Puriφ's 方舟の花々   作:ばりるべい

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序章 Open your eyes for the another φ's
仮面の超人 ファイズ


 

アビドス砂漠を土で出来た巨大な球体が移動している。

さしずめ、砂丘ならぬ砂球と言ったところか。

 

砂球の正体は純白の肉体を持つ怪人「オルフェノク」

その中でもフンコロガシとも呼ばれるスカラベの特性を持ったスカラベオルフェノクだった。

 

本来のスカラベはその二つ名の通り、球体状の糞を後ろ脚で転がしていく習性を持っているわけだが、スカラベオルフェノクは砂球の中に入って転がっているのだった。

スカラベオルフェノクはアビドス高等学校に向かって一直線に進んでいた。

進路状にある家屋を次々と轢き潰しながら、砂球はごろごろと転がり続けていった。

 

小気味の良い炸裂音が響き、砂球に何発かの弾丸が撃ち込まれた。

弾丸は砂球の表面に突き刺さり、幾らか砂がこぼれ落ちたがそれ以上の被害は与えられなかった。

砂球の中のスカラベオルフェノクは攻撃された事すら気づかなかった。

 

砂狼シロコと黒見セリカは遮蔽物の影から顔だけ出して砂球の様子を伺った。

 

「ん…ダメ。まるで効いてない」

 

「あの様子じゃホシノ先輩やノノミ先輩の攻撃も通らないでしょうね」

 

セリカは耳につけたインカムで連絡を取った。

 

「アヤネちゃん、聞こえる?私とシロコ先輩の攻撃は通じなかった。砂が邪魔して本体まで届かないみたい」

 

『じゃあホシノ先輩達の攻撃なら…』

 

「多分ダメ。砂の塊そのものを一撃で破壊しないと…」

 

『…だそうです。翔一さん』

 

インカムの向こう側の奥空アヤネはアビドスに住まう唯一の男性に話しかけた。

インカムから翔一と呼ばれた男の声が聞こえた。

 

『了解…面倒な相手だな。ホシノとノノミが居てくれればもう少し楽に立ち回れるんだが』

 

彼の言う通り、今日はアビドス高校の年長組たる小鳥遊ホシノと十六夜ノノミが不在だった。

二人はセリカ達「アビドス廃校対策委員会」を幾度と無く助けてくれた“シャーレの先生”の手伝いに行っているのだった。

 

そんな折、アビドス高校目掛けて一直線に進んでいく砂の塊を見たと数少ないアビドス自治区の住人が連絡してくれたのだった。

 

オルフェノクとの戦闘は生徒同士のそれとは全く違う。

本当の意味で命懸けの戦いなのだ。

 

アビドス高校の面々は数えきれない程オルフェノクとの戦いを経験していた。

普通ならオルフェノクとの戦闘はそう何度も経験するものでは無い。

アビドスにおけるオルフェノクの出現率は他の学園自治区の数十倍以上だった。

対策委員会の面々の戦闘能力はキヴォトス全体で見ても突出していた。

 

 

 

 

オルフェノクが潜んだ大玉はついにアビドス高校の正門まで僅か数十メートルの位置にまで到達した。

砂球は転がり続けていた間にどんどん巨大化していき、今や幅10メートル程の巨体となっていた。

 

砂球の直線上に人影があった。

キヴォトスの学生なら誰でも持っている筈のヘイローを持たない癖毛の青年だった。

黒いライダージャケットを羽織り、ロケットカウルが特徴的な大型バイクに腰掛けて悠々と砂球を眺めている。

 

『翔一さん、お願いします』

 

アビドス高校の命運を託された青年は、バイクのリアシートに括り付けてあるアタッシュケースを開いた。

ケースの内部には様々な銀色のツールが敷き詰められ所狭しと並んでいる。

青年はその中から機械仕掛けのベルト【ファイズドライバー】と折り畳み式携帯電話型ツール【ファイズフォン】を取り出した。

 

ベルトを腰に装着してファイズフォンを開く。

画面に表示された複数の推奨コードの中から一番上のコードを入力していく。

 

5・5・5・ENTER

 

『Standing By』

 

流暢な英語の電子音声と共にアラートの様な待機音が鳴り響いた。

 

「変身」

 

青年はバックルの構造に合わせてベルトにセットしたファイズフォンを横に倒した。

 

『Complete』

 

真紅の光の骨格が形成され、辺りは眩い光に包まれた。

光の中から超金属ソルメタルで出来た仮面の超人ファイズが誕生した。

 

