Puriφ's 方舟の花々   作:ばりるべい

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前回と今回のタイトルでミツコの元ネタがバレちゃうかもって思ったんですが、まぁ知ってる人自体少ないだろうから別に良いかなって


Da sprang die Katze rot!

 

野入ミツコは孤児だった。

アビドスの砂漠化によって両親が経営していた会社は倒産し、多額の借金に耐えかねた両親は幼いミツコを残して自殺した。

一家心中ではなく、なぜ幼いミツコだけを残したのか。

その理由は定かでは無いがいずれにせよ彼女の運命はこの時決定づけられた。

 

ミツコは孤児院に入れられた。

どこの世界にもヒエラルキーとは有るもので、彼女はその最下層に位置付けられた。

 

ミツコは理由のない攻撃に幾度と無く晒された。

時に直接暴力を振るわれ、時に便器を舐めさせられ、時に裸を公衆の場で晒され…

壮絶ないじめは大人達に見て見ぬふりをされた。

 

孤児院の中に安らぎと幸福は無かった。

 

数年後、ミツコは一人の男に引き取られた。

獣人の養父は柔和な笑顔を浮かべてミツコを引き取りに来た。

ミツコには彼はまるで福音を授けにきた天使の様に見えた。

 

家に入るや否や、養父は豹変しミツコは犯された。

 

いやだ、やめて、ごめんなさい。

 

ミツコは泣きながら許しを乞うた。

養父はミツコを犯しながら何度も殴りつけた。

 

どこにも安寧は無いのだと思い知らされた。

 

養父は酒を飲んだくれてばかりいた。

時折、思い出したかの様に労働に出かけ、帰ってくる頃には酒とパチンコで散財していた。

ミツコはまるで家政婦か奴隷の様に扱われた。

まともな食事が与えられた事は片手で数える位しか無かった。

 

少しでも気に入らないことがあると養父はミツコに暴力を振るった。

そして気がすむと今度はミツコが気を失うまで犯し続けた。

 

ミツコの体はストレスによるホルモンバランスの乱れと栄養失調が原因で著しく成長を阻害されていた。

従って、妊娠の心配は無かったが養父への抵抗が難しい事の証左でもあった。

 

養父との生活が始まって半年もしない内にミツコは倒れた。

病院には連れて行ってもらえず、適当に買って来た効果も分からない薬を飲まされた。

施された処置はそれだけだった。

 

養父はパチンコに出かけた。

ミツコはぼろぼろの布団から這い出て水を飲もうとした。

足元がふらつき、うつ伏せに倒れた。

 

窓から日が差してミツコの顔を照らした。

涙でぼやけた視界に隣家の屋根に寝そべる黒猫の姿が映った。

 

あぁ…いいなぁ

わたしも…あの子みたいに…もっと自由に生きたかった…

 

やがてミツコは動かなかくなった。

ヘイローは明滅を繰り返し、割れた皿の様にバキリと砕けた。

 

数十分後、ミツコは突然起き上がった。

 

 

 

養父はパチンコ屋に現れたミツコを激しく叱責した。

いつもと違ってミツコは乾いた笑みを浮かべていた。

 

ミツコの脳裏に声が響いていた。

 

殺せ…殺せ…殺してしまえ!

 

養父は目の前の光景が理解できなかった。

ミツコが突然白い怪人に変身したのだ。

 

ワイルドキャットオルフェノクは理解する暇も与えずそこにいた全ての人を殺した。

 

ミツコは自由になった。

 

ミツコは幸福を知らなかった。

これまでの人生の中に幸福を感じた事は無かった。

だから、何をすれば自分が満たされるのか全く分からなかった。

 

ふらふらと生まれ故郷のアビドスを歩いていた時、子供と手を繋いで歩く母親の姿が目に映った。

瞬間、ミツコは激しい飢えに駆られた。

 

ミツコは理解した。

どうやったら幸福になれるのかは分からない。

だが、他人が満たされている時、幸福な時、ミツコは不幸なのだ。満たされないのだ。

他人が不幸な時、ミツコは満たされているのだ。幸福なのだ。

 

ミツコは親の首を刎ねた。

子供は泣き喚いて首の無い親の肩をさすった。

飢えは消え去り、ミツコは満たされた。

子供の首も同じ様に刎ねて並べた。

ミツコは感じた事が無いほど幸福だった。

 

以来、そうやって他人を不幸にする事で満たされてきた。

野入ミツコはそれ以外の幸福を知らなかった。

 

 

 

「なんでだよ!なんでアタシなんだよ!なんでアイツらを殺さないんだよ!?」

 

ワイルドキャットオルフェノクは激しく狼狽しながら叫んだ。

 

「なんで仲間を殺すのよ?私の敵はあんただけよ」

 

ブラックキャットオルフェノクは冷たく言い放った。

 

「てめぇには聞こえねぇのかよ!?この声が!人間を殺せって耳元で囁いてるだろ!?」

 

「っ…」

 

「セリカ…お前」

 

ファイズ地に伏せたまま何とか首だけを起こした。

 

「そんな妄言には惑わされないわ。あんたを倒して皆を守るのよ」

 

「そうかい…馬鹿女がッ!」

 

ワイルドキャットオルフェノクは目にも止まらぬ速度で飛びかかった。

鋭い爪が振り下ろされたがブラックキャットオルフェノクは既にそこにいなかった。

ブラックキャットオルフェノクはワイルドキャットオルフェノクを上回る速度で行動する事が出来た。

 

