お姉さんと僕   作:埴輪庭

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第48話「東京山手医療センター⓵(御堂 聖、早川 俊介、木下 麻衣、原田 浩二)」

 ◆

 

 戸山公園の話題が一段落してから、僕らはつつじ通りをそのまま南下した。

 

 暫く歩く。

 

 景色はなんというか分かりやすく言えばゴーストタウンだろうか。建物とかそういうのは別に荒れているわけじゃない。まあ窓が割れてたりとかはあるんだけど、災害もの映画みたいに荒れ果ててるって感じじゃないのだ。でも人気(ひとけ)だけが極端に少ない。たまーにマンションのベランダに人が立っているのを見かけたりするんだけれど、声を掛けたりはしないし、掛けられもしない。人間かどうか分からないからね。怪異の中には、返事をする事がトリガーになって襲ってくるのもいるから……

 

 そんな景色をぼんやり眺めながら歩いていると──

 

「あ」

 

 僕は思わず声を漏らす。

 

「ルート、変えられませんか?」

 

 早川さんに頼む様に言うと、早川さんはぴたりと足を止めた。

 

「お、なんだ、やばいもんでもいたか?」

 

「はい、この先大きい鳥がいるみたいで。カラスっぽいらしいんですが人間の子供くらいある大きいカラスだそうです」

 

「げ……こっちにも出るのかよ。まあ鳥だもんなぁ。移動範囲も広いか……ちなみに浮遊霊に調べて貰ったみたいなかんじか?」

 

「はい、NEROさんっていう、生前はホストだったお兄さんです。今もそこにいますよ」

 

 僕は木下さんの隣を指さした。

 

 次の瞬間、木下さんの髪の毛がふわりと浮き上がる。木下さんはびっくりしてその場を飛びのいた。

 

「あ、いま絵里さんに蹴られてますね……」

 

 絵里さんは結構勝ち気な性格だ。NEROさんがチャラいのが気に入らないらしくて、よく蹴ったり叩いたりしている。暴力系ヒロインっていうんだろうか? 

 

 早川さんがふむと顎をなでた。

 

「……一つ確認していいか?」

 

「? はい、なんでしょう」

 

「それってずっと出していられるのか?」

 

「それって、ああ、絵里さんとかNEROさんですか? いや、ずっとは無理です。今のもスポット的に軽く周囲を流し見してもらった感じで……。ずっと()()()し続けていると凄く疲れるんですよね。なんていうのかな、ゲームってMPみたいなのがあるじゃないですか……」

 

「ああ、言いたい事はわかった……なるほどな」

 

 早川さんが少し考え込む様な顔をする。

 

 念のプールという早川さんの説明を、ちょうど少し前にしてもらったばかりだ。あの感覚に近いのかは僕自身よくわからないんだけれど、エネルギーが減っていくっていう意味では似ているのかもしれない。もし僕の中の見えない何かが枯渇したとして、最終的に何が起こるかっていうのは怖くて確かめていなかった。

 

 確認しなければいけないことは分かってはいるんだけど、その代償が例えば自分の命とかだったら笑えない。自分の身で確かめるとしても、例えばこういう事に詳しそうな人が一緒じゃないと……。

 

 でもお姉さんや傘の子の反応からして、命か、命に近い何かを代償にしているんだろうなとは思っている。

 

「例えばなんだけど身を護る事も出来るの? 幽霊に、その……お願いをして……」

 

「そう、ですね……え? あ……えっとうん。出来なくはないとおもいますけどやったことはない、です。でもどうかな。お願いの内容次第では疲れ方も変わるから今の僕だと難しいかな。その、お化けとかが襲ってきて身を護るとかいうのは」

 

 そうなのね、と答えた木下さんの表情はどこか安心したようなものに思えた。

 

 ◆

 

 そうして歩き続ける事数分。

 

「うわ……」

 

「大きいねえ、大学病院か何かなの?」

 

 僕と原田さんは呆然とした声をあげる。というのも目の前に建っていいる病院──医療センターはとにかく大きかったのだ。病院ってこんなもんだったっけ? 美術館とか博物館とか、そんな感じで──とにかくダイナミックなのだ。

