翔一はベルトを装着しながらファイズフォンで連絡を取った。
「翔一さんですか!?今どこに」
「カイザに襲われてる!先生にそう伝えてくれ!」
即座にコールに出たアヤネの台詞を遮って翔一は強張った声で言った。
「え!カイザーですか!?」
「違うっ!カイザだ!」
「な、何が違うんですか…?」
アヤネは困惑の声を上げた。
「とにかくっ!カイザに襲われてると先生に伝えれくれ!頼んだぞ!」
そう言うと翔一は一方的に電話を切った。
カイザは銃口を向けたままゆっくりとこちらへ近づいてくる。
翔一はファイズフォンにコードを入力し、素早くベルトに叩き込んだ。
『Complete』
赤い閃光と共にファイズが誕生した。
「何もんだ、あんた?」
「お前が知る必要は無い」
翔一の問いにカイザは機械じみた声で答えた。
「何が目的だ?俺をアビドスまで行かせない事か?」
「それもある…だが何より、お前を捕縛しろと命令を受けている」
「誰から?」
「教えると思うか?」
「いいや、全然」
「…大人しく投降しろ。抵抗するなら四肢程度は奪ってもいいと言われている」
「…嫌だね」
「そうか。ならば覚悟しろ」
カイザはギリシャ文字のΧを模した遠近両用武器カイザブレイガンにミッションメモリーを挿入した。
黄金色に輝くソル・グラス製の刀身フォトンブレードが出現し唸りを上げた。
ファイズも光刃を展開したファイズエッジを構えた。
両者は睨み合い殆ど同時に駆け出した。
一方的な通話に困惑しつつもアヤネは先生に通信を繋げた。
「先生、翔一さんがカイザに襲われていると…」
「カイザーですって!?」
通信を全員が聞ける様にしてしまっていた様で、セリカが驚きの余り大声で叫んだ。
便利屋を含むその場にいた全員が一瞬固まった。
「ん。て事はPMC?」
「ち、違います!カイザーじゃなくてカイザらしいです!」
「カイザーじゃなくてカイザ…?どう言う事でしょうか?」
「カイザだって!?」
今度は先生が驚きの声を上げた。
ホシノは便利屋に銃口を向けたまま僅かに後ろを向いた。
「先生はそれが何なのか、知ってるの?」
「あぁ…だが、どうして…」
先生は如何すべきか迷っていた。
態々連絡して来たと言う事はあちらも助けを求めていると言う事だ。
そして、本当にカイザが現れたのなら生徒では太刀打ちできない。
「…ここはおじさん達に任せてさ。行って来なよ」
「…すまん、頼む!…シロコ!ロードバイクを貸してくれ!」
「え、良い…けど」
「ありがとう!」
先生は素早く身を翻して駐輪場へ向かうと本来の持ち主にも負けない速さで走り去った。
便利屋も傭兵達も普通の人間らしからぬ素早さに困惑して攻撃する事すら思いつかなかった。
勇介はシロコのロードバイクで人気の無い住宅街を走り抜けていた。
一刻も早く翔一の元へ向かわなければ不味いかも知れない。
元よりファイズは安定性を得た代わりに、スペック・出力共にカイザに一歩劣るのだ。
勇介は経験上それを知っているが、翔一は無謀な戦いに挑むかも知れない。
そんな焦りからか、勇介は凄まじい速度で向かってくる影に気づくのが遅れた。
空中から体当たりを喰らい、勇介はロードバイクごと吹き飛ばされ一軒家の塀に叩きつけられた。
「っ!オルフェノク…こんな時に!」
バタフライオルフェノクは行手を阻む様に着地しじっと勇介の様子を伺った。
「あんまりやりたく無いんだけど…」
勇介は腰元へ左拳を引き、右手を斜め下へと振り下ろした。
抜刀するかの様に左手を振り抜き、二本指を立てて眼前へと運んでいく。
勇介の腰元の空間が渦を巻く様にうねり光を放った。
勇介は深呼吸の様に深く息を吐き出しながら、二本指を立てた左手を相手へ向けて真っ直ぐに伸ばした。
「変身」
眩い光が放たれバタフライオルフェノクは思わず手で顔を覆った。
光の中から人智を超越した黄金の肉体を誇る超人が現れた。
便利屋率いる傭兵達と対策委員会の戦闘は意外にも対策委員会側が優勢であった。
彼女達は幾度となくオルフェノクとの戦いを経験しており、傭兵だけでは即座に敗北していただろう。
ゲヘナ学園出身な上、業務上荒事にも慣れている便利屋が率いていた事によって何とか互角に持ち込めているのだった。
アルにはシロコとセリカがタッグを組んで攻撃していた。
「あぁ、もう!ちょこまか動かないでよ!」
「あ、アル様…わ、私が」
アルをサポートしようとするハルカの相手を交代で入れ替わる事で翻弄していく。
