お姉さんと僕   作:埴輪庭

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HTMLをクラウドフレアにデプロイして公開した設定資料?です。良かったらみてね。モブキャラリストについては多分漏れもあると思います。名前、簡単なプロフ、初登場話数(該当ページへのリンクあり)、生きてるか死んでるかみたいなのが書かれています。

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第42話「高田馬場⑨(御堂聖、三鷹、東花)」

 ◆

 

 聖は数秒だけ黙った。

 

 そして、嘘は通じない──と判断した。

 

 適当なことを言えばすぐにバレる。バレたら信用を失う。信用を失えばCブロックとの関係は終わりだし、この避難所にいづらくなる可能性すらある。

 

 では全部を話すか。

 

 それも無理だ。お姉さんの存在を正直に説明したところで信じてもらえるとは思えないし、仮に信じてもらえたとして「厄」扱いで追い出されるのがオチだろう。

 

 ならば──部分的な真実しかない。

 

「守護霊……みたいなものが、いるみたいです」

 

 聖はそう言った。

 

「自分でもよく分からないんですけど。昔から」

 

 三鷹の表情は動かない。煙草の煙が天井に向かって細い線を描いている。

 

「守護霊、ね」

 

 守護霊が憑いている者は珍しくはない。まあこのご時世なので、その守護霊も別の怪異に食われたり殺られたりしてしまう事も珍しくはないのだが。

 

 三鷹は煙草を一度深く吸い、ゆっくりと吐き出した。紫煙が聖と三鷹の間を漂い、段ボールの隙間に吸い込まれていく。

 

「まあいい」

 

 三鷹が言った。

 

「お前が何を抱えてるかは知らねえが──」

 

 煙草の先端が橙色に灯る。

 

「ここでおとなしくしてる分には、俺らも何もしねえよ。池袋の連中みたいに暴れたりしなけりゃあな」

 

 それは警告であると同時に、一種の休戦協定でもあった。聖はそう受け取った。ついでにもう一つ、思った事もあったが。

 

「俺が言えるセリフじゃねえって面してやがるな」

 

「うっ……」

 

 図星である。半グレ集団が可愛く見えるような阿弥陀羅──元とはいえ、そんな凶悪暴力集団に所属していた者が言うには、ちょっと過去を棚に置き過ぎではないだろうかと思わなくもない。

 

「まあまあまあ」

 

 沈黙を嫌ったのか、原田が割り込んできた。ぽっちゃりした体を揺らしながら、眼鏡の奥で目を細めている。

 

「仲良くやろうよぉ、ねえ。俺なんかさ、ずっと話し相手いなくて寂しかったんだから。御堂くん、また来てよ。今度はもっと面白い話するからさあ」

 

「……はい。また来ます」

 

 聖は小さく頭を下げた。

 

 §

 

 三鷹は聖の背中を見送りながら、煙草の灰を床に落とした。

 

 守護霊。

 

 そんな生易しいものかどうかは分からない。笹本の反応を思い出す。あの女は「厄」と言った。厄という言葉を選んだということは、単なる霊ではないと感じたということだ。笹本の勘は当たる。

 

 ──()()という時は……

 

 そもそも三鷹らとて、いつまでもここで安穏としていられないのは事実である。

 

 三鷹は煙草を携帯灰皿に押し付けて消した。

 

 ──ま、今は様子見だな。

 

 ◆

 

 聖は階段を降りながら、先ほどの会話を反芻していた。

 

 自分にしてはソフトランディングできたと思う。

 

 ──あの人はは「おとなしくしてる分には何もしない」と言った。裏を返せば、おとなしくしていなければ何かをするということだよね。

 

 望む所であった。この御堂 聖という少年は生来の陰キャだ。自分から何かやらかそうなんて、目立とうなんて欠片も思わない、よく言えば控えめな性格をしている。

 

 ──原田さんは話しやすそうだったし、少しずつ情報を集めればいいか。いや、でも僕だけ聞いても余り公平じゃないな。僕の知ってる情報とかもある程度は差し出さないと……

 

 そんな事を考えているうちにAブロックの入口が見えてきた。

 

 §

 

 不意に、耳元で声がする。

 

『お兄さんも小賢しくなったよねぇ』

 

 聖は足を止めた。

 

 反射的に周囲を見回すが、廊下には誰もいない。

 

 だが声ですぐに分かった。

 

 傘の子だ。

 

『でもまあ、そういうので良いんじゃないかな』

 

 声は続いた。どこか悪戯っぽい響きがある。

 

『お兄さんは不思議と、僕らみたいなモノに随分と鈍いんだよね。そして()()。だから本当ならヒトなんかじゃ仲良くなれないようなモノとだって仲良く出来ているし、受け入れる事ができている。フツーはヒトのままでは居られなくなるから。あんなに受け入れたら。でもさ──』

 

 間があった。

 

『他に何ができるってわけでもないンだよね。てんで弱っちいし、強くぶたれただけで死んじゃうかもしれない。僕はお兄さんに強くなって欲しいと思っているし、そう思っているのは僕だけじゃあないけれど、お兄さんには無理だねえ。()()()()()に向いていないもの、お兄さんの力は。ヨワヨワだよねぇ』

 

 ま、と声は続ける。

 

『精々頭をつかって、賢く生き延びてよね。僕らが毎回、どんな時でも助けてあげてもいいけど、それをするとお兄さんが長生きできなくなるから』

 

 声はさらに続く。

 

『あとさ──色々やることがあるのは分かるけど、僕の体に埃がついてるよ』

 

 聖は手元を見た。

 

 右手に持った黒い和傘。その表面に薄く埃が──付着しているような気がしないでもない。よく見ないと分からないが、よくみるとついているようなついていない様な。

 

『あーあ、あのおばさんはもっと僕を綺麗にしてくれたのに。お兄さんも頑張ってよ。じゃないと僕やる気なくなっちゃうかもよ?』

 

 聖もできるだけ手入れを欠かさない様にはしているが、それでもまだまだ足りないらしい。

 

「ごめんごめん。拭き取るよ」

 

 返事の代わりに和傘が一度、ぶるりと震えた。

 

空白行について。現在、句点「。」で終わる文章一つにつき空白行が一つありますが、これは読みづらいですか?

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