 

「都内でも六番目に大きいらしいぜ。前に行った事あるけどよ」

 

「人間ドックだったっけ?」

 

 木下さんの質問に「確かそうだったっけかな」と答える早川さん。

 

「でも、ここなら確かに薬とかもあると思いますけど──」

 

「どんな薬がいるんだって?」

 

「はい、まあ……」

 

「まあ普通に風邪薬とか胃薬とか、あとは消毒薬だとか包帯だとか……それくらいだな。鎮痛剤とかさ。前にも来た事あるんだけどさ、その時は結局手ぶらで帰る羽目になったんだよなあ」

 

 木下さんに尋ねる様にしていう早川さん。

 

「手ぶらって、なんでまた。幽霊が出るっていったって薬の一つや二つくらいは──」

 

 原田さんが疑問の声をあげる。確かにそうだ。

 

 でも早川さんは「それがなあ」と何かいい淀んでいる。

 

「まあ入れば分かるさ」

 

 そう言って早川さんは先へセンターのエントランスへ向かっていった。木下さんもそれについていく。

 

 僕と原田さんは一瞬を顔を見合わせて二人の背を追っていった。

 

 ◆

 

「ここはエントランスで──まあ言わなくても分かると思うけど。ほら、そこに総合受付って書いてあるだろ?」

 

 早川さんが指さした方をみると確かに書いてある──って、え? 

 

「あ……」

 

 早川さんには見えないんだろうか? 女の人が受付カウンターからこちらを見ているけれど。でも別に良くない感じはしないし、浮遊霊とかなのかな。ただ、気付いた以上はちゃんと伝えておかないといけない。すると──

 

「へえ、どんな女の人?」

 

 原田さんがそんな事を聞いてくる。

 

「えーっと……肩口くらいまでの髪で、なんかきりっとした感じの……」

 

「攻核機動戦隊の八咫乃隊長みたいなかんじ?」

 

「た、多分?」

 

「そうなんだ! 俺もうっすらとは視えるんだけど──御堂君は霊感強いねえ!」

 

 霊感か……。僕はちょっと前まで霊感どころか0感だと思ってたんだけど、かなり視える方なのかもしれない。でも──

 

「視えすぎるってのも余り良くないらしいけどな」

 

 早川さんの言葉にうなずく。その辺は祟部長から聞いていたけれど、怪異っていうのは認識されると活性化されるらしく、半端に霊感があるよりむしろ0感のほうが良いらしい。というか、全くこれっぽっちもすこも異常なモノを視る事ができないくらい鈍いほうがいいとも言っていたなあ。

 

「まあともかく、御堂に視えてるのはただの一般浮遊霊だろ……。特に何かしてくる感じでもないんだろ?」

 

「はい」

 

「だったらスルーだ。変に刺激したくないしな。それに御堂に視てほしいものはほかにあるんだ」

 

 そう言って早川さんは説明をしてくれた。

 

「俺たちはこの一階フロアにある薬剤部に用事がある」

 

「薬剤部?」

 

「ああ、薬を保管している部署だな。ここから各病棟に薬が運ばれて──ってな具合だよ。入院中の患者に使うのさ。普通の外来患者とかは院外処方っつって病院近くの薬局で処方してもらったりする」

 

「詳しいんですね」

 

「親父が医者でね、まあそれはいい。問題はここからだ。薬剤部の場所は分かってるんだ。入口にフロアマップがあるからな。問題はそこにたどり着けない事だ」

 

 たどり着けない? マップを見る限り迷うような感じじゃないけれど……

 

「どこをどう歩いても堂々巡りさ。おまけに部屋も全部鍵がかかってて入れないときたもんだ。力づくで壊す事もできない。何かしら謎があるってことだよ。そして多分それは、俺らみたいな異能タイプじゃなくて、御堂みたいな霊能タイプじゃないと解けないんじゃねえかな、とおもってるわけだ──」

空白行について。現在、句点「。」で終わる文章一つにつき空白行が一つありますが、これは読みづらいですか?

  • ①問題ない
  • ②少し詰めて欲しい
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