「ん。大した事ないね」
「あんた達を捕まえて柴大将の前に引きづり出してやるわ!」
シロコとセリカの相手の懐に潜り込んで接近戦へ持ち込む戦法は、本来スナイパーである筈のアル相手には極めて有効だった。
ノノミはその火力を持って雇われ傭兵達の露払いをしていた。
ばら撒かれた無数の弾丸が軽装な傭兵達を薙ぎ払っていく。
「悪い子はお仕置きですっ!」
傭兵達はノノミの攻撃だけで殆ど片付けられていった。
ムツキと相対していたホシノが時折隙をついてハルカへと射撃を行う。
ハルカは先の一件で完全に調子が狂ってしまい、コンディションは最悪になっていた。
「あぁ!もうっ、ムカつくなぁ!」
「うへ、おじさん程にもなるとこれ位は余裕だね」
アヤネとカヨコはゼロ距離で互いに銃口を弾き続けていた。
自身に向けられた銃口を掴んで逸らしあいながら、一瞬の隙をついて引き金を引き続ける。
カヨコの拳銃をアヤネが拳銃をぶつける事で弾いた。
アヤネの拳銃がカヨコの顔へと向けられるが、カヨコはアヤネの手首を掴んで強引に射線を逸らした。
薬莢が2人の周囲に散乱していたが、互いに決定打を与えられていなかった。
「しつこいっ!」
「それは!こちらのっ!台詞ですっ!」
リズムを刻んでいるかの様に交互に銃声が鳴っていった。
ファイズとカイザは激しく斬り結び、刀身がぶつかる度に発生したアーク光が2体の影を照らした。
ファイズとカイザは同時にドライバーに手を伸ばした。
『Exceed charge』
『Exceed charge』
ファイズフォンの電子音声と同時に、よりピッチの低い音声がカイザフォンから鳴った。
2度、3度と赤と黄色の剣閃が交差していく。
カイザの放った突きがファイズの胸部装甲に命中して激しい火花と共に吹き飛ばした。
カイザは再びカイザフォンのENTERキーを入力するとカイザブレイガンのコッキングレバーを引いた。
「これで終わりだ…」
「ハッ!」
黄金の超人と化した勇介の放った拳がバタフライオルフェノクの顔面を捉えた。
バタフライオルフェノクはもんどりうって砂の上をごろごろと転がった。
白い燐光と共にバタフライオルフェノクの変身が解けた。
浅葱色の長髪が日光に照らされて小さく揺れた。
「っ!」
「あちゃ〜…バレちゃった」
何処かホシノに似た雰囲気の少女は隠し事がバレた子供の様に気まずそうな表情を浮かべた。
「…まぁ、仕方ないよね。えっと、シャーレの先生…ですよね?」
「そう…だけど」
勇介は困惑し完全に闘志を失って構えを解いた。
「ホシノちゃんを…皆を…宜しくおねがします」
浅葱色の髪の少女はそう言って頭を深々と下げた。
「君は…一体」
「あ!でも、まだ私の事は言わないでおいて〜!」
そう言いながら再びバタフライオルフェノクに変身し少女は飛び去っていった。
「あの娘は…何者なんだ…?」
黄金の超人から人間の姿へ戻った勇介は、少女が飛び去っていった方角を見つめながら呟いた。
「分かったよ、降参だ」
ファイズは両手を上げた。
カイザは銃口を向けたままファイズを睨んだ。
「…何を企んでいる?」
「いや、何も?」
沈黙が場を支配した。
両者共に微動だにしないまま数分が過ぎ去った。
「…良いだろう。では、ファイズフォンをこちらに寄越せ」
ファイズはベルトからファイズフォンを抜き取って乱暴に投げ渡した。
ファイズフォンはカイザの装甲に当たって地面に落ちた。
カイザは落ちたファイズフォンを取ろうと銃口を向けたまま屈んだ。
「俺は何も企んでいない、俺は」
「っ!?」
日差しを遮って黄金の超人が落ちて来た。
超人はカイザに手刀を振り下ろした。
カイザはカイザブレイガンの射線をファイズから外して超人に向けようとした。
ファイズはその隙を逃さずローリングでカイザの懐に飛び込んで拳を振り抜いた。
『Exceed charge』
必殺の鉄拳グランインパクトがカイザの鳩尾を捉えた。
ドライバーが衝撃で吹っ飛び、カイザ本体はそれとは反対側に吹き飛ばされていった。
地に伏せたカイザは痙攣したかと思うとスーツごと大爆発を起こした。
こう言う戦闘が続く回を書くと、自分の文才の無さが露呈しますねorz
カヨコとアヤネの戦闘はガンカタを意識したんですが伝わったかどうか…
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