お姉さんと僕   作:埴輪庭

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第6話「帰路、3人」

 ◆

 

 帰りのホームルーム。空気はひたすら重苦しい。

 

 牧村先生が再び険しい表情で教壇に立つ。

 

「みんな、静かに。本田の件だが、まだ進展はない。引き続き、何か思い出した事があればいつでも言ってくれ。それと今日からしばらくの間、部活動は全て中止になる。霊捜が現場付近の調査を行う予定だが、念のため、下校時はできるだけ一人にならないように。いいな?」

 

 先生の言葉に皆が騒めく。

 

「霊捜が出てくるってマジかよ……」

 

「やっぱり相当ヤバいんだな……」

 

 クラス中が不安を隠しきれない様子で囁き合っている。

 

 僕も思わず祐の方に視線を送った。

 

 すると祐がニヤリと笑って僕に声をかけてきた。

 

「お、じゃあ一緒に帰ろうぜ、聖」

 

 祐が僕を誘うのは珍しい。

 

 僕はオカ研に所属しているから、普段は放課後の帰宅時間がずれてしまう。

 

「うん、いいよ」

 

 快諾すると、祐は満足そうに頷いた。

 

 そのとき、突然僕たちの会話に第三者の声が割り込んできた。

 

「御堂君、佐原君。わたくしもご一緒しても?」

 

 その澄んだ声に振り返ると、眞原井さんがすぐ後ろに立っていた。

 

 僕と祐は顔を見合わせ、一瞬戸惑った。

 

 眞原井さんとはこれまで直接話す機会もほとんどなかったし、ましてや一緒に帰ったことなど一度もない。

 

「あ、もちろんいいけど……」

 

 僕がそう言うと、眞原井さんは少しだけ微笑んで頷いた。

 

「よかった。わたくしもさすがに少し怖いので」

 

「眞原井でも怖いとかあるんだ?」

 

 祐が軽口を叩くと、眞原井さんは真顔で祐をじっと見つめた。

 

「いくらわたくしがエクソシストの家系だからといって、常に平気なわけではありませんわ」

 

「わ、悪い、冗談だって」

 

 祐は慌てて謝る。

 

 僕は彼らのやり取りを見ながら、胸の奥に小さな疑念を感じていた。

 

 ──眞原井さん、本当にただ怖いだけなんだろうか? 

 

 今朝の視線のことを思い出し、胸がざわつく。

 

 でも、すぐにそんな考えを振り払った。

 

 彼女だって本田が消えたことで不安になっているだけかもしれない。

 

「じゃあ、行こうぜ」

 

 祐が教室のドアに向かって歩き出し、僕と眞原井さんも後を追った。

 

 この妙な組み合わせで一緒に帰るなんて初めてだ。

 

 ・

 ・

 ・

 

 帰り道を歩きながら、わたくしはさりげなく御堂君の様子を探っていた。

 

「最近、この辺りも物騒ですわね」

 

 そんな他愛ない話題を振りつつ、ちらりと御堂君を見る。

 

 彼は特に変わった様子もなく、いつも通りぼんやりとした表情を浮かべている。

 

 ──本当に、この人があの腕の正体と何か関係があるのかしら? 

 

 正直なところ、御堂君という人はあまりにも平凡すぎる。

 

 容姿も成績も運動神経も全てが無難で、何もかもが地味だ。

 

 悪い人ではないのだろうけれど、もう少し個性というものを出してもいいのに、と思ってしまうほど。

 

 それでも昨日見たあの腕は間違いなく彼に関係している。

 

「御堂君は、普段はオカルト研究部でどのような活動をしているのですか?」

 

 わたくしの質問に、御堂君は少し驚いたように目を丸くした。

 

「あ、えっと……基本的には心霊スポットの情報集めたり、都市伝説を調べたり、そういう感じかな」

 

「なるほど。何か最近興味深い話はありまして?」

 

 さりげなく探りを入れるが、彼はあまり考えもせずに頭をかいている。

 

「うーん、特に変わったことはないかなぁ」

 

 彼の言葉に、わたくしは小さくため息をついた。

 

 ──本当に何も知らないのか、それとも隠しているのか。

 

 だが、それよりもむしろ気になるのは佐原君の方だった。

 

 御堂君が平凡で地味すぎるのに対し、佐原君には何か引っかかるものを感じる。

 

 具体的に何が引っかかるのかは分からないけれど、彼の中にどこか不可解な部分があるような気がして仕方がない。

 

「佐原君は部活などなさっていないのですか?」

 

 何気なく訊ねると、佐原君は爽やかな笑顔で答えた。

 

「俺は面倒くさがりでさ。放課後くらいは自由に遊びたいし、部活とか面倒だしな」

 

 一見するとただの気さくで明るい少年。

 

 しかし何か影のようなものを感じる。

 

 その影が何なのかは分からないが──。

 

「あ、俺こっちだから。また明日な!」

 

 佐原君は明るくそう言って、角を曲がって去っていった。

 

 残されたのはわたくしと御堂君だけ。

 

「それでは、御堂君。もう少しご一緒してもよろしいですか?」

 

 微笑みを浮かべてそう尋ねると、彼は戸惑いながらも頷いた。

 

「うん、いいけど……」

 

 ──さて、ここからが本番ですわね。

 

 わたくしは密かに心を決め、再び彼にさりげなく問いかけるのだった。

 

 

 

空白行について。現在、句点「。」で終わる文章一つにつき空白行が一つありますが、これは読みづらいですか?

  • ①問題ない
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