイハーク港

 

使節団の面々は、クワ・トイネ公国随一の港であるマイハーク港に集まっていた。

天気は快晴で、広い青空が広がる、少し涼しく心地良い。

そんな中、憂鬱な表情をするものがいた。

 

「今から船旅か.....」

 

屈強な体に、勇ましい髭を蓄えたドワーフ族のハンキであった。

 

「ハンキ将軍、顔色が優れませんが、どうされましたか?」

 

「ああ、ヤゴウ殿か。今から船旅と思うと気が重くてな......ヤゴウ殿は船に乗ったことは?」

 

「いえ、私は地上勤務が多いので船に乗ったことはなく」

 

「そうか。船旅はいいものではないぞ。いつ転覆するのか肝が冷えるし、船の中は光が届かず薄暗くて湿気でジメジメするし、長旅になると疫病にかかる者も多い。食べ物は腐らないための保存食しかないため塩辛いかパサパサに乾燥してる。今回の船旅は2日と聞いているが、外務局と大日本皇国の間で、やり取りのミスがあったとわしは思っている。船ではありえない速度でいかないと無理じゃよ」

 

ハンキはそう言いながら、肩を落とす。

 

「私も、時系列がおかしいと思っています。ただ、鉄竜を飛ばせる彼の国ですので、我々の常識では測ってはいけないのかもしれません」

 

そして時間になる。すると、港から少し離れて停泊している軍船の影から、巨大な白色の大型船が現れた。

(でかい!それに帆がない!)

使節団の誰もがそう思った。近くにあるクワ・トイネのガレー船と比べるとその大きさが際立つ。

その船は軍船の近くで停止した。

 

「今回皆様には、いま到着した【飛鳥Ⅳ】に乗って皇国へと向かって頂きます。本当はこの港に直接接岸したいのですが、残念ながら港の水深が不足しているので、あそこに停泊しました。皆さまには、小舟に乗り移っていただきます」

 

やがて、その白い船から小さな船が三隻現れ、これまら信じられない速度で近づいてきた。勿論この船にも帆はない。

 

「川波殿、川波殿」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「以前から気になっていたのだが、貴国の船には帆がないようだが、どうやって動いているのじゃ?小舟に関してもオールが無いようだが、どうやったらあんな速度で走れるのじゃ?もしや第一文明圏の魔導船のような物か?」

 

「第一文明圏....はわかりませんが、我が国にも魔導船は幾つか存在します。まあ、それもごく一部で、あの船などの殆どの船はディーゼル機関によって動いています」

 

「でぃーぜるきかん?」

 

「はい、いわゆるカラクリです。重油と呼ばれる液体を爆発させることによって、そのエネルギーを利用してスクリューと呼ばれる羽を回すことによって、推進しています」

 

「うーむ、よくわからないがすごいのう」

 

使節団は小舟に分乗し、大型客船に乗船した。

飛鳥Ⅳは規定時刻通りに、やってきた艦隊と共に日本へ出発した。

 

「これが船の上なのか.....とても明るい。光の妖精でも住んでいるようだ」

 

使節団は割り振れられた各々の船室へ向かう。

部屋は個室であり天井では硝子が輝き部屋全体を照らしていた。部屋には寝台、テーブル、ソファーにトイレや風呂までついていた。

 

「まるで宮殿のようだ.....」

 

ヤゴウは感嘆の声を漏らした。

 

 

・ヤゴウの日記

なんということだ、私は驚きを隠せない。

私はこのような巨大で、尚且つ帆やオールも無しに動く船を見たことがない。

しかも中は快適で、一定の温度が保たれている。

揺れなども殆どなくコップに入れた水がこぼれることもない。

更に、支給された部屋は個室だった。普通個室は船長のみで乗り組みの客は、大部屋か少人数の相部屋だと考えていた。

ベッドはフカフカで、雲の上に座っているような気分だった。私は思わずそのまま寝転んでしまいたい衝動に駆られたが、なんとか誘惑に耐えた。

「レイゾウコ」という箱は実に画期的だと思った。中が冷えており、これならば食材を腐らせずに長期間保存でき、わざわざ特に美味しくもない保存食を持ち運ぶ必要がない。

聞いたところ、昔は箱を二段にし片方に氷を入れて活用するのが最初期の物らしい。これならば我が国でも導入できそうだ。

風呂が常設されていることにも驚いた。なんと、蛇口を捻るだけで熱湯が出てきたのだ!わざわざ薪で沸かす必要がなく、自動で行ってくれるらしい。

いや、そもそも日本に湯浴みの文化があることに驚いた。圏外国家によっては、水で流すだけで完結させる国もある。

近くにいた日本の職員に聞いてみると、日本人は大の風呂好き民族らしく、ほとんどの民家には風呂が常設されていつでも入れるらしい。更には、国内のあちこちで地底から湧き出る湯である温泉の観光地があるという。

これはいいことを聞いた。いずれまた来るときには是非行ってみたいと思う。

 

 

 

次の日。ベッドから出たくないと思ったのは初めてではないだろうか。弾力性のあってフカフカとした温かい布団。部屋の温度も快適なままだった。クワ・トイネでも冬の朝は確かに寒いと感じる日はあるが、夜通し暖炉の火を焚いて、部屋を暖めておくなど燃料代が馬鹿にならない。日本国の我々に対する手厚いもてなし、それも一外務局員に対する厚遇には驚くばかりだ。

 