ワイルドキャットオルフェノクの爛れた右腕が宙を舞った。

 

「は…?」

 

ワイルドキャットオルフェノクは何が起きたか理解出来ないと首を左右に振った。

 

「あんたがデメちゃんを…仇は取らせてもらうわ」

 

ブラックキャットオルフェノクはビルの外壁によじ登り見下ろしながら言った。

 

「アタシを…見下すなぁッ!お前らもアタシを見下ろすのかッ!?あの黒猫の様にッ!」

 

“ミツコ”は喉が張り裂けんばかりに吠えた。

 

ブラックキャットオルフェノクとワイルドキャットオルフェノクは空中で交差した。

鮮血が散って黒いアスファルトを濡らした。

 

ぼどりとワイルドキャットオルフェノクの左手首が落ちた。

 

「いぃっ…ああぁぁぁぁ!」

 

ワイルドキャットオルフェノクは膝をついて苦悶に叫んだ。

 

「セリカッ!」

 

『Exceed charge』

 

ファイズはエネルギーの充填されたファイズエッジを投げた。

ブラックキャットオルフェノクはそれを掴み、のたうち回るワイルドキャットオルフェノクに突きつけた。

 

「じゃあね。あの世で詫びを入れて来なさいっ!」

 

バシュッと音を立ててワイルドキャットオルフェノクの首が飛んだ。

首の断面は焼き切れて血は流れず、青白い炎が死体を包み込んだ。

 

「な、んで…アタシは…ただ…しあわせになりたかっ…」

 

アスファルトに積もった灰は夜風に吹かれて流されていった。

 

 

 

翔一と二人三脚の様に互いを支え合いながらセリカは仲間の元へと向かった。

 

「セリカちゃん…」

 

アヤネとノノミの瞳に拭えない恐怖心が映っていた。

 

「ん…大丈夫。私達は受け入れる」

 

「だから気にする必要はないんだよ。ね、先生」

 

「…オルフェノクになっても衝動に飲まれなければ普通の人間と変わらない…二人の言う通りだよ」

 

先生の台詞はノノミとアヤネに言い聞かせている様でもあり、自分に言い聞かせている様にも感じられた。

 

「私は…っ!」

 

セリカは開きかけた口をつぐんで苦悶の表情を浮かべた。

 

「セリカッ!耐えろ!」

 

「飲まれるな!」

 

翔一と先生は真っ先にそれが何かに気づいた。

 

「…耐えて、セリカ」

 

シロコは祈る様に言った。

 

殺せ…殺せ…人間を殺せ!

 

セリカの脳裏に声が響いていた。

 

「あっ…ぐぅっ」

 

セリカは頭を押さえて歯を噛み締めた。

強く噛むあまり、ぎりぎりと歯軋りするかの様な音が鳴った。

 

「っづ…ごめん、みんな…私、もうみんなと一緒にいられない」

 

「セ、セリカちゃん」

 

アヤネが言い淀んだのを見て、セリカは微かに笑った。

 

「ごめんね…」

 

セリカの顔に紋様が浮かび、ブラックキャットオルフェノクに変身した。

踵を返してブラックキャットオルフェノクは走り去った。

 

「なんで…どうして」

 

ノノミは尻餅をついて虚ろな表情で呟き続けた。

 

「…翔一、セリカを頼めるかな。私は皆を…」

 

「…分かった」

 

地平線から日が登りつつあった。

 

 

 

「はい、もしもし。便利屋68です」

 

テナントビルの一角に便利屋68は事務所を設けていた。

彼女達はゲヘナ学園に所属している生徒だが、学園内にいる時間はかなり短かった。

自分達で始めた便利屋稼業でキヴォトス各地へ赴いている事が多い為である。

 

「え…えぇ!勿論です。私達にお任せ下さい。はい…はい…えぇ、ではまた。失礼します」

 

社長である陸八魔アルは今時珍しい黒電話の受話器を置いた。

 

「仕事?社長」

 

年長のカヨコはソファーに座ったまま気だるげな声で聞いた。

 

「ええ、そうよ。依頼主はなんとあのカイザーコーポレーションよ!私達の名声も広まってきたと言う事かしら!」

 

アルは満面の笑みを浮かべながら胸を張った。

 

「えぇ〜?でもさぁ、カイザー絡みの仕事ってヤバくなぁい?」

 

ソファーの背もたれにもたれかかったムツキが言った。

 

「で、ですが…それだけアル様の目指すアウトローに近づいているのではないでしょうか…」

 

おどおどした様子のハルカが愛銃を抱えながら自信無さげに言った。

 

「そうよ!それに、カイザーの仕事をこなせば更に名声が広がるじゃない!やってやるわよ!」

 

「…やる気があるのは良いけど、依頼の内容は何なの?」

 

「ふっふっふ、アビドス高校って知ってるかしら?」

 

「砂漠になってる場所でしょ?結構近いよね」

 

ムツキはカヨコと顔を合わせながら言った。

カヨコの顔には面倒ごとの気配を感じると書いてあった。

 

「そう!そのアビドス高校にカチコミに行くのよ!」

 

「まぁ…アウトローだねぇ」

 

ムツキはしみじみと呟いた。

 

「そうと決まれば早速行くわよ!」

 

アルは椅子から立ち上がって力強く言った。

 




前回公開後、お気に入り登録者一人減ってて草…草…
所で、ブルアカはゲームやってなくてアニメしか見てないんですけど、今になってストーリーを調べ直す事になるとは思いませんでしたorz

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