ファイズはケースの中からデジタルカメラ型パンチングユニット【ファイズショット】を取り出し装備した。

ベルトのファイズフォンから【ミッションメモリー】を引き抜き、ファイズショットに挿入した。

 

ファイズフォンを開いてENTERを入力する。

 

『Exceed charge』

 

ファイズのエネルギー流動経路を真紅のエネルギー「フォトンブラッド」が移動しファイズショットを掴んだ右手に充填される。

 

「シャァッ!」

 

眼前まで迫っていた砂球に必殺の拳を突き出した。

命中と同時に爆音を立てて砂球は粉々に砕け散り、舞い上がった砂塵が流砂の雨となって降り注いだ。

ソルメタル製の装甲に砂の雨がぶつかってぱらぱらと音を立てた。

 

もうもうと舞い散る砂煙の中からスカラベオルフェノクが飛び出してきた。

スカラベオルフェノクはファイズと掴み合いながらアスファルトの道をごろごろと転がった。

 

正門の柱にぶつかってスカラベオルフェノクがファイズにマウントをとった状態で停止した。

スカラベオルフェノクはファイズの頭を殴りつけた。

ファイズは足を振り上げて相手の背中を蹴りつけ、スカラベオルフェノクを吹き飛ばした。

 

アヤネが操るドローンがバイクのハンドルグリップを模した剣柄【ファイズエッジ】を運んできた。

ファイズショットから引き抜いたミッションメモリーを差し込むと、ソル・クリスタル製の真紅に光り輝く刀身が生成された。

 

かつて一世を風靡したスペースオペラ映画の武器の様に、高エネルギーの刀身はヴォン…ヴォンと時折唸りをあげている。

ファイズはスカラベオルフェノクにファイズエッジを振り下ろした。

ばちんと激しい火花が散ってスカラベオルフェノクは後ずさったが、堅牢な装甲によって守られていて大したダメージは与えられていない様だ。

 

スカラベオルフェノクは肩の一部を取り外して楯に変形させた。

さらにどこからかレイピアの様な武器を取り出して騎士の様に構えた。

 

ファイズはファイズエッジを両手で持って正眼の構えを取った。

ヴォンヴォンと唸るファイズエッジの音だけが響いている。

 

両者は同時に踏み出した。

ファイズエッジとスカラベオルフェノクのレイピアは激しくぶつかり合い火花を散らした。

スカラベオルフェノクは片手の楯でファイズの鳩尾を殴りつけた。

 

ファイズは鳩尾を抑え、よろめきながら後退した。

スカラベオルフェノクは追撃をかけようとファイズへ近づいていく。

 

連続した発砲音が鳴り響き、スカラベオルフェノクは火花をあげて倒れ込んだ。

シロコとセリカが救援に駆け付けたのだった。

アヤネの操るドローンがデジタルトーチライト型ツール【ファイズポインター】を運んできた。

ミッションメモリーを差し込み、シリンダーが伸長してキックモードに変形したポインターを右足首のエナジーホルスターに装着する。

 

『Exceed charge』

 

エナジーホルスターにフォトンブラッドが溜まっていく。

ファイズは人間離れした速度で走り出し宙へ飛び上がった。

射出されたポイントマーカーがスカラベオルフェノクを捉えた。

 

「ハァァッ!」

 

必殺のキック「クリムゾンスマッシュ」がスカラベオルフェノクの胴体を貫いた。

スカラベオルフェノクの肉体には青白い火が灯り、やがて灰となって崩れ落ちた。

 

 

変身を解除した翔一はシロコとセリカの元へ駆け寄った。

 

「二人とも無事か?」

 

「ん。平気」

 

「私達じゃなくて自分の心配をしなさいよ。もろにくらってたじゃない」

 

『そうですよ』

 

3人からなじられた青年は気まずそうに頭をかいた。

 

 

シロコとセリカがオルフェノクの“遺灰”を箒で掃いている間に、戦闘に使った道具一式を回収してバイクを駐輪場へと押していった。

幾度も戦いをくぐりぬけた愛車は車体のあちこちに傷をつくっていた。

 

愛車のサイドスタンドを立ててハンドルから手を離した翔一は空を見上げてほぅと息を吐いた。

 

「昼飯どうしようかな…」

 

果てしなく広がる青空に薄い雲がたゆたっていた。

 




元々は次の回を1話としていたのですが引きが弱いかなと思ったのでこちらを新1話(第0話)とさせていただきます。
この回を投稿するまでに読んで下さった方には申し訳なく思っています。
すみませんm(_ _)m

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