朝食も非常に豪華だった。職員に呼ばれると、まるで宮殿のように広く豪華な食堂に席が用意された。

出てきたのは、ケチャップという赤いソースのかかった卵の焼き物に、こんがりと焼き上がったベーコン、

色々な野菜の乗った鮮やかなサラダ、パン、そしてミルクだ。

こんな船の中でも新鮮な野菜が食べられるなんて、「レイゾウコ」があるおかげだろう。

パンの記述も忘れてはいけない。普段私が食べるパンはとても硬く、スープに浸して食べることが普通なのだが、このパンはとても柔らかく簡単に手で千切ることができた。用意してくれたマーガリンというバターに似た物をつけて食べる。うまい。パンの程よい柔らかさと表面のパリッとした皮の感触が実に良い。

 

食事を終え、彼らから筆記具を受け取った。滞在中に是非使って欲しいとのことだ。

貰ったのは、ボールペンなるものと、沢山の紙が一つに小さくまとまったメモ帳だった。

ペンの後ろの突起部分を押すと、さっきぽからペン先が出てきた。早速貰ったメモ帳に書いてみると、なんと滑らかな書き心地か!

それに、触ってみるともうインクが乾いている。

更に別々の部分を押すと、赤、青、黒の三色の色で線を描くことができた。

 

早速持ってきた羽ペンや筆記具、インク壺が無駄になってしまった。

この筆記具は移動しながらでもちょっとのことで筆記することができる。揺れる船内では、インク壺からインクが飛び出してしまう為凪の時でないと筆記することができなかった。だが、これならばたとえ道端でも気軽に筆記 することができる。

 

文房具一つとっても高い技術力が伺える。

 

このような物を作り出してしまう大日本皇国とは一体どのような国なのだろうか。

 

もしかしたら、日本は文明圏の列強国に匹敵する力を持っているのかもしれない。

 

 

2日後

 

「皆様、福岡市が見えてまいりました。福岡市は、九州地方、中国四国地方の中で最大の都市になります。あそこに見えるのが博多港であり、博多港からはリムジンバスでホテルまで移動していただき、日本についての基礎知識を学んでいただきます」

 

ヤゴウ達は興奮のあまり、朝早くから甲板に飛び出し、今か今かと待ちわびていた。

 

「すごいな.....これで地方都市なのか.....ん?ハ、ハンキ将軍!!あれを見てください!」

「どうしたのだヤゴウ殿......な、なんだあれは!?」

 

ヤゴウが何かを見つけ、大きな声を上げそれを指さす。

ハンキもまた、指さした方向を見て驚く。

 

「あれはどういうことだ!?島が浮いているのか!?」

 

港から少し離れたところ。そこには、今乗っている船よりも更に巨大な島、もはや大地というべきものが浮いていた。

 

「あれは我が国が導入している飛空島です。大地を浮かせているというより、人口で作られた島ですね。

現在は安全面や騒音対策の観点から海上を飛行させております」

 

飛空島とは、読んで字の如く空に浮遊する島だ。島内部に大型の魔晶石が存在し、それを利用して飛空しているのだ。

(ラ○ュタではないよ?)

土地を移動することができるため、天候に左右されずに農作物の栽培ができる。

前世界において、アルセオン王国にて運用されており、それを日本が買い取って手に入れた物である。

因みに値段は核融合炉戦艦1隻分くらいらしい。

 

間話休題

それを見て、ヤゴウ達は顎が外れそうなほどに驚いていた。こんなもの、あのミリシアル帝国でもないのではないか。

 

博多港に到着した彼らは、リムジンバスに乗りホテルに向かう。

船の上で、川波から車という馬のいらない内燃機関によって動く乗り物があることは聞かされていたが、まさか

道路を埋め尽くすほどの量があるとは思ってもいなかった。

 

バスに乗ってホテルに向かい、日本の基礎知識を学ぶ。

『天皇』と呼ばれる日本の皇帝への不敬行為の禁止。

信号システム、自動販売機、鉄道システム、そして、交通機関や一部の商店においては、個人認証システムと電子通貨の組み合わせによって、乗ったり、商品を持って行ったりするだけで自動的に精算される無人改札。

拾ったものを勝手に自分のものにすると占有離脱物横領という罪に問われること。

魔法を使用した犯罪は、通常の罪よりも重い罰則が下ること。

国内においては、一部の者を除き武器の所持及び使用の禁止。今回は特例で認められているが、今後クワ・トイネ人が来日する際は武器の類は検問所で回収されるとのこと。

 

この国にあふれているものは、摩訶不思議なものばかりだが、ほとんどが「科学」で構築されている。そして、仕組みさえ理解すれば、誰でも作ることができると言っている。

 

翌日には、大日本皇国の文化や歴史についてをまとめた動画を視聴した。

アニメ・漫画・ゲーム・映画・スポーツ・四季行事、

などの多様な文化は使節団の面々を驚かせた。

 

歴史についてもまた、激動で修羅のような世界を駆け巡ってきたのだと手に汗を握った。

大陸からの文化の渡来に始まり、国風文化の発達。数百年にわたる戦国の時代。民衆文化の発展。

文明開花。そして、二度にわたる、列強国全てがぶつかり合う世界大戦。

立ち上がり蘇る日本。平和と自然災害との戦い。

そして再び起きる、三度目の大戦。

日本国から大日本皇国への変化。

四度目の大戦から、世界三大国家への成長。

 

まさに異世界の歴史。

使節団の面々は半ば茫然としながらも、真剣に画面を眺めていた。




・アルセオン王国
前世界において日本の最友好国として存在した王国。
2000年にもわたり鎖国をしており、最早存在が伝説になっていた。
紆余曲折あり現在は日本の連邦保護国の一つとなっている。
"ファンタジー舐めんなファンタジー"の大体の元